今日は『GOOD DESIGN FILE 愛されつづけるデザインの秘密』という本をご紹介します。
本の内容をざっくりと説明すると、世界的に大成功した商品・ブランドについて紹介されており、著者:高橋克典(たかはしかつのり)さん、絵:彩蘭弥(あらや)さんの2人が携わっています。
高橋克典さんはフランスで1968年に創業されたシューズブランドARCHE(アルシュ)の日本支店にあたるアルシュ株式会社代表取締役。これまでに数々の外資系企業の経営に携わり、コンサルティングや講演活動も実施しています。
彩蘭弥さんはアジアを中心に旅をしつつ、現地でのスケッチをもとに日本画を描く旅を愛する画家。株式会社バルコスの店内装壁画製作など、幅広い仕事を手がけています。
世の中にはたくさんの商品・ブランドがあります。同じ機能・品質の製品でも、高くても売れたり長い期間に渡って売り続けられていることがあります。同じ機能・品質なのに一体なにが違うのでしょうか。
著者の高橋克典さんはデザインの力が関係すると言います。
みなさんがデザインを気に入って、周りの製品より3割高い製品を購入したとします。最初は「少し高かったな」と感じても、飽きのこないデザインであれば簡単に買い換えることはなく、長期間に渡って使用するはずです。買い替え需要は減るものの、そもそも一製品あたりの利益率が大幅にアップしているので、経営的には問題ありません。これがデザインの力です。
デザインを活かすことができれば、少ない予算で最大利益を上げることも可能だと言います。
ということで、今日は世界中の優れた商品の超長期間に渡って売り続けられているデザインを編み出す方法や経営術の秘密について、この本を通じて学んでいきたいと思います。
今回は本の内容から学べる点をわたしなりにまとめています。見づらい点もあるかもしれませんがご了承ください。
ウニッコ(フィンランド)
鮮やかでポップな花柄のパターンデザインで有名な『ウニッコ』柄。
この柄は1964年にデザイナーのマイヤ・イソラさんがデザインしたもので、マリメッコ社によって製品化されました。
マリメッコ社はアルミ・ラティアさんが1951年に創業した生地メーカー。
当初、創業者のラティアさんは自社の生地に花柄を入れることを「花は自然の中にあってこと美しいのであって装飾的なモチーフに使っても、その魅力は出せない。それではかえって会社のイメージを落としかねない」という懸念があり、反対したそうです。
しかし、自分のデザインに自信のあったイソラさんは実際にデザイン画を見せて「一口に花柄と言ったって、子供っぽいもの。女性的なもの。色々とあります。私のこのデザインは、今までこの世の中になかったものです」と食い下がり、最終的に首を縦に振らせます。
そうして、マリメッコ=ウニッコと言われるくらい世界的な成功を収めます。
ウニッコを通じて学べる点
- 花柄=少女や若い女性のためのデザインという先入観を大人のデザインに変える
- 花柄がギュっと詰まっていて余白がないパターン、白い余白を活かしたゆったりしたデザインなど、全く同じ柄のものが存在しないため、飽きが来ることがなく、コレクションしたいという願望に繋げることができる
- 家具や食器、洋服やアクセサリーなどジャンルにとらわれず様々な製品に合わせることができる
- 大きく差別化を図ったデザインは、一度世間に受け入れられると普遍性を生む可能性がある
(実際、マリメッコは成功して世界中で年齢や社会階層を問わずに愛され続けている)
今は年齢や性別を問わず、花柄の服を着たり、花柄の小物類を身につけたりしていますが、当時は当たり前ではなかったんですね。そんな時代の中、自分のデザインに自信を持って説得したデザイナーはもちろん、既成概念にとらわれずOKを出した社長の姿勢も見習うべき点…!
ケリー&バーキン(フランス)
世界的ファッションブランドエルメスを代表する鞄『ケリー&バーキン』。
馬具を製造していたエルメス社は1935年よりサドルバッグを婦人用にアレンジした「サック・ア・クロア」というケリーバッグの原型モデルを製造します。
ある日、モナコ公妃のグレース・ケリー氏がパパラッチに妊婦を悟られないためにお腹を隠す際、このバッグを使用したことをきっかけとなり、商品名がケリーに変わりました。
また、バーキンは1983年に第5代社長のジャン=ルイ・デュマ氏が航空機の機内でイギリス出身の女優であり歌手のジェーン・バーキンさんとたまたま隣合わせになり、「私が貴女に理想のバッグをつくってあげましょう」と申し出たことで誕生したと言われてます。
品質はもちろん第一級ですが、この二つのモデルにより、商品の裏側にあるドラマとそれを体現したネーミングこそ何よりのブランディングとなることを物語っています。
ケリー&バーキンを通じて学べる点
- エルメス社は上場企業で厳しい目標を達成しているが、その主たる要員はデザインを変えないこと
(シーズン毎にコロコロとデザインを変更すればデザイン費や開発費が嵩んでしまう) - たっぷりとした容量、底が平らで安定感があり丈夫なつくり、こだわりのサドルステッチ、と一生モノだからこそ、高いお金を払ってでも購入に至っている
- デザインは同じでも新しい素材や色を提案し、商品の新鮮味を維持することで、既に持っているお客様にもう一つ購入してもらえるチャンスにつなげる
- 在庫を極限まで減らし、顧客から予約を取ってから熟練の職人が手仕事で一点一点製作へ
エルメスに限らず、高級な商品を製造しているメーカーすべてに言えることですが、「お客様をお待たせする」ということに対してためらいません。希少性を維持することでブランドイメージを高めています。まさに一生モノの魅力。
バング&オルフセン(デンマーク)
何よりもデザインを重視した、シャープでモダンなブランド『バング&オルフセン』のオーディオ機器。
スイッチ類は必要最小限に絞られ、機器に溶け込むようにデザインされており、スピーカーは独占使用権を取得しているサウンド分散技術などを駆使して、どこまでも透明で自然な音色を再現しています。
1925年の創業以来、18もの製品がMoMA(ニューヨーク近代美術館)の永久展示品となっています。
さらにアストンマーチン、AMG、アウディ、BMWなどスタイリッシュな高級ブランドにオーディオを供給していることも、ブランド価値の向上に一役買っています。
バング&オルフセンを通じて学べる点
- 最先端のデザインを生み出すため、社内デザイナーは使わず常に外部のデザイナーに依頼
- デザイナーと経営の橋渡しをするハブの役割を担ってくれる人材が重要
(日本企業においてはこのような存在があまり認知されていない) - デザインやスピーカーなどの機能面、いかなる部分にも手を抜かない徹底した姿勢
常に最先端・斬新なデザインを求めるべく社内デザイナーを使わない。この攻めの姿勢が人気の秘訣なんでしょうね。数字と感性どちらかではなく、その両方を見れる人こそ重要…!
バンドエイド(アメリカ)
1920年、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンに勤めていた28歳のアール・E・ディクソンは、妻が料理をするたびに怪我をすることに心を痛めていたそうです。
一緒にいる時は傷の手当てをしますが、常に一緒にいれるわけではありません。「何とか彼女が一人でも簡単に絆創膏を貼れるようにできないだろうか」と考え、医療テープの中央だけガーゼをつけ、片手でも簡単に手当てができるようにしました。『バンドエイド』誕生の瞬間です。
1921年には製品化して、販売にこぎつけました。初年度の売上はたったの3000ドル。その後、改良を重ねて100万個単位で売れるようになりました。
類似品が氾濫する中、発売以来100年近く経っても他製品を寄せ付けないほどの揺るぎない地位を保ち続けています。
バンドエイドを通じて学べる点
- 「社員を大切にする」というジョンソン・エンド・ジョンソンの哲学と合致した商品誕生のストーリー
- 類似の商品であっても「バンドエイド」と呼ばれるくらいブランドが浸透している
- 何気ない課題を解決するアイデアは日常から生まれる
アイデアの力と商品誕生に至ったステキなストーリー…!あなたが今抱えている問題も、何気ないところで解決できるのかもしれません。
企業の成長にはデザインが不可欠
以上、今回は4つの商品・ブランドについて自分なりにまとめた学べる点と併せてご紹介させていただきました。
昔は消費できるモノの量を豊かさだと言われていましたが、今はモノがいっぱいで消費自体に喜びを見出しづらい時代になりました。
また、最近ではできるだけモノを買わない・消費しないという生き方がトレンドになっています。
そんな状況なので、個性があるのに飽きがこなくて長く使える、そういったデザインが消費者の心を掴むだろう著者は言います。
長く同じ製品を売り続けるには、いつ見ても飽きない・魅了されるデザインが不可欠。そして消費者の心を掴む前にまず社員の心を掴むこと。
この本では今回ご紹介した以外にも他にもiPhoneやウォークマン、コカ・コーラやポッキーなど、全47の商品・ブランドが紹介されています。デザインだけでなくそのブランドの経営方法なども書かれているため、なにかモノをつくる人・売る人・提供する人にとっては勉強になること間違いなし。気になった方はぜひ手に取ってみてください。
ではまた。
この記事を書いた人
- インナーカラーがやめられない。
座右の銘は日々成長。
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