こんにちは。夫です。
今日紹介するのは「上流思考」という本。著者のダン・ヒースさん、どこかで聞いたことがあるなと思ったらあの名著「アイデアのちから」の著者でした!この本も繰り返し読んでいるのでいずれ紹介したいなと思いますが、本書も負けず劣らずの名著です。
多くの問題解決の本は、解決ではなく「対応」にフォーカスしています。
『上流思考-「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法』というタイトルからわかる通り、本書のテーマも問題解決です。ですが、起こった問題に対応する方法は教えてくれません。問題に対処しても、問題がなくなる、つまり「解決」するわけではないからです。
例えば、犯罪が多い地域により多くの警察官を配備する、というのはどうでしょうか。もちろん警察官が増えたらより多くの犯罪を取り締まることができます。でもこれは犯罪に対処しているだけで、犯罪が多いという問題を解決しているわけではありませんよね。
では、学校教育や家庭環境へのアプローチはどうでしょうか。犯罪に至る人の多くは、教育や家庭に問題を抱えています。そこを改善するアプローチがあればどうでしょうか?
時間はかかるかもしれませんが、この方法だと問題を根本から解決できるかもしれませんね。本書では、ある空き巣の例からより具体的に紹介してくれているので、その部分を引用してみましょう。
何があったら空き巣そのものを防げていただろう?
犯行の数秒前なら、耳をつんざくような警報が役に立っただろう。数分前なら、警報システムの存在を知らせるもの、たとえば民家の裏口でよく見かける警備会社のステッカーなど(ただしこの方法だと、泥棒は隣家に関心を移すだけかもしれない)。
数時間前なら、目立つ場所に立っている警官。数ヶ月前なら、犯人に前科があった場合、再犯の悪循環を断ち切るための行動療法を試せたかもしれない。
数年前ならどうか?忘れてはいけないのが、泥棒になりたくてなる子どもなど1人もいないということだ。したがって窃盗のさらに上流の防止策は、窃盗に走ることがばかばかしくなるほど多様な機会が開かれた地域社会を作ることだ。
<中略>
では、空き巣を何十年も前に防止する、なんてことはできるのだろうか?
できるのだ。上流の介入の余地はいくらでもある。心理学者で児童発達専門家のリチャード・トランブレーによれば、攻撃的行動を予防するのに最適な時期は、子どもがまだ母親の胎内にいるときだという。
<中略>
「攻撃性は主に男性に見られる傾向だが、それを解決するには女性に目を向けなくてはならない」とトランブレーは科学誌ネイチャーで語っている。「女性の生活の質を改善すれば、その影響は次世代に伝わるのだ」
引用:上流思考-「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法
この例でいうと、警報は問題対処、そこからどんどん上流に遡り、女性の生活の質を改善することが上流思考における問題解決です。でもそこまで考えることって滅多にありません…防災もそうですよね。大きな自然災害が起こると多額のお金と人が「対応」に動きますが、その前に避難場所の整備や堤防の増強などに使われるお金や関心はごくわずかです。ホームレスや経済的に恵まれない人を支援する取り組みはたくさんありますが、そもそもホームレスや貧困を失くそうとする取り組みはかなり少ない。
このように「そもそも問題が起こる原因」にアプローチするのが上流思考です。いわゆる問題解決が、問題が起こった後どうするかにフォーカスしていますが、本書では問題が起こる前にフォーカスしているんです。
上流の解決策が常に正しいとは言わない。それに下流活動をやめるべきだということでも決してない。救助する人はどんなときでも必要だ。ここで言いたいのは、取り組みがあまりにも偏っているということだ。おぼれている子どもの救助にとらわれるあまり、そもそもなぜ救助が必要なのかを調べることもしていない。
引用:上流思考-「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法
問題は、下流と上流のバランスということですね。僕たちは普段、起こった問題に対処する下流活動に一生懸命です。テレビのニュースでうまくいった上流活動が取り上げられることはありませんし、会社で上流活動を評価されることも滅多にないと思います。
逆にいえば、僕たちは下流思考のトレーニングは十分積んでいると言えます。上流思考を身につければ、問題に対処することもできるし、そもそも問題が起こらないよう事前に解決することもできるパーフェクトヒューマンになれます!それではここから、上流思考を身につけるメソッドを見ていきましょう。
なぜ僕たちは上流思考ができないのか?
人々の関心や投資は、下流にばかり集まっていて、本書ではそのバランスの悪さに問題提起しています。災害支援にはお金が集まるのに、防災にはお金が集まらない。もし防災に同じだけの関心や投資が集まれば、より多くの命が救えることは明らかであってもです。
なぜ僕たちは下流にばかり関心を集め、より重要な上流に目を向けられないのでしょうか?そこには3つの障害があるからだと言います。
問題盲|「そういうものだ」という思い込み
何か問題が起こった時、原因を突き詰めていくと関係者が「そういうものだ」と思い込んでいたというケースがよくあります。
本書ではいろいろな事例が紹介されていますが、その1つがブラジル富裕層の帝王切開率です。なんとブラジルの富裕層では84%もの赤ちゃんが帝王切開で生まれていたんです。帝王切開にはメリットもありますがリスクもあり、基本的には自然分娩が難しい時の代替方法です。
しかし、ブラジルのある女性は自然分娩を望んでいたのに帝王切開を進められるなど、何かがおかしいのは明らかでした。
問題は、大半の医師が「帝王切開が当たり前で、女性もそれを望んでいる」と思い込んでいることだったのです。
「そういうものだ」という思い込みはいろいろな方向から強化されます。
最初はやむを得ず帝王切開を選択する女性が、安全に子どもを産めたことへの感謝を表し、医師も「いいことをしたな」と感じただけだったかもしれません。そして徐々に帝王切開の割合が増えると、医師はスケジュール管理がやりやすくなることに気づきます。そしてさらに帝王切開の割合が増え、いつしか「帝王切開が当たり前」と考えるようになってしまいます。
ここまでくると、解決するのは簡単ではありません。帝王切開の割合が多いことに疑問を感じたとしても、どうやって解決していいかわからないからです。自然分娩で産ませてあげたいと思っても、自分のスケジュールは帝王切開で埋まっているので、空いた時間に運良く陣痛が始まる必要がありますが、そんなことは滅多にないので、結局、帝王切開を選択してしまいます。
このブラジルの病院では、40週以前の帝王切開を禁止し、医師を交代制にして当直中に起こった分娩だけを担当する形に変更。これにより収入が減らないように報酬体系を調整するなど、病院全体で取り組むことにしました。するとわずか9ヶ月後には自然分娩率は10倍以上に跳ね上がったんです。
当事者意識の欠如|自分で解決できることに気づかない
「そういうものだ」と考えてしまっている場合、そもそも問題を認識できていません。しかし、問題が認識できていても解決できないことがあります。それが、当事者意識の欠如で「問題を解決できる立場にある人が、それを解決するのは自分ではないと思ってしまうこと」です。
これについてはユニークな女性の例が紹介されていました。
イェール大学ロースクールの副学部長ジーニー・フォレストは、あるとき教授会でうしろの方に座っていた。前に座っていた男性の頭が邪魔で、発表者がよく見えなかった。
「その大きい頭がやたらと人なつっこい頭だったのよ。ほら、よくいるでしょう。熱心に話を聞きながら、こっち側に頭を傾けたかと思うと、またあっち側に傾ける人。ほんとにイライラしたわ。だから私も対応して、逆側に頭を傾けてみたの。彼が左に傾けば私は右に、右に傾けば左に。でもそのうちますます腹が立ってきて。……そこでハっと気がついた。イライラするのをやめて、イスをずらせばいいじゃないって。だからずらしたわ」
引用:上流思考-「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法
一件落着ですねw問題はイェール大学の副学部長ともあろう方が、こんな単純な解決策を見つけずのに時間がかかってしまったということです。笑い話のようですが、普段の生活を振り返るとこういうことよくありませんか?自分がちょっと立場を変えれば解決する程度のことにずっとイライラしたり…
当事者意識の欠如が起こる理由もいろいろあります。1つは利害の衝突です。タバコ会社は、タバコによる健康被害を防げる立場にいますが、そこに対処すると売上が下がってしまいます。会社で「あいつは問題解決(本当はただの対処)ができるやつだ」と評価されていたら、問題の根本原因を解決してしまうと自分の評価が下がってしまう可能性があります。
立場によって当事者意識が欠如してしまうこともあります。例えば、サポートスタッフは問い合わせに適切に対応することが仕事です。なので「そもそも問い合わせを減らすには?」「顧客が問い合わせしなくてもいいようにするには?」という根本に目が向かないんです。
当事者意識を持つには、まずは全責任が自分にあると考える、いわゆる原因自分論を持つことです。そして自分には解決する力があると自覚すること。この小さな意識だけで、つまらないことにイライラするのをやめて”イスをずらす”ことができます。
トンネリング|目の前の問題しか見えなくなる
上流思考を阻む最後の障害は「トンネリング」です。トンネルのように、目の前のことしか見えず、周囲が見えなくなってしまっている状態です。
玄関の電気の消し忘れを防ぎたい夫婦がいたとします。妻は何度も夫に「電気を消しなさい!」と言いますが、夫はついつい忘れてしまう…どうすればいいでしょうか?もっと厳しく言う?いや、もっと簡単な根本解決の方法がありますよね。玄関の電気をタイマー式にして、5分経ったら自動で消えるようにしたらいいんです。問題が「夫の行動にある」と考えているうちは見えてこない解決策ですね。
ここまでいくつかの例を見てきましたが、上流思考のメリットは、非常に簡単(イスをずらすだけで解決できたり)で、問題の根本解決に効果的(電気の消し忘れで口論することは二度となくなる)なことです。
にもかかわらず、上流思考に注目し、実行する人はほとんどいません。
その理由が、トンネリングです。人はトンネルの中にいる時、前に進むことしかできなくなります。人がトンネルの中に入ってしまう理由は、余裕のなさで、小さな問題や不安、懸念が山積していると、大きな問題に取り組んだり、全てを解決することを諦めてしまうんです。
さらにトンネリングには達成感もあります。目の前のことしか意識できないほど追い込まれ、その課題を解決しながら前に進んでいくのは気持ちがいいですし、英雄的な賞賛を受けることもできます。
トンネリングはラットレースと言い換えてもいいかもしれませんね。前に進んでいるようで同じところをグルグルしている。でも達成感があるからやめられない。一度立ち止まって、周囲を見渡せば前に進む必要さえなくなる(問題に対処しなくてよくなる)かもしれないのに…
トンネリングによって思考が下流に偏ることを防ぐ方法は大きく2つです。
1つは、ゆとりを持つこと。
お金がない人ほど、来月の支払いがヤバいはずなのにカードで買い物をしてしまうように、人は追い込まれれば追い込まれるほど、目の前のことしか見えなくなります。問題の対処に追われるほど、問題の根本解決を考える余裕がなくなってしまいます。
金銭的なゆとり、時間的なゆとり、そのほか色々な心のゆとりを意識的に作ることで、トンネリングから抜け出すことができます。ゆとりという言葉だと抽象的ですが、意識的に上流思考を行う時間を作るということです。「この時間は問題に対処しなくていい。問題の根本原因を考える時間だ」とすれば、トンネリングの外から解決策を考えることができます。
もう1つは、トンネリングの力をいい方向に向けることです。
締め切りが近づけば近づくほど生産性が上がるように、トンネリングに入ると、目の前のことしか見えない代わりに、目の前のことを解決するための極端な集中力を発揮できます。
およそ半世紀前、オゾン層の破壊が世界的な危機でした。しかし、論理的にオゾン層の破壊が危機的であることは認知されても、ほとんど誰もオゾン層を守るために行動しようとはしなかったんです。オゾン層は目に見えないからです。そんな状況を変えたのが「オゾンホール」という言葉。この言葉は化学的には不正確ですが、一般の人が今の危機を認識するためには大きな効果がありました。他にも色々な要因がありますが、1つの言葉によって世論が動き、フロンガス禁止に向かっていったんです。人は問題が目に見え、差し迫った深刻なものであると感じると、対処せずにはいられません。そんなトンネリングを利用した例です。
上流リーダーが避けるべき2つの落とし穴
ここまで、上流思考を阻む3つの障害を見てきました。どれも意識さえすれば回避できる障害でしたよね。「問題盲」は常識を疑うこと、「当事者意識の欠如」は原因自分論で考えること、「トンネリング」はゆとりある時間を制度として設けることで回避できます。
でもこれらを回避して上流思考を行ったとしても、まだいくつもの落とし穴があります。上流思考を行ったからといって、かならず成果が出るわけではないですし、場合によってはさらに問題を悪化させてしまうこともあるんです。
ここからは上流思考を身につけたリーダーが気をつけるべき落とし穴をみていきます。本書では「上流リーダーになれる7つの質問」という項目ですが、僕が重要だと思ったところは全部、上流思考が逆に問題を悪化させてしまった事例だったので「落とし穴」としてまとめようと思います。
然るべき人に届いていないシステム
筆者は社会貢献活動の多くを残念に思っているそうですが、その理由が、社会貢献活動が変えようとしている欠陥ある社会システムを、むしろ加速させてしまっている結果になっているからだと言います。
例えば、低所得者を支援する基金プログラム。筆者が以前関わった基金では、低所得者にお金の管理術を教える講座を開いたりしていたそうです。いかにも上流思考な気がしますが、実際はどうでしょうか。
この基金に携わる全員が、何らかの形で利益を得ていました。基金の資産管理を行う人や、基金の運営を行う人、彼らはかなりのエリートで高級取りです。そして講座などを開く施設の運営者や講師、スタッフなども利益を得ています。
一方で、低所得者はお金の管理術を教わるだけでした。
本書でも太字で書かれていますが、低所得者はお金の管理術を知らないから貧しいのではなく、お金がないから貧しいんです。お金のない人に管理術を教えて、お金がある人に現金を渡している。確かにシステムとしてはよくないですね…
このように、いくつかの社会貢献活動には、その存在や活動そのものが、対象とする人々の立場を固定してしまうリスクもあります。筆者はこの活動について「基金が集めたお金を運用も管理もせず、ただ低所得者に配った方が劇的な効果があるだろう」と言います。
どんなシステムも設計された通りの結果を生み出しています。しかしその基本設計が目的に叶っていない…というのはよくあることです。これについては設計に誤りのあるシステムを隅々まで考え直すしかありません。
数字に騙された警報装置
2つ目の落とし穴は、一見改善している、素晴らしい数字に隠されたものです。
数字をもとに改善すること自体は素晴らしいことです。例えば、最近のエレベーターにはAIによる早期警報システムが設置されており、さまざまなデータから問題が起こる前にメンテナンスされるようになっています。
この数字に基づいた警報装置は正しく機能し、実際に素晴らしい成果をあげました。でも、そうじゃない例も少なくありません。
韓国の医療機関は甲状腺がんに対して素晴らしい実績をあげていました。5年後の生存率は99.7%と世界で最も高かったのです。
なぜ韓国の医療はこれほどの実績をあげているのでしょうか?実は、医療機関の治療が適切だったからがん患者の生存率が高かったわけではなかったのです。韓国の医療業界が甲状腺がんの健診を推奨し始めました。すると、甲状腺がんと診断される人が急増し、摘出手術など体への負担が大きな治療を受けることになりました。
しかし、現在のがん治療では、進行の遅いがんは無理に治療しない方がいい、という考えが常識になっています。
つまり、まだ治療するほどではない、何もしなくても生きていられた大量の患者を甲状腺がんと診断し、治療を行ったため、5年後の生存率が世界一にまで上昇したということです。
多くの患者は、特別な健康効果があるわけでもなく、対処する必要もないがんに対して、苦しい治療を受けていたのです。
ここで考えるべきが「誤検知率」です。誤検知とは実際には問題がないのに問題があると判定してしまうことです。韓国の例のように、権利するハードルを下げれば、無駄な対処が増え、メリット以上のデメリットが出てしまいます。でも検知するハードルを上げれば、検知しなければならない問題を逃してしまう可能性があります。上流思考ができるリーダーは、このバランスを天秤にかけて判断する必要があります。
こうした指標は悪意なく悪用されるリスクもあります。実際、韓国は自国の甲状腺がん治療がうまくいっていることをアピールし、多くの患者を呼び込んでいました。
そこで本書では、数字をもとに上流思考を行う際に問いかける「5つの問い」を教えてくれています。
- 上げ潮テスト…この指標で好成績が出た場合、取り組み以外の要因が関係した可能性はないだろうか?
- 不一致テスト…短期指標で長期指標の達成度を正確に測れるわけではない。短期指標と長期指標の不一致はどのような時に起こるのか?別の短期指標は存在しないのか?
- 手抜き役人テスト…楽をしてこの指標を改善できてしまう抜け道はないだろうか?
- 使命の冒涜テスト…数年後、短期指標が好成績なのに、長期的な使命が損なわれていたと仮定する。考えられる要因は何だろうか?
- 意図せざる影響テスト…あらゆる目標を達成したのに、意図しない悪影響が生じて台無しになったと仮定する。何が起こったのだろうか?
韓国の例をこの問いに当てはめると、合格しないことがわかりますよね。生存率が上がった理由を分析すると、治療の効果ではなく、単に診断される人が増えたことが要因でした。上げ潮テストに不合格です。健康促進が長期的な目標なのに、必要ない手術までして健康を損なってしまっているので、不一致テストも不合格。診断基準を甘くすればするほど5年後生存率という指標を改善できるので、手抜き役人テストも不合格ですね。
「意図せざる影響テスト」には面白い事例があります。それが「コブラ効果」と呼ばれるものです。昔のインドではコブラの多さに頭を悩ませていました。そこで行政官が「コブラを持ってきたものに懸賞金を与える」というお触れを出したんです。これでみんながコブラを捕まえてくれたら、コブラも減って一件落着…とはなりませんでした。
一部の人が、コブラを繁殖させて儲けようとしたんです。政府には大量のコブラが持ち込まれましたが、その多くは懸賞金のために繁殖させたものでした。
すぐに懸賞金は撤回されたのですが、すでに大量のコブラが繁殖しています。懸賞金がなくなったらどうなるでしょうか?大量のコブラが街に放され、施策を行う前よりコブラの数は増えてしまいました。
コブラ効果はいろんなところにあります。例えば最近のオフィスで人気のフリーアドレス制。仕切りがなく、自由に移動できるオフィスではコミュニケーションが活発になり、生産性が上がると思われていたんです。でも最近の研究で明らかになったのは、フリーアドレスによってコミュニケーション量が減るという事実でした…開放的になり話が筒抜けになると、逆に話したいと思わなくなったんです。
1個人として上流へ向かう
ということで今回は『上流思考-「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法』を紹介しました。
僕も普段の仕事でメンバーをマネジメントする立場になって、上流思考が必要だなーと感じる場面が増えてきました。これまでは問題に対処する下流思考で評価されていたのですが、リーダーに必要なのはやはり上流思考ですね。
普段の生活でも、上流思考が必要な場面は大量にあります。というより日常の中で繰り返し起こる問題はすべて、上流思考が足りていないから起こっている問題と言っていいと思います。
電気の消し忘れで何度も口論していた夫婦が、自動で消えるタイマー式スイッチに切り替えるだけで、口論はゼロになりました。
確かに日常生活でも活かせる機会は多そうですよね。毎朝早起きするためにはどうすればいいか?探し物にかける時間を減らすには?仕事で疲れた日も料理をして美味しいご飯を食べるには?無駄遣いをやめて資産形成に取り組むには?こうした疑問一つ一つに、下流思考の「問題対処」ではなく、上流思考の「問題解決」で取り組めたら、人生の満足度が一気に高まりそうです。
日常生活に繰り返し起こる問題があるなら、上流へ向かおう。大昔からある問題だからといって、ひるんではいけない。古い格言にもある。
「木を植えるのにいちばんいい時期は20年前だった。その次にいい時期は、いまだ」
引用:上流思考-「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法
本書では最後に、僕たち個人が生活や仕事で上流思考を取り入れるためのアドバイスを教えてくれています。
多くの人が下流思考に囚われてしまうのは、下流思考の行動はすぐ結果に結びつくからです。電気の消し忘れを指摘されて「消せばいいんだろ!」とイラついてスイッチを押せば、一旦対処は完了しますよね。
一方、上流思考の結果のほとんどは、ゆっくりとしかあらわれてきません。ホームレスに今日食事を提供すればいいことをした気分になれますが、ホームレス化を防ぐための施策には何年も時間がかかってしまうでしょう。
上流思考の中にはすぐに結果が出るものもあります。そうしたものから取り組んでいくのもいいですが、時間がかかることを前提に、気長に取り組んでいきましょう。
大きな問題を考える時は、大きな単位で考えてしまいます。上流思考は根本解決に至るためのものなので、ミクロな視点より、マクロな視点が求められると考えがちですが、そうではありません。社会貢献活動でいえば、1人を助ける方法を知らずに、100人、100万人を助けることはできないんです。
問題は近くから見ないとわからない。上流思考で広範囲で、長期的な視野を持つことはもちろん稚拙ですが、その発端はミクロな個別の事例や、実体験だったりします。
個人的には、本書の中でいちばん心に残ったのが次のエピソードです。すでに一度引用していますが、もう一度引用させてください。
イェール大学ロースクールの副学部長ジーニー・フォレストは、あるとき教授会でうしろの方に座っていた。前に座っていた男性の頭が邪魔で、発表者がよく見えなかった。
「その大きい頭がやたらと人なつっこい頭だったのよ。ほら、よくいるでしょう。熱心に話を聞きながら、こっち側に頭を傾けたかと思うと、またあっち側に傾ける人。ほんとにイライラしたわ。だから私も対応して、逆側に頭を傾けてみたの。彼が左に傾けば私は右に、右に傾けば左に。でもそのうちますます腹が立ってきて。……そこでハっと気がついた。イライラするのをやめて、イスをずらせばいいじゃないって。だからずらしたわ」
引用:上流思考-「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法
あなたの仕事、生活の中で「自分がイスをずらすだけで解決すること」は何ですか?振り返ると、僕の生活にはいっぱいありました。イスをずらして根本解決しようと思います。
この記事を書いた人
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かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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