そのひと言でチームが変わる最高のフィードバック

そのひと言でチームが変わる最高のフィードバック ビジネス・マーケティング
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こんにちは。夫です。

夫

僕は広告・マーケティング関係の仕事をしていて、チームではほとんど毎日、広告クリエイティブや企画のフィードバックをしています。フィードバックの精度を高めていきたいなーと考えていた時に出会ったのが本書「そのひと言でチームが変わる最高のフィードバック」です。

本書の冒頭で問いかけられる2つの文章を見てみましょう。

A.どうしてそんなこともわからないの?
B.どこがわからないのか教えてくれる?

どちらも筆者が実際に経験した、上司からのフィードバックです。当然ですが、Aのフィードバックは部下をダメにします。今後、この上司に相談したいとは思わなくなるでしょうし、心が折れてしまうかもしれません。
一方、Bは部下を成長させるフィードバックです。部下に考えさせ、改善する方法を見つけ出すことができる良いフィードバックです。

夫

普段、こんな言い方をしているつもりはありませんが、つもりはないだけで無意識にAのようなフィードバックをしているかもしれません。フィードバックの質は成長の源泉で、成果の質に直結します。本書ではエグゼクティブコーチとして経営者やビジネスパーソンの目標達成を支援する筆者が見つけた「最高のフィードバック」の方程式を教えてくれます。

國武大紀
株式会社Link Of Genetarion代表取締役。大学卒業後に現みずほ銀行に入行するも挫折を味わい1年半で退職。さまざまな職を転々とする中、国際協力機構に転職後、16年にわたり発展途上国の国際協力に従事し、40カ国以上を渡り歩き300件以上の組織開発やリーダー人材の育成に関わる。
その後ロンドン政治経済大学に留学し、組織心理学を学び、名古屋大学客員准教授などを経て現在はエグゼクティブコーチとして企業支援や人材育成等を行っている。

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一つのフィードバックで組織が変わる

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏など、超一流のビジネスパーソン。一人でなんでもできる超人のように感じますが、実は彼らもコーチを雇い、フィードバックを得ています。

夫

スペースX創業者、テスラCEOのイーロン・マスク氏も「フィードバックはビジネスの成功に不可欠であり、原動力である」と発言したことがあります。

その理由は、どんなに優秀でも自分のことは見えないから。人の顔は簡単に見えますが、自分の顔は鏡を使わないと見えませんよね。自分の背中を見ようと思うと、かなりの工夫が必要になります。
一流のビジネスパーソンほどそのことを知っているから、自分の見えていない部分を知り、自分をさらに高めるため第三者からのフィードバックを求めているのです。

本書ではフィードバックの目的を「相手をよく理解して、相手を成長させること」と定義しています。

フィードバックはダメ出しではありません。相手を評価することでもありません。フィードバックを通じて、相手に考える選択肢を与え、主体性をもって自ら答えに辿り着く。これがフィードバックの本質です。

フィードバックを機能させる5つの原則

夫

とはいえ、ただ「どうすればいいかわかりません…」と相談してきた部下に自分で考えさせるために「どうすれば良いと思う?」と返しても話が進みません。これから最高のフィードバックのポイントをいろいろ紹介していきますが、その前にフィードバックを機能させる5つの原則を押さえておきましょう。この5つがなければどんなテクニックも無効になってしまう、大切な土台です。

原則1:セキュアベースをつくる

安心安全な基地をセキュアベースといいます。心理学では、心理的安全性といったりすることもありますが、要するにフィードバックを受け止めるためには安心できる環境や関係性が必要だということです。
同じ言葉でも「この人は信頼できる!」「この人は胡散臭いな…」と印象が違えば受け入れ方も変わります。

セキュアベースをつくるうえで最も大切なことは「ラポール」です。ラポールとは心と心が通じ合っている信頼関係のことを指す心理用語で、人はラポールの度合いに応じたコミュニケーションしかできません。

夫

ラポールができている親友や家族と話す内容と、職場の違う部署の人などラポールができていない人とでは話す内容も使う言葉も違いますよね。ラポールについては以前、「RAPPORT(ラポール)最強の心理術」で紹介したので、ぜひご覧ください。心理テストが面白かったです。

RAPPORT(ラポール)最強の心理術〜信頼関係を築くコミュニケーションの原則
こんにちは。夫です。 夫 今日紹介するのは「RAPPORT(ラポール)最強の心理術」という本。心理学系の本を読むのは久しぶりです。大学生の頃、コピーライターの勉強をしていたときは心理学の本を片っ端から読んでいたんですけどね…妻が「心理学BE...
原則2:相手の可能性を信じる

筆者のコーチングの基本原則は「人間は生まれながらに創造的で欠けていることのない完全な存在である」です。この相手の可能性を信じるという行為がフィードバックにおいて非常に重要です。
営業担当は自社の商品が良いものだと信じていなければ、お客さんに売ることができないでしょう。上司も部下が成長できると信じていないと、良いフィードバックはできません。

原則3:プロセスを重視する

フィードバックでは結果よりもプロセスを重視します。なぜなら、結果を生み出すのはプロセスだからです。プロセスが悪くてもたまたま良い結果が出ることはあるでしょう。でも、プロセスが悪いので再現性がありません。一方、良いプロセスからは多くの場合、良い結果が出ます。プロセスを良くすることが再現性のある成果、つまり成長につながるんです。
そして何より、結果をコントロールすることはできませんが、プロセス(行動)は完全にコントロールすることができます。

夫

この間紹介した「リーダーの仮面」と真逆です…こちらは「プロセスではなく結果だけを見ろ」と言っていました。実は本書、「リーダーの仮面」と一緒に買ったのですが、面白いくらい言っていることが逆。両方読んで、自分が納得できる部分を取り入れていくのが良さそうです。

中間管理職は「リーダーの仮面」を被れ!元プレイヤーに必要な5つのマネジメント思考
こんにちは。夫です。 夫 僕はマーケティング関係の仕事をしているのですが、ありがたいことに部下や後輩をマネジメントする機会も増えてきましたし、今後、そうした仕事がどんどん増えてくるだろうなと思っています。とはいえ、僕がこれまで身に付けてきた...
原則4:アドバイスはしない

「フィードバック=アドバイス」のような印象がありますが、そうではありません。本書ではアドバイスが必要なこともあるので否定はしていませんが、本質的にはフィードバックではないと言います。
フィードバックの目的は「相手をよく理解して、相手を成長させること」でしたね。そのためには、相手が自ら考え、今後の改善や成長につなげるために主体的に行動することが重要です。

部下の話を聞いて「その考え方は間違っているよ。こう考えるべきだ」とアドバイスするのではなく、「なぜその考え方が正しいと思う?」とフィードバックするんです。
すると相手は「こうだから正しいと思います」などと自ら考えることができます。でも本当に間違っている考え方なら聞いていくうちに「あれ、確かにここで矛盾してしまうな…」などと自ら気づくことができるんです。

原則5:わかったと思ったら終わり

フィードバックする時、相手をわかったと思ったら終わりです。わかったと思った瞬間、フィードバックではなく、持論を展開するダメなアドバイスになってしまうからです。
相手には無限の可能性があり、どこまで成長できるかは誰にもわかりません。相手を理解しようとする姿勢は重要ですが、わかったと思ったら終わりです。

相手を成長させる3つの視点

本書ではフィードバックを通じて相手を成長させることを目的としていますが、その成長はたんなるスキルアップや仕事の成果だけではありません。相手の自己実現までサポートするのが最高のフィードバックです。

夫

会社は自己実現の場ではない、という意見もありますが、筆者は部下の自己実現をサポートすることで、能力やパフォーマンスが上がり、会社にとっても上司にとっても、部下にとっても良い結果を生むと言います。そして自己実現をサポートするフィードバックには3つの視点が必要だと言います。

価値観のフィードバック

1つ目はフィードバックを通じて部下の仕事に対する価値観を理解することです。価値観は人間の行動原理の中で最も重要な要素で、全ての出来事は価値観が土台になり、感情を生み、感情が行動につながり、行動が結果をもたらします。

画像:最高のフィードバック

画像:最高のフィードバック

例えば「自分は仕事ができない」という価値観を持っていたら、仕事を依頼された時に「そんなの無理」という感情になって、できない前提で行動してしまう。もちろん、良い結果は出ません。

価値観のフィードバックはシンプルで、仕事に対する思いや考え方を聞くだけです。「入社した時はどんな気持ちで仕事に取り組もうと思いましたか?」「入社した頃と今とでは仕事に対する意識は変わりましたか?」「仕事にやりがいを感じますか?」「どんな仕事が楽しいですか?」「仕事で大切にしていることはなんですか?」といった質問を投げかけます。
上司は答えを与える必要はありません。部下の返答に対し「例えばどんな時に?」「具体的には?」と深掘りしていくだけでOKです。

こうした聞き方をすると「オートクライン」が起こります。オートクラインとは、相手に質問されたことについて考え、答えを言語化することで、自ら新しい答えを発見することです。

画像:最高のフィードバック

画像:最高のフィードバック

夫

この図を見てわかる通り、コーチ(上司)は質問しているだけですね。あとは相手(部下)が自ら考え言語化する中で、自分で発見してくれます。

視野拡大のフィードバック

次は視野拡大のフィードバックです。仕事を自己実現や会社の貢献に繋げていくことが目的です。
仕事に対する価値観と仕事の内容がマッチした時、仕事をやる意義が生まれます。それをさらに広げて自己実現にまで繋げるには、自己実現と仕事内容、そして社会がどう関係していくのかに気づく必要があります。

例えば「あなたの仕事はどのようにお客様の役に立っていると思いますか?」「あなたの仕事はどれくらい社会を豊かにしていると思いますか?」「もしあなたがお客様だったら、あなたの仕事にどれくらい感謝しますか?」といった質問です。

夫

こうした質問について考えてみると、部下だけじゃなく自分も成長できそうですね。僕も自分の仕事が社会にとってどう役立っているのか、真剣に考えてみたいと思います。

軌道修正のフィードバック

3つ目は軌道修正のフィードバックです。これは理想と現実のギャップを解消していくことが目的です。
仕事に対する価値観が見え、社会にどう役立っていくのか、自己実現の道筋もぼんやり見えてきました。でも普段の仕事は自己実現に直結するものばかりではありませんし、壁にぶつかる機会もたくさんあります。

夫

確かに、真剣に自己実現を考えた時、普段の仕事がどの程度結びついているのかわからなくなります…自己実現のもっと手前、会社の発展や自分のスキル成長というレベルでも「本当にこの仕事に意味があるのか…?」と考えてしまう時がありますよね。

そんな時こそ軌道修正のフィードバックの出番です。「以前ほど仕事にやりがいを感じられていないなら、その理由はなんですか?」「どうすればやりがいを取り戻すことができると思いますか?」「この仕事に別の価値や可能性を見つけ出すとしたらどんなものがありますか?」「数年先を見据えた時、今の仕事はどんな価値をもたらしてくれますか?」などと問いかけましょう。

ここでも上司が「こう考えれば良いんだよ」とアドバイスすることは厳禁です。質問を通じて相手の「オートクライン」を起こしましょう。

部下の可動域を広げる「As If フレーム」

夫

価値観や自己実現などスケールが大きなフィードバックの話を紹介しました。フィードバックと一言で言ってもいろんな種類があるんだと学びになりましたが、普段の仕事でものすごく役立ちそうなフレームワークを見つけたので紹介します。それが「As If フレーム」です。

「その仕事はできません」
「私には無理です」

部下にそんなふうに言われたことがある上司は少なくないと思います。人はどこかで成長を望んでいる生き物ですが、その一方でコンフォートゾーン(快適領域)から抜け出したくない生き物でもあります。
つまり、自分の能力幅・可動域の範疇だけで仕事をしている方が、楽で気持ちがいいのです。

でも上司の仕事は部下を成長させることなので、新しいことにもチャレンジして限界を超えてもらう必要があります。ビジネスの世界は常に変化しているので、現状維持は衰退と同義。ある程度の成長スピードを維持してようやく現状維持ですから。

限界には「物理的な限界」と「思い込みの限界」の2つがあります。もちろん物理的な限界をフィードバックで超えさせることはできません。でも仕事で物理的な限界にぶつかることは滅多にありません。ほとんどが思い込みの限界で、これはフィードバックで乗り越えることができます。

そのためのフレームワークは「As If フレーム」と呼ばれるもので、「もし〜なら」という仮定をイメージさせるフィードバック方法です。

「自分にはそのスキルがないのでできません」と言われたら、「もしそのスキルがあれば、どのようにやりますか?」と聞いてみます。その答えを探るうちに「あれ、案外今の自分にもできるんじゃ…」と気づくことができます。

月10件の契約獲得が目標で「月10件なんて無理ですよ…」と言われたら、「もし2日で1件なら今何をしますか?」と目標を細分化することも効果的です。

夫

目標の細分化は大切ですよね。マーケティングでは数年単位の巨大な目標を立てますが、それを見ても達成できるビジョンが全然浮かびません笑。でも1ヶ月の目標にすると、いろんな手段が見えてくるんですよね。

部下に責任を取らせる勇気を持つ

上司の仕事は部下を成長させること。ですが、日々の業務レベルで言うと、部下に仕事を任せることになるでしょう。
でも部下に仕事を任せられない上司は多いです。自分がやった方が早い、失敗されたら自分の責任になる、任せられるレベルじゃない、、、いろいろな理由がありますが、ひと言でいえば「部下を信じていない」ということです。

なので上司は部下に仕事を任せる前に、信じる勇気を持たないといけません。大切なことは信じて手放すこと。手放すのは「期待」です。現実問題、部下の仕事が期待値に届かないことは当たり前。成長する過程なので仕方ありません。
勇気をもって任せるけれど、期待しない。期待しない代わりに、フィードバックを通じて応援することが大切です。

夫

これは難しいですよね。僕もつい、自分でやった方がいいや…と考えてしまいます。本書では任せられる部下を育てる3つのポイントを教えてくれています。

ポイント1:上司は答えを与えない

1から10まで教え込むようなマネジメントは、部下に自信を失わせ、成長の機会を奪うだけです。上司はもし答えを知っていたとしても、その答えを与えるのではなく「どうすればいいと思う?」と部下に考えさせることが大切です。

ポイント2:部下に完璧を求めない

完璧主義は成長の最大の敵です。完璧を目指すとスピードが落ちますし、ストレスがかかります。そもそも完璧な仕事なんてものはほとんどの場合存在しません。成長のために新しいことにチャレンジする部下の仕事ならなおさらです。
仕事を任せる時は5〜7割でOKとして、フィードバックを通じて軌道修正していくほうが効果的です。

ポイント3:成果のイメージを共有する

仕事を任せる時は、最終的な成果のイメージを最初の段階で共有しておきましょう。プロジェクトの進行を任せるなら、プロジェクトの完成形や成果目標などです。
最終的な成果が見えていたら、逆算思考でプロセスを考えることができます。チェックポイントも明確になり、フィードバックもやりやすくなります。

3つの傾聴レベルを知る

夫

本書では各章の間にコラムがあります。その中で、これは押さえておきたい!という部分があったので取り上げることにしました。それが上司なら知っておきたい「3つの傾聴レベル」です。

フィードバックは答えを与えるのではなく、質問を通じて部下に考えさせ、部下が自ら答えを見つけ出すものです。上司は部下の返答を聞いて、適切な質問を繰り返すことで答えに辿り着けるようサポートする必要があります。
そのために欠かせないのが「聞く力」です。

夫

信頼できる上司の特徴アンケートでは、常に「聞く力が高い」が上位に挙げられるそうです。そして職場コミュニケーションの課題の多くは、上司に聞く力がないことが要因であることが多いそう。聞く力を高めるためにも、本書で紹介されている3つの傾聴レベルを学んでおきましょう。

レベル1:内的傾聴

まずはレベル1、内的傾聴です。これは相手の話を聞いているものの、話の内容が自分にとって何を意味するかに意識が向いている状態の聞き方です。つまりフォーカスが相手の話ではなく、自分の考えや意見、判断に向いているということ。普段ほとんどの人は内的傾聴で人の話を聞いています。

夫

何かの本で「人の話を聞いてい時、話を聞いているのではなく、次に自分が話すことを考えている」みたいな言葉があった気がします。これは典型的な内的傾聴ですね。

当然、内的傾聴は自分本位なので、効果的なフィードバックは生まれません。

レベル2:集中的傾聴

次のレベルは集中的傾聴です。言葉通り、相手に意識を集中して、話の内容だけでなく、顔の表情、声のトーン、体の動きなど非言語のメッセージにも意識を向けます。このレベルで大切なことは、相手の話を自分の考えで評価・判断しないことです。相手の話を聞きながら自分勝手に解釈すれば、それはどんなに集中していても内的傾聴になるからです。

このレベルの聞き方では、自分から意見やアドバイスをすることはありません。フォーカスが相手に当たっているので、相手の考えを引き出そうとします。まさにフィードバックに必要な傾聴法です。

レベル3:全方位的傾聴

最後のレベル3は全方位的傾聴で、プロコーチも使っている最高レベルの傾聴法です。相手だけでなくその場の空間にまで意識を広げ、360度全方位を体全身で聞くイメージです。
これはトップレベルのコーチでも身につけるのが難しいので簡単に教えられるものではないそうですが、全方位的傾聴で聞かれた相手は全身を包み込まれるような感覚になったりお互いの心が完全に通じ合ったような感覚になったりするそうです。

夫

筆者のコーチングでは全方位的傾聴を体感することができるのですが、中には感動して涙を流される方もいるそうです。伝説的な経営者と直接話された方の「話した瞬間、全てがわかった」みたいなエピソードがありますが、伝説的な経営者ともなれば自然に全方位的傾聴を使いこなしていたのかもしれません。

最高の環境を作り出すニューロロジカルレベル

「朱に交われば赤くなる」という諺があるように、人は周囲の環境に左右されます。

夫

以前、「マンガーの投資術」で紹介しましたが、「最も親しい5人の平均があなた自身である」なんて言葉もあるくらい、人は環境に影響されます。つまりいい環境を作ることも上司の大切な仕事だということですね。

バフェットの右腕&左脳の名言集「マンガーの投資術」
こんにちは。夫です。 夫 この記事は2022年1月末に書いているのですが…いやあ、米国株式市場はどんどん下落していますね。これまで投資・資産形成の記事を夫婦揃ってたくさん紹介してきましたが、当然僕たちも資産の大部分を投資に充てています。なの...

とはいえ、上司の一存で職場環境を変えることはできません。GoogleやAppleのようなシリコンバレー式オフィスを取り入れたいと思っても難しいでしょう。
でもフィードバックを通じて環境を変えずに、新しい環境を作り出すことはできるんです。

それがNLP(神経言語プログラミング)が提唱する人間の学習行動モデルの一つ「ニューロロジカルレベル」です。

この図の通り、ピラミッドの頂点には「アイデンティティ」があり、そこから「価値観・信念→能力・戦略→行動→環境」と下層に広がっていきます。
ニューロロジカルレベルでは、上層を変えることで、下層に影響を与えることができると考えますが、つまりアイデンティティを変えることで、環境に影響を与え、新しい環境を作り出すことができるのです。

頂点のアイデンティティとは自己認識のことで「私は〇〇である」というものです。この「私が〇〇である」の違いによって、同じ環境でも全く違う認識になるのです。

例えば自分が「営業成績がパッとしない営業マン」という扱いを受けているとします。これも一つの環境です。
もし「俺はできない営業マンだ」というアイデンティティを持っていれば、「俺はできない営業マンだ(自己認識)→営業成績が低くて当然(価値観)→営業能力なんてない(能力)→営業活動は惰性でやる(行動)→できない営業マンという認識が強くなる(環境)」となります。

一方、「俺はできる営業マンだ」というアイデンティティを持っていれば、全く逆の価値観、能力、行動、そして環境を作り出すことができるはずです。

つまり、環境はそこにあるものではなく、自分のアイデンティティの結果として生まれるものなんです。だから最高のフィードバックで、最高のアイデンティティに変化させることができたら、最高の環境を作り出すことができます。

とはいえ、上司が部下のアイデンティティを好き勝手に作り出すことはできません。でも、最高のビジョンなら見せることができるはずです。
例えば、本書で紹介されているのは次のような感じです。

1年後には、現部署で過去最高の累計売上1億円を達成し、周囲から盛大に祝福されている。また、営業部のリーダーとして大活躍し、多くの後輩から尊敬されている。
最高のフィードバック

こうしたビジョンを伝え、共有できたらどうでしょうか?「俺はできない営業マンだ」というアイデンティティが「俺はできる営業マンだ!」に変わっていく可能性があります。

ポイントはフィードバックを通じて一緒にビジョンを作ることです。「As If フレーム」を使い「もしも最高の営業マンだったらどんな成果が得られると思う?」「もし何の制限もなく最高の成果を得たらどうなると思う?」などの質問を通じ、一緒にビジョンを作ります。
そして「そのビジョンにふさわしいアイデンティティはどんなのだろう?」と最高のアイデンティティを自ら考えてもらいましょう。

チームが変わるマネージャーの習慣

ということで今回は「そのひと言でチームが変わる最高のフィードバック」を紹介しました。

夫

僕も最近、部下や後輩が増えてきて、マネジメントする機会が増えてきたので、何冊かマネジメント系の本を読んでいます。前回紹介した「リーダーの仮面」では、部下の相談に乗るなとか、プロセスは評価せず結果だけ見ろとか、なかなか厳しいことが書かれていましたが、本書はもうちょっと優しい笑。個人的にはこっちのマネジメントの方が好みです。

中間管理職は「リーダーの仮面」を被れ!元プレイヤーに必要な5つのマネジメント思考
こんにちは。夫です。 夫 僕はマーケティング関係の仕事をしているのですが、ありがたいことに部下や後輩をマネジメントする機会も増えてきましたし、今後、そうした仕事がどんどん増えてくるだろうなと思っています。とはいえ、僕がこれまで身に付けてきた...

とはいえ、1、2冊読んだ程度でマネジメントという仕事が理解できるわけではありません。これからもいろんな本を読んで、自分の経験に活かしながらマネジメントを身に付けていきたいと思います。

夫

本は納得できない部分が多い方が読む価値があると思っています。それだけ自分が知らなかった価値観と出会えているわけですから。その点で、何度も読み返したいのは「リーダーの仮面」の方かもしれませんね。

最後に本書で紹介されている「最高のマネージャーになるための8つの習慣」と「質問スキルの基本」を見ておきましょう。
「最高のマネージャーになるための8つの習慣」はGoogleが人事効果、フィードバック調査などマネージャーに関する1万件ものデータを集め、マネージャーとのインタビューを実施し、1年かけて社内調査した結果明らかになったものです。

最高のマネージャーになるための8つの習慣

習慣1:よいコーチであれ
習慣2:部下に権限を移譲せよ。マイクロマネジメントはするな。
習慣3:部下の成功と幸せに関心を持て。
習慣4:くよくよするな。生産的で成果志向であれ。
習慣5:よいコミュニケーターであれ。そしてチームの声を聞け。
習慣6:部下のキャリアをサポートせよ。
習慣7:明確なチームのビジョンと戦略を持て。
習慣8:チームにアドバイスができるように技術的なスキルを磨け。
夫

この8つは重要な順に並んでいます。8つ目にアドバイスできるように技術的なスキルを磨け、というのがあるのがいいですね。基本的にマネージャーは部下にアドバイスしてはいけません。でも本当に困った時、アドバイスすべき時にしっかりアドバイスできるよう、スキルを磨いておくことも大切です。

フィードバックは質問することで相手に考えさせ、答えを見つけてもらうもの。なので大切なのは質問スキルです。最後に、筆者が教えてくれる「質問スキルの基本」を押さえておきましょう。

基本1:質問はフォーカスを変える…失敗した時「この失敗から何が学べる?」と質問すれば、相手の意識は失敗から改善にフォーカスが変わります。アインシュタインの有名な言葉に「死にそうになった時、助かる方法を考える時間が1時間あるなら、最初の55分は適切な質問を探すのに費やす」とあるように、適切な答えを導くためには適切な質問が欠かせません。

基本2:質問は質問する側の意図次第…質問された相手は自由に答えを探せるように感じますが実際には質問する側の意図によって大きく制限されます。「なぜミスしたんだ?」というのはミスを問いただす質問なので、答えもミスの原因になります。一方「次成功するにはどうする?」という質問にミスを問いただす意図はありません。そのため答えも成功するためのものになります。

基本3:質問力と傾聴力は比例する…質問力が高い人は間違いなく聞く力が高い人です。言語と非言語の両方を聞き、相手をより深く理解した上での質問は、話の筋が通るため質問された側も自分で答えを見つけやすくなります。

夫

僕のチームではほとんど毎日、広告やマーケティングのクリエイティブ・企画のフィードバックを行っています。この本で学んだことは早速、週明けからどんどん活用していきます。

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この記事を書いた人

夫
かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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