Numbers Don’t Lie-嘘のない数字で世界のリアルを掴む

Numbers Don’t Lie-嘘のない数字で世界のリアルを掴む 実用書
Numbers Don’t Lie-嘘のない数字で世界のリアルを掴む
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こんにちは。夫です。
最近よく行く本屋さんでひときわ目立つ位置に、ひときわ目立つ黄色い本が置かれていました。

それが本書、「Numbers Don’t Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ」です。

夫

僕は元々こういうデータを基に常識をぶち壊してくれそうな本が好きなのですが、さらに帯にビル・ゲイツの推薦文が載っている。しかも本書の最後、翻訳者のあとがきをちらっと見ると、「ビル・ゲイツが自身のブログの中で過去8年間で最も多く言及した著者」と書かれていれば、買わないという選択肢はない…

本書は数年前にヒットした「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」と同じようなコンセプトで、多くの人がイメージで抱いている事を、リアルな数字、データで見ていこう、というものです。

例えば、

  • 地球上で最も多くの割合を占める動物は「人」ではなく「牛」である
  • スマートフォン製造は車を製造するより環境負荷が大きい
  • CO2削減で僕たちができる最も効果的な方法は、窓の断熱材を変えること
  • 電気自動車は全然エコじゃない

などなど。こうしたデータが、世界の国々、食、エネルギー、環境、移動、機械について、71項目も紹介されています。

夫

今挙げた4項目、妻は興味ないんだろうな〜(笑)。正直、興味のない項目は読み飛ばして「まじで!?」「やっぱりそうなんだ!」という部分だけをザーッと流し読みしていたんですが、ニュースや政治を理解する時に役立ちそうな知識がたくさん得られます。ちなみに、「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」と同じようなコンセプトといいましたが、僕はファクトフルネスのほうが好き。ファクトフルネスはやっぱり書き手のパワー、想いがものすごく強い。本書はファクトフルネスほどのパワーはないけれど、71項目もあるのでより全体的です。

本書のタイトルにあるように「Numbers Don’t Lie」、数字は嘘をつきません。
誰かが「電気自動車は環境にいい!」と言ったら、それはただの意見です。でも、「電気自動車を製造するのに必要なコスト、環境負荷はこの程度で、走行時に必要な電気を生み出すのに必要なエネルギーは…」と数字を基にすれば、それは事実です。

つまり、正確なデータを得ることができたら、そのデータから客観的な事実を見つけることができる。そして、客観的な事実を見つけることができたら、自分なりの意見を持つことができる。
なので、本書では信頼できて、正確性が高いと考えられる、4種類の情報源から引用しています。

  • 国際機関が公表している世界各国の統計
  • 国の公的機関が公表している年報や年鑑
  • 官公庁が編纂した歴史的な統計データ
  • 科学誌に掲載された論文

この4つを基本として、科学論文集や信頼度の高い大手コンサルタント会社の報告書や歴史ある調査機関が実施した調査データを基にしています。

ここまでデータにこだわって、本書はなにを伝えたいのか。著者、バーツラフ・シュミル氏の言葉から引用します。

まず初めに申しておきたいのは、ファクト(事実)をはっきりさせる、それが本書の目的だということ。とはいえ、それは一筋縄ではいかない。確かにインターネットには数字が溢れているが、日付も出処も不明なデータを適当に引っ張ってきただけのものがあまりにも多いうえ、単位が不確かなものも散見する。
<中略>
世界ではいま、本当のところ、なにが起こっているのだろう?それを理解するには、数字を適切な観点から見なければならない。つまり、歴史的な観点から現在と過去を比べたり、国際的な観点から国と国を比べたりするのだ。
<中略>
読者のみなさんが本書を読んで、この世界の真の姿を少しでも理解してくださることを願っている。わたしたち人間はとてつもなくユニークな存在で、さまざまなことがらを深く理解しようと飽くなき努力を重ね、発明や発見を続けてきたことに、きっと胸を打たれるだろう。
数字はウソをつかない(Numbers Don’t Lie)。その事実のみならず、数字がどんな真実を伝えているかを、さまざまな例を挙げながら説明したい。

夫

僕は読む本を選ぶ時、「はじめに」など冒頭と、「あとがき」など最後の部分を読んで決めます。なぜなら、そこに筆者の思いやメッセージがすべて詰まっているから。本書の冒頭も、読んだ時「この本は読まないといけない!」と強く感じました。毎日ネットニュースを見て、たくさんの本や記事を読んで、何時間もYouTubeを見て、僕は少しでも世界のことがわかったのでしょうか?本書には、その答えがありそうです。

それでは、さっそく本書の内容に入っていきましょう。
今回は本書で71も挙げられている世界の真実を表すデータの中から、僕が気になったものをピックアップしていきます。

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感染者数を正確に把握することは難しい

夫

いきなりホットな話題です。本書が書かれたのは2020年3月。ちょうどコロナウイルスが世界中を騒がせ始めた時です。そこから1年半以上、毎日ニュースでは「今日の陽性者数は○人でした」などと報道しています。でも、そのニュースに対するネットの反応を見ると「陽性者数を見ても意味がない」という意見もたくさん。実際のところ、”感染者数”や”陽性者数”、”患者数”ってなんなんでしょうか…?

今、テレビでは毎日「今日の感染者数は〜、重傷者数は〜、死亡者数は〜」と報道されています。しかし、実際のところ、感染拡大の規模や実際の被害を把握することは簡単ではありません。感染が収束した後でさえ、難しいのです。

例えば、今コロナウイルスの検査に使われいているPCR検査。これは唾液などを採取して、そこに含まれているウイルスを培養して、その中にコロナウイルスが入っているかどうかを調べるものです。
極端な話、1つでもコロナウイルスが入っていたら、PCR検査で陽性となってしまう可能性があるわけです。しかしその人は本当に、コロナウイルスの”感染者”でしょうか。
たまたま採取した綿棒に付着しているかもしれません。検査所の空気中にコロナウイルスが飛沫していて、それが検出されてしまったのかもしれません(そもそも検査所は感染の疑いがある人が行くところなので空気中に飛沫している可能性は高い)。

しかし、ただ唾液の中にウイルスが入っていたからといって、その人に症状が出たり、他の人に感染させてしまうかどうかはわかりません。ただ空気中の飛沫が入っていただけなら家に帰ってうがいしたときにウイルスは流されてしまうかもしれません。体内で増殖する前なので、すぐ免疫で対処されるかもしれません。

夫

陽性者数が増えている!って大騒ぎしていたら、実は駅で無料のPCR検査をやって検査数が爆増していただけだった、、なんてこともありましたね。

このように、そもそもウイルス感染を検査するということが非常に難しいのです。PCR検査の精度は70〜90%と言われていますが、数学的にはあまり当てになる精度ではありません。

しかしここで”データ”として紹介されているのは、2009年の新型インフルエンザです。

ここで驚く数字は、

2009年の新型インフルエンザパンデミックの致死率は、その定義によって500倍もの違いが生じていた

ということです。

コロナウイルスに関するいろいろなデータはまだまだ検証段階。なにが正確とは言えませんが、これは10年以上前にパンデミックを起こし、すでに十分な研究や検証が行われたデータです。
致死率は(その感染症による死亡者数÷その感染症の感染者数)で出しますが、感染者をどう定義するのかによって分母が大きく変わってしまいます。また、過去のパンデミックでは死亡者数にも定義によって2倍以上の差が生じることもあったようです。

夫

データによって、1つの感染症の致死率が500倍も違う…つまり、ある人は「致死率0.01%です」といい、大したことないなと思っていたら、別の人が「致死率5%です。非常に危険な感染症です」と言い出すようなものです。「Numbers Don’t Lie」数字は事実しか表しませんが、その数字の定義は人によってさまざま。僕たちが普段ニュースで聞く感染者数、死亡者数は、どういった定義の数字でしょうか?

当てにならない経済指標と幸福の関係

続いて、いろんな経済指標と幸福の関係に関するデータを見てみましょう。

経済指標というと、例えばGDNとか、失業率とか、平均賃金とか、そういうやつです。

夫

僕は最近、アメリカの雇用統計、つまり失業率に注目しています。長期投資ならあまり関係ないのですが、米国株に投資しているとアメリカの経済指標はついつい見てしまいますね。

そんな失業率を例に出すと、実はアメリカが公式に発表している「失業率」には6つも種類があるんです。

では、その6つの失業率の定義と、本書で紹介されている2019年12月時点の数字を紹介すると、

  • 1.2%…労働力人口の中で15週間以上、失業状態にある人の割合
  • 1.6%…失業し、臨時雇いの期間も終えた人の割合
  • 3.5%…労働力人口の中で、完全失業の状態にある人の割合
  • 3.7%…完全失業の状態にある人と勤労意欲を失った(求職活動を辞めた)人の合計の割合
  • 4.2%…上記に現在仕事がなく、仕事を求めているが、最近4週間は求職活動をしていない人を含めた割合
  • 6.7%…上記に、経済的な理由でフルタイムで働きたいのにパートタイムで働いている人を加えた割合
夫

これは知らなかった…1つ目と6つ目で5倍以上の差があります…一般に言われる失業率は3つ目の定義のようですが、ニュースなどで「失業率が〜」などと聞いたときは、どの失業率なのか意識して見ないと、判断できないですね。

そして、それ以上に重要なことは、こうした経済指標で国民の幸福や生活の現実を知ることは全然できないということです。
例えば、僕は今、正社員として働いていますが、もし投資を続けて、投資の収益だけで生活するようになり、仕事を辞めたらどうなるのでしょうか?経済的には何の不満もなく、幸せで悠々自適な生活を送っていても、4つ目以降の定義では失業者にカウントされてしまいます。

それに、日本は先進国の中でも失業率が安定して低い国ですが、「世界幸福度ランキング」では58位と、かなり低いのです。

夫

ちなみに、パレスチナ問題で今年の春頃にミサイルが飛び交っていたイスラエルの幸福度ランキングは14位、コーヒーとマヤ遺跡くらいしか目立ったものがない(たぶん僕が知らないだけ)グアテマラは29位です。正直、このランキングを見た日本人は「ウソでしょ?絶対この国よりいい暮らししてるって」と思ってると思います。

おそらくほとんどの人が「世界幸福度ランキング」という言葉を聞いたことがあると思いますし、日本がこんなに低いんだと驚いた人も多いと思います。
でも一方で、幸福度ランキングがどういう基準で出されているのか、調べたこともないのではないでしょうか?

幸福度ランキングの判断基準を知れば、なぜ日本がこんなに低いのか、見えてくるかもしれません。

  • 1人あたりGDP
  • 社会的支援(困ったときに頼れる親戚や友人がいますか?という質問への回答で評価)
  • 健康寿命(世界保健機関の100項目に及ぶ健康評価)
  • 人生の選択の自由度(人生で何をするかを選択する際の自由度に満足していますか?という質問への回答で評価)
  • 他社への寛容度(この1ヶ月間で慈善団体に寄付をしますか?という質問への回答で評価)
  • 社会の腐敗をどの程度と認識しているか
夫

思ったよりいいかげんな基準が多いですね。1つ目と3つ目以外はかなり主観的。というか、国民の幸福というより、メディアの報道傾向に左右されそう…。こうして基準を知れば、日本が低い理由も、経済的に貧しかったり内戦状態にある国でランキングが高い理由もなんとなくわかりますね。ちなみにカトリック教の国はランキングが高い傾向にあるらしいのですが、隣人を助けるという教えがあったり、寄付の文化があるとかが理由だと思います。

これらのことから、僕が学んだことは2つ。

一つは、データを見るときには、その定義を確認しないといけない
もう一つは、幸福とは相対的で主観的なものでしかない(少なくとも、世界幸福度ランキングが定義する幸福は)。

日本を見れば中国の未来が見える

第二次世界大戦が終わった時、壊滅的打撃を受けた日本ですが、1980年代にかけてソニーのトランジスタラジオや住友の大型原油タンカー、トヨタやホンダの自動車などを世界中に輸出し、急成長しました。
1978年には世界第2位の経済大国になり、オイルショックやプラザ合意などはあったものの勢いは衰えず、1990年のバブル絶頂期まで成長し続けました。

しかしそれから30年余、経済は停滞を続け、中国や韓国、北朝鮮といった隣国との政治問題、少子高齢化など多くの問題を抱えています。そんな日本を、筆者はこう表現しています。

大国というものは、たいてい似たような盛衰の足跡をたどるものだが、その道程で最も違いが見られるのは、繁栄をきわめる時期の長さだ。わりと長いあいだ繁栄を続け、その後、着実に衰退していく国もあれば、一気に頂上にのぼりつめたあと、程度の差はあるにせよ、あっという間に坂を下り始める国もある。
<中略>
日本という国は、人間の一生ほどの短期のうちに、戦後の焼け野原から立ち上がり、世界から称賛され、おそれられる経済大国に上り詰め、そのあとは長期の停滞に苦しみ、高齢化社会に突入したのだ。

そして中国を見てみましょう。中国がGDPでアメリカを抜き、世界一位の経済大国になるのは時間の問題、というのは聞いたことがあると思います。それはおそらくその通りになるでしょう。物価の変動を抜いて算出すれば、すでに中国はアメリカを抜いている、というデータもあるそうです。

中国は1978年、それまでの30年におよぶ大失策から抜け出し、近代化へと舵を切り始めました。それから世界最大の人口による圧倒的な生産力によって、穀物や石炭、電子機器などを大量に輸出し、経済成長してきました。

しかし一方で、一人あたりGDPは国別ランキングで73位。貧富の格差が問題になっています。それにPM2.5による大気汚染や水質汚染の公害も広がっています。人口が多い分、エネルギー問題も深刻で、中国の沿岸部には次々と原子発電所が建設されていて、災害リスクもあります。
そして、一番の問題が急速な高齢です。2015年まで続いた一人っ子政策によって生産年齢人口の割合は2010年をピークに減少し続けています。

どこかで聞いた話と思いませんか?
急激な経済成長で、バブル経済期には極端な経済格差を生みました。経済発展の代償として、公害問題も多く起こりました。そして少子高齢化。
1990年の日本と2020年の中国は、驚くほど共通点が多いのです。

そして1990年から30年間、日本経済は停滞しました。東日本大震災では、これまで安全だと言われていた沿岸の原子力発電所で事故が発生。
2050年の中国を知るには、今の日本を見るのが一番参考になるのかもしれませんね。

CO2削減には省エネ家電より、窓の断熱材

気候変動、CO2削減、グリーンニューディール…ここ数年、ビジネスの主役はいわゆる「脱炭素経済」だと思います。

夫

去年から本格的に米国株に投資し始めた僕にとって、去年の脱炭素銘柄はエキサイティングでした。安全性重視で投資をしているので、特に恩恵を受けたわけではありませんが…(笑)

脱炭素経済に対して僕たちができることは何でしょう?
電気をこまめに消す。エコバッグを使う。ハイブリッド車に乗り換える。色々ありますが、今回取り上げたいのは「エアコン」です。

といっても、夏は蒸し暑いのに耐え忍び、冬は家でもダウンジャケットを着よう、なんて言いませんし、最高性の省エネエアコンに買い換えよう、という話でもありません。

断熱材」です。

断熱性能は「R値」という単位で表せるのですが、小難しい話はおいておきましょう。本書には詳細な説明が載っています。
ただこのR値、断熱性能は一般的な感覚とはずれていて、例えばヨーロッパの漆喰塗りのレンガ造りの壁は、アメリカの住宅に使われている薄っぺらい合板の壁より、R値が低い、断熱性能が悪いんです。

夫

レンガ造りというとなんとなく暖かそうな印象がありますけど、実際の断熱性能で見ると、合板に劣る…これも本書を読まなければ多分一生知ることがなかった知識です。

とはいえ、この記事を読んでいる人がレンガ造りの家に住んでいる確率は低いと思いますし、もしそうであっても壁をまるごと変えるなんて、簡単にはできません。

でも、もっと簡単で、効果的なのが「窓」です。

実は家の中で最も熱が出入りしているのが窓で、窓ガラスを寒冷地などで使われる三層ガラス窓に変えるだけで、普通のガラス窓より熱の損失を90%も減らせるんです。

これがどれくらいすごいことか。
外気温がマイナス18度の寒冷地で、室内温度が21度だとすると、普通の窓の場合、窓ガラスの表面温度は1度程度になります。つまり、暖房器具は、窓ガラス付近の冷えた空気を、頑張って21度になるまで温めないといけないんです。
一方、三層ガラス窓の場合、窓ガラスの表面温度は18度になります。マイナス18度の極寒の地にいて、窓ガラスを触っても、ほんのり温かいくらいだということです。

当然、冷房でも同じです。三層ガラス窓に変えるだけで、エアコンの消費エネルギーを大きく抑えることができるんです。

筆者は「住居の暖房の効率を上げる方法は、三層ガラス窓を除けばほとんどどない」と言います。

結論。電気自動車や最新のクリーンエネルギーのように実証されていない新技術に投資するのではなく、三層ガラス窓に変えよう。

風力発電はクリーンエネルギー?

CO2削減の話題になったので、そのまま、現代のクリーンエネルギー、脱炭素社会の代名詞、風力発電のデータを見てみましょう。

夫

本書ではかなり細かな数字が出てきますが、ここではざっくりしたイメージだけお伝えできたらと思います。

風力タービンが延々と並んでいる光景は、クリーンエネルギー、脱炭素社会を象徴するシンボルです。確かに、風力発電は風力を利用するので、火力発電のように化石燃料を燃やしてCO2を排出することもなければ、原子力発電所のような危険もありません。

でも、忘れてはいけないのが、そもそも風力タービンを作り、設置し、運営する。この過程には、膨大な環境負荷がかかる、ということです。
風力タービンを設置するためには、高地を切り開いたり、海に巨大な土台を建設したりする必要があります。そして大型トラックやタンカーが原材料を現場に運び、巨大クレーンを使って建設するわけですが、トラックもタンカーもクレーンも、ディーゼルエンジンをガンガン燃やして作業します。

出力5メガワットの風力タービン1基の建設には、本体や土台などで、900トンもの鋼鉄が必要になります。
そしてその鋼鉄は、鉄鉱石を石炭や天然ガスで燃やして生成されるわけですが、2030年までに作られる予定の風力タービンに必要な鉄鉱石を製造するには、6億トン(日本の石炭輸入量の約4年分)も必要になるそうです
これはあくまで鋼鉄の製造に必要な石炭の量というだけで、その他の素材や機材、運搬、メンテナンスに必要な潤滑油(石油で作られる)は含まれていません。

夫

確かに風力発電で作られた電気そのものはクリーンかもしれませんが、風力発電の機械を作り、建設し、メンテナンスするのは全然クリーンじゃない。イメージだけで判断するのは良くないですね。

それから、風力発電を始め、太陽光など自然エネルギーを活用したクリーンな発電にはもう一つ課題があります。
それは、発電量をコントロールできない、ということです。

電気は貯めておくことが難しく、常に必要とされる量ぴったりに作って流通させる必要がありますが、当然、曇りの日が数日続いたり、風が弱かったり、急な寒波で電力需要が急増した場合などは足りなくなります。
そこで必要になるのが超大型の電池なのですが、現在の技術では都市を賄うレベルの電池は発明されていませんし、そもそも電池はレアメタルと呼ばれる希少資源を大量に消費するので、環境負荷はかなり大きくなります。

となると結局、急に電力需要が増えても、風があまり吹かなくても、曇が続いても対応できるだけの大量の発電施設を作らないといけないわけですが、それが本当にクリーンなのかは社会全体で考えていく必要があるのかもしれませんね。

夫

電気自動車も同じで、電気自動車のバッテリーを作るには、かなり環境負荷がかかります。そして、電気自動車が使う電気は、、、

奇跡の1880年代

イノベーションの時代。この2,30年をそんな風に表現する事があります。その理由はなんといっても、インターネットの普及でしょう。いまやインターネットなしの世界は考えられませんし、インターネットを利用した新しいサービスが次々登場しています。

でも筆者は、インターネットによってこの数十年、大発明が続いたというのは「まったくの見当違い」だと言います。
というのも、インターネットも、その上で展開されるさまざまなサービス、新しいデバイスも、既存の技術の応用でしかないからです。

筆者は、本当のイノベーションの時代は1880年代だと言います。

なぜならこの頃、火力発電と水力発電という2つの電力供給の基本システムが完成し、電力が世の中に提供されるようになったからです。

夫

たしかに、現代の生活は電力の上に成り立っています。当たり前のことですが、インターネットも、コンピューターも、電力なしに使えるものはほとんどありません。家には電力を使わない製品もありますが、それらを製造する際、かならず電力が必要になります。

その他にも、ガソリンエンジンが開発され、電磁波の存在が確認されたのも1880年代です。
電力とエンジンと電磁波。現代社会を動かしている超重要な仕組みが、1880年代に生まれたのです。1880年代の後半には、電気モーターも開発され、世界初の電動モーターの扇風機が販売されました。現在、毎年120億個もの小型電動モーターが販売され、スマホの中から、家電や産業機械まで、なくてはならない存在になっています。

夫

この電動モーターを発明したのはニコラ・テスラ。エジソンに認められ、対立した鬼才です。

そしてもう一つ、この頃発明されたのが変圧器です。変圧器なんて地味なもの、一体何に使われているのかわからないという人も多いかもしれませんが、スマホにも内蔵されていますし、そもそも僕たちの家まで発電所から電気が運ばれてくるのは変圧器があるからです。

1880年代に発明されたいくつかのものが一つ欠けただけで、今の生活は成り立たなくなります。電力発電の仕組みができても、ニコラ・テスラが電動モーターを発明するのが数年遅かったり、ウイリアム・スタンリーが作った変圧器の性能が悪かったりしたら、イノベーションは数十年単位で遅れていたかもしれません。

Numbers Don’t Lie-世界はゆっくり進む

ということで、今回は「Numbers Don’t Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ」を紹介しました。

夫

いやあ、思ったより長くなってしまった。でも今回紹介したのはわずか6つ。本書には71の項目があるので、10分の1以下です。僕が好きな項目だけピックアップしましたが、本書がどれだけデータに溢れ、数字に対する多角的な見方を教えてくれたり、誤解を解いてくれるのかが伝わったと思います。

本書を読んで強く感じたことは、以前紹介したマット・リドレー氏の「人類とイノベーション」と同じように、思ったより世界はゆっくり進んでいて、誰か一人の天才や支配的企業がガラッと変えてしまうわけではない、ということです。

例えば、

  • 肥料は農機具、流通などの生産技術がどんどん進歩しているが、アメリカのトウモロコシの生産量は年2%のペースでしか増加していない。この20年、ものすごい勢いで成長した中国の主食、米の生産量は年1.6%しか増加していない。
  • 熱エネルギーを電気エネルギーに変える、発電のエネルギー効率は、この100年以上に渡って年1.8%とゆっくり改善している。
  • エジソンが「エジソン電灯会社」を開設した1881年から現在まで、屋内証明の発光効率は年2.6%しか上昇していない。
  • 大陸間を移動するスピードは、船からジェット機に変わり、150年かけて年5.6%上昇してきたが、直近の70年ほどはほとんどスピードが変わっていない。

などなど。
証明なんて、フィラメントを燃やしていた白熱電球から、LEDに何十倍、もしかしたら何百倍も発電効率が変わったんじゃないかと思ってしまいます。確かに、エジソンが作った電球と、今僕の家にあるLEDライトを比べるとそれくらいの差になるのかもしれませんが、年平均でいうと2.6%。ものすごくゆっくりしか変わっていないんです。

夫

インターネット分野の進化スピードは速いですが、僕たちがイノベーションに期待するように、一夜にして世界を変えてしまうとか、そういうことはめったに起こらないんですね。

最後に、本書の「おわりに」を紹介したいと思います。本書に書かれているデータは、本書が書かれた時のもので、10年後、20年後には全く違うデータになっているものもあるでしょう。でもこの「おわりに」の内容は、30年後も40年後も、同じく大切なメッセージだと思います。

数字はウソをつかないかもしれないが、では、数字はどんな真実を伝えてくれるのだろう?わたしが本書でみなさんに伝えようとしてきたのは、物事は深く、同時に広く、見なければならないということだ。たとえ、かなり信頼が置けるものであろうと、それどころか、申し分ないほど正確なものであろうと、数字はかならず多角的な視点から見なければならない。情報に基づいて絶対的な価値を評価するには、相対比や比較比という視点が必要なのだ。
<中略>
つねに疑いを持ち、用心して、問いかける姿勢もたしかに必要だが、現代社会において複雑にからみあう現実を数量化する努力もまた欠かせない。わたしたちがとらえにくいさまざまな現実をしっかりと把握すべきであるのなら、そしてまた、入手できる最高の情報に基づいて行動すべきであるのなら、物事を数字であらわす努力をこれからも続けていかなければならないし、これに代わる手立てはないのである。

夫

本当にその通りだと、本書を読んで強く思いました。失業率も世界幸福度ランキングも、バッテリー容量も、PCのメモリやCPUの性能も、一つの側面だけでは何もわかりません。そして僕たちは、良くも悪くも、情報が溢れすぎる世界に生きているので、無数の情報の中から正しいものを見極め、判断し、行動することが求められます。本書はそんな世界で生きる一つの「教養」を教えてくれました。

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