この本は決意の物語なのだから。
帯に書かれていたこのキャッチコピーとかわいい表紙に心ひかれ、気づけば購入していた小説『太陽のパスタ、豆のスープ』について、今日は書いていきたいと思います。
著者は宮下奈都(みやしたなつ)さん。
2004年、3人目の子どもを妊娠中に執筆した『静かな雨』で第98回文學界新人賞佳作に入選し、小説家デビュー。
宮下さんの有名作品は2015年に刊行された『羊と鋼の森』。本作は第154回直木三十五賞候補、第13回本屋大賞を受賞しています。
今回紹介する『太陽のパスタ、豆のスープ』は、人と比べず自分の気持ちに素直に生きていくことの大切さを教えてくれます。
あの人はわたしより綺麗、あの人は自分より頭が良い、など、つい自分と他人を比べて落ち込んでしまうことありませんか…?わたしはよくあるんですが、「比べたところでわたしはあの人じゃないし、わたしはわたし」と考えられるようになったきっかけが本書でした。
あらすじ
結婚式直前に突然、婚約を解消されてしまった主人公:明日羽(あすわ)。
混乱しながらもなんとか家に帰った翌日、事情を知らずたまたま家を訪ねてきた母の妹:六花(ロッカ)にこう言われます。
「リストよ」
<中略>
「あすわの、明日へのリスト」
「何それ」
「やりたいことや、楽しそうなこと、ほしいもの、全部書き出してごらん」
「ロッカさんが叶えてくれるの?」
ロッカさんはにっこりと笑って言った。
「なわけないじゃん。あすわが自分でそれをこれからひとつずつ叶えていくんだよ」
ちょっとだけ気持ちが動きそうになっていた私は再びベッドに倒れ込む。
「……お願い、ひとりにして」
「え、ああ、ひとりになりたいのね」
<中略>
「ええと、あすわ、ドリフターズ・リスト。その一、ひとりになりたい」
「ロッカさん、その、ドリフターズって何」
「漂流者って意味よ。ムーンリバーっていう歌に出てくるの。安心して、カトちゃんとか志村とか関係ないから」
「そんな心配してないよ」
<中略>
「あのさ、べつにリストにしなくても、今、ロッカさんが下に行ってくれればあたしひとりになれるんだけど」
「あ、ああ、そうか、そうだね。悪かった、下に行ってるよ。だけど、リストは書いてごらん。後で見せてもらうからね」
ロッカさんが部屋から出た後、明日羽は「今はやりたいことなんてひとつも浮かびそうにないから」と、そのうち考えることにします。
後日、再び家にやってきたロッカさんがドリフターズ・リスト(やりたいことリスト)を明日羽に書かせます。
そして、そこに書いた項目の中から一つ、ロッカさんが実行するきっかけを与えます。
半ば強引にとはいえ一つ達成できた明日羽はその後、自身でリストに書いた項目を挑戦し、新しい私になったと喜びます。
その中で、自分のことなのに自分をきちんと理解していないことに気づきます。そして、みんなそれぞれの場所で頑張っているのに私だけどんどん取り残されていると感じ、自信をなくします。
自信をなくした明日羽がドリフターズ・リストを通じて最終的にどうなっていくのか、それは物語を読んでみてください。
明日へのリスト:ドリフターズ・リスト
以上、かなりざっくりですが『太陽のパスタ、豆のスープ』のあらすじをご紹介させていただきました。
明日羽は適当なチラシに書いた明日へのリスト:ドリフターズ・リストを大事に取っておき、達成したものは線を入れたり書き足したりします。
そしてそれを定期的にやって来るロッカさんに見せます。
ある日、ロッカさんにリストについてこう言われます。
「あすわは見どころがあるよ。だって、リストつくるときに、最初から書き方知ってたもん」
「書けって言われたから書いただけだよ。書き方なんて知らなかった」
「でもさ、やりたいことリストって言うと普通はみんな、きれいになりたいとかいきたいとか書くんだよ」
<中略>
「でも、あすわは違った。はっきり断定的で、きれいになる。旅行に行く。鍋を買う。そういうふうに書くのは実現する秘訣なのよ」
鍋は買ったけれど、きれいにもなっていないし、旅行にも行っていないから実現はしていないと明日羽が思ったとき、ロッカさんは「だいじょうぶ、きっとうまくいく」と言います。
ちょっと鬱陶しいところもあるロッカさんですが、いいこと言うんですよね…明日羽の良きメンター的存在…!
やりたいことがわからない、これからどうすればいいかわからない、そんなあなたは本書を読んで、明日へのリスト:ドリフターズ・リストを作成してみてはいかがでしょうか。
わたしが作成するとしたら「1.ダラダラせず心地良く過ごせる家にする」「2.普段読まない本を手に取って読んでみる」「3.人と会話する」ですかね…最近、家でも職場の休憩時間でもゲーム実況動画ばかり見ているので、本を読む機会や人と会話する機会を増やせたらと思い挙げてみました…!
紙にやりたいことを書き、叶えていくことでわたしが選ぶものでわたしはつくられているんだと実感することができるはず。
ではまた。
この記事を書いた人
- インナーカラーがやめられない。
座右の銘は日々成長。
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