こんにちは。夫です。
今日紹介するのはスコット・ギャロウェイ氏の「GAFA Next Stage 四騎士+Xの次なる支配戦略」です。
3年ほど前に「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」が大ヒットしました。僕も読もう読もうと思って、時期を逸したな〜と思って結局読まずじまいだったのですが、この間近所の本屋さんに行ったら続編が!これはすぐに読もう!と思って手に取ったのが本書「GAFA Next Stage 四騎士+Xの次なる支配戦略」です。
僕は前作の「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」を読んでいないので、他のレビューやAmazonの紹介ページの情報程度しか知りませんが、とりあえず目次を見てみましょう。
第2章 アマゾン――1兆ドルに最も近い巨人
第3章 アップル――ジョブズという教祖を崇める宗教
第4章 フェイスブック――人類の1/4をつなげた怪物
第5章 グーグル――全知全能で無慈悲な神
第6章 四騎士は「ペテン師」から成り上がった
第7章 脳・心・性器を標的にする四騎士
第8章 四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
第9章 NEXT GAFA――第五の騎士は誰なのか
第10章 GAFA「以後」の世界で生き残るための武器
第11章 少数の支配者と多数の農奴が生きる世界
見ての通り、アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグル、通称GAFAのそれぞれの企業を深掘りして、この4社がどうやって今の世界を作ったのか、この4社が支配する世界で僕たちはどう生きるのか、次のGAFAは現れるのか、といったことが書かれているようです。
そして今回紹介する本書「GAFA Next Stage 四騎士+Xの次なる支配戦略」のイントロダクションを見ると、次のように書かれています。
私はパンデミックが大企業、特にビッグテックに有利に働くと確信している。本書のかなりの部分は、私の最初の著作「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」をパンデミックの時代に合わせてアップデートしたものだ。アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルについてふたたび考察している。
そして、Amazonの紹介ページには本書の主な内容を次のように書いています。
・新型コロナは「時間の流れ」を変えた
・痛みは「弱者にアウトソーシング」された
・強者はもっと強くなり、弱者はもっと弱くなる。あるいは死ぬ。
・ポストコロナで勃興する新ビジネス
・パンデミックはすべてを「分散化」させた
・台頭するディスラプターズ
・GAFA+Xの暴走に対抗する
…ほか
こうして見比べると、前作がGAFAそれぞれの企業にフォーカスしていたのに対し、今作はその周辺環境というか、社会、政治、経済などもっと大きなテーマについて書いていることがわかりますね。実際読んでみた感想としては、想像以上にGAFA以外の話が多かったです(笑)。GAFAについて深く知れると思って読んだので、以前より前作「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」が読みたくなりました(笑)
ということで早速、本書の内容を見ていきたいと思います。
本書の後半はGAFAをはじめとするビックテックと政治の関わりや、大学などの教育機関、社会保障などの話も多いのですが、今回は前半部分、GAFAのビジネス的な側面を中心に見ていきたいと思います。
パンデミックは全てを加速させる
本書の冒頭で繰り返し述べられているメッセージが「パンデミックは物事を加速させる」ということです。
この画像は本書の冒頭で表示されているものですが、アメリカにおけるeコマース、つまりネット通販の割合です。10年ほどかけてゆっくり浸透していたものが、2020年に急激に伸びていることがわかります。
他にも加速しているものは多くあります。
アップルの株価は2018年8月2日にアメリカ史上初めて1兆ドルを突破しました。これは1817年に初めてニューヨークで証券取引業が始まってから約200年の歴史の中で初めての出来事でした。アップルはこの偉業を成し遂げるのに、42年の歳月がかかりました。
しかしそこからわずか1年後、パンデミックが始まった2020年3月から半年で株価は2倍近くまで急騰し、2020年8月19日に2兆ドルを突破しました。
こうして歴史を振り返ると、1兆ドルという大台に乗ってから2兆ドルを突破するまでがいかに短い期間だったかわかりますね…そして投資に詳しい方はご存知かもしれませんが、最近アップルの株は急騰し、3兆ドルに届きそうな勢いです…
筆者のスコット・ギャロウェイ氏はパンデミックが産んだ急速な変化をこう表現しています。
愛国主義とは、かつては国のために犠牲を払うことだった。いまでは国から恩恵を受けることを意味している。
パンデミックの最中、国や指導者は行動でそれを物語った。たしかに何百万人もの死者が出るのは痛ましい。しかしナスダックが下落するよりはマシだ、と。
その結果、パンデミックの被害に偏りが生じた。低所得のアメリカ人や有色人種は、高所得世帯の人々に比べて、感染して死亡するリスクが2倍も高い。裕福な家庭では、通勤回数や交通費が減ったために、家族と過ごす時間、ネットフリックスの視聴時間が増えた。さらに貯蓄、株のポートフォリオの価値も増加している。
パンデミックというのは本来、地位や資産にかかわらず被害があるものです。でも各国政府が取った行動は、富裕層をより裕福にし、テレワークに移行できないエッセンシャルワーカーや貧困層を危険に晒すことだったんです…
しかし、本書は悲観する本ではありません。本書の序盤には「危機とは、”危険”と”機会(チャンス)”からなる言葉だ」として、危機の最中には必ずチャンスがある(それがGAFAのようなビッグテックに有利なものであれ…)と語っています。
ポストコロナで巨大化するビジネス
パンデミックが全てを加速すると書きましたが、これは一部の業界や株価だけの話ではありません。本書では「無慈悲なサバイバル」と表現しています。
パンデミック下では、キャッシュを持ち財務基盤が盤石で、変動費が占める割合の多い企業に有利に働き、それ以外の弱い企業は犠牲者となりました。
本書ではいろいろな例が紹介されていますが、ここではウーバーを例に挙げてみます。
日本ではウーバーイーツでデリバリーサービスの印象が強いウーバーですが、アメリカではタクシーといえばウーバー、ちょっと出かけようとする時はウーバーを開くのが当たり前になってきています。
本書では、先ほど紹介したキャッシュを持ち財務基盤が盤石で、変動費が占める割合の多い企業、つまりパンデミック下でさらに優位になるビジネスとして「他人を搾取するビジネス」をあげていて、その1つがウーバーなのです。
ウーバーは配車アプリなので、パンデミックの影響をダイレクトに受けています。しかしパンデミック下でも、株価は強くありませんが、同じくダイレクトに影響を受けた航空、レジャー、レストラン企業と比べると、かなり堅調に推移していることがわかります。
ウーバーは自己資本ではなく、他人の資本を使ってビジネスを行っています。
同社は車での移動手段を提供する世界最大級の会社でありながら、車を1台も保有していません。
普通のタクシー会社であれば、売上が減っても運転手の給料、車の維持費などが経費としてかかりますが、車などの自己資本を持っていないウーバーは違います。売上が減ればウーバーは運転手に給料を払う必要もなければ、車のメンテナンス費用も必要ありません。
ウーバーは、他人が持つ資産を有効活用するプラットフォームを提供しているだけだからです。
ウーバーのモデルが搾取的なのは間違いない。
ウーバーの”運転手パートナー”は、自分で車のローンや保険料を払わなければならない。これはユナイテッド航空の乗務員にこう言っているのと同じだ。給料が欲しければ自分で飛行機を調達してこい、と。
こうして考えると、他人の資本で稼ぐプラットフォームサービスはすごいですね…どこかの経済ジャーナリストがウーバーなどギグワーカーを使ったサービスを「貧困ビジネス」と呼んでいたのを思い出しました…民泊のエアビーアンドビーも同じビジネスモデルですね…
そしてこれは消費者にとっては良いことかもしれませんが、パンデミックによってビジネスが分散化されるとも言っています。分散化とは、アマゾンが家をショッピングモールに、ネットフリックスがリビングを映画館に変えたように、どこにでもサービスが浸透している状態を差します。
これはすでに始まっている流れですが、今後さら加速すると言います。
例えば医療。パンデミック下で気軽に病院にいけないのもあり、オンライン医療がかなり進みました。スマホの高解像度カメラは診療道具になり、チャットで気軽に相談できるサービスが日本でも登場しています。
しかしこうした分散化は格差の原因にもなります。少なくとも現状では、収入が10万ドルを超える仕事の6割が家でもできるのに対し、4万ドル未満の仕事は1割程度しか家でできません。出社制限やリモートワークが長く続けば、リモートワークができる高所得層はリモートワークで稼ぎながら家族とゆっくりした時間を過ごし、リモートワークができない低所得層は危険を承知で出社するか、職を失うことになります。
ブランド時代の終焉とプロダクト時代の到来
そして当然、企業のマーケティング戦略にも変化が訪れます。
これまでは実際にはほとんど差がない商品を大量に作り、テレビCMなどを使ったブランディング戦略で大衆に売ることが大企業の戦略でした。
その理由は、SNSが浸透したことで、企業がCMなどで表向きに発するメッセージと、実態との差に気づけるようになったからだと言います。
例えば、ある企業や団体が人種差別や性的マイノリティとの関わり方、多様性に関する考え方について、テレビCMでキレイなメッセージを発したとしても、店舗や従業員同士の会話がSNSを通じてすぐに外に流れ、実態が明らかになってしまいます。
ブランド企業の社会的不正への反対表明は、見せかけだけであり、実態が伴っていないように見える。制度的な人種差別は深刻な問題だ。テレビのスポット広告30秒だけでは、その差別問題について真剣に取り組んでいることを示せない。
ソーシャルメディアの普及と、インターネットでの検索がすべてを変えた。企業は、”真剣なふりをする”ことが前よりはるかに難しくなった。これは人種差別だけでなく、どんな問題に関する広告にも言えることだ。
だからこそ、これまでのブランド戦略は通用せず、プロダクトの時代が始まるのです。人種差別についていくらキレイなメッセージを流しても、ウイグル人の弾圧が問題視されるウイグルや違法労働問題を抱えたベトナムの工場で作られた商品を販売していたらどうでしょうか。SNSやネットで調べたら、どこで作られ、そこがどんな場所なのかはすぐにわかってしまいます。
最近紹介した2冊の本「学び続ける知性」「これからの集客はYouTubeが9割」は日本人著者の本で、テーマも違いますが、同じようにブランド時代が終わり、プロダクトの時代が来ると言っていました。異なる立場、考えの人が同じことを言うということは…かなり的を得ているということです。
プロダクト時代を支配する「青」と「赤」のビジネスモデル
ブランド時代が終わり、プロダクトの時代がくる。これまでブランド戦略で拡大した企業の多くが弱くなり、プロダクトを持つ企業が強くなる。先ほどそんな話をしましたが、プロダクト時代にはプロダクトをどう収益化するかで大きく「青」と「赤」2つのビジネスモデルに分けられるといいます。
青のビジネスモデルは、商品を製造コストより高い値段で売るもの。
赤のビジネスモデルは、無料または原価で配り、行動データで収益化するものです。
これだけだとイメージできないので実際の例を見てみましょう。
アップルのiPhoneは「青」のプロダクトです。
iPhoneは高品質なデバイスで付加価値を付け、原価400ドルの資源を1200ドルで販売しています。
一方、Googleのアンドロイドは「赤」のプロダクトです。
アンドロイドもまずまずの品質がありますが、iPhoneよりかなり低価格帯のものが多いです。その代わり、自分達のデータを広告主に差し出す必要があります。
アンドロイドは1日に1200種類のデータをユーザーから集めていますが、iPhoneはその6分の1、200程度のデータしか集めていません。快適にデバイスを使うためにいろいろなデータが必要になりますが、アンドロイドが異様に多く、快適に使うため以上の目的に使われているのは明らかでしょう…それにアップルは顧客のデータを売ることはしないと明言しています。
他の例を上げてみましょう。
Disney+やNetflixは「青」のプロダクトです。利用には費用がかかりますが、高品質な作品をみることができ、データは自分達におすすめの映画を表示するために使われます。
一方、YouTubeは「赤」のプロダクトです。無料で利用できますが、代わりにデータを提供し、広告を見せつけられるハメになります。
つまり、アップルやディズニーなど「青」のビジネスモデルを採用した企業にとって、顧客は製品を利用する人ですが、Googleなど「赤」のビジネスモデルを採用した企業にとって、顧客は広告主で、ユーザーは商品なのです。
これまで印象としては一緒くたになっていた赤と青のビジネスモデルですが、個人情報の関心が高まったこともあって最近は明確に分けられてきているそう。データ利用しないことを明記した上で、有料で利用する検索エンジンも注目されているそうです。
どちらが良い悪いの話ではありません。僕は広告関係の仕事をしているというのもありますが、データを提供することは決して悪いことではないと思います。それによって利用者は無料で利用でき、広告主は自社のサービスを必要とする人に情報を届けることができるのですから。
GAFA +Xが巨大化するエネルギー
本書では、なぜGAFAのような企業が巨大化するのか、政府の規制や利用者の選考がなぜGAFAには太刀打ちできないのかがいろいろな例で書かれています。
ここでは、GAFAの力の根源と言われる3つを紹介したいと思います。
それが、
- イノベーション
- 不明瞭化
- フライホイール
です。
イノベーションについては説明はいらないでしょう。アマゾンは無数の工夫で家をショッピングモールにしました。グーグルは検索という手段を民営化し、全ての人にとってそれぞれ最適なものにしました。フェイスブックは人との繋がりを一変させ、アップルは先に挙げた3つのサービスに最高の体験と共にアクセスできるデバイスを発明しました。
不明瞭化は言葉だけだとピンと来ませんが、よくわからない状態を維持するということです。実質的な独占状態にあっても独占状態にはないふりをし、政府と戦うフリをしながらロビー活動に大金を使います。
そして3つ目のフライホイールこそ、GAFA+Xが巨大化し続ける秘訣です。
ビジネス系の記事や本を読む方であれば、どこかでこんな図を見たことがあると思います。
元々はアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏が書いたラフなスケッチだったそうですが、アマゾン最初にして最大のイノベーションとも言われています。
低価格で商品を提供すれば顧客体験が良くなる。それによって取引(売り手)が増えるので品揃えが増し、さらに顧客体験が良くなる。この循環が回り出したらと回らない、他社が別のアイデアや資金で追いつこうと思っても一度回り始めたフライホイールに勝つことは簡単ではありません。
グーグルもわかりやすいですね。検索エンジンを無料で提供し、多くの人が利用する。多くの人が利用するからデータが溜まり検索結果が最適化しやすくなり顧客体験が向上する。そしてより多くの人が利用して…という成長のループが止まりません。
そして一度回り始めたフライホイールは独占し、本業以外の事業さえ飲み込んでいきます。
例えば、アマゾンは今や世界最大の運送業者でもあります。みんながアマゾンを使い、その顧客体験を高めるために強固な運送ネットワークを築き上げ、さらに顧客体験が良くなる。すでにアマゾンは、フェデックスなど運送業を本業とする企業が太刀打ちできないほどの運送業者でもあるのです。
もう1つはアップルです。アップルはスマホ、PCメーカーというイメージがありますが、世界最大の時計会社でもあります。ロレックスとティファニーを合わして、さらに2倍にしてもアップルの時計、つまりアップルウォッチなどのウェアラブル事業の収益には及びません。
一旦フライホイールが周り、強固な独占を築き上げると、その周辺にあるビジネスもどんどん飲み込んでいくのです。
メディア事業もそうです。Netflixを多くの人が利用したことで、Netflixは世界中の誰よりも顧客がどんなエンターテインメントを求めているのかに精通した企業になりました。結果、ヒット映画はハリウッドではなく、Netflixが作るようになりました。
もともとNetflixは映画を見るためのプラットフォームでしたが、いまやそのプラットフォームで配信されるコンテンツでも王者になっています。
本書ではさらにフライホイールによって巨大化、独占化したビッグテックは「大きすぎて潰せない」状態になっているといいます。確かにアップルやアマゾン、グーグルが倒産したら、僕たちの生活はメチャクチャになりますよね…そんな今、GAFA+Xはいくらでもリスクが取れるようになりました。成功すればさらに巨大化できる、仮に失敗しても潰れることはない(政府に救済される)からです。これを本書では「成功の手柄は自分達のものに、失敗のツケは社会のものに」という言葉で表しています。
破壊される業界と破壊する企業が持つもの
記事が結構長くなってきました。こんなに長い記事なら本を買って読んだ方がマシだ!と思っているかもしれませんが残念。僕はまだ本書の前半3分の1程度までしか紹介していません。
とはいえ、このペースで書いていくと流石に長すぎますし、本書を読む面白味がなくなってしまうので、最後に「破壊される業界に共通する4つの要素」と「破壊する企業が持つ8つの特徴」を紹介して終わりたいと思います。
破壊される業界
GAFAをはじめとするビッグテックは、1、2社で市場を独占し、さらにその周辺の企業も飲み込んでいきました。そしてフライホイールにより、集まった資本、データなどがサービス改善につながり、さらに資本、データが集まるという循環を繰り返し、どんどん巨大化していきます。
そんなGAFAに飲み込まれる業界は?本書では4つのディスラプタビリティ・インデックス(崩壊指標)を紹介しています。
1つ目の指標はイノベーションが起きておらず、付加価値がほとんど増えていないのに価格が上昇している業界です。
例えば、アメリカの高等教育の授業料は40年前と比べて1400%も上昇しました。しかし、高等教育でやっていることはあまり変わりません。タブレットなどが入り効率化された部分はあるでしょうが、黒板を背に教授が立ち、生徒が並んで座っているという光景は変わりません。
こうした業界にGAFAのようなビッグテックがイノベーションと、膨大な資本を持って参入してきたらどうでしょうか?既存の事業はほとんどが駆逐されるでしょう。
すでに書いたように、時代はブランドからプロダクトへ移ってきています。これまで築き上げたブランドイメージはSNSとインターネットの中で剥がれ、優位性がなくなっていくでしょう。
一部の大企業がプロダクトの品質や顧客体験ではなく、ブランドイメージによって独占しているなら危険信号です。GAFAをはじめとするビッグテックは世界で最も資本が集まる場所であり、イノベーションが活発です。ブランドの価値が下がるなら、プロダクトと資本で勝つしかありませんが、それができる企業は多くありません。
消費者と企業が敵対している業界は少なくありません。本書では保険業界を例に挙げていますが、保険料を払いたいと思っている人は誰もいませんよね。でも保険がないと不安だから渋々払っているだけです。保険を使う日(不幸が降りかかる時)まで、保険会社にありがたさを感じることはないでしょう。
こうした業界も危険です。なぜなら、GAFAはどこまでも顧客に焦点をあてる企業だからです。アマゾンが保険事業に乗り出したらどうでしょうか?莫大な資本を使い、どこよりも保険料を安くできるはずです。それに、アマゾンは保険で儲ける必要がありません。アマゾンで健康食品を買ってもらえたらそれでいいんです。
最後の要素は偽のイノベーションです。これは文字通りイノベーションのように見えるけど、顧客に価値を与えていないものです。
既存の大企業は自分達の立場を維持するため、イノベーションを嫌うことがあります。とはいえ何もしないわけにはいかないので、イノベーションのようなものを生み出そうとします。
例えば、窓口で購入するより手間がかかるオンラインチケットやタッチパネルです。新しいことに取り組んでいる印象を与えながらも、顧客にはそこまでメリットがありません。
既存の企業が変わることを恐れるようになれば、破壊されるのは時間の問題です。変わることを恐れない、変わり続けることこそが使命であるとDNAに刷り込まれたGAFAの敵ではありません。
これが4つのディスラプタビリティ・インデックス(崩壊指標)です。どうですか?自分が働いている業界が当てはまるか、ちょっと考えてみてください………それでは次に、破壊する側に共通する要素を見ていきましょう。
次のGAFA「最強の破壊者」が持つ特徴
先ほどあげた4つの特徴を持つ企業は、GAFAのようなビッグテックに破壊される可能性が高い業界です。では、破壊する企業はどんな企業でしょうか?本書のタイトルに「GAFA+X」とあるように、GAFAだけが全てを飲み込むわけではありません。
次のGAFAと呼ばれるような、新しい破壊者が生まれています。
本書ではそうした企業が持つ特徴を「Tアルゴリズム」と読んでいます。Tはトリリオン(兆)を差し、業界を破壊し支配することで時価総額が1兆ドルを超えるような企業を発見するためのアルゴリズムです。
これは投資家として目が離せませんね。僕もアップルなどすでに支配的な企業に投資していますが、これから支配するであろう企業を今見つけられるなら、ものすごい投資リターンになります。
それでは4つのTアルゴリズムを簡単に見てみましょう。
- 本能に訴えかける…人間は生物学的ニーズを満たそうとする性質があり、この本能に訴え、活用する方法を見つけた企業が最も強い。グーグルは「知りたい」という欲求を効率的に満たすことができる。Facebookは「人と繋がっていたい」という欲求を満たすことができる。
- キャリアの箔づけになる…企業は優秀な社員の集合体であり、優秀な社員を集められるかどうかが重要になる。GAFAが持つイメージ、知的財産、そのほかさまざまな要因から、世界中のトップ人材がGAFAで働きたいと願っている。
- 成長とマージンのバランス…成長する企業は売上の成長と利益の成長の両方をバランス良く達成している。しかし多くの企業は安売りすることで少ない利益で売上を伸ばすか、希少性・付加価値により高い利益を得るが成長が遅いか、どちらかである。しかしGAFAはその両方を高いレベルで達成する例外的企業だ。
- ランドル…ランドルとは定期的な売り上げをもたらすサブスクリプションサービスのようなものを指す。こうしたサービスは顧客が自社商品以外を検討する機会を奪い、低コストで高い売上を出し続ける。
- 垂直統合…垂直統合とは商品の製造から販売まで全ての工程をコントロールすることを指す。アマゾンはECサイトだったはずが、今では服からタブレットまで独自の製品を作る製造業であり、クラウドサービスを提供するソフトウェア企業でもある。アップルはiPhone製造工程の多くをコントロールすることで高い利幅を維持している。
- ベンジャミンバトン製品…ベンジャミンバトン製品とは年を経るほど若返るサービスを指す。家や車、その他消耗品のように使えば古く、減っていくのではなく、使えば使うほどデータが溜まり、よりよくなっていく。
- ストーリーテリング…挑戦的なビジョンを株主やステークホルダーに共有するリーダーがいればより多くの資本と人材が集まる。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスはその能力に長けている。
- 好感度…政府やメディアに睨まれず、有利な業務提携を結ぶことができる能力。好感度は消費者にも伝わり、企業に「クール」「イノベーティブ」といった人格を与えることができる。
GAFA+Xかそれ以外か
ということで今回は「GAFA Next Stage 四騎士+Xの次なる支配戦略」を紹介しました。
短い本ではないですが、ドキドキハラハラさせてくれるので一気に読み切ってしまいました。本書には無数のエピソード、実際の企業の取り組みや現状が書かれていて、物語を読むように読み進んでしまいます。
この本を読んで何を得て、どう行動するのか?
僕は本を読む時、こうしたことを意識します。読んで「面白かったなー」で終わってしまったらビジネス書、実用書を読む意味が半減してしまいます(もちろんそれも重要です)。
しかし、僕はGAFA+Xと呼ばれるようなビッグテック企業に勤めているわけではありません。日本にいるから実感がないだけかもしれませんが、今働いている会社がもうすぐGAFAに飲み込まれる、ということもなさそうです。
おそらく、この記事を読んでいる方も多くがそうだと思います。
では本書を読んでどうするのか?
1つは投資家として、基準の1つにしてもいいと思います。GAFA+Xと呼ばれる企業、Xにはマイクソフトやネットフリックス、エヌビディアやテスラなどが入ると思いますが、これらはここ数年、大きく株価を伸ばしました。
投資家として企業に投資するなら、今回紹介された破壊される業界や破壊する企業の特徴を抑え、投資判断の1つに持っておいて損はないでしょう。
もう1つは、自分達の仕事がGAFA+Xが支配する時代に、どんな仕事をしていくべきか、今から考えておくことです。
僕はこれからまだ何十年も働く予定です。GAFA+Xと呼ばれる企業に入社する実力もありません(そもそも英語ができない…)。
今はまだ自分が働いている業界にGAFAの影はないかもしれませんが、10年、20年というスパンで考えたら、フライホイールを取り入れ、破壊する企業の特徴を兼ね備えた企業が登場するかもしれません。
そうなれば、同じ仕事を20年後もしているわけにはいかないでしょう。GAFA+Xに飲み込まれるか、立ち向かうか。飲み込まれるにしても、その時役立つスキルを身につけておくのか。立ち向かうにしても、正面衝突ではなく、GAFA+Xが入ってこないようなニッチな分野を攻めるのか。
こうしたことはイメージしておいて良さそうです。
僕はGAFAのようなビッグテックが割と好きで、投資したりもしていますが、本書はGAFAに否定的というか、GAFAをなんとかしないといけないという立場。そうした立場からの意見は刺激的でした。これからもGAFAを始め、世界トップに君臨するビッグテックに関する本はいろいろ紹介していきますね!学びになるだけじゃなく、物語としてもめちゃくちゃ面白いので。
この記事を書いた人
- かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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