影響力の武器|悪用される本能から身を守れ

ビジネス・マーケティング
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こんにちは。夫です。
今回解説するのはロバート・チャルディーニ氏の「影響力の武器」。

「影響力の武器」は大学生の頃、コピーライティングの勉強のために読んでどハマり。その後、何度も何度も読み直した本です。たぶん僕の人生で一番繰り返し読んだ本だと思います。かなりのロングセラーなのでご存知の方も多いと思います。

さて、この本。驚くほど実際的で、読んだ人のビジネス、人間関係を大きく変える力を持っています。なので最初に言っておきますが、本書のメソッドは悪用厳禁です。

著者、ロバート・チャルディーニ氏は大学の心理学研究者なのですが、本書を書くためにとんでもない実験をしました。
それは、ロバート・チャルディーニ氏本人がスパイとして、心理学を使いこなす組織の一因になるというもの。アンケート調査のように画一的な研究ではなく、実際に現場で消費者のために使われている心理学を研究したんです。
悪徳商法まがいの方法で顧客を誘導し財布を開かせる営業テクニックを、心理学の専門家であるロバート・チャルディーニ氏が新入社員として教えてもらったりするわけです。そして、なぜそのテクニックが有効なのか?多くの顧客が深く考えずに行動してしまうのか?を心理学的に明らかにしたのが「影響力の武器」です。

本書では詐欺師や宗教団体を調査して得られた「影響力の武器」も数多くあります。本書の内容をマスターすれば、人を騙す詐欺師になることもできるかもしれません。

でもロバート・チャルディーニ氏がこの本を書いたのは、営業スキルを磨くためでも、詐欺師として成功するためでもありません。
彼は、広告やマーケティング、営業、詐欺などの様々なテクニックから、消費者が不利益を被らないよう、つまり、影響力の武器に対する「盾」を与えるために本書を書いてくれたんです。

ということで、「影響力の武器」は武器として使うのではなく、「盾」として身を守るために使ってください。そういう意味で、本書は悪用厳禁。正しい精神を持たない人には読んで欲しくない一冊です。

あなたは欲しくもない商品を買ってしまったことはありませんか?
後で思い返してみれば、なんで買ってしまったんだろう。なんで契約してしまったんだろう…と思ったことはありませんか?
スーパーやコンビニで必要以上に買ってしまったり、思い切って買ってみたけれど思っていたものと違う、という経験はありませんか?
よくわからないけど何の利益にもならない約束をしたことはありませんか?

もしそういった経験があるなら、ぜひ本書を読んでみてください。この記事では、影響力の武器の中から僕が気になったポイントをピックアップして紹介していきます。

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Book Review 影響力の武器

僕は特に気に入った本をA4一枚にまとめたりします(最近していませんが…)。影響力の武器もA4にまとめたものがあるので、概要が知りたい方はこちらをご覧ください。

不自然な行動=影響力の武器がある

まず本書のタイトルである「影響力の武器」は、合理的ではない判断、行動を招いてしまうきっかけを表します。ロバート・チャルディーニ氏はこれを「カチッ・サー反応」と言っています。スイッチを押せばテープが再生されるように、あるきっかけが自動的にある結果を招いてしまう人間の原理。それが「影響力の武器」です。

本書では影響力の武器が発動した面白い事例がいくつか紹介されています。

例えば、観光地でジュエリー店を経営している女性の話。
彼女のお店で全く売れないトルコ石がありました。値段の割に良いものだったので、並べ方を変えたり、積極的に営業したり、いろいろしたのですが全然売れません。彼女はとうとうやけになって「トルコ石の値段を全部2分の1にしろ!」とメモ書きを残して出張に出かけてしまいました。

そして彼女が出張から帰ってくると、トルコ石は全部売れました。値段を半分にしたのだから当然ですね。

でも実は、店舗スタッフは「2分の1」というメモ書きを「2倍」と読み間違えて、全く売れないトルコ石を2倍の値段にしてしまったのです。

なぜでしょう?これは「値段が高いものは品質が良いものだ」という思い込みの影響力の武器です。

観光客はトルコ石の品質なんてわかりません。でもこんなに高価なものなんだから良いものに違いない!と買ってしまったんですね…

コピー機の順番を譲ってもらう時に、どう頼めば譲ってもらえるかを調べた心理学の実験でも、面白い影響力の武器が見つかりました。

コピー機の順番を待っている人に「すみません。先にコピーを取らせてもらえませんか?」と頼むと、60%の人が譲ってくれました。でも「すみません。先にコピーを取らせてもらえませんか?急いでいるので」と頼むと、94%もの人が譲ってくれたのです。

「急いでいるので」と理由を説明したからでしょうか?ここでさらにもう一歩踏み込んだ頼み方をしてみました。

「すみません。先にコピーを取らせてもらえませんか?コピーを取りたいので」と頼んでみました。

コピー機に並ぶ人は全員コピーを取りたいはずなので、理由になっていませんね。でもこの頼み方でも93%の人が順番を譲ってくれたのです。

つまり、順番を譲るかどうかの判断が、譲ってほしい理由ではなく、理由っぽい言葉。この場合は「〜なので」という言葉だけで判断されてしまったんです。

この2つの事例は明らかに合理的ではありません。
同じものなら値段が安い方がいいに決まっています。理由になっていない理由っぽい言葉だけで、多くの人が判断を変えるのも意味がわかりません。

でも、本書では実際にそうした現象の例が数多く紹介されていますし、自分の経験にも当てはまることがあると思います。

そうした要素を徹底的に調べ、筆者自身が体験し、その中から共通点を見つけ、「返報性」「コミットメントと一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」「手っ取り早い影響力」の7つの影響力の武器にまとめたのが本書です。

それでは、紹介されている影響力の武器から面白いものをピックアップしていきます。

返報性-ギブ・アンド・テイクの原則

最初に紹介する影響力の武器は「返報性」です。読んで字の如く、返して報いる性質のこと。

返報性のわかりやすい例として、ある大学教授が行った試みを紹介します。
彼は、クリスマスカードを全く知らない人に送ってどんな反応があるかを確かめてみました。クリスマスカードは親しい間柄で送り合うものです。知らない人から送られてきても、普通は無視するでしょう。
でも実際には驚くほど多くの返信がありました。クリスマスカードをもらった⇨送り返さないといけない、という非常に単純な反応です。誰から送られてきたかなど考慮されていません。

年賀状とか、正直誰だか覚えてないけど、来たからこっちも送る、という人は多いんじゃないでしょうか?

返報性をわかりやすく言うと「他人がこちらに何かしらの恩恵をくれたので、自分も似たような形でお返しをしなければならない」という性質です。何かをもらったらお返しをせずにはいられない、そのままにしておくと気持ち悪いという強い感情です。

返報性は人類の生存、文明の発展に非常に大きな役割を果たしてきました。社会は価値の交換で成り立っていますよね。価値が交換されることで、狩りのできない女性も肉を食べることができ、木の実の調理法のわからない男性も木の実を食べることができます。
もし返報性を無視する人が集団の中にいたら、その人は集団から省かれたでしょう。

つまり、返報性は人類の遺伝子にまで組み込まれた性質なのです。

マーケティングの世界では返報性は常識です。企業がなんで無料プレゼントをしてくれるのか?プレゼントを受け取った以上、契約、購入という形でお返ししないといけない、という性質があることを知っているからです。

返報性はいろいろな場面で活用されています。例えば、寄付をお願いする手紙を出す時。
普通に手紙を出すとだいたい18%くらいの人が寄付に応じてくれるそうです。でも、その手紙にちょっとしたプレゼントをつけると、寄付に応じてくれる人がおよそ倍に増えるんです。
プレゼントはシールとかメッセージカードとか、寄付の金額からしたらごくわずかなものです。つまり、返報性は「何をもらったか?」ではなく、単に「何かをもらった」に対して働いているんです。

100円分のものをもらったから100円分のお返しをしようとはならないのが返報性の重要なポイントですね。情けは人のためならずという言葉がありますが、人にかけた情けは回り回ってもっと大きくなって返ってくるということを昔の人は感覚的に知っていたんでしょう。

150円のコーラが2000円のチケットに化ける

マーケティングの世界では有名な実験があります。
この実験では、美術鑑賞という名目で人を集めるのですが、そのうち一人は実験の協力者です。この実験では、実験の協力者が販売しているチケットを参加者に買ってもらうために、美術鑑賞中にどんなコミュニケーションを取ればいいかを確かめるものでした。

つまり、見ず知らずの2人が美術館で出会い、美術館を出た後でお願いを聞いてもらうために、どう振る舞えば良いのかを調べるということです。

実験の協力者で鑑賞後にチケットを売るのが「Aさん」、実験の参加者を「Bさん」とします。

美術鑑賞の途中に少しの休憩時間が設けられます。その休憩時間の間にAさんは席を外します。

あるパターンでは、Aさんはただ席を外し、数分後に戻ってきました。
別のパターンではAさんは席を外した後「スタッフにジュースを買ってきてもいいか聞いたらOKって言われたから、君の分も買ってきたよ」とコカコーラをプレゼントしました。

つまり、美術鑑賞中にAさんがBさんに小さな親切をするか、しないか、という条件ですね。この後、Aさんがチケットを売る時、Bさんの反応にどんな違いが出たでしょうか?

結果はもちろん、コカコーラを買ってくるという小さな親切をした方が2倍もチケットを買ってくれました。

親切にされたからお返しをしようというBさんの気持ちはわかりますね。
でも問題は、Bさんがお返しに買ったチケットは、Aさんがプレゼントしたコカコーラの何倍もの値段がするということです。

返報性の原理は本能的なものなので、値段や損得があまり考慮されないんです。

150円のコカコーラをプレゼントするだけで、2000円のチケットが売れるなら、企業がマーケティングでプレゼントを多用するのも納得ですね…

拒否したら譲歩テクニック

ちなみにこの実験には続きがあって、Bさんにチケットの購入を断わられた後、「じゃあこっちのチケットを買ってくれない?」と少し安いチケットを提案すると、そちらを買ってくれる確率が跳ね上がったそうです。
最初から安いチケットを提案した場合よりも、かなり高い確率で買ってくれたそうです。

影響力の武器ではこの効果を返報性の応用「拒否したら譲歩テクニック」としていろんな事例を説明してくれています。営業やマーケティングでもよく使われますね。ページを離脱しようとしたら「こんな商品もありますよ」と提案されるのも、その一環です。

この効果を仕事で使うなら、会議の場では決裁者の企画に賛同する発言を多く行い(小さな親切)、自分のプレゼント時には本当に通したい企画とは別の企画、それも通りにくいタイプの企画を用意して、断られた後で本命の企画を提案する、といったパターンが考えられそうですね。

返報性を悪用する敵から身を守る

返報性の原理は本能に根ざしています。なので、何かをもらったのにお返しをしないと気持ちが悪いし、一切何もお返しをしないという態度では社会でやっていけません。

著者のロバート・チャルディーニ氏によると、人は何かお返しをした時に、強い満足感を感じてしまうそうです。つまり、欲しくもないものをもらっておいて、割に合わないお返しをして、それでもなんだか気持ちが良くなってしまうんです。
でもそれは社会の中で助け合って生きてきた人間の大切な性質です。

情けは人のためならずという言葉の通り、人に親切にすることでより大きな親切を受け取ることもできます。だから僕たちは支えあうことができるんです。

ただし、それをマーケティング戦略として活用されているなら、身を守らないといけません。
車の無料点検やサービスの無料お試し、食品や化粧品の試供品を受け取るたびに高額な契約をしていたら破産してしまいます。

ロバート・チャルディーニ氏は「返報性の原理は好意に対して返すものであり、セールスの戦術のために返すものではない」と言います。

無料だからといって必要ないものまでもらって、企業のマーケティングに貢献する必要はありませんね。

コミットメントと一貫性-宣言の強制力

さあ次の影響力の武器は「コミットメントと一貫性」です。レオナルド・ダ・ヴィンチは「最後に断るよりも、最初から断る方が簡単だ」という言葉残したそうですが、確かに一度「やります!」と言ったことって、後から断り辛いですよね…

コミットメントとは「特定の立場をとる、明確にする」ということです。

目標達成の本を読むと、コミットメントの重要性を書いてあることがあります。人は特定の立場を明確にすると、その立場を守ろうとする、つまりコミットメントに対して一貫性を持とうとする性質があるんです。

禁煙する時は最初のステップとして「禁煙します!」と周りに宣言しろとか、資格学習では「この資格をとって給料を上げます!」と宣言しろとか、よく言いますよね。

カナダの心理学者が、馬券を買う前と買った後で、当たる見込みをどう考えているかを調査しました。なんとなくイメージできると思いますが、多くの人は、買う前より買った後の方が「この馬券は当たる!」と強く考えていました。

これもコミットメントと一貫性の影響です。馬券を買うというコミットメントをした以上、当たると考えないと一貫性がないですよね。これは株などでも同じだと思います。自分が買った株「たぶん下がると思うんだよなー」って言う人、ほとんど見たことがありません笑

約束を守らないやつは生き残れない

コミットメントと一貫性も返報性と同じく、人間の本能に根ざした性質です。

本能に根ざした性質というのは、その性質を持っている人の方が生き残る確率が高かった、子孫を残せる確率が高かったということ。

コミットメントは言い換えると約束で、約束を守る人の方が人間社会の中で生き残る可能性が高く、子孫を残せる確率が高いのは納得ですよね。

例えば「村の長に従います!」と言って従わない人、「この集団の宗教を信じます!」と言って全然違う価値観で行動する人、「明日みんなで狩りにでかけよう!」と言ってサボる人。そういう人は子孫を残さなかった。つまり僕たちは、コミットメントに一貫性を持った人の子孫なんです。

強制的な2個目のクリスマスプレゼント

コミットメントと一貫性も企業は巧みに使ってきます。

アメリカのおもちゃメーカーに面白い事例がありました。
おもちゃメーカーはクリスマス前に売上が急激に伸びるのですが、クリスマス後の数ヶ月間は売上が激減します。

メーカーとしてはなんとかこの期間も売上を維持しないといけないのですが、あなたならどうしますか?親たちは子どもにクリスマスプレゼントを買ったばかりなので、ちょっとねだられたくらいじゃ財布を開いてくれません。

おもちゃメーカーはコミットメントと一貫性の力を使うことにしました。

まず、例年通り、クリスマス前に魅力的なおもちゃを宣伝します。
多くの子どもたちが「お父さん!今年のクリスマスはあれが欲しい!」というような魅力的なおもちゃです。
せっかくのクリスマスなので、多くのお父さんは「わかった!クリスマスまで待つんだよ」などと言うでしょう。

さて、いよいよクリスマス前。お父さんは子どもとの約束を果たすため、お店に出かけます。

でもどこに行っても売り切れ。入荷に時間がかかり、クリスマスには間に合いません。

こんな時、お父さんはどうするでしょう?手に入らないのは仕方ないので「あのおもちゃはまた今度買ってあげるから、今年のクリスマスプレゼントは別のにしよう」などと言って宥めるでしょう。

そしてクリスマスが終わり、おもちゃメーカーの売上が激減する時期になりました。
そこでおもちゃメーカーはクリスマス前に宣伝していて、わざと品薄にしていたおもちゃを再び宣伝し、今度は在庫もたっぷり用意します。

それを見た子どもに「買ってくれるって約束したじゃない!」と言われたら…お父さんが子どもとの約束を破るわけにはいきません。クリスマスが終わったばかりなのにまたプレゼントを買ってあげるハメになります…結果、おもちゃメーカーはクリスマスも、クリスマス後も売上を維持することができます…

もうお分かりの通り、おもちゃメーカーの戦略は、

  1. 手に入らないおもちゃを宣伝して、親にコミットメントさせる
  2. でもそれが手に入らないよう品薄にして、別の商品を買わせる
  3. 売上が落ちる頃、その商品をまた宣伝し親に約束を守らせる

というもの。

この事例を見ると、最近ゲームが品薄なのも、単なる半導体不足が原因じゃないんじゃ…と深読みしてしまいますね…

セールスで使われるフット・イン・ザ・ドア・テクニック

コミットメントと一貫性を使ったマーケティングには他にも「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」や「イエスセット」と呼ばれるものがあります。
どちらも、まずは小さなコミットメントを得ることから始まります。「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」では無料の試供品や安いお買い得品などを買ってもらうことで、「イエスセット」では「この商品は役立つと思いますか?」などイエスと答えてもらいそうな質問でイエスと答えてもらうことで、コミットメントを得ます。

無料の試供品を買った、この商品は役立つと回答した、たったこれだけのことですが、その商品について前向きに考えているというコミットメントになります。

「だったらこの商品も必要だと思いませんか?」と本命の商品を売り込まれた時に、「いや、それはいりません」と答えると、それまでの自分の行動や言動と矛盾してしまうので、一貫性を保つために購入してしまうんですね…ううう、思い当たる節が…

もう一つ面白いセールス、マーケティングのテクニックを紹介します。
承諾先取り法(ローボール・テクニック)」と呼ばれるものです。

車を買いに行くと、ある販売店が競合店より数万円安い値段で販売しているのを見つけます。
これはラッキーと思って、店に入り、試乗させてもらい、ローンの条件などを確認し…と前向きに検討している時に、担当者が「すみません!〇〇の値段をつけ忘れていました…」と言い出します。

その値段を加えると、競合店と同じ値段になってしまうのですが、ここまで話を進めてから断るのも億劫なので、そのまま購入してしまう…

これが「承諾先取り法(ローボール・テクニック)」と呼ばれるもので、まず承諾を得る(コミットメント)ことで、後から多少条件が変わっても断れなくする(一貫性)ものです。

確かに、一度「買います!」と言ったものを断るのは難しいですね…

承認先取り方は日常生活でも役立ちますし、実感したことがあると思います。

例えば、「明日朝7時から手伝ってくれない?」と言うより、「明日の朝って空いてる?」と聞いて「空いてるよ」という返答をもらった上で「朝7時から手伝ってほしいんだけど」と言った方が手伝ってもらえる確率が高そうですよね。
これは「朝は空いていると言った」ことがコミットメントとなっています。

コミットメントの悪用から身を守る

いろいろな例を紹介しましたが、コミットメントと一貫性の力は、いろんなところで実感したことがあると思います。

僕も経験ありますね…楽器屋に行ってギターを試奏させてもらって、店員さんと「これめっちゃいいですね!」とか気さくに話していたら、もともと買うつもりなかったのに買っちゃってたという…まあ後悔ばかりではなく、その時買っておいてよかったなという経験もたくさんありますが…

コミットメントと一貫性はそもそも約束をしたら守るという、ものすごく重要な、社会生活で欠かせない性質です。
だからこそ、悪用された時、マーケティングやセールスに使われた時、僕たちは抗うことができないんです。

コミットメントと一貫性の悪用から身を守るには、本物のコミットメントだったかどうかを意識することが重要です。

「この商品いいですね!」という言葉は「この商品買います!」のコミットメントではないはずです。
ある条件で「契約します」と言った後、条件が変わったのなら、その前の「契約します」という言葉は新しい条件へのコミットメントにはならないはずです。

厄介なのは、コミットメントしていないはずなのに、自分で「いいと言ったのだから買うべきだ」「契約すると言ったのだから条件が変わっても契約すべきだ」とコミットメントを作り出してしまうことです。

コミットメントと一貫性を利用してポジティブな影響を与えることもできます。目標達成のために、目標を宣言するというのも一つですね。コミットメントを明確にすれば、一貫性を保つため自然と目標達成のために行動するようになります。

賢いマーケターより賢い消費者になれ

ということで今回は、ロバート・チャルディーニ氏の「影響力の武器」を紹介しました。

何度も読んだ本ですが、久しぶりに読むとやっぱり刺激的。もっとざっくり紹介しようと思っていたのに、1つ1つが長くなりすぎたので、最初の2つで一旦切ることにしました。気が向けば残りも紹介します。

僕はマーケティング関係の仕事をしているので、影響力の武器は仕事で成果を出すスキルを身につけるために読みました。
が、最初に言った通り、この本は賢いマーケターになるための本ではありません。賢い消費者として、こうした心理技術を悪用するマーケターから身を守るための本です。

こうして書くとマーケターが悪いやつみたいですが、僕はマーケターとして、ルールや常識の範囲内で、より良い商品をより多くの顧客に届けるためにこうした心理技術を使うことは、問題ないと思っています。

今回は本書で紹介されている7つの影響力の武器から最初の2つを紹介しました。

「なんでこれを買ってしまったんだろう?」「なんで申し込んでしまったんだろう?」「なんで契約してしまったんだろう?」

今回紹介した「返報性」「コミットメントと一貫性」の2つだけでも、その答えが見つかるのではないでしょうか?

続きが気になったらぜひ本書を読んでみてください。
ロングセラーなので中古もいっぱいありますし、賢い消費者であるために、家族や友人をさまざまな不利益(影響力の武器を最も理解して悪用しているのが詐欺師です)から守るために、一家に一冊置いておくべき名著です。

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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