こんにちは。妻です。
突然ですがみなさん、こちらのTwitterアカウントはご存知でしょうか?
テプラやキングファイルで知られる文具メーカー:株式会社キングジムの公式アカウントです。
今日はこのアカウントを運営しているキングジム公式ツイッター担当者が書かれた本『寄り添うツイッター わたしがキングジムで10年運営してわかった「つながる作法」』を紹介します。
ツイッターをはじめとしたSNSは、今やわたしたちの生活に当たり前となっていますよね〜
そもそも、SNSとは、Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)の略で、インターネット上で人と人とのつながりを促進・サポートするコミュニティ型の会員制サービスのことを言います。
今起きていることをすぐにキャッチできるTwitterや日記を書いたり同じ趣味のコミュニティに参加できるmixi、メールや電話の代替として多くの人が利用しているLINE、写真を見たり投稿することに特化したInstagramなどがSNSに該当します。
SNSは元々、友だちや知人の近況を同じ趣味を持つネット友だちとつながる手段として利用されていましたが、今は情報収集や商品やサービスを購入する際に利用されるケースが増えています。そのため、現在多くの企業が商品やブランドについて情報発信を行うためにSNSを活用しています。
本書では、2010年から2020年まで10年間続けてきたキングジム公式ツイッターをどうやって運用し続けてきたのかを教えてくれます。
本記事では、著者がツイッター運用に至った経緯から、実際に行っていることのほんの一部分を見ていきます。一つの物語を読んでいるような感覚になる読みやすい本なので、少しでも気になった方はぜひ手に取ってみることをオススメします…!
ツイッター運用に至るまで
2010年2月某日。著者と著者の上司2人は突然、社長から「すぐ来てほしい」と呼び出しを受けます。
社長室にはいつもと変わらずおだやかな表情の社長がいました。怒られるような話ではなさそうと少しホッとした瞬間、こう投げかけられます。
「ツイッターって知ってる?」
2010年当時、ツイッターは今ほどポピュラーなツールではありませんでした。著者は存在は知っているが使ってはいないというくらいの認識だったため、正直に「ツイッターという言葉は知ってます」と答えました。
社長は新しいモノ好きでツイッターをプライベートで始めていたらしく、そこであるものを発見したと話し始めます。
「ツイッターを見ていると、『ポメラ(電源ONですぐに起動し、文章を書くことに特化したデジタルメモ)』にハッシュタグがついていて(#pomera)、実に活発に意見が交わされているんだよ」
<中略>
「会社として積極的に発信をするべきだと思ってね。一週間後に『ポメラ』の新商品発表会があるから、それまでにキングジムの公式アカウント、立ち上げてよ」
著者はこの時、「ヤバイ仕事が来た……」と困惑。そんな著者を気にもせず、社長は話し続けます。
「ハッシュタグとか、リツイートとかリプライとか、聞きなれない言葉がいっぱい出てくると思うけど……ま、とりあえずやってみてよ!(軽めのテンション)」
「使い方がわからなかったら、社長室にいつでも訪ねて来てね!(非常に軽いテンション)」
社長室を後にした著者はデスクに戻った瞬間、ツイッターという語句を検索し、その日の仕事帰りには大型書店に行って参考になりそうな書籍を買い込み、徹夜で知識を詰め込んだそうです。
いきなりのお達しに対し、その日のうちに行動する著者の行動力…!まるでうちの夫みたいです。夫もいきなり採用を担当することになり、何をしたらいいんだと調べて本を買い込み、学んだことを記事にしました。
そして2010年2月10日、初ツイートを行います。
ここから、他の業務の合間を縫って運用をしていきますが、つぶやく内容は「新商品のお知らせ」など無難なものがほとんどで、なかなか要領を得ることができませんでした。
こちらにとっての「無難」は、見る側にとっての「退屈」です。
<中略>
無機質な印象と、一方通行の発信を、どうしたら変えられるのだろう……。
この変えるキッカケとなったのは、社長の個人アカウントだったそうです。
社長は「亀」が好きで、キングジムの社長であることを隠した個人アカウントで、自宅で飼っている亀の様子をつぶやいていました。そして、同じ亀好きのフォロワーと仲良く亀トークを繰り広げていました。
その様子を見た著者は、見知らぬ人同士の集まりとは思えない、居心地の良さや温かさを感じます。
コミュニケーションの入り口は「共感」なのだ、と気づきました。
<中略>
ツイッターというカジュアルなツールを通せば、硬いイメージをもたれている企業であっても、親しみやすさを出せる。そしてファンになってもらうことができる──。
この「共感」をヒントに、著者はトライアンドエラーを繰り返していきます。
「中の人」の役割
企業の公式ツイッターアカウント担当者。華やかな印象を持たれているそうですが、著者はものすごく地味だと言います。
内容を吟味したり、文面を推敲したり、事実関係に間違いがないか調べたり、ツイートもリプライもすべて自分の手元だけ、というチマチマしたひとりぼっちの作業が大半を占めます。
しかもプライベートで使っているわけではないため、「上司に見せてOKが出たらツイートする」などのルールも多くて大変そうなイメージ…
「内容は原則、君ひとりの裁量で」。これは開始時に社長が掲げた方針です。スピーディでライブ感あふれるやり取りこそ、ツイッターの生命線だから、と。
もちろん、最低限のルールはあります。宗教や政治など、人によって大きく価値観の違うトピックに関しては話題にしないこと。プロ野球やサッカーなども同様に、特定の団体を応援しないこと。これをやってしまうと、こちらが肩入れした団体以外を愛する人に、不快感を与えてしまうからです。
キングジムのツイッター運用は、大きな決まりや半年以内にフォロワー1000人達成といった数値目標もない状態で行われました。
しかし一つだけ、運用の目的だけはハッキリしていたそうです。その目的とはズバリ「キングジムを好きになってもらうこと」。
カジュアルなやり取りを通じて親しみを形成し、会社の知名度・高感度を上げていくことが、私の任務です。
公式アカウントは、生活者と会社をつなぐ「架け橋」。
橋渡し役として、私はなにができるのかを、常に考えるようになりました。
運用時に心がけていること
ここからは、生活者と会社をつなぐ「架け橋」として、著者はどんなつぶやきを行ったり心がけているかを見ていきたいと思います。
「ぱっと見10秒」でわかる工夫
著者は広報部に所属しており、普段は報道対応やイベント主催・プレスリリース作成・会社案内制作など多岐に渡った業務を行なっています。
ツイッター運用において、伝えるべき内容を明確に整理することに長けていた一方、プレスリリース作成などで使う「このたび新商品を発表いたします」といった硬い文章のクセが染みついていました。
そのため、ツイッター運営において以下のことを意識したと言います。
まず意識すべきは、漢字をできるだけ「開く」ことです。「漢字を開く」とは、漢字をひらがなにすることを指します。
ひらがなにするだけで情報が伝わりやすくなりますし、親しみやすさも出ます。
ひっきりなしにタイムライン上を流れるツイートは、「パッと見10秒」で伝わるものでなくてはなりません。
伝えるためのポイントとして、専門用語も要注意です。企業の内側にいるとつい、一般的な感覚を忘れてしまい、当たり前のように専門用語をつかってしまうことがあります。
初級レベルをクリアしたところで、さらに一工夫。
文字量を抑えることです。ツイッターは140字まで書けますが、私の中では原則100字を上限としました。
<中略>
一度にすべての情報をつめ込んで話を終わらせたら、それ以上の広がりをもたせることはできません。
文面にはあえて「遊び」を残しました。途中までは商品の説明なのに、後半では話がそれていく。そんな、とぼけた感じの100字にしたのです。
漢字を開く、専門用語を使わない、文字量を抑える、文面に遊びを残す。この4点の伝え方を意識することで、気づけば「堅苦しさ」はなくなっていったそうです。
小学生でもわかるように
著者は、フォロワーが増えていく中で世代の多様化に気づいた、と言います。
キングジム公式ツイッターは当初想定していた30〜40代のオフィスワーカーに加え、下は小・中学生、上は70〜80代と幅広い層のフォロワーがいました。
そこで、どの世代が見てもわかりやすい内容にしよう、と意識するようになりました。
シニア層が「なにを言っているの?」とならないよう、外来語はできるだけ使わないことを心がけています。
文面の内容は「小学生でもわかるように」を基本ルールとしました。
わかりやすい表現で、1回の情報量はコンパクトに。そうしておけば小学生に限らず、幅広い世代にも、パッと見てわかるツイートになります。タイムラインを絶えず流れていくツイートの中で読み飛ばされないようにするには、やはりシンプルさが肝心です。
硬さと柔らかさの比率
先ほどの「ぱっと見10秒でわかる工夫」や「小学生でもわかるように」を意識していくと、ゆるい印象が出がちですが、著者はツイート内容のバランスにも気を配っています。
感覚的ですが、試行錯誤の末にたどりついたベストな配分は、「硬め3:軟らかめ7」。
3割は企業・商品の情報伝達で、7割は日常の出来事・リプライへの対応やほかの企業アカウントとのやり取りなどです。
「軟らかめ」の中にもバランスがあります。
アスキーアートなどの作り込んだものや、ネタ要素の強いツイートばかり続くと読むのに疲れてしまうので、時々、本当にたあいのないつぶやきを入れます。「箸休め」のようなツイートを10件のうち2〜3件挟んで、緩急をつけるようにしています。
また「硬め」に関しても、情報に温かさを入れるようにしています。
たとえば商品の話なら、見る人がリアルに想像できるような切り口で語ります。私自身が試したときの使用感や「こんなところでも役立つ」といった意外な使用法など。
つぶやきのヒント
公式ツイッターの立ち上げ直後、著者が熱心に行なっていた習慣があるそうです。
ツイッターのトレンドや、ハッシュタグランキングのチェックです。
ホットなトピックに絡めたツイートを発して、「話題のツイート」の上位に上がることを目指していました。
当時はキングジムを知ってもらうことが第一目標でしたから、あらゆるテーマを通じて「目につく場所」に立とう、と考えていたのです。
現在も、毎日、朝昼夕の3回、トレンドワードをチェックしています。
しかしその目的は「世の中の動きを知っておくため」にシフトしていて、実際にツイートに結びつける頻度はずいぶん減りました。<中略>
トレンドワードの代わりに近年頼りにしているのは、街角で耳に入ってくるちょっとした会話や、周囲の人たちとの日々交わすやり取りです。
消費税増税の1ヶ月後に発信した上記のツイートは、多くの反響を呼びました。
また、多くの人が家庭内でしょっちゅう言ったり言われたりする、セリフに絡めた下記ツイート。
このような形で、街の人の会話やトレンドワードでつぶやきのヒントを得ているそうです。
クレームへの対処法
ツイッターでは、否定的なコメントや攻撃的なツイートがしばしば届きます。
対応方法は様々ですが、著者は「私自身への非難ではなく、キングジムに向けてのメッセージだ」と認識し、厳しい言葉を真正面から受け止めることで疲弊しないように気をつけている、と言います。
「閉鎖しろ。ツイッターなんかやらずに株価をなんとかしろ」という、株主からのツイート。
返答に窮しましたが……「努力します」と返信しました。
このケースは、私が直接対策を打てるわけではないにせよ、気持ちだけはお伝えしたほうがいいと考えました。
一度、株主から株主優待品へのご不満を告げられたことがあります。「こんな優待品は求めていません」という厳しいコメントでしたが、内容は担当部署に改善要望としてフィードバックしました。
商品への苦情に関しては、迅速な対応が求められます。
「ファイルのトップシールを剥がしたが、シール跡が残ってしまう」とご指摘を受けた際は、丁重にお詫びをし、交換をご希望の場合は窓口の「お客様相談室」へ案内します。
並行して、開発担当の部署にもこの件を報告。ほかにも、同じ不満を抱いている人がいる可能性があるからです。
ツイッター担当者はユーザーの意見を随時受け取れる場所にいる以上、現場へのフィードバックもまた、欠かせない仕事です。
自粛ムード時の対応
アカウント開設から1年あまり経ち、双方向のコミュニケーションスタイルにも慣れてきたころ、東日本大震災が発生しました。
全国に自粛ムードが広がり、各企業のアカウントも一斉に沈黙。著者も上司から運営を休止するように言われたそうです。
しかし、完全自粛には疑問を抱きました。日頃から活発にツイートしていたアカウントがぱったりと黙ってしまうのもどこか不自然だ、と感じたのです。
そこで、ツイッターを通じてご意見を聞いてみることにしました。被災地に住む人からは、「自粛される方がつらい」とのコメントが多数届きました。
テレビをつければ、CMもなく、ニュースばかりが流れる。津波の映像は、もう見たくない。日常を取り戻すためにもツイートは続けてほしい……。
上司と相談して、宣伝やPRは控えつつ、日常の対話だけは継続することに決めました。
当時、交わした対話は、本当に簡単なものです。
「ヒノキ花粉が本格化で鼻水と涙がとまりません」「秋葉原のラジオ会館が閉まってしまう」など、友人同士のおしゃべりのようなツイートが多数を占めていました。
そして、フォローしているアカウントのタイムラインを見ながら、震災から半年経ったころに通常の運営スタイルに戻していったそうです。
半年間、日常会話を重ねたことで、フォロワーとの距離が縮まったことに改めて気付かされました。
企業SNS担当に向いている人とは
ということで『寄り添うツイッター わたしがキングジムで10年運営してわかった「つながる作法」』より、一部分を紹介させていただきました。
キングジムのツイッターはユーザーとのコミュニケーションを目的として開設されました。
試行錯誤を繰り返し、近所の人のような親しみやすさを意識した数々の投稿で、今現在もフォロワーの数が増え続けています。
そして、ツイッターでいただいた意見を各担当に共有することでより良い商品の提供につながったり、ツイッター発信で商品が完売したりと売上の向上にもつながっています。
本書を読んで、会社に思い入れのあるすごく勉強熱心な人でないと運用は難しいように感じました…というかそもそも、企業SNS担当はどんな人が向いているんでしょうか…?
あくまで「キングジムのようなコミュニケーション型で運営をするなら」の話ですが、第一は「楽しめる人」です。
ツイッター運営は業務ではありますが、ビジネスライクでない見せ方も必要です。
「知識」は要らないのか、というと……やはり必要です。ただし、ここでいう「知識」とは、SNSやウェブに関するものではなく、会社に関する知識です。
<中略>
よって、自社の企業理念やブランディングの方針を理解できていることが不可欠です。
総合すると、「構えすぎず、楽しく、本気でできる人」ということです。
「遊び心」と「真面目さ」を兼ね備えている人が向いているということですね…!そしてSNS運用には明確な答えがないため、様々な方法を繰り返す「粘り強さ」も重要になりそう…
著者は本書についてツイッター運用を大成功させるハウツー本ではない、と言っています。しかし、SNS運営での課題を解決する「手がかり」の一つにはなるのではと思います。
SNSを運用している方も、そうでない方も、本書がなにかの参考になれば幸いです。
ではまた。
この記事を書いた人
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インナーカラーがやめられない。
座右の銘は日々成長。
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