手料理と人の温かさが身に沁みる「エミリの小さな包丁」

エミリの小さな包丁 小説・エッセイ
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今回ご紹介するのは『エミリの小さな包丁』という小説。

  • 今の暮らしになんだか疲れた
  • 美味しいごはんを作って食べている本が読みたい
  • 人の温かさに触れたい

という方にぜひ読んでほしい小説です。

著者は森沢明夫(もりさわあきお)さん。

小説、エッセイ、ノンフィクション、絵本と幅広い分野で活躍。
ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三』で第17回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

最近では『本が紡いだ五つの奇跡』を書かれています。

妻

ではでは早速、『エミリの小さな包丁』のあらすじを見ていきましょう!あらすじの後は本書の中に出てくる個人的に心に響いた言葉を3つ、ご紹介させていただきます。

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あらすじ

25歳の主人公:エミリは都内で暮らしていましたが、とある出来事をきっかけに心に傷を負い、田舎の海辺に住む祖父の家で暮らし始めることに。

15年ぶりに再会した祖父は口数も少なくぶっきらぼう。エミリは戸惑いますが、祖父が作る魚料理に感動します。
町の人たちとの出会いや祖父の料理を手伝うことで、エミリの心は癒されていきます。そして、エミリの心に少しずつ小さな変化が起こり始めます。

常識とは、誰かが勝手に作り出した「幻の縄」のようなもの

エミリの祖父は、犬と散歩をし、釣りをし、本を読み、風鈴を作り、会いたい人の家に会いたいときに乗り込んでいき、誰かにもらった食材をとびきり美味しく調理し、静かに味わう、という暮らしを続けています。

一方、エミリの都会での暮らしは、レストランで働き、同僚から噂話や悪口・会社への愚痴を聞かされ、家に帰り、ただ生きていくために必要なカロリーを適当に口に入れ、翌朝は同僚から聞いた悪口などで気分が悪くなり自己嫌悪に陥る、という日々。

おじいちゃんは、わたしがこれまで抱いてきた価値観とは、まったく別の世界で生きている。
しかも、とても満足げに。
そのことを確信したとき、わたしはつくづく思った。
常識って、なんだろう?

そもそも、常識なんてものは、誰かが勝手に作り出した「幻の縄」のようなものなのかも知れない。わたしたち凡人は、目に見えないその縄に、自由な思考と心をがんじがらめに縛られていることに気づかぬまま、漠然と息苦しい日々を過ごしているのではないだろうか。
過ぎゆく日々を、のんびりと、淡々と、でも、ある意味とても丁寧に生きているおじいちゃんの後ろ姿を見ていると、わたしのなかで根を張っていた常識がぐらぐらと揺らいでくる気がした。

妻

都会で時間に縛られ、窮屈に暮らしてきたエミリ。すきなときにすきなことをして自分のペースで過ごしているおじいちゃんを見て、当たり前だと思っていた都会での暮らしは当たり前ではないことに気づき始めます。こうしてエミリの心は少しずつ変わっていきます。

『小さないいこと』を思い出し、悪いことを忘れる

ある日の夜、エミリは同年代の漁師さんに連れられて近所の公園に行きます。

そこで、漁師さんとブランコを漕ぎながらこんな話をします。

「<中略>
あるとき、ふと思ったわけ。過去の失敗に学ばない人間は阿呆だけど、過去の失敗に呪縛されたまま生きている人間はもっと阿呆だよなって。だってさ、もったいないじゃん」

「もったいない?」

「うん。生きてりゃ、誰にだって悪いことは起こるし、だからって、ずっと嫌な気分で生きている必要もないわけじゃん」

「え……でも、悪いことが起きたのに、いい気分でいるなんて、そんなこと出来ますか?」

「それがね、実は出来るんだよ」

「え、嘘……」

「あははは。嘘じゃないって。あのね、人間って、ふたつのことを一度に考えることが出来ない生き物なんだって。だから俺、このブランコに揺られているときだけは、最近あった『小さないいこと』をなるべくたくさん思い出して、そのときの感情をあらためて丁寧に噛みしめるようにしてたの。幸せを味わっている間は、嫌なことを考えられないから、悪い出来事も忘れていられるわけじゃん」

「でも、ブランコから降りたら、また落ち込むんですよね」

「うん。最初はそうだった。でもね、小さないいことを思い出して、いい気分をしっかり味わう癖がだんだんついてきたら、なんだか吹っ切れたっていうか」

「吹っ切れた……」

「うん。別に嫌なことがあってもいいじゃん。そんなのふつうじゃんって。もっと言えば、落ち込んでもいいじゃん、泣いてもいいじゃん、でも、身の回りには、ちゃんといいこともあるじゃんって、そう思えるようになってきた感じかな。つらいときは、身の回りの小さな幸せを眺めて、いい気分を味わっていればいいんだし」

妻

悪いことが起こると「なんでわたしにだけ…」と感じてしまいがちですが、誰にだって起こると思っていればなんだか気持ちがラクになりますよね。さらに、嫌な気分を忘れるために『小さないいこと』を思い出していい気分に変えるという漁師さんのこの考え方、すごくステキ…!

他人の意見は参考程度にしておけばいい

ある出来事を境に、エミリに関するとある噂話が田舎に広まり始めます。

この噂話でおじいちゃんに迷惑をかけていると感じたエミリは、いたたまれなくなり、おじいちゃんの些細な会話を遮ってこう言います。

「わたし、ここからも、逃げないと駄目かな……」

「逃げるかどうかは、エミリが決めればいい」

「え……」

「人は、いい気分でいられるなら、どこに居たっていいんだ」

さらに、おじいちゃんはエミリに言います。

「いいかい、エミリ」

「…………」

「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ」
<中略>
「判断は必ず自分で下すことだ。他人の意見は参考程度にしておけばいい」

「…………」

「考えてごらん。事情を知らない人たちに、エミリとエミリの人生の価値を勝手に判断されて、しかも、エミリがそのいい加減な判断結果に従うような人生を送るハメになるなんて、道理に外れるし、何より気分が悪い」

妻

根拠のない噂話は人を傷つけます。気にしないのが一番良いんですが気になってしまうのが人間。噂に振り回されず自分で判断することだ一番大事だと普段は無口なおじいちゃんが教えてくれます。おじいちゃんの言葉もまた、エミリの心を変えていきます。

小説から得られるもの

以上、かなり短いですが『エミリの小さな包丁』のあらすじとわたしの中でグッときた言葉3つをご紹介させていただきました。

エミリはなぜおじいちゃんの家に来たのか、エミリはどう変わっていくのか、気になる方はぜひ本書を手に取ってみてください。

最後に、「ビジネス書や自己啓発本はよく読むけど小説はあんまり読まない…」という方へ、小説を読むメリットをお伝えして終わりたいと思います。

小説を読むと、想像力が高まります。
外はどんな景色なのか、登場人物はどんな表情をしているのか、など、文字から得た情報を想像することで、よりたのしむことができます。

また、登場人物に感情移入することで、自身が今まで感じていた思いに変化が起き、自分以外の人のことを考えたり他人を思いやる気持ちが生まれます。

そして小説に夢中になることで現実から逃避でき、ストレスが一時的になくなったり、活字を読むことで記憶力向上につながります。

このように、小説から得られるものはたくさんあります。

さらに『エミリの小さな包丁』では、登場人物からものの捉え方や考え方などを教えてもらうことができます。
また、しあわせなとき・生きづらいと感じているときなど、そのときの読み手の心境により、得られるものが変わります。

妻

わたしは元々、読書といえば小説を読むことが多く、Intro Booksを運用するようになってからビジネス書や実用書を読む機会が増えました。でも行き着く先はやっぱり小説。仕事や近所付き合いなど、自分が経験していない知らない世界が見れて面白いんですよね…!

小説をなかなか手に取らない方にもおすすめの小説、『エミリの小さな包丁』。
エミリのように、あなたにも小さな変化が起こり始めるかもしれません…

ではまた。

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