分かりやすい文章の技術|目的を達成する5つの文章術

ビジネス・マーケティング
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こんにちは。夫です。
今日紹介するのは僕が大好きな一冊、僕のビジネススキルに最も影響を与えたと言っても過言ではない一冊(というかシリーズ)から、「分かりやすい文章の技術」を紹介します。

高校まで国語の成績が10段階で2か3で放課後居残りしていた僕が、今や広告・マーケティングの分野でコピーライターとして仕事をしている。そのきっかけとなった本です。

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分かりやすい文章=目的を達成する文章

佐藤さんと鈴木さんの息子さんに会った

この文章に違和感はありますか?これは分かりにくい文章の典型例として本書で紹介されているものです。
この文章は、次の4つに解釈することができてしまいますよね。

  • 佐藤さんと2人で、鈴木さんの息子さんに会った
  • 佐藤さんと鈴木さん2人の、それぞれの息子さんに会った
  • 佐藤さんと、鈴木さんの息子さんの2人に会った
  • 佐藤さんと鈴木さんの間に生まれた息子さんに会った

確かに、、言われてしまえばその通りで、ものすごく曖昧さのある文章です。4つ目は佐藤さんと鈴木さんの関係が気になりますが、文章としては間違っていませんよね…僕たちもこうした表現をしてしまっていませんか?書き手はシチュエーションが頭の中にあるので、問題なく解釈できますが、この文章を聞いた人は、全く違うシチュエーションを思い浮かべてしまいます。

他にも、日常では分かりにくい文章が溢れています。

例えばこんな文章を目にしたことがあると思います。あるネット銀行で実際に使われていた文章です。

お振込みの受付時に、お受取人名などが正しく入力されているかの確認は行っておりません。

この文章が何を伝えたいかわかりますか?
国語的な文法は全く問題ありませんが、真意が伝わりにくい文章です。

この文章はつまり、正しく入力されているかどうかはこっちでは確認していないから、間違って入力してもなんの責任もないよ。ちゃんと確認してから振り込めよ、ということが伝えたいのです。
しかもこの文章を書いているネット銀行は、たとえ間違いであっても振込手数料がかかります。間違いで口座が存在しなければ振り込みは成立しませんが、振り込み手続きを行った以上、振込手数料はかかるということです。

日本人らしい、察し合いの文化と言うんでしょうか…日常のやりとりなら直接言わないことで表現が和んで、ということはありますが、実際にお金が動く、ビジネスの現場ではやめてほしいですね…

本書の著者、藤沢晃治さんは、慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業したソフトウェアエンジニアです。

つまり、プログラマーですね。当然ですが、機械相手に察し合いは通用しません。「佐藤さんと鈴木さんの息子さんに会った」という文章をプログラムしたら、バグが起こるでしょう。
つまり、曖昧さが一切許されないのがプログラミング、機械とのコミュニケーションです。

以前の職場のプログラマーが「プログラミングは理系的と思われているけど実はめちゃくちゃ文系的なスキル」と言っていました。プログラミングの本質は機械とのコミュニケーション。そう考えると納得ですね。

つまり、藤沢晃治さんは、曖昧さが一切許されない、察してくれることもなければ、意図を頑張って汲み取ってくれることもない。そんな現場でコミュニケーションを行ってきたプロなのです。

分かりやすい=脳内関所を通りやすい

そもそも「分かりやすい」とはどういう状態でしょうか?

ここで言う「分かる」には2つの意味があります。
1つの「分かる」は意味が分かる、ということです。「佐藤さんと鈴木さんの息子さんに会った」という文章は情報をちゃんと伝えることができていません。意味が正確に理解できないので、1つ目の「分かる」が達成できていない状態です。

2つ目の「分かる」は目的を達成することができるか、つまり意図や意味を理解してもらえるか、ということです。

「お振込みの受付時に、お受取人名などが正しく入力されているかの確認は行っておりません。」という文章は、文法的には問題ありません。なるほど、正しく入力されているかの確認は行っていないんだ、と意味は分かると思います。
でも、「なので間違えても振込手数料は返金しません」という意図は伝わりにくいでしょう。なので、この文章は2つ目の「分かる」が達成できていない、ということになります。

この2つを達成するために大切なのが「脳内関所」という考え方です。

脳内関所というのは、情報が入ってきてから2つ目の分かるが達成されるまでの間にあるいくつかのプロセスです。関所という言葉を使っている通り、門のように考えると良いかも知れません。分かりにくい文章は、脳内関所のどこかを通ることができず、最終的な「分かる」までたどりつけず、目的を達成することができません。

脳内関所を簡単に説明すると、まず入ってきた情報がどういう情報なのか、自分の頭の中にある情報を照らし合わせる。例えば、目に入った記事のタイトルに「ビジネス英語」と入っていたら、自分にとってビジネス英語がどういうものなのか(仕事で必要だからいずれ勉強しようと思っていた、過去挫折したことがある、自分には必要ないetc..)と結びつける。
次に情報を処理しやすいひとかたまりに分解し、意味を失わない範囲で整理する。整理がうまくできると「つまりこの文章が言いたいことはこういうことか」と意味が理解できる。

そしてすでに自分の頭の中にあった情報と紐付けて、納得できるかどうかを理解する。「ビジネス英語」と聞いて、過去に挫折したことがあるからな…と自分の頭の中に元々あった情報と紐付け、記事の内容を理解して「挫折した自分ならこの方法でもビジネス英語を習得できるかも!」と納得できたら、その文章は分かりやすい、目的を達成できたことになります。

義務教育を終えた人なら、だいたいは意味の分かる文章が書けると思います。でも思い返せば、佐藤さんと鈴木さんの例のように、つい意味が分からない文章を書いてしまうことはありますよね…

ですが2つ目の、目的を達成する文章、となるとどうでしょうか。僕たちが学校で教えられてきた文章の多くは、目的を達成する文章ではありませんよね。文法的に正しく、意味が分かる文章を学んできたと思います。

でも実際の生活や仕事の現場では、意味だけ分かっても仕方がありません。
例えば上司に「このプロジェクトを実施すべきです!」と力説するとき、たぶん意味が分かる文章を使っていると思いますが、上司の承認を得る、つまり目的が達成できるかどうかでいうと、微妙なところではないでしょうか。

それどころか、コミュニケーションとは意味を伝えるものであって、それをどう解釈するかは相手の責任。つまり、理解して納得しないのは上司の問題だ、とまで考えているかもしれません。

でもそうではないんです。文章とは、目的が達成できてはじめて分かりやすい文章になります。もしあなたが作った文章、話した言葉で目的が達成できなかったら、問題は相手ではなく、あなたの文章が脳内関所を最後まで超えられなかったことにあります。

ということで、本書の大トロの部分。目的を達成する分かりやすい文章のテクニックを紹介しましょう。本書では18個のテクニックが上げられていますが、僕が大切だと思った部分をまとめて、5つにしました。

「分かりやすい文章」の技術

要点ファースト

この記事を読んでいるジェントルメンは当たり前のようにレディーファーストを実践できていると思いますが、コミュニケーションのマナーである「要点ファースト」は実践できていますか?

脳内関所の話で、「まず入ってきた情報がどういう情報なのか、自分の頭の中にある情報を照らし合わせる」と書きました。要点が分からないということは、入ってきた情報がどういう情報なのか、照らし合わせることができないのです。

本書ではこれを「パズルボードを最初に渡せ」と表現しています。

パズルをする時、何もない空間にピースを置いてもなかなか進みません。まずパズルボードがあって、それを基準にピースを探していったほうが早くパズルが完成することは明らかです。

要点をなかなか伝えない文章は、パズルのピースだけどんどん渡しているのに、ボードが無い、つまり全体像や取っ掛かりが全くない状態で話しているようなものです。

本書では具体的にこんな例が紹介されています。

1匹のアリが高さ10メートルの壁を乗り越えたいと思いました。ところが、なぜかアリは高さ1メートルと見誤ってしまいました。壁を登っていたアリは、やがて自分が思っている目標の高さ(1メートル)にたどり着きました。ところがまだまだ壁は続いています。アリはそこで絶望し、登るのをあきらめて引き返していきました。アリは10メートルの壁を登れる力は持っているのです。壁の高さを最初から10メートルだと知っていたら、登り続けて乗り越えられたでしょう。このアリの失敗の原因は、実力がないことではなく、壁の高さを見誤ったことです。英語学習の挫折でも、才能がないからではなく、たいてい英語習得を安易に考えて1メートル登る努力しないことが原因なのです。

この文章を読んで、なにが言いたいのか、最後の「英語学習の挫折でも〜」まで分からなかったでしょう。まさにパズルのピースだけ渡されて、ボードがない状態です。
最初に「英語学習の挫折は、才能がないからではなく、たいてい英語習得を安易に考えてしまうからです。例えば」と書いておけば、まず相手は英語学習の話だということが分かり、そのたとえ話としてアリが出てきたんだと分かります。

学校で習うのは小説などの文章です。小説は読まれることを前提に、読者を楽しませることが目的なので、結論、要点は最後の最後までとっておきます。結論を述べず、読んだあと相手が自分で結論を見つけるように促す場合もあります。文学としてはそのほうが面白いのですが、普段の文章だと通用しませんね。英語学習のセールスをするときに「アリが10メートルの壁を〜」と話しても「ああ、忙しいからまたね」となってしまいます。

コミュニケーションをパズルと考えるとイメージがしやすいですね。
まずボード、つまり要点を渡さないと相手は全体像が理解できず、頭の中に「?」を抱えたまま話を聞かないといけない。といっても、ビジネスの現場では「?」を抱えたまま話を聞いてくれるほどヒマな人はあまりいません。なので、まず要点を伝えるというのは必須です。

そしてピースの渡し方も重要です。ボードを渡して、次にいきなりど真ん中のピースを渡してもどこに置いていいか分からないでしょう。なので、ボードの縁に沿ったものから渡してあげたほうが良いですね。つまり、要点と関係のあるところから詳細を埋めていく、ということです。

それに、別のパズルのピースや役に立たないピースなど、無駄なものを渡すと混乱してしまいます。
パズルを完成させることが目的なら、そのパズルに関係のないものは渡さないほうが良いですね。

親子関係・並列関係が明確なレイアウトと構造

次はレイアウトの話です。本書の魅力は、文章の話ですが、言いまわしや文法的な部分があまり出てこず、徹底して現場で使える文章に特化しているところです。

ここで大切なことが、親子関係と並列関係です。脳内関所を通るときに、情報を分解して整理する、というステップがありました。これをできるだけ楽にしてあげるのが、親子関係と並列関係の明確化です。

親子関係というのは、項目分類の大小です。「動物」と「ライオン」は、動物の中にライオンが含まれるという意味で、親子関係です。「ライオン」と「シマウマ」は、どちらも動物という大分類の中に入る並列関係になります。

それでは次の文章を見てみましょう。

<管理者情報変更に関するお問い合わせ方法>
ご不明な点等ございましたら、ドメイン名、ドメイン申請番号、管理者の免許証番号。または、健康保険証番号、登録者、または技術担当者の連絡先電話番号を添えてお問い合わせください。

これもまあ分かりますが、分かりやすいとはいい難い文章ですよね。親子関係を整理して、レイアウトを整えるだけで次のようになります。

<管理者情報変更に関するお問い合わせ方法>
ご不明な点等ございましたら、下記情報を添えてお問い合わせください。
(1)ドメイン名
(2)ドメイン申請番号
(3)管理者の免許証番号、または健康保険証番号
(4)登録者、または技術担当者の連絡先電話番号

ただ親と子でレイアウトを分け、並列関係にある子の要素に番号を振っただけでかなり分かりやすくなりましたね。

元の文章の問題は、「お問い合わせください」という行動を伝える要素と、そこに記載する内容という要素が一つの文章になっていることでした。

このように、親子関係、並列関係、文章のまとまりや意味のかたまりでレイアウトを変えるだけで、分かりやすさが上がります。
この記事でいうと、分かりやすい文章とは何かを伝えるところで「分かりやすい文章=目的を達成する文章」という見出しを入れて、その後分かりやすい文章の要素、脳内関所の通りやすさを説明するときには別の見出しを入れています。さらに具体的な技術を紹介するときにも、見出しを入れて「ここからここまでが1つのまとまりですよ」というのを伝えています。

といっても、Intro Booksではまだまだ試行錯誤…本当は「こういうまとまりのときはこの装飾を使う」みたいに決めて分かりやすくしたいのですが、結構適当になっているのが現状です…

因果関係の弱点を理解する

ここまでのポイントはできるだけ意味を分かりやすく伝えるものでした。これから紹介する「因果関係の弱点を理解する」は、まさに目的を達成するために、自分の文章の意味を相手に伝えるだけでなく、それによって相手を説得する、同意を求めるための技術です。

当然ですが、相手を説得し、同意を得て、自分の目的を達成するための文章には、論理的に正確でないといけません。

この時、重要になるのが因果関係です。
因果関係とは「A→B」となる関係で、「お腹が空いた→だからご飯を食べる」のような関係です。

しかし、因果関係には2つの弱点があります。それは、そもそもの「A」が正しいのか、ということと、「A→B」という関係が正しいのか、という部分です。

「お腹が空いた→だからご飯を食べる」という因果関係を理解してもらうには、まず自分がお腹が空いている、ということを信じてもらう必要があります。そして、他にも我慢する、お菓子を食べるなどいろいろな選択肢がある中で、ご飯を食べることが正しい行動である、と納得して貰う必要がある、ということです。

上司に「売上が下がっているので、新商品を販売しましょう」と提案したとします。A(売上が下がっている)だからB(新商品を販売する)というのは、一見問題ないように思えます。

でも、Aが事実かどうか相手はどうやって確かめたらいいのでしょうか?相手が売上を常に把握している立場の人なら問題ないかもしれませんが、そうではない場合、「〇〇の資料によると」「〇〇さんの報告によると」など、相手がAを正しいと認識できる根拠を付けないといけません。

Aが正しいことを納得してもらったとしても、B(新商品を販売する)が正しいかどうかはまだ分かりません。売上を上げる方法は他にもたくさんあります。Bには既存商品の販売を増やすため営業とミーティングしましょう、でもいいですし、マーケティング・広告に予算を割きましょう、コストカットを行いましょう、でもいいわけです。
なぜBじゃないといけないのかを説明するには、もっといろいろな根拠が必要になるでしょう。

相手を説得する時には、必ず論理的な正確さが求められます。そのためには正しい因果関係が欠かせませんが、因果関係にはそれぞれの要素とその関係が正しいかどうか納得するのが難しい、という弱点があります。

この文章を見てください。

長年、たくさんの化粧水やクリームでケアしてきた顔の肌と、スキンケアなどをしてこなかった二の腕の肌を比較してみてください。手入れをしてこなかった腕の肌のほうがむしろ白くてきれいではありませんか?肌がキレイになろうとする肌自身の自然な力がある証拠です。腕の皮膚は化粧水やクリームなどで、あまり負荷をかけていないから、自然のままの美しさが保たれているのです。

この文章を単純化すると、
「スキンケアをしない二の腕の肌の方が、スキンケアをしている顔の肌より美しい」だから、「スキンケアは自分で美しくなろうとする肌の力を損なってしまう」です。

一見因果関係は成立しているように思えますが、疑い深く見てみると弱点があります。

まずそもそも、「スキンケアをしない二の腕の肌の方が、スキンケアをしている顔の肌より美しい」は本当なのか、という点です。
そして、腕の肌が美しいのはスキンケアをしていないからなのか?という関係性の疑問もあります。単純に、紫外線を浴びる量が少なかったからとか、そもそも顔と腕では皮膚の性質が違うからとか、いろいろな批判ができます。

この弱点を補うと、次のような文章が考えられます。

10人の被験者で顔と二の腕の肌を比較したデータがあります。
肌の美しさの基準である「キメ」の数を比較したところ、1平方センチメートルあたりの平均値は、顔が約285個、二の腕が約378個でした。また、同じ10人の肌の水分量を計測した結果、平均値は顔が35、腕が41でした。キメの数でも保湿力でも、スキンケアをしてきた顔より、自然のままの二の腕のほうが美しいことが分かりました。顔と腕では条件が異なる点があるので、先ほどの10人に別の実験をしてもらいました。1ヶ月間だけ、右腕に顔と同じ化粧水とクリームでスキンケアをしてもらいました。左腕には当社の新しい化粧水だけでケアしてもらいました。一ヶ月後、肌のキメの数と保湿力で両腕の平均値を比較しました。キメの数は左腕が約390個、右腕が341個、保湿料では左腕が45、右腕が41でした。
キメの数でも保湿力でも、顔と同じ複雑なケアをした右腕より、当社の化粧水だけを使った左腕のほうがキレイに保たれることが分かりました。
ちょっとデータが多い気がしますが、たしかに説得力は増しましたよね。「スキンケアをしない二の腕の肌の方が、スキンケアをしている顔の肌より美しい」という根拠が明確になり、だから複雑なスキンケアは必要ない、ということがよく分かります。

因果関係の弱点を事前に知るコツは、想定される疑問に先回りすることです。
言葉を発する側、書き手は自分の中で因果関係が整理されてしまっているので意識的に疑い深く、「そもそも根拠であるAは本当なのか?誰が見ても納得できるものか?」「因果関係に他の可能性はないのか?A→Bではなく、A→Cでも成り立つなら、Bである必要はどこにあるのか?」と質問することです。

自分の視点ではなく相手の視点で書く

「テロリスト」という言葉を聞いてどんなイメージが浮かびますか?
怖い、危ない、などがすぐに思い浮かぶと思います。でも、テロリストとは、テロの標的にされる側が使う言葉です。テロリストは自分たちをテロリストとは言いません。

テロを仕掛ける側は自分たちを「レジスタンス」などと表現します。

「レジスタンス」という言葉を聞いてどんなイメージが浮かびますか?
正義の為に戦う戦士、腐敗した権力と戦う人、そんなイメージが浮かぶと思います。

でも、どちらも同じ集団を指し示す言葉です。同じものを表現していても、立場によって全く違う言葉を使い、全く違う印象になるんです。

世界は見る角度によって、全く違う意味を持つ。こうした例はたくさんあります。

例えば、最近なら「ワクチン」と聞いてどんなイメージを浮かべるかも、人によってぜんぜん違うでしょう。

脱コロナの切り札、自分や身の回りの人のため、当然打つもの。
一方で、グローバルヘルスケア企業の利権、効果に確証がないし副反応が強く危険。そういうイメージを浮かべる人もいると思います。

「テロリスト」と「レジスタンス」は違う言葉でしたが、「ワクチン」は同じ言葉なのに読み手にとって全く違うイメージを抱きます。
そのことを考慮せず、ワクチンについて書いていたら、分かりやすい文章にはならないでしょう。

だからこそ、文章では読み手の感情や知識レベル、立場を考慮し、読み手の視点から考える必要があります。

本書で紹介されているのはこうした例です。

当院では、抗生物質は風邪に効かないので処方しません。

確かに、抗生物質はウイルス性の風邪には効きません。でもほとんどの人はウイルス性の風邪と細菌性の風邪の違いなんて分かりませんし、そもそも抗生物質の働きを理解している人が少ないでしょう。

ただ、医師にとっては当たり前のことなので、風邪には効かないから処方しません、とだけ書けば理解してもらえると思ってしまったのです。

当然、多くの患者は混乱しますし、納得できないでしょう。

多くの場合、文章を書く人は読む人より多くの知識を持っています。そして、その情報を共有するために文章を書いています。

なのでつい専門用語や、自分にとって当たり前の前提条件を、相手も知っている想定で書いてしまうんですね。

僕は広告関係の仕事をしていて、チームのミーティングでは「TCPA」「CPO」「GA」「GTM」といった用語を使っています。同じチームであれば当然みんな知っているので問題ないのですが、それが社内向けの資料でつい使ってしまうときがあるんですよね。当然、チーム以外の人はポカーンとしてしまいます‥反省。

一文は40文字以下で書く

さて次に紹介するのは「一文を40文字以下で書く」ということ。急に具体的ですね。この意味を説明する必要もないと思うので、いきなりですがこの文章を読んでみてください。

長いセンテンスも、話しているときならあまり違和感がありませんが、文章ではなるべく避けたほうがいいにもかかわらず、書いているときはなかなか気づかないで、いくつかに区切っても差し支えないようなセンテンスをつなげてしまい、いつのまにか1センテンスが長くなって、句点という切れ目で小休止できない読み手のイライラは溜まるばかりなのに、残念ながら、こうした文章を多く見かけるのが現状で、読み手の負担に気づかないこんな文章を理解しているのは、書き手だけでしょう。

わざとらしく引っ張った文章なのでかなり読みにくかったと思います。でも、これは極端にせよ、こうした文章、見かけませんか?

情報は処理しやすいまとまりに分解して、再構築して理解されます。小さな情報のほうが脳内関所を通りやすいということですね。
であれば、最初から分解してあげたほうが簡単に理解できますよね。

これは単純な意識で簡単に解消できます。

例えば、「が」を使わないようにする。
「私は〇〇をしていたので簡単にできると思っていましたが、息子は××だったので難しく感じたようです。」この文章の「が」は逆接の「が」なので、「しかし、」で分けることができます。

他にも、修飾語を意識的に分けることも効果的です。
修飾語とは、「彼は”留学生の”山下さんです」という文章なら、”留学生の”の部分。

大杉さんは、去年、奥さんと一緒にアメリカの大学へ留学した斎藤さんの、高校時代の友人です。

ちゃんと読むと誰が留学して、誰が誰の奥さんで、友人は誰なのか分かると思います。でも、一瞬「?」が浮かびますよね。この一瞬浮かんだ「?」が分かりにくさです。

このように直すと、脳内関所を通りやすくなるのではないでしょうか。

斎藤さんは、去年、奥さんと一緒にアメリカの大学へ留学しました。大杉さんは、その斎藤さんの高校時代の友人です。

そして、句読点や鉤括弧などの区切りも重要です。

句読点って日々当たり前のように使っていますけど案外難しいですよね。本書では句読点や鉤括弧などの区切りについて、いろんな例を出してくれています。その一つを見てみましょう。

これからは、男の子育てを考えましょう。

どんな曖昧さがあるか分かりますか?
だまし絵みたいなもので、一度解釈してしまったら、別の解釈が見えなくなります。もし書き手の意図と違う解釈をしてしまったら、ずっと話が噛み合わないまま担ってしまいます。

この文章は「男の”子育て”」と「”男の子”育て」という2つの区切り方ができてしまいます。
男が子育てをするのか、男の子を育てるのか、全く意味が違いますよね。

おそらく多くの人は「男の”子育て”」と解釈すると思います。そちらのほうが言葉として一般的ですからね。でももし、書き手が「”男の子”育て」について書いていたら、会話が成立しませんよね。「相手の視点で書く」でも書きましたが、書き手はつい自分の前提条件、自分の解釈が”あたりまえ”と思って書いてしまいます。

他にもいろいろな例があります。ビジネスの現場でやってしまいがちなのは、

私は来週、大型セミナー会場で公演することを発表します。

さあ、どんな曖昧さがあるでしょうか?

問題は「来週」が公演することにかかっているのか、発表することにかかっているのかですね。
つまり、「大型セミナー会場で公演することを、来週発表する」のか、「来週に大型セミナー会場で公演することを発表するのか」です。また、大型セミナー会場で公演するのか、大型セミナー会場で発表するのかも曖昧です。

本書のこの章ではこうした事例がたくさん載っていて、読んでいると「うわ〜こんな感じの表現、してしまってるなー」というのがたくさんあります笑

問題は、自分は”分かってしまう”こと

ということで今回は、藤沢晃治さんの「分かりやすい文章の技術」で紹介されている18のテクニックから、ギュッと厳選して5つを紹介しました。

ちなみに本書、正確なタイトルは『「分かりやすい」文章の技術』です。鉤括弧が重複するので「分かりやすい文章の技術」と書いていました。

「分かりやすい文章の技術」という文章には曖昧さが残っていますね。

「分かりやすい」文章の技術、つまり、文章の技術を分かりやすく教えてくれる本なのか、

「分かりやすい文章」の技術、つまり、分かりやすい文章の技術を教えてくれる本なのか、

鉤括弧がないと2通りの解釈ができてしまいます。本書を読み終えると、なぜタイトルに鉤括弧が入っているのかも納得できました。

僕がこの本を初めて読んだのは、たしか大学2年生の頃。高校生までまともに文章を書けない(国語のテストでは240人中238位だったことがあります…)僕が、紛いなりにも言葉を使う仕事をしているのはこの本のおかげかもしれません。

本書の最後には「分かりやすい文章」のためのチェックリストもあり、自分が書いた文章を見ながらチェックすれば、ある程度分かりやすい文章になると思います。

でも、僕がこの本を読んで一番気づきだったのは、前提条件の違いの大きさです。

何気なく「昨日、〇〇さんと××さんに会ったよ」なんて言ってしまいますが、この文章が分かりにくいだなんて、考えたこともありませんでした。

もしかしたら相手は、「〇〇さんと一緒に、××さんに会ったのかな?それとも〇〇さんと××さんの2人に会ったのかな?」と混乱していたかもしれません。

でも日々のコミュニケーションで、ちょっとした行き違いっていろいろありますよね。あれ、居酒屋の予約はそっちでやってくれるんじゃなかったの?○○さんを誘うって言ってたけど、え、僕が誘うの?そっちで誘ってるんだと思ってたよ…みたいな。全部、自分の前提条件で会話してしまって、話が通じているようで通じていなかった結果です。

Intro Booksを初めて、まだ1年も経っていません。これまではとりあえずアウトプットしていこう、ということで妻と2人、書店デートをしながらワイワイ楽しんで運営しています。でも読んでくれる人も増えてきたので、そろそろ「分かりやすい」文章を意識していったほうがいいかもしれませんね。

藤沢晃治さんの『「分かりやすい」文章の技術』は他にもシリーズがあって、僕の文章や表現、コミュニケーションの基礎になった本です。なので近々、これらも紹介していきますね。

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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