こんにちは。夫です。
僕も気づけば30歳手前…会社では若手から中堅になり、ちょっとジェネレーションギャップを感じる新卒生を部下に持つ機会も出てきました。先輩として、リーダーとしてどんな姿を見せていこう…いろいろ考えて本を読んだりした結果、僕が重視したのは2つ。一つは「眼に見える数字として能力を示し、頼られる存在になること」そして「面白く、親しみやすい存在であること」です。
そんな僕が本書を見つけた時、迷わず手に取ったのは当然でした。ということで今日紹介するのは「ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義」です。
ムスッとしているよりは、楽しく笑顔の方がいい。仕事、家庭、その他プライベート、どんなシチュエーションでも当たり前ですが、なぜか仕事になると忘れてしまいます。でも実は、楽しく笑顔でいることにはすごい効果があるんです。
僕自身、毎日のミーティングでちょっと笑いを取ろうと意識してからチーム内の空気がかなり良くなったと思います。でもまだまだ。スベッて微妙な空気になることも珍しくありません…なので本書を読んでユーモアについて、脳科学と最新研究に基づいて学ぶことにしました。まずは、ユーモアが持つすごい効果をみてみましょう。
ユーモアが持つ魔法のようなすごい効果
さて本来は第一章の内容から順番にみていきたいのですが、今回は第二章「ユーモアの脳科学」から、職場でユーモアを発揮することのすごい効果を紹介したいと思います。
私たちが笑うと、脳内ではホルモンのカクテルが分泌され、ハッピーな気分になったり(ドーパミン)、人への信頼が深まったり(オキシトシン)、ストレスが緩和されたり(コルチゾールの減少)、ちょっぴり高揚感が湧いてきたりする(エンドルフィン)。私たちが仕事上のやりとりにもユーモアを効かせれば、同僚たちはこの効果抜群のホルモン・カクテルを味わえる。しかも相手の脳だけでなく、自分の脳でも、脳内化学物質の変化を起こすことができるのだ。
<中略>
マーク・トウェインはこう語ったと言われている。「人類が持っている唯一の効果的な武器、それは笑いだ」
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
本書では職場でユーモアを発揮することで得られるポジティブな効果を、12個教えてくれます。これを読めばユーモアを磨かないわけにはいかない…!って気になること間違いなし。魔法のような効果ばかりですが、実際の研究結果から導かれたユーモアが持つすごい効果です。
地位が高く見える
架空の「お客様の声」の声を作成し、それを評価してもらうという、非常にシンプルで興味深い実験が行われました。その「お客様の声」には真面目なものからユーモア溢れるものまでさまざまなものがあったのですが、ユーモアのある「お客様」の声を書いた人の方が、
・「有能である」印象を与えた割合が5%高く
・「自信がある」印象を与えた割合が11%高く
・「地位が高い」印象を与えた割合が37%高い
ことがわかりました。
さらに実験の参加者に、その後のタスクを担当するリーダーを決めるよう指示したところ、ユーモアあるお客様の声を作成した人をリーダーに選ぶ割合が非常に高いという結果が出ました。
気の利いたジョークの言える人が有能で、自信がありそうな印象を与えるのはなんとなくわかりますが、それ以上に「地位が高い」という印象まで与えるとは驚きです。でも、確かに自分たちのリーダーを選ぶ時、他の能力が大体同じなら真面目な人より、面白い人の方がいいですよね。
知的に見える
ユーモアのセンス、ユーモアを発揮する能力は、知的能力と相関関係にあることが、さまざまな研究から明らかになっています。事前に知能テストを行ったうえで質問し、答えのユーモア度を評価したところ、事前の知能テストの点数が高い人ほど、質問の答えに対するユーモア度が高いことが明らかになりました。
アメリカの有名なコメディ脚本家は「どれくらい頭がいいかは、その人がどんなことで笑うかを見ればわかる」と言っています。
パッと面白いことを言える人は頭がよく見えますし、実際にいいですよね。かといってこれは頭が良くないと気の利いたジョークが言えないわけではありません。後で述べますが、ちゃんとトレーニングしてユーモアセンスを磨くこともできます。
交渉を有利に導く
ビジネスで超重要な場面である交渉。社内外問わず、交渉をうまく進められるかどうかは、職場での評価や出世、年収等に大きく影響します。そんな交渉の現場でも、ユーモアが非常に役立つんです。
ある実験では、美術商が購入客と交渉する際、価格を提示した後ににっこり笑ってちょっとしたジョークをつけたところ、平均して18%高い金額を喜んで支払ったことが示されました。つまり、ちょっとしたジョークひとつで、18%有利な値段で販売できた、交渉成立したと言うことです。
しかも、購入客は無理やり高いものを買わされたとは思っていません。18%も高い価格で交渉に応じた購入客は、買った後で「楽しかった」「気軽に交渉できた」と答えているんです。
別の実験では、リクルーター役と就職希望者役に分かれて、雇用待遇について交渉しました。就職希望者は、できるだけいい待遇を勝ち取ることが目的です。実験では、一部の就職希望者に「ディルバート」というユーモアたっぷりの漫画を読んでから交渉に臨むよう指示します。
すると、交渉前にユーモアたっぷりの漫画を読んだ人たちは、平均して33%も待遇ポイントを獲得していました。さらに、リクルーター役にもユーモアたっぷりの漫画を事前に読ませ、両方がユーモアを発揮しやすい状況で行われた交渉では、互いの信頼度が31%高く、交渉結果の満足度も16%高いと言う結果になりました。
ここまで来ると魔法ですね。ユーモアたっぷりの漫画を読んで交渉に臨むだけで、より有利な条件を獲得できるだけでなく、互いの満足度も向上するんです。
記憶に残りやすくなる
ユーモアはさまざまな脳内ホルモンを分泌します。これにより集中力が高まり、記憶力が増します。つまり、ユーモアを使った発言はより記憶に残りやすくなるということです。
アメリカの世論調査研究所では、コメディニュース番組をみている人たちの方が、真面目なニュース番組をみている人たちよりも、最近の出来事をよく記憶していることが明らかになりました。
えええ、、、コメディ半分のニュース番組より、公正性・正確性を重視した真面目な報道番組の方がいいと思っていました…でも確かに、真面目な報道番組の内容、全然思い出せない…
ある学術誌では、教材にユーモアを盛り込むことで期末試験の点数が11%高くなったという研究結果も報告されています。
距離を縮める
少しのユーモアで、人と人の距離を縮めることができます。これは重要な場面に新入りがやってきた時などで非常に効果的です。
本書では、ブッシュ大統領のエピソードが紹介されています。
後のFRB議長になるベン・バーナンキは、ブッシュ大統領の経済諮問委員会の委員長に就任しました。その初仕事の日、ベン・バーナンキはホワイトハウスに行き、ブッシュ大統領をはじめとする政府高官にプレゼンテーションしました。
映画でよく見るホワイトハウスの大統領執務室みたいなところで、円形に並んだ政府高官を相手にプレゼンする。ベン・バーナンキにとってキャリアで最も重要な大舞台です。
バーナンキがプレゼンを始めると、ブッシュ大統領が急に話を遮って、彼が履いていた黄色の靴下をからかいました。バーナンキは一瞬たじろぎましたが、すぐに気を取り直して、なんとかプレゼンを最後までやり切ります。
なんかここまで見るとブッシュ大統領が嫌なやつに見えますね笑
そして次の会議の日、再びホワイトハウスに政府高官とバーナンキが集まり、会議が開かれました。会議がスタートすると、ブッシュ大統領以外の政府高官がこれ見よがしに足を組み、お揃いの黄色の靴下を見せつけたんです。
自分がからかった黄色の靴下を政府高官がお揃いにするという意趣返しにブッシュ大統領が笑い、まいったとばかりに両手を上げると、全員が爆笑しました。
2回目の会議の雰囲気は明るく、建設的なものになったそうです。一緒のことで笑うと距離が縮まるのは誰しも経験がありますよね。
信頼しやすくなる
笑うと分泌される脳内ホルモンのオキシトシンは「信頼ホルモン」と呼ばれています。オキシトシンが分泌されると、たとえ出会ったばかりの相手でも親密さや信頼を感じることが科学的にわかっています。
ある実験では、数人でコメディー番組と真面目なドキュメンタル番組を見てもらい、その後一緒に見た相手にメッセージを書いてもらいました。するとコメディー番組を見た人は、より多くの個人情報をメッセージの中で相手に伝えたんです。
一緒に笑うと、相手に対して腹を割ったり、弱みを見せたりしやすくなるのだ。言い換えれば、一緒に笑うことは、職場でオキシトシンを分泌させるための、人事部公認の数少ない方法のひとつなのだ。
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
オキシトシンを分泌する方法は、妊娠や出産、性行為などのスキンシップもありますが、さすがに職場で推奨できません笑。チームメンバーでオキシトシンによる親密さや信頼関係を築きたければ、ユーモアを取り入れるのがベストな選択肢です。
人間関係の強化
ユーモアの効果は、その場で親しみが高まるだけではありません。人間関係を長期的に強化するためにも効果的です。
ある実験では、カップルに「ふたりで一緒に笑った時のことを話してください」と指示した結果、別々に笑った時のエピソードをや、仲の良さを実感した時のエピソードなどを聞いた時より、2人の関係についての満足度が23%も高いことが明らかになりました。
2人で一緒に笑った時のことを思い出すだけでも、満足度が高まるんです。笑いの力は偉大ですね。
イノベーションが加速する
アップル社のクリエイティブデザインスタジオのトップを務めた浅井弘樹さんは、「想像力の最大の阻害要因は恐怖」「ユーモアこそ、企業文化から恐怖を遮断するのにもっとも効果的なツール」と語っています。
アップルの全社会議では、2000名を超えるクリエイティブスタッフが一堂に集まります。浅井弘樹さんは、この会議のために、数ヶ月かけて笑いが湧き起こる体験を周到に計画するんです。
そして全員が笑いに包まれた後、クリエイティブを存分に発揮した会議がスタートします。恐怖心が遮断されたことで、より大胆な提案、立場を超えたオープンな話し合い、新しいアプローチが受け入れられるようになったのです。
頭の回転が速くなる
「ドゥンカーのロウソク問題」と呼ばれる、有名な認知能力テストがあります。
この画像にあるロウソク、画鋲、マッチだけを使って、ロウソクを壁に固定し、火をつける。ただし、溶けたろうがテーブルにこぼれ落ちないようにしなければならない、という問題です。
有名な問題なので答えを知っているかもしれませんが、ぜひ考えてみてください。ロウを使ってロウソクを横向けに壁にくっつけても…ロウがテーブルに溢れてしまいますね。
この問題を特には、機能的固着(モノの一般的な使い方以外の方法がなかなか思いつけない認知バイアス)を克服する必要があります。
ドゥンカーのロウソク問題の答えはこちら。
画鋲が入っていた箱を、画鋲で壁に固定し、その上にロウソクを立てます。すると、ロウソクは壁に固定され、ロウは机にこぼれません。
画鋲が入っていた箱を「画鋲の入れ物」という役割でしかみていなければ思いつかない方法です。
こういうちょっとした柔軟な発想が求められる問題にも、ユーモアは役立ちます。ユーモアある映像を見た後でこの問題を解いてもらった時、映像を見ていない人よりも正解に辿り着いた人数が2倍も多かったのです。
ユーモアによって頭がよくなったわけではないでしょう。ですが、笑ったことで固定観念を払拭し、柔軟に考え、新しい連想を思いつきやすくなったんです。そして固定観念を払拭し新しい連想をすることは、クリエイティブなプロセスの核心です。
仕事上の課題の多くは、頭を柔らかくしないと解決できません。硬い頭で杓子定規に解決できてしまうことは、AIやプログラムにやらせた方がいいからです。右脳タイプの想像力と、既成概念、固定観念にとらわれない水平思考が重視される中、本当に磨くべきはそれらを一瞬で引き上げてくれるユーモア力なのかもしれません。
型にはまらない考え方ができる
型にはまらない考えを行うための会議のフォーマットが、ブレインストーミングです。アジェンダを決めず、好き勝手議論を交わす中で創造的なアイデアを発掘する。
ですが、ユーモアを発揮している時の脳は、ブレインストーミング中よりもさらに、脳の創造を司る領域が活性化しているんです。
ユーモアについて考えている最中、脳内では創造を司る領域だけでなく、学習や認知に関わるその他の領域も活性化しており、その活性効果はユーモアを考え終わった後も長く持続していることが実験で示されました。
アインシュタインは「創造性とは、遊び心をもった知性だ」と言ったそうですが、ブレインストーミングよりユーモアの方が、脳の多くの領域が活性化しているとは驚きです。
心理的安全性を育む
人は失敗を気にしなくていいという安心感があると、大胆になり、大きなリスクをとる勇気が湧いてきます。先ほども出てきたアップル社のクリエイティブデザインスタジオのトップを務めた浅井弘樹さんは次のように語っています。
結局のところ、陽気さの文化は従業員にとって安全な場を生み出すのです。安心感があって、リーダーが恐怖ではなく陽気さでみんなを導いていると感じると、思い切って挑戦する意欲が湧いてきます。バカにされる、仲間外れにされるといった心配をせずに、いろんなことを試してみたくなる。イノベーションに対して積極的になるのです。古いアイデアに抵抗し、新しいアイデアを推し進めます。
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
そして人は「笑える」と思っただけでも、ストレスホルモンのコルチゾールが39%、逃走・闘争反応を引き起こすエピネフリンが70%も減少し、安心感が生まれ、心が落ち着き、ストレスが緩和されることが明らかになっています。
そしてコルチゾールの低下は、言語能力や処理速度、記憶力、学習力などさまざまな能力を高めることも明らかになっています。
笑えると”思っただけ”でストレスホルモンが減り、それによって能力が向上するなんて…一生懸命本を読んで知識を溜め込んだり、鍛錬したりするより、定期的に笑っている方がスキルを高めることができるんじゃないかとさえ思いますね。
寿命が伸びる
職場でのストレスが健康を害し、莫大な医療費負担を生んでいるという話を聞いたことがあると思います。鬱のような精神的なものから、座りすぎによる血液循環的な疾患まで、間接的にせよ、仕事によって人の寿命が削られているのです。
ですが、笑うと不安や鬱のリスクを下げるコルチゾールが抑えられることがわかっています。
笑は最高の薬の一つです。笑うと血流が増え、筋肉の緊張が緩み、動脈壁硬化が緩和される他、コメディを楽しんだ後に肺機能の向上が確認された研究もあります。
ユーモアのセンスと寿命の長さには相関関係があることが、実際に研究によって明らかになっている。ノルウェー科学技術大学による5万人超を対象とした15年間の横断研究によって、ユーモアのセンスが豊かな人びとは、男女ともに、持病があったり感染症にかかったりしても、長生きすることが明らかになった。
具体的には、ユーモアをよく使う女性たちは、あらゆる原因による死亡リスクが48%低く、心臓病による死亡リスクが73%低く、感染症による死亡リスクが83%低いことがわかった。いっぽう、ユーモアをよく使う男性たちは、感染症による死亡リスクが74%低いことが明らかになった。
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
男性より女性の方が絶大な効果があるんですね。笑う門に福きたるはただのことわざというだけでなく、科学的に立証され始めているんです。
ユーモアの2つの原則と4ステップ
ユーモアの魔法のような実際の効果がわかったところで、問題はどうやってユーモアを磨き、発揮すればいいのかですよね。プロの芸人のようにどんどん面白いことが言えるわけでもない僕たち一般人はどうすればいいのでしょうか?
本書では「生まれつき面白い人なんていない」「ユーモアのセンスは後天的に磨ける」として、さまざまなテクニックを紹介してくれています。
ここでは、ユーモアの2つの原則と4つのステップを紹介します。
ユーモアのセンスがない人は、ユーモアは何もないところから生み出すものだという誤解があります。実際には、身の回りのちょっとしたところにユーモアのタネが隠れています。
1つめの原則は「ユーモアの核心は事実にある」です。面白いユーモアには、事実が存在します。全く空想のエピソードで笑いをとるなんて、プロの芸人でもなかなかできません。
ユーモアの鉄板っていわゆる「あるある」ですよね。これこそまさに、日常によくある当たり前のことを、ちょっと面白く表現しているだけです。
事実の共有認識はユーモアの基盤となる。だから、まずは「何か面白いことはないか」ではなく、「どんな事実が潜んでいるか」と、自分に向かって問いかけてみよう。そこからユーモアを見つけていくのだ。
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
笑いは意表をつかれた時に生まれます。Aの次は当然Bだろうと思ってきた時に、Cが訪れる。このギャップに笑いの正体があります。社会科学で「不調和解消理論」と呼ばれるもので、ユーモアは予想と実際の不調和から生じるということです。
この2つの原則を念頭に、面白いユーモアを見つけるためのステップを見ていきましょう。
ユーモアの核心は事実にあるので、ユーモアを見つけるために新しい事実を探しにいく必要はありません。自分自身や身の回りの人たちの生活を見ればいいだけです。
その時に意識して探すのが、まずは「不調和」です。コントラストや矛盾、対比が見られる点を見つければ、面白い話が見つかったも同然。ぶっきらぼうな上司が実は愛猫家だったとか、しっかり者のあの人がしょうもないミスをやらかしたなど、こうしたギャップにユーモアのタネがあります。
もう一つは、自分の気持ちに焦点を当てることです。強い感情はユーモアへの絶好の入り口になるので、自分が嬉しく感じること、イライラすること、わけもなく大嫌いなことを見つけて見てください。「これめっちゃ嫌い!」という言葉も元気よく言ったり、ユニークな理由を見つけたりすれば、そこから笑いが生まれます。
また、自分が傷ついたこと、おそれを感じたことも、時間が経てばユーモアに昇華することができます。他人の不幸話も、時間がたって本人も気にしていないようであれば、笑いのネタになるんです。
多くのジョークは設定+オチというシンプルな構造で成り立っています。設定は新しく作る必要はありません。ステップ1で面白そうな事実を見つければ、それが設定になります。そこから、ミスディレクションを生むオチを見つければ、一つ面白い小話の完成です。
そのオチが難しいんだよ…と思ったかもしれませんが、安心してください。本書ではいくつかのテクニックを教えてくれます。
1つは単純に、誇張すること。ものごとの規模や重大さをうんと誇張して、大袈裟な表現を使うことです。
僕はスポーツ観戦が嫌いで、W杯の時期などは居心地が悪いんですが、そうしたイベントが終わった後、スポーツ観戦が嫌いな理由を一生懸命語ったら大爆笑でした。まあ、スポーツ観戦が嫌いというより興味がないだけなんですが、あえて誇張して「僕は絶対W杯は見ません!」とかいうと逆に盛り上がるんです。ただしこうした話はイベントが終わった後でやります。イベント中だと、家に帰ってからスポーツ観戦を楽しもうと思っている人もいますからね。
次のテクニックはコントラストを生じさせることです。対比を大きく見せるということですね。もし女性の感情に対して笑いを作りたいなら、まず男性の感情に着目する。男女の感情の違いというコントラストによって、当たり前のオチでも笑いに変わることがあります。
次のテクニックは、具体的な表現や比喩を用いることです。極度な具体性は、ただの事実をユーモアに飛躍させることがあります。
ジミー・ファロンのジョークを見てみよう。
”イギリスの研究者たちが、世界の植物種の5分の1は絶滅の危険性があると警告している。さらに悪いことに、ケールは生き延びるらしい”
オチの部分がこれほど具体的でなかったら、どうだろう?たとえば、「さらに悪いことに、野菜類は生き延びるらしい」とか。これでは、あまりパンチが効いていないのでは?大雑把な表現のせいで、ぼやけてしまうからだ。
ファロンが選んだ「ケール」は具体的なだけでなく、突飛なものを連想させる(健康オタク、流行りの食品、噛みにくいものなど)
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
比喩はちょっとセンスが求められますが、「〜みたいな」や「まるで〜」といった言い換えができないか想像する習慣をつけましょう。ギャップが大きいものが「まるで〜」でつながると、脳は愉快な驚きを感じます。
本書では「大家族」と「ウォーターベッドの販売店」を「今どき珍しい」という共通点でたとえたジョークを首魁しています。「大家族って、ウォーターベッドの販売店みたいだ。昔はどこにでもあったけど、今どき珍しい。」
絶妙な比喩を生み出すには、まずは自分が観察して気づいたことについて、「どう感じるのか、どう思うのか」を自問し、それをできるだけ具体的に表現してみることだ。
次に、比較の対象として、もっと普遍的なものを見つける。同じような感情や意見を連想させるものとして、一般的に理解されるものがよい。この「一般的に理解される」という点が重要だ。
<中略>
要するに、効果的な比喩を生み出すには、特定の対象について自分自身が思うことや感じることと、その比喩の対象についてほとんどの人が思うことや感じることのあいだに、共通の特徴を見つければいいのだ。
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
また本書では「3のルール」というユニークなものも紹介してくれています。これは、一般的で予想しやすい要素を2つあげてから、意外な3つ目の要素をあげるというものです。
「地震、雷、火事、オヤジ」は一般に恐れられているものを挙げたものですが、地震など天災を3つ挙げてから最後にオヤジっていうのが秀逸ですよね。あ、これだと4つだから3のルールに反してる…
さてここまででユーモアのタネの見つけ方と、それをクスッと笑えるユーモアに変えるテクニックを紹介しました。いよいよ本番、そのユーモアを、適切なタイミングで披露しましょう!
そのためにもいくつか重要なポイントがあります。まず、ユーモアには適した場所、関係性があるということ。男性同士の飲み会で、下世話な女性いじりのジョークを披露しても、ユーモアとして許されるでしょう。でも同じジョークでも、女性の前で披露してしまったら最悪です。
ユーモアは、それが面白いかどうか以上に、その場、関係性において適切かどうかが大切なんです。逆に、適切な場で適切なユーモアを披露すれば、たとえまったくウケなくてもダメージはありません。しかし場が不適切だと、たとえ面白くても「ふざけている」と思われます。
これはめちゃくちゃ大事ですね。職場でもユーモアを発揮することで生産性や満足度が増しますが、あまりに下品なジョークはたとえ思い出し笑いするくらい秀逸でも、学生時代の友達との飲み会用に取っておいたほうが賢明です。
次のポイントは持ちネタを用意しておくことです。テレビに出るお笑い芸人ほどの笑いは作れない…と感じますが、彼らは何日もかけてネタを練り込み、すり合わせ、調整し、練習を重ねた上で披露しています。即興のように見えるものでも、実際に大半で、ある程度のシナリオを用意しています。
なので、僕たちも同じように、持ちネタを集めて、考えて、練習しておきましょう。ちょっとアレンジするだけで、同じネタで何度もユーモアを発揮し、その場の空気をよくし、この記事でも紹介した魔法のようなユーモア効果を享受することができます。
いい持ちネタがあれば、コールバックしてさらに笑いに変えましょう。コールバックとは、以前ウケたジョークや面白かった出来事を引き合いに出して使うことです。「あの時のあれ爆笑したよね」という話でもう一度みんなで笑い合えたら、仲間意識が刺激され、グループの絆が深まります。
アメリカの著名コメディアン・脚本家のセス・マイヤーズは、次のように言っています。
99%は、語り口が物を言う。声と語り口がぴったりなら、自信を持っていい。それでオチをばっちり利かせれば、何を言っても笑いを取れる。たぶんお客さんたちは、こっちは面白いことなんかひとつも言っていないと気がつく前に、3回は笑っているだろう。
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
つまり、面白そうに話せば、面白くなくても笑ってもらえるということです。確かに勢いだけで笑ってしまうことって珍しくないですよね。そんな面白い語り口についても、いくつかのポイントを教えてくれています。
- オチの前に一拍置く:オチを言う前は、期待を高めるために沈黙を引き延ばす
- 身振りで示す:誇張することは面白いオチの要素の一つだが、身振りが大袈裟なだけで誇張して伝わる
- 盛り上げる:声のピッチや高さ、抑揚に変化をつけて感情を高める
- 落ちのセリフを繰り返す:オチを言った後、もう一度同じオチを言う。タイミングが合えばオチの魅力をさらに伝えることができる
- 語り口と内容をマッチさせる:スタイルとネタの中身があっていなければユーモアに集中できない
- 堂々とやってのける:オチの語りは力強く、はっきりとした発音で、大胆に、堂々と、きっぱり語る
本書ではこうして身につけたユーモアを仕事の現場で活かす、初対面の挨拶や交渉の場面でどのように発揮するかや、リーダーのためのユーモアに二章も割いています。ここでは省きますが、職場でユーモアを発揮、地位を高くしたい方はぜひ本書を読んでみてください。驚愕のデータですが、ある調査によると従業員の58%は「上司よりも見知らぬ他人の方が信用できる」と回答したそうです。リーダー、上司たる人にとって無視できないデータです…
ユーモアが5つの願いを叶えてくれる
ということで今回は「ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義」を紹介しました。
本当はもっと紹介したい部分がたくさんあります。ユーモアを職場やリーダーシップ、企業文化に活かす方法や、ユーモアの失敗から立ち直る方法、ユーモアの4タイプなど、「ユーモア」についてスタンフォード大学講師が徹底的に研究して、400ページにわたってまとめたのが本書。僕たち一般人にとっては、ユーモアの全てがこの本に書かれていると言えます。
重要なのはユーモアを形作る要素のバランスと、一部紹介した「適切さ」の把握です。
過去の後悔や失敗は、振り返れば笑い話になります。ですが、職場での大失敗を、その失敗のリカバリーにみんなが追われている時にジョークにするのは、いいユーモアとはいえません。ですが、そのジョークも数ヶ月後の飲み会で披露すれば、いいユーモアになるかもしれません。
ユーモアを披露する時には「距離」を意識する必要があります。これは、ユーモアの話題と相手との時間的、地理的、心理的な距離で、遠すぎるとユーモアがわからないし、近すぎると不適切になります。
ユーモアはどうしても「空気を読む」というのが必要になりますからね。本書ではこうしたユーモアの微妙に難しいところに対しても、さまざまなエクササイズを用意してくれています。
最後に本書の最終章「ユーモアは人生の秘密兵器」を紹介して終わりたいと思います。著者は20年以上、人間の幸福について研究し、死を目前に控えた人々の「後悔」について研究してきました。
その結果、人々が最後に後悔して願っているのは「大胆さ」「自分らしさ」「今、この瞬間」「喜び」「愛」の5つに関することだということに気づきました。
そしてユーモアは、職場での地位を上げ、知能と生産性を高め、職場の満足度を高めるだけでなく、この人生最後の願いを叶えるためにも役立つんです。
もちろん、あなたには仕事でも大成功を収めてほしいし、利益も売上も重要だろう。しかし、私たちがもっと気にかけているのは、「ひとりの人間」としてのあなたのことだ。ぜひ充実した人生を送るために、本書のコンセプトを利用していただきたいと思っている。
そこで、「陽気さ」と「よりよい人生」いう、別物のようでありながら、じつは深く繋がりあったこの2つを融合させて、旅を終えることにしよう。
引用:ユーモアは最強の武器である: スタンフォード大学ビジネススクール人気講義
恐怖心があれば人は大胆な選択ができません。そして、多くの人が人生の最後に、もっと大胆な選択をすればよかったと後悔しています。
大胆になるには恐怖心と向き合わなければならない。それを可能にするのがユーモアです。ユーモアによって恐怖心がなくなるわけではありません。ですが、変化や可能性に対して心をひろき、リスクを取り、挫折しても早く立ち直ることができるようになります。
他人の期待に答えることも大事ですが、あるべき姿を演じることに過大なエネルギーを費やすことは不幸の元です。ユーモアによってリスクに挑みたい気持ちや、新しく柔軟な自分の引き出しを見つけることができれば、自分らしさへの自信と、それを表現することへの勇気が手に入ります。
ユーモアによって分泌されるさまざまな脳内ホルモンによって、脳は過去や未来ではなく、今この瞬間に集中することができます。そして、今この瞬間こそが人生です。ユーモアのトレーニングで、何気ない日常に潜む事実に目を向け、周囲を新しい角度で見つめ直すだけでも、人生そのものである今この瞬間を味わうことができます。
喜びや幸運は偶然やってくるものではなく、選択し、自分自身で探し求めるものです。これこそまさにユーモアが光る時です。何気ない瞬間に、楽しさを見出すこと。喜びが溢れるのは、日常の中で自然に笑ってしまうような、そんな瞬間です。
誰かと一緒に笑い合うことは、小さな愛の表現です。愛があるところにはユーモアがあります。職場でも家庭でも、愛のないユーモアはスベり、不適切だと捉えます。逆に言えば、ユーモアのセンスを磨くことは、愛の表現を磨くことでもあります。
ユーモアによって信頼感が生まれ、人間関係が強まることは、ユーモアの魔法のような効果で繰り返し伝えた通りです。
タイトルに偽りなし。心からそう思える本は滅多にありません。ですが本書の「ユーモアは最強の武器である」という言葉。帯にある「すべてはユーモアが解決する」という言葉。本書を読めば読むほど納得できました。この本は家の本棚の一等地に飾って、繰り返し読もうと思います。
この記事を書いた人
- かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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