ちょっと「敏感な人」が気持ちよく生きる本から学ぶ”敏感”について。

実用書
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

近年、「HSP」と呼ばれる言葉を目にしたり、耳にしたりする機会が増えました。

HSPとはHighly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、そのまま訳すと非常に敏感な人という意味。
最近では「繊細さん」とも呼ばれ、本やメディアでもHSPについて取り上げられる機会が増えました。

HSPという言葉は1996年にアメリカの心理学者:エレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念で、世界人口の約2割の人がHSPだと唱えています。

…と、ここまではご存知の方も多いかもしれません。
実はこのHSP、日本人に多いのではと言われてるんだとか。

セロトニンという脳内物質をご存知でしょうか。心のバランスを整えて安定させる役割を持つもので、別名:幸せホルモンとも呼ばれています。
このセロトニンの量を適切に保てるようサポートする役割を持つのがセロトニン運搬遺伝子というもの。
セロトニン運搬遺伝子にはS型とL型があり、S型は情報を人より強く深く処理するという、脳の働きに関わっていることがわかっています。
このS型遺伝子はHSPと言われるほとんどの人が持っている遺伝子なんだとか。さらに、国民性などの理由で国によって数に差が生まれ、日本人が圧倒的に多いというデータが出ているそうです。

世界から見た日本人は礼儀正しい・時間を守る・勉強や仕事に対して真面目などと言われているため、そういった性質によってHSPが多いのかもしれません…

今日はそんなHSPについて書かれている『ちょっと「敏感な人」が気持ちよく生きる本』をご紹介します。

”ちょっと敏感な人”という表現、いいですよね。繊細さんと呼ばれるであろう項目すべてに当てはまるわけではなく、かといって非繊細さんというわけでもない、という人が手に取りやすいタイトル。

この本は著:苑田純子(そのだじゅんこ)さん、監修:長沼睦雄(ながぬまむつお)さん、2人が手がけています。

苑田純子さんは1963年生まれ。元予備校講師。
自らもHSPとして体調不良や心の乱れについて悩まされた経験から、「敏感すぎる気質」がなぜ生まれるのか、またその対処の仕方について研究を行ない、広島大学との共同研究、テレビ出演などを重ねてきました。

長沼睦雄さんは1956年生まれ。脳外科および神経内科診療を経て、2016年十勝むつみのクリニックを開業。
日本では数少ないHSPの臨床医。

近年、新型コロナウイルスの影響もあり、普段なら気にならない言動を気にしてしまい、外に出ることや人に会うことが億劫になるケースが増えています。
「いろいろ気になる」とは言い方を変えると「よく気がつく」こと。今日はこの本で少しでも気持ちよく生きれるよう、学んでいきたいと思います。

繊細さんでもなく、非繊細さんでもない。わたしのような微繊細さんの人は注目です。

Amazonで購入

「敏感さ」はどこから来ているか

ちょっと敏感な人の「敏感」とは、上司がイライラしていると自分まで気分が悪くなってきた、愚痴を言う人と一緒に過ごしているとのどがイガイガして熱まで出てきた、など、人の感情を自分のことのように感じてしまうことを指します。

この本では周りに影響されやすい人とそうでない人がいる理由に遺伝子が関係していると言います。

ここで、セロトニンセロトニン運搬遺伝子が再び登場します。
セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれる脳内物質の一つで、セロトニン運搬遺伝子はセロトニンの量を調整している遺伝子のこと。そしてHSPの多くはS型遺伝子を持っていると冒頭で説明しました。

このS型遺伝子、セロトニンの再吸収力が弱いため脳内のセロトニンの量が不足しがちに。その結果、L型より不安を強く感じる遺伝子と言われています。S型遺伝子は環境に左右されやすい遺伝子だということがわかっています。

くわしい仕組みについてはまだ研究段階にありますが、この遺伝子のスイッチがオンになる条件に、「環境」があるのではないか、と考えられています。
<中略>
自分の置かれた環境によって、もともと持っている遺伝子の性質が現われてくる、ということです。

たとえば、あなたが少し風邪気味で体調がすぐれない中、職場へ出社するとします。職場環境はあなたの負担が大きい最悪の環境。そんな状態で仕事をしていると、熱が出て悪化する…といった感じです。逆を言えば、風邪気味だろうが、職場環境が最高であれば、苦しむことはないといっていいでしょう…

なぜ、「小さいこと」が気になるのか

「敏感すぎる人」特有の脳の働きを専門用語で「感覚処理感受性」と呼びます。

「感覚処理感受性」というのは、脳が受けた刺激を、情報として深く徹底的に処理する力です。入ってくる情報をすべて受け取り、きちんと処理しようとするので、適当に流すということができないのです。

夫のちょっとした言い間違いが気になってツッコむと「小さいことは気にしない」と言われます。でも気になってしまうのはこの敏感脳のせいなんですね…

ここでは、敏感すぎる人の4つの共通点を教えてくれます。

①刺激に敏感(音や光、匂いや他人の気持ちなどに気づきやすい)

例)テーマパークのパレード
軽快な音楽・イルミネーション・観客の歓声・香水の匂い・隣の友達が話しかけてくる声、どの情報が身の危険につながるかわからないため、すべての情報をきっちりととらえて処理しようとする。

②受け取った情報の処理がていねいすぎる

例)笑顔で話していた相手がふと見せた暗い表情
敏感な人は単純な刺激(笑顔)だけでなく、微妙で繊細な判断が必要とされる刺激(ふと見せた暗い表情)をも受け取って処理する。

③行動に移すのに時間がかかる

例)物事を決める時
過去の経験と比較して、自分がしようとしていることの「安全チェック」をするため反応が遅くなり、パッと物事が決められない。

④感情や体の反応が大きい

例)窓際から差し込む光
光に敏感な人の場合、身の危険に関わるような大事な情報を見過ごさないために、心や体やちゃんと反応して目の痛みや頭痛を覚え、体の反応が人より大きく出る。

また、敏感すぎる人は「空腹」に対しても敏感に反応するそう。空腹は体にとってエネルギー切れの信号なので、早く栄養を摂らないとといち早く教えてくれるんですね。わたしも空腹には敏感で、作業効率が下がるわやる気も低下するわと最悪なコンディションになります…

「敏感すぎる人」が持っているいいところ

たとえば、もしあなたがお見合いをすることになって出会った時、相手がとても緊張していたらどう感じますか?

「頼りがいがなさそうな人」と評価を下げる人もいれば、「誠実な人だな」と好意的に受け止める人…いろいろな人がいると思います。

起きた事実は同じでも、その事実をどう意味づけ、どう受け止めるかは、人それぞれ違っています。
もしも、今まではマイナスにしか受け止められなかったことの、別の面を見ることができるようになったらどうでしょうか?
たとえ状況が変わらなくても、受け止め方が変われば、見える光景が変わってくるかもしれません。

そして、先ほど挙げられた敏感すぎる人の4つの共通点。
刺激に対する反応が大きいと環境のわずかな異変にも、早く気づけるというメリットがあります。

たとえば、あなたが今いる場所に住めなくなって新天地に移ることになったとします。刺激に対する反応が大きいのであれば自分の体の反応に従えば、安全な場所を見つけることができます。

自分のクセを知って、それを活かすように工夫すれば、敏感な気質はコンプレックスの材料ではなく、才能として身を助けてくれるようになるのです。

音に敏感であれば、演奏の繊細な違いを味わえますし、匂いに敏感であれば、お茶やお酒の微妙な香りの違いを利き分けられる。…こう考えると、敏感であることがプラス思考で考えられますね…!

「気づきすぎ」にブレーキをかける3つの方法

敏感すぎる人が持っているいいところですが、刺激に疲れて本来の力を発揮できなくなっては本末転倒です。
ここでは脳が過労に陥らないよう刺激に反応しすぎないようにする3つの方法を教えてくれます。

①強い刺激を減らす

例)人混みが苦手な場合
外出を控え、買い物を近所ですませるかネットを活用。
花粉症の人がマスクやメガネなどで鼻や目をガードするように、苦手な刺激をできるだけ避ける。

②環境を変える

例)仕事に集中できない場合
不調が起きるのは「環境に問題あり」という体からのメッセージ。
音が原因で集中できないのであれば耳栓やイヤホンを使って音をシャットダウンしたり、パソコンの光が原因であれば明るさを変えたりブルーライトカットメガネを着用したり、気分転換に席を立ってストレッチしたり、変えられる環境はできるだけ変えることがラクになる一番の近道。

③脳の「上書き修正」

例)相手の嫌な部分が目に付く場合
そもそも、人は「心地よいこと」より「嫌なこと」のほうに敏感に反応するようにできているため、嫌な部分ではなくいい部分を見るようにするなどして脳のクセを変える。
「脳のクセ」を止める方法は外出時に一駅歩く、1,2分ストレッチする、など運動が即効性のある方法。

なぜ脳のクセを止める方法が運動なの?と思ったあなたとわたし自身に補足。「運動するとサッパリした気持ちになるとともに楽観的になれる」という実験結果がカナダのオタワ大学心臓研究所の博士研究員アダム・ヒーナン博士によって報告されています。

「幸せホルモン」を増やしていく

気づきすぎにブレーキをかけて刺激に反応しないようにするだけでなく、心のバランスを整え安定させることも大切です。

気持ちの安定や集中力アップに効果があるセロトニンは脳でつくられています。これが不足すると、ささいなことでイライラしたり、快楽を追求して、お酒やショッピング、ゲームなどに依存してしまったりします。

ここではセロトニンを増やすための方法を教えてくれます。

①太陽の光を浴びる

例)朝起きたらカーテンを開ける、カーテンを開けたまま寝て朝になると自動的に光が差し込むようにする など
セロトニンを増やすためのもっとも手軽な方法。
太陽の光などの強い光を浴びると、睡眠に関わるホルモンであるメラトニンがストップし、代わってセロトニンの分泌が促されます。

②リズム運動

例)ウォーキング、ヨガ、太極拳 など
セロトニン神経が活性化する方法。
リズム運動とは、一定のリズムで単調な動きを繰り返すもの。他にも編み物やガムを噛むなど、同じような動きを繰り返す行動にも同様の効果があり。

③食べ物で摂取

例)トリプトファンおよびビタミンB6を多く含む食品

  • トリプトファンを多く含む食品
    肉、魚、豆類、乳製品、卵などのタンパク質。穀物やそばにも豊富。
  • ビタミンB6を多く含む食品
    まぐろ、かつおなどの魚。レバーなどの肉。ニンニクやトウガラシ、バナナ。

セロトニンは脳だけでなくでも作られているため、多く含まれる食べ物を積極的に摂るのがおすすめ。
セロトニンの材料であるトリプトファンを多く含む食品を摂取し、腸にセロトニンのもとを送り込む。トリプトファンがセロトニンへと成長を遂げる時、ビタミンB6が必要なので、それも一緒に摂るとなお効果的。

また、セロトニンをつくるには善玉菌の働きも必要なため、腸内細菌のバランスを整えることも必要。

ストレスを感じやすい「敏感な人」は腸もむくみやすく、セロトニン不足になりやすいんだそう。万年便秘のわたしはまず腸のむくみ改善が必要…

「敏感」は悪ではない、むしろステキなこと

今回はここまで。
この本には他にも「刺激を受け取りすぎないようにする工夫」や「簡単にできる自分メンテナンス」などが書かれています。
毎回同じことを言っていますが、気になった方はぜひ読んでみてください。わたしがまとめたのはほんの一部なので、手に取るとより共感する部分や学ぶことが多いはず。

著者の苑田さんは本書でこう言っていました。

「敏感すぎる人」には、まじめで頑張り屋さんな人がとても多いです。
そういう人ほど、「自分を甘やかしてはいけない」と思ってしまうものです。

まじめで頑張り屋さんのあなた、あなたが感じる敏感さは決して悪ではありません。むしろいいものを見分けるステキな力があります。

わたしもこの本がなければ敏感であることはいいことなんだと気づかなかったかもしれません。だいすきなバンドのライブで聴く楽曲と会場の盛り上がり・興奮は、普段音源を聴いている時とは違って何十倍もたのしくて、時には感動のあまり鳥肌が立ったり泣きそうになります。これも敏感だからこそ感じるものの一つ…!

周りに合わせようとして自分らしさを押し隠して頑張り続けてしまうと、心や体が強制シャットダウンしてしまうかもしれません。
そうならないように、この本を読んで少しでも生きづらさがなくなればと思います。

ではまた。

Amazonで購入

この記事を書いた人

インナーカラーがやめられない。
座右の銘は日々成長。

コメント