論理が通用しない世界に備えよ|ハーバードの美意識を磨く授業

ビジネス・マーケティング
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こんにちは。夫です。

僕は学生時代、社会も国語も英語もダメで、数学と物理はほどほどにできたのでなんとか大学に進学することができた部類です…なので、数字をもとに論理的に分析することには自信があるのですが、僕が得意とする分析ってスプレッドシートで誰でもできちゃうんですよね。今後、数字に強い、計算が早いことの価値はほとんどなくなる気がします…

そんな中、「自分に足りないのはこれだ!」と思って手に取ったのが本書「ハーバードの美意識を磨く授業」です。

僕はアーティスト活動もしているので美意識には理解がある方だと思っていますが、基本的に理系人間。数値化、論理化できないことは苦手です。でもそれじゃ通用しないということを教えてくれました。

本書は、ハーバード大学での講義を読者の皆さんにも体験していただきたくて執筆した。
私が目指したのは、ビジネスで成功を収めるために、どのように美意識を活用できるかを広く知ってもらうことだ。さらに、皆さん一人ひとりの、美意識や感性(Aesthetic intelligenceの頭文字を取って、私は「第二のAI」と呼んでいる)を再発見して磨きをかけ、ビジネスに生かすことで金銭的な面での成功を実現してもらうことができれば、とても嬉しい。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

筆者は美意識のことを「第二のAI(Aesthetic intelligence)」と呼んでいます。すでに計算能力でAIに勝てる人間は存在しませんが、この調子で進歩したら、論理的に考える能力はほとんど必要なくなります。だからこそこれからも活躍し続けるには「第二のAI」を身につける必要があるということ。

ちなみに筆者のポーリーン・ブラウン氏はLVMHの北米社長を勤めた方。ヴィトン、セリーヌ、ディオール、フェンディ、タグホイヤー、モエシャンドン、ドンペリ、ヘネシー…世界の主要なブランドを有するLVMHのトップですから、まさに美意識をビジネスに活かし続けてきた人です。

本書を読む目的が分かる文章が、本書の最後に載っていました。そこを引用してから、「なぜ今、ビジネスの現場にも美意識が求められているのか?」という背景を紹介したいと思います。

企業が生き残るためには、自分たちがしていることに再び人間味を持たせ、さらには自分たちがしていることの意義や目的を理解する必要がある。本書を通して、私があなたに一番伝えたいのは、次のことだ。そして、多くの気づきを得ていただければ、とても嬉しい。
◇美意識は大切である。そして現在、美意識はこれまで以上に必要とされている。
◇美意識に根ざして企業を構築し、成功に導くのは、審美眼に富む人たちである。
◇人は、自分が思う以上に、美意識を備えている。しかし、筋力と同じように、鍛えなくてはならない。
◇美意識をうまく活用できれば、ビジネスを進化させ、さらにはビジネスを改革することもできる。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

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ビジネスの現場でも美意識が求められている

美意識が求められる背景として、計算能力や論理的に考える能力では、人はAI(人工知能)に勝てなくなるからだと言いました。しかしそれだけではありません。本書では美意識が求められているのには、大きく5つの理由があるからだといいます。

  • 正解の無価値化
  • 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
  • 全産業のファッションビジネス化
  • 利便性から情緒への価値源泉のシフト
  • 人工知能との仕事の奪い合い

「正解の無価値化」なんて正解を素早く見つけ出すことで評価されてきた理系人間からすると恐怖しかありません…それぞれ見ていきましょう。

正解の無価値化

以前は問題が溢れており、問題に対して正解を出す能力が評価されてきました。そもそも「問題」とは「あるべき姿と現在の姿」のギャップのことです。
冷蔵庫が発明される前、「本来は家の中で食べ物を安全に保存できるべきなのに、できない」というわかりやすい問題がありました。昭和の時代は、そこに正解を出した家電メーカーが大きく成長しました。

でも今は「正解」が溢れ、問題を見つける方が難しくなっています。多くの家電メーカーが「正解」を追い求めて、問題がないところに答えようと機能を継ぎ足した結果、高機能だけど使い物にならない製品が増え、日本の家電メーカーは海外にシェアを奪われていきました。

「優秀さの定義」が、かつての「与えられた問題について速く、正確に正解を出せること」から、今後は「誰も気づいていない新しい問題を発見・提起できること」にシフトする
<中略>
みなが当たり前と思っていることに対して「何かがおかしい、美しくない」と思える審美的感性、さらには時代感覚や世界観に基づいて「本来はこうあるべきではないのか?」をイメージし、それを他者に伝えられる力が求められる、と言うことです。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

デザインは問題解決、アートは問題提起、という言葉がありますが、「本来はこうあるべきではないのか?」というのはまさしくアーティスト的な現実の見方ですよね。現状を批判的に眺め、美しいあり方を模索するというアーティスト的な姿勢が、ビジネスの現場でも求められているということです。

論理的・理性的な情報処理スキルの限界

分析的・論理的なアプローチを多くの人が身につけたため、論理的に導ける正解の価値がコモディティ化しています。分析によって導ける答えは、誰にでも出せる答え。もう少し進歩すればほとんどがAIによって導ける答えなんです。

まさしく、僕が感じていた課題です。論理的な結論って誰がやっても同じ結果になる。それはそれで価値があることですが、本当に誰でもできるようになれば、それはもうスキルとさえ呼べなくなります。

「アートとサイエンスの分水嶺」はどこにあるのか?一つの定義が「再現性の有無」です。再現性とは「サイエンス」の根幹に関わる問題で、再現性のない命題はサイエンスになり得ません。一方で、これは差別化の消失ということを必然的に意味するわけで、経営としては非常に困ったことになるわけです。経営の意思決定が過度に「サイエンス」に振れると、必ずこの問題が発生することになります。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

この言葉から分かるとおり、筆者は論理的思考の価値を軽視しているわけではありません。再現性のないアート的な仕事ばかりになると、属人的で組織として機能しなくなります。しかし、これまで論理的な答え、引用部分でいう「サイエンス」に偏っていたため、多くのものが差別化ができていないコモディティになってしまいました。
再現性を持ったサイエンスと、差別化を生むアート。このバランスがこれからの経営に求められるものだと言います。

確かに、サイエンスに偏った結果、ロゴを見ないと区別がつかない製品やサービスが溢れています。個性や差別化を追い求めて属人的になるのは問題ですが、多くの企業がサイエンスに偏りすぎていて、それが問題になっているのも事実でしょう。

全産業のファッションビジネス化

多くの国が経済成長を遂げた今、世界は巨大な「自己実現欲求の市場」になりつつあると言います。ほとんど同じ価格の歯磨き粉が数十個並んでいますが、その機能やメリットを厳密に理解・比較して選んでいるわけではなく「印象」を優先した購買行動、つまり「こうありたい」「自分はこうである」という自己実現的な購買行動を行っています。

現代社会における消費というのは、最終的に自己実現的消費に行きつかざるを得ないということであり、それはつまり、すべての消費されるモノはファッションになるということです。このように考察を続けると、私たちはもはやアップルという会社をIT企業と考えるよりも、ファッションの会社だと考えた方がいいということなのかもしれません。なぜなら、アップルが提供している最も大きな便益は「アップル製品を使っている私」という自己実現欲求の充足であり、さらには「アップルを使っているあの人は、そのような人だ」という記号だからです。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

アップルユーザーの行動を「アップル製品を使っている私という自己実現欲求の充足」と表現しているのは面白いですね。僕が慣れたWindowsからアップルに乗り換えたのは、アップル製品、ひいてはアップルを使っているクリエイターたちに憧れてた部分も少なからずあります。PCやスマホを、ファッションアイテムのように選んでいたんですね。

利便性から情緒への価値源泉のシフト

全産業のファッションビジネス化が進んでいるということは、機能や利便性ではなく、自分にとってどういう意味、価値があるか?に判断基準が変わってきたということです。便利なものが増えたからこそ、便利であることよりも情緒やロマンがあるものが求められるようになりました。

私たちは「意味的な価値」を今後どのようにして生み出していくのか?という大きな難問に直面することになります。では、世の中において「意味的な価値」を最も強く、深く追求している人々は誰かと考えてみれば、それはアーティストだということになります。特に二〇世紀後半以降、アートの本質的な価値は「コンセプト=意味」になりつつあります。
<中略>
今日の社会において、ますます「役に立つ=機能的価値」がデフレし、一方で「意味がある=情緒的価値」がインフレするのであれば、そのような価値創出の方法をアーティストの思考様式・行動様式から学ぶというのは極めて合理的なことでしょう。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

確かに、便利なエアコンが数万円で買えるのに、数十万、数百万円かけて暖炉を作る人もいますよね。結構音質が良いBluetoothスピーカーが数千円で買えるのに、一部の人の間で高級オーディオの価値がどんどん高まっています。

多くの企業にとっての課題は、利便性を高めることに比べて、情緒的な価値を高めることの正当性を評価しにくいことです。豊かさや自己実現は市場リサーチで把握することも、市場規模を調べて事業計画を立てることも難しく、多くの企業の組織運営、意思決定のあり方とマッチしません。

人工知能との仕事の奪い合い

5つ目はより個人的な話で、これから数十年働き続けるうえで、決して無視できないポイントです。人工知能は想像以上のスピードで進歩しており、近い将来、人が担っている理知的・論理的な知的活動の多くを代替する可能性があります。本書では、将来的に人間が担う仕事は「人工知能を奴隷として使う仕事」と「人工知能の奴隷として使われる仕事」の2つになるといいます。そしてその2つを分けるのが「創造性」です。

AIによってなくなる仕事は?という話がときどき話題になりますが、どんな仕事がなくなるかだけでなく、AIが自分の競合なんだと認識することが大切です。自分のスキルは競合のAIに勝てるでしょうか?「Excelが使えます!」では負けますよね。

(人工知能が)チェスや囲碁の領域では最高度に訓練された人間すらを凌駕する知的能力を獲得しつつあるにもかかわらず、作曲や描画といった領域においては「下手なアマチュア」のレベルに低迷し続けているという事実から洞察される結論は一つしかありません。すなわち「チェスや囲碁の手を考えるという知的営為は、作曲や演奏といった芸術行為と比較して、実ははるかに簡単だ」ということです。もちろん、この「簡単」というのはコンピューターにとって、ということです。この仮説から、「人工知能に奪われない仕事は何か」という論点に対する示唆を導出すれば、その答えは明白です。それは「創造的要素のある職業」ということになり、そのために最も重要なのは「美意識」だということになります。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

これって結構不思議ですよね。チェスや囲碁の論理的に考えるスキルでは人間の限界を突破したAIが、いまだにアートや創造の分野ではセンスの悪い素人か、モノマネの域を出ていないんです。

特に音楽に関しては12音階とさまざまな音色の組み合わせです。基本的にはスケールの範囲内なのでキーが定まると使える音は7つくらいになって、その並び順が音楽になります。囲碁には詳しくありませんが、感覚的には囲碁の方が無数の選択肢があってむずかしそうに感じますよね。

それでも現実問題、チェスや囲碁のプロがAIに負けたという話は聞いても、トップアーティストがAIに負けたり、ヒットチャートの上位にAIが作った曲が入ってきたり、といったことは今の所ありません。その大きな要因がAIには美意識がないからだというわけです。他のスキルについても、美意識があるかどうかで、AIに奪われるかどうかが左右されます。

美意識を磨く3つの意識改革

さて、ここまでですでに長く書いてきましたが、実はまだ本書の内容には入っていません。笑 ここまで紹介した内容は監訳者が冒頭で書いている「なぜ、これからの世界において”美意識が求められるのか?”」という項目の内容です。

僕自身、記事を書いてびっくりしました。まだ本文に入っていないなんて!笑 とはいえ、本書で一番大切なことは「美意識の重要さを認識する」ことだと思います。本書ではいろいろな企業の事例などから重要性が紹介されていますが、上で挙げた5つの理由がわかりやすくまとまっていたので紹介しました。

ということでここからは簡単に、美意識を磨く方法を紹介したいと思います。

美に対する感性は、生まれながらに備わっているものではなく、時とともに磨かれていくものだ。そして、「品質や美しさの基準」というものは存在する。例えば、ボルドーワインが好きでなくとも、そのボルドーワインが良質か否かの区別はつけられる。良質とはどういうことかを知るにつれ、その真価を深く理解できるようになる。たとえそれが自分のテイスト(味覚、好み)に合わなくても、だ。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

五感に意識を向ける

本書では、筆者がスーパーマーケットで石鹸を購入した時の実体験が紹介されています。その石鹸は、レモンやバニラなど食べ物を思わせる自然な色、ラベンダーやバラなど植物に似た色をしていて、パッケージングはシンプル。茶色の厚紙でできたベルトが1つひとつの石鹸に巻かれ、黄麻の紐で止められていました。最小限のラッピングで石鹸の両端は剥き出しでしたが、その自然な香りを感じることができたそうです。

著者は他の石鹸より高価だったにもかかわらずその石鹸を購入しました。完全に箱に納められた石鹸より包装にもコストはかかっていないはずですが、五感を刺激したのです。

筆者はここで「五感のうち少なくとも三つが刺激された時、人は深い感動や満足感を覚える」と言っています。この石鹸は嗅覚、視覚、触覚を刺激されて購入しました。機能や価格で劣るのに人を引き付けたということは、この石鹸に美意識があったということになります。

こうした例はたくさんあり、例えば以前、ロールスロイスが内装の一部を木材から革張りのプラスチックに変えたところ、売上が大きく下がったらしいです。その理由を分析してみると、ロールスロイスらしい「新車の匂い」が失われていたからでした。そこでロールスロイス社は旧モデルの木の匂いを再現した香料を開発して、新車の内装に塗布しました。
目に見えない部分の材質は、一見すると機能や体験になんの影響も及ぼさないように思えます。でも「五感」に着目した時、確実に重要な要素が抜け落ちてしまっていたんです。そういう意味でロールスロイスが内装の一部をプラスチックに変えたことは美意識が足りなかったと言えるかもしれません。

こうした「〇〇らしさ」を「ブランドコード」といいます。ブランドコードとは、ブランドの哲学や美学を表すそのブランド特有の識別子のことで、ロールスロイスはその一つが贅沢な「新車の匂い」でした。
アップルであれば、Apple Storeの建築デザインもブランドコード。3Mのポストイットが黄色ではなく「カナリヤ色」、ティファニーブルーは青色ではなく「コマドリの卵のブルー」など厳密なこだわりをもって消費者に認識されているものも一つのブランドコードです。

3Mのポストイットなんて何色でもいいじゃないかと思うかもしれませんが「カナリヤ色」であることが重要で、それが重要だと認識する力こそ美意識です。

美意識を磨く最初のステップは自分の五感に意識を向けることです。ロールスロイスの例のように、車は乗って移動するだけのものではなく、その間に感じる匂いや振動も車が提供する価値なんです。

日々の買い物や体験で自分の五感に目を向けてみるというのはいいトレーニングになりそうですね。飲食店で流れている音楽も結構飲食店の価値を左右します。ただ有線BGMを流しているだけの飲食店と、そうじゃないところでは無意識で味わう価値が変わっていると思うのでそこに目を向けるということですね。

食の体験に意識を向ける

先ほどは五感に意識を向けるという話をしましたが、本書ではもっと具体的に「食」に意識を向けることもお勧めしています。感性は自分の身の回りにある感覚的な情報を結びつけ、その意味を詳細に理解することで磨かれるものですが、その最たるものが食事なんです。

当然ですが食事は味覚だけでなく、視覚や嗅覚でも味わいますよね。ものによっては聴覚(調理の音)や触覚(ナイフやフォーク、食器の質感)も使って味わっています。まさに五感をフルに活用した体験ということです。

筆者はハーバードで講義をするとき、課題としてレストラン批評を出しているそうです。学生が自分の食事体験について、全く知らない人が実際に体験しているかのように描写するという内容ですが、前述のとおり食事は五感全部で体感しています。
単にメニューや味を伝えるだけでは、食事体験を人に伝えることはできません。この課題を実際にやってみると、多くの学生がいかに普段、自分の身の回りにある感覚的な情報を軽視していたか、そしてその軽視していた情報に体験が左右されていたかに驚くそうです。

なぜそれに惹かれるのか?を追求する

直感でわかったことをどのように受け取り、知覚や感情をどう体系づけ、どんなふうに表現するか。そこから得られた傾向を、何かを決断したり行動に移したりする際に、どう役立てていけばよいか。このように、自身の感覚や知覚、感情を解釈していくことは、自分のスタイルを築き、美意識を磨くにあたっての基礎となる。そしてまた、他社の審美眼や美意識を解釈することは、優れた製品開発、ブランディング、商品開発、マーケティング、そして創造的なコミュニケーションを行う際の基礎となる。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

美意識というとすごく感覚的で抽象的、体系化できないもののように感じます。それはある程度事実なのですが、そのままではビジネスに活かせません。ビジネスの現場ではどうしてもそれをある程度体系化し、理論立てて実行する必要があります。

その訓練となるのが、3つのミニエクササイズです。

  • 愛着のある品は何か、その理由は?…一部のものを別にして、愛着のある品の大半は、強い魅力や親近感、好感を持って購入したもので、他に似たようなものが大量にある中で選んでいるはず。なぜその品に惹かれたのかを考える。
  • 目障りな品は何か、その理由は?…愛着のある品と同じく、自分で購入し、所有しているのに目障りな品もあるはず。愛着のある品から得られる感情とは逆に、苛立ちやわうらわしさ、嫌悪感を覚えるが、機能的には役立っているため今も所有している。なぜ役立ち、使っているのに目障りなのか、その理由を考える。
  • ファッションアイコンは誰で、なぜ惹かれるのか?…自分がスタイルのお手本とする人、そうなりたいと憧れる人を想像し、なぜその人に惹かれるのかを考える。

「愛着のある品は何か、その理由は」と聞かれてパッと思ったのが「NZXT CAPSULE WHITE」というマイクです。Zoomなどで人と話すときはいつもこれを使っています。

正直、iMacに備え付けのマイクでも困りません。それどころかスピーカーから音を出してもハウリングしないのでめちゃくちゃ便利です。それでも毎回このマイクを使うのは、このマイクが「かわいいから」です。

スタンドに立てた時がめちゃくちゃかわいいんですよ。執事ロボみたいな。笑 もっと便利なマイク、音質が良いマイクもありますが、多分このマイクを使い続けると思います。

他にもバルミューダの家電も愛着があるものの一つですね。電子レンジ、トースター、コーヒーメーカーがバルミューダ製品です。

使ったことがある方はわかると思うんですが、正直コスパがよくて機能性にも優れているのはトースターくらいです。そのトースターもバルミューダが注目され始めたころは新しかったのですが、今では似たような機能を持ったものがたくさんあります。電子レンジに至っては正直、機能はイマイチです。

なのになんで使っているんだろう?と考えると面白いですね。僕がパッと思ったのは手触りです。ちょっとざらっとしているんですよね。そうじゃない素材を使ったモデルもあるんですが、家にあるやつを見てみたら全部ざらっとした手触りのものばかりでした。

一方、目障りなものはなんでしょう。思いついたのは、コーヒー焙煎機です。なんだか機能の割にでかいし、うるさい気がするんですよね…結構単純な作りなのでもっと小さくしたり、余ったスペースを消音や匂い消しに使ったりできそうなものですが…

なるほど、こういうところにビジネスチャンスがあるかもしれないということですね。僕が今不満に思ったところ、つまり今の僕の美意識にマッチしないところを改善した製品は、僕と近い感性を持った人にウケるかもしれません。

新しいビジネスチャンスを美意識で掴め!

ということで今回は「ハーバードの美意識を磨く授業」を紹介しました。ハーバードの授業とかスタンフォード式とかいわれると「またこれか…」って思ってしまう今日この頃ですが、この本は騙されたと思って手に取ってよかった本です。

余談ですけどちょっと前、「オックスフォード式〇〇」っていうのが流行っていた時、著者を見てみると全然オックスフォード関係ない人が書いていた、、みたいなのがたくさんありました…笑

最後に、本書で紹介されている4つのビジネストレンドを紹介して終わりたいと思います。最初に紹介したように、美意識は一般のビジネスパーソンにも重要で、重要性はどんどん上がってきています。これから発生する4つのビジネストレンドを掴むには、高い美意識と、それを体系化してビジネスに落とし込むスキルが欠かせません。

環境問題

ミレニアル世代をはじめ、多くの消費者は環境悪化に危機感を抱き、自然環境を守るという人としての責任を果たすことに意味を感じています。そのため消費行動と環境問題を結びつける流れが進んでいて、一部の企業ではすでに対応を急いでいます。ネスレは2025年までに全てのパッケージを再生・再利用可能なものに変えるとしていますし、ペプシコ、コカコーラ、ユニリーバなども同様の発表しています。

環境問題そのものの是非は置いておいて、利益追求のように美意識のないビジネスでは絶対に掴めないトレンドですよね。

独創性、自分らしさの探求

前半に出てきた「全産業のファッションビジネス化」「利便性から情緒への価値源泉のシフト」でも紹介したように、人は生活の質を向上させることより、感覚的な喜びを与えてくれる、より自分らしいものを求めるようになります。
ただハイテクで便利なものより、五感を刺激してくれる非デジタルなものが高く評価されるていることも大きなトレンドです。

私たちは「所有するか、しないか」ではなく、「欲しいか、欲しくないか」の時代を迎えている。人の手を介することなく機械・機器があらゆる動作・制御を行うオートメーション化により、農場、ファストフード店、乗り物の運転、事務作業など、この先、あらゆる業界で人の仕事が機械に置き換えられるだろう。一方で、芸術や化学の分野、そしてビジネス戦略などを含め、創造性や独創性、そして人間のぬくもりが求められる産業では新しい仕事が生み出されるだろう。だからこそ、これからの世界で仕事をする上で美意識が重要になるのだ。もし美意識を磨いていなければ、このデジタル世界、ハンドメイド世界を生き抜くことは困難になるだろう。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

トライバリズム

あまり聞きなれない言葉ですが、トライバリズムとは「部族中心主義・同族意識」のことです。グローバル化により地域の文化、言語、生活スタイルが脅かされることへの反動として注目されています。アイデンティティ政治(ジェンダー、人種、民族、性的指向、障害などの特定のアイデンティティマイノリティーに基づく集団の利益を代弁して行う政治活動)やアクティビズム(社会的・政治的変化をもたらすために特定の思想に基づいて意図的な行動を取ること)なども同じトレンドです。
企業は今、限定的で小規模なグループのアイデンティティに訴えかける製品を作ることと、グローバルでクロスカルチャー的な製品を作ることの両方を求められています。

SNSでは自分の信念が正しいと証明するために同じ感情や価値観、目的意識を持つ人が集まりムーブメントを生むことがありますよね。それも一つのトライバリズムの形かもしれません。

曖昧な境界線

同じイデオロギーや関心、信念を持つ人がグループ化し、従来の標準という枠からはみ出すケースが増えています。LGBTQやBLMのように従来は存在していた性別や人種といった境界線も曖昧になっています。

ファッションブランドのカテゴリーもユニセックスが増えてる印象ですし、古い境界線に基づいた発言が炎上して立場を追われる、、みたいなニュースはここ数年頻繁にありましたよね。森喜朗氏の「女性は会議が長い発言」とか。発言の趣旨そのものには多様性があって良いと思いますが、その発言がどう受け止められるのかを想像するのは美意識の領域です。

最後に、本書で出会った最も熱いメッセージを紹介して終わりにしたいと思います。日本では「真善美」という価値観が古くからありますが、ここ数十年、テクノロジーの進歩とともに「真善美」よりも利益や効率が優先されてきた印象があります。
本書が書かれたのは、最先端でありながらビジネスや人間性の本質に回帰しようという話なのかもしれません。

ブランドが長く存続していくためには、その製品やサービスに触れた人に力を与え、彼らとのつながりが生まれるような、営利目的をはるかに超越した目的や狙い、意義を提供しなくてはならない。結局、それこそが本当に、そして永遠に、顧客の意欲をかき立て、製品やサービスを買わずにはいられなくし、喜ばせるものなのだ。どんな時も、顧客を単なる「消費者」と見るのではなく「人間性を備えた一人の人間」として関心を持ち、尊重する機会として欲しい。
引用:ハーバードの美意識を磨く授業

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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