こんにちは。夫です。
以前紹介した「テクノロジーが予測する未来」では、未来を創る3つのキーワードとして「Web3」「メタバース」「NFT」が紹介されていました。
そしてWeb3、NFTという仕組みから生まれた新しい組織「DAO」についても説明されていました。僕自身、こうした最先端の話題は大好きなので追いかけているのですが、Web3やNFT、DAO、そしてメタバース…こうしたキーワードがただのブーム・バズワードで終わるのか、本当に新しい社会・経済を作り上げるのか、まだ半信半疑です。
だったらWeb3やDAO、NFT、メタバースについてもっと学ばないと!と思って手に取ったのが本書「Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”」です。
NFTといえば、最近こんなニュースがありました。
人気ゲーム「マインクラフト」がNFTを禁止するというもの。当然これにはいろんな意見があります。「マインクラフトが禁止するならやっぱりNFTって一過性のブームなんだな」という意見もあれば、「NFTを禁止にするなんてマインクラフトは遅れてる!やっぱり古い組織は新しい形に対応できないんだな…」という意見もあるでしょう。
個人的には、NFT禁止を決断したマインクラフトの経営陣は、大半の人よりNFTのメリット・デメリットを深く理解し、考えに考え抜いて決断したので、素人がとやかく言えるものではないと思います。僕たちにできるのは一つ。なんでマインクラフトがそうした決断をしたのか、NFTについて学んで考えることだけだと思います。
本書を執筆したのは亀井聡彦さん、鈴木雄大さん、赤沢直樹さんの三人。日本初のWeb3インキュベーション企業「Fracton Ventures」の共同創業者です。「Fracton Ventures」は「We can DAO it.Bring Web3.0 to the masses through passion, cooperation and intelligence.(訳:DAOでできる。情熱と連携と知性で、Web3.0を大衆に届ける)」をミッションに掲げ、DAOやWeb3の啓蒙活動、日本での普及などを行っています。
それでは新しい世界「Web3とDAO」の実態を見ていきましょう。
本書は、単なる経済書でも、技術書でもない。自己啓発書やSFのような未来予知本でもない。
今後世界を覆い、社会的な大変化を引き起こす「Web3」というインターネットの転換点と、その背景にある「DAO」というブロックチェーンによって可能となった新しいコミュニティについて、概要と本質を、インターネットの歴史を紐解きながら1冊にまとめたものである。
<中略>
Web3分野にある経済圏を、単なる投機的、短絡的なマーケットと切り捨てるのはもったいない。Web3のポテンシャルを知れば、これが「新しい経済」になりうるものだと気づくだろう。
Web3という大改革は、世界の皆に平等に訪れた。この事実が意味するのは、Web3は「誰にも開かれたチャンス」だということである。Web3を知り、考え、行動するのは今しかない。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
未来の話ではなく、今すでに始まっているWeb3とDAOについて学べるということですね。未来の可能性ではなく、今ある現実が学べる1冊です。
2008年10月、人類はWeb3に進化する武器を手に入れた
そもそもWeb3とは、2014年ごろイーサリアムの共同開発者ギャビン・ウッドが使った言葉です。
1990年、WorldWideWebによって始まったWeb1.0は、HTMLやサーバーなど少しの知識があれば誰でも情報を発信できる時代を作りました。本書ではこのことを「誰でも自由に受発信できるようになる情報革命の幕が上がった」と表現しています。
当時はダイヤルアップという電話回線を利用していました。当然、音声データをやりとりするための回線を使うので通信速度は遅く、通信にかかる費用もかなり高額でした。
それから10数年しか経っていない2000年代後半には、ほぼ全ての家庭に常時インターネット接続されたパソコンが普及(しかも超高速な光回線)し、Wi-Fiと接続したスマートフォンでリッチなコンテンツを楽しむようになりました。
しかしここで、インターネットの進歩による弊害が見え始めます。
それが高度に進んだ商業化と、ビッグテックの独占です。
もともともインターネット、WorldWideWebはオープンソースで、誰でも利用できる開かれたものでしたが、今、自分でサーバーを立て、HTMLやCSSを書いて誰にも管理されず自由な情報発信を行っている人がどれだけいるでしょう..?Google、Twitter、Instagram、、、こうしたプラットフォームに任せきりになっていますよね。
ビッグテックの独占で印象的な出来事が2020年8月、エピック・ゲームズとアップルの訴訟問題です。人気ゲーム「Fortnite」を提供するエピック・ゲームズは、App Storeの手数料を回避するために別の課金システムを導入しました。それが規約違反としてアップルが「Fortnite」をApp Storeから削除しました。
当時この問題をニュースを見て、奥が深い問題だなと思いました。App Storeという巨大なプラットフォームがあるから「Fortnite」は人気ゲームになれたわけですから、手数料を払うのは当然です。しかしプラットフォーム側が力を持ちすぎ、世界で最も人気あるゲームの一つが、規約違反だけで削除されるというのは、ユーザーファーストではないような気もします。
他にもFacebookの情報漏洩問題、大統領選での広告利用など、プラットフォームが独占するユーザーデータに関する問題もここ数年、数多く話題になりました。
そんな中、2008年10月にたった9ページの論文が公開されました。その名も「Bitcoin : A Peer-to-Peer Electronic Cash System」です。
ご存知の方も多いと思います。未だ正体不明の”サトシナカモト”が公開したビットコインに関する論文ですね。
この論文には次のようなことが書かれていました。
必要なことは信頼の代わりに暗号的な証明に基づく電子決済システムであり、信頼できる第三者を必要とせず、意志のある二者が直接取引できるようにすることである。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
Web2.0において「信頼できる第三者」つまりプラットフォームは絶対的な存在でした。Twitterは僕たちの投稿を全て消すことができますし、アカウントを凍結することもできます。もちろん、僕たちが誰のツイートを見て、どうリアクションしたのかも全部知っています。僕たちが何年もツイートしてきた投稿や、フォロワーなどの関係性は、プラットフォームの所有物です。
そのプラットフォームを必要とせず、情報をやりとりしたい人だけで直接取引できる。そんな仕組みがブロックチェーンなんです。
インターネットはこれまでデータの受け渡しのみをする、言わばパイプでしかなかった。しかし、ブロックチェーンの登場によって、企業やその他組織が行っていたデータの処理を、インターネット上でできるようになった。
言い換えればインターネットがデータのやり取りをするパイプだったものが、データを溜めて処理できるようにアップグレードしたと言っていい。
このようなブロックチェーンの登場に端を発する一連の変化やトレンドが、「Web3」と呼ばれる。
Web2.0で顕在化した負の側面は、企業がユーザーのデータを保有しすぎてしまったことによるところが大きい。Web2.0の状態ではユーザーのデータは企業が保有しており、ユーザーがサービスを利用したい時は企業の「庭」に入っていく必要がある。
一方で、ブロックチェーンが起点になったWeb3では、ユーザーのデータはインターネット上にあり、そのコントロールもユーザー自身が握っている。このような性質からWeb3は「自己主権型Web」とも言われる。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
Web1.0は全てがオープンソースで、自分でサーバーを立て、HTMLを書き情報を発信していました。しかしWeb2.0ではその役割をプラットフォームが担い、僕たちはなんの知識もなく便利なサービスを利用できるようになった一方、さまざまな権利をプラットフォームに握られました。
そしてWeb3では、もう一度オープンソースの時代に戻ってきました。しかし、以前のようにサーバーやHTMLの知識がないと発信できない不便なWeb1.0とは違います。ブロックチェーンによってWeb2.0で生まれた便利なサービスがそのまま、オープンソースとして自分が権利を持って利用できるようになるんです。
Web1.0の民主制とWeb2.0の便利なサービス。その両方のいいとこ取りをしたのがWeb3だということですね。本書ではWeb3がどういうものなのかイメージしやすいよう、「Web3のある生活」という章で小説のような物語でWeb3が浸透した社会を書いてくれています。
Web3の7つのバズワード
ここまではWeb3の概念的な話をしてきました。しかし、物事を理解するには概念的な話だけでなく具体的な話もしないといけません。ここまで述べたWeb3の概念を念頭に、今Web3で広がってきた7つのバズワードを見ていきましょう。
バズワード①NFT
Web3はビットコインという代替可能なトークンから始まりました。代替可能とは、「僕が持っているビットコインと、あなたが持っているビットコインは本質的に同じであり、交換できる」ということです。
一方、「僕が持っているモノとあなたが持っているモノは本質的に別である」というのがNFT(非代替性トークン)です。
通貨であるビットコインは、僕が持っているものと他の人が持っているものが同じで、交換できないと困りますよね。でも中には同じだと困るものがあります。僕が作った音楽は、ただそのファイルを持っているだけの他の人と別じゃないと困ります。それができるのがNFTです。
NFTを使うと、デジタルデータにIDを付与し、一見同じに見えるデータでもナンバリングして区別したり、所有者の証明ができたり、供給量を制限したり、他にもプログラミング可能なあらゆるルールを作ることができます。
主なNFT事例
- クリプトパンクス
- NBATopshot
- ボアード・エイプ・ヨット・クラブ
本書ではそれぞれのバズワードに対し、実際の例を紹介していますが、ここでは名前だけ残しておきます。興味があれば調べてみてください。
バズワード②メタバース
2つ目のバズワードはメタバースです。メタバースといえば、2021年にFacebookが社名を「Meta platforms」に変えて一気に認知が広がりました。
メタバースは現在、VR業界が培ってきたメタバースと、ブロックチェーン業界が培ってきたメタバースで大きく概念が分かれています。まだ登場したばかりの曖昧な概念で、明確な定義も存在しないため「メタバースとはこうだ」という定義も存在しません。
VR業界のメタバースは、仮想空間の実現を目標としており、人間の五感をハックして現実世界と仮想空間の境目を無くした文字通り”もう一つの世界”を作ろうとしています。
ブロックチェーン業界のメタバースは、ブロックチェーンを採用し、ウォレット(仮想通貨をやりとりする財布)を使い、その空間で価値のやりとりを行うことを目指しています。
メタバースと呼ばれるものの中でも、概念や目指すものが大きく違うんですね。一般には旧FacebookがやっているVRを使ったメタバース、つまり仮想空間の実現をイメージしますが、NFTゲームのようにブロックチェーンを使い価値を交換する場所、経済圏としてのメタバースを目指すものもあります。
主なメタバース事例
- ディンセントランド
- ザ・サンドボックス
バズワード③DeFi
DeFiとは「Decentralized Finance(分散型金融)」を指す言葉で、ブロックチェーンを使って提供される金融サービスです。近年、キャッシュレス化に伴い便利なサービスがたくさん出てきましたし、それに伴ってアプリで使える銀行サービスも充実してきました。しかしこれらはWeb2.0の枠を超えていません。あくまでもこれらのサービスの主体は、企業側にあります。
ブロックチェーンがビットコインという通貨で始まったことからわかる通り、Web3の行き着く先は中央管理者である金融機関を不要にすることです。
既存の金融サービスはどれも旧来の技術によって成り立っているサービスであり、いくらデジタル化したとはいえ、まだまだ無駄が多くコストも高い。
今現在になっても、株の取引は9時から15時までしかできないし、土日は市場が開いていない。銀行口座もシステムメンテナンスにより、お金の引き出しができなくなることもよくある。
一方で、ブロックチェーンをベースとした金融システム、つまりDeFiを用いれば、このような課題は解決できる。24時間365日メンテナンスフリーで、仲介者を排除して、半永久的に動き続けるのだ。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
株投資を行う者として個人的に思うのは、土日が休みで取引時間が決まっているのはむしろメリットなんですけどね…金融サービスのような重要なものが分散して管理されるというのも少し怖い気がします。DeFiのプログラムに深刻なバグがあったら誰が直すんでしょう?なにより金融取引がブロックチェーン上に公開されるって、結構嫌です。笑
主なDeFi事例
- ユニスワップ
バズワード④GameFi
GameFiという言葉は2021年になって登場した新しいバズワードで、ブロックチェーンゲームにおけるファイナンスを表します。普通、ゲームは運営会社が儲かり、ユーザーはお金を払って遊ぶものですが、GameFiはユーザーも儲かる仕組みです。
いろいろな形がありますが、例えば、ゲームで手に入れたレアアイテムを貸し出して稼ぐことができるものもあります。NFTを使えばゲーム内で手に入れたアイテムを、自分が所有権を持ったまま相手に渡すことができるんです。これまでのゲームだとなかなか考えられないことですよね。
お金がある先進国のプレイヤーはお金でいいアイテムを買ってゲームを有利に進める。お金がない途上国のプレイヤーは頑張ってアイテムを集め貸し出すことで稼ぐ。途上国では十分生活できるほど稼ぐ人もいるそうです。感覚的には、金がものをいう残酷な世界、、という気がしますが、途上国のプレイヤーからすると遊んでいるだけで生活できる素晴らしい仕組みと言えるかもしれませんね。
主なGameFi事例
- アクシー・インフィニティ
- ステップン
バズワード⑤ソーシャルトークン
Web3ではしばしば「トークン」という言葉が出てきますが、直訳すると「しるし・証拠」という意味になります。トークンこそがブロックチェーンの根幹であり、イーサリアムのトークンは、イーサリアムを誰がどれだけ持っているか、どんな交換をしているのか、といった証拠になるものです。
そんな中、広がってきているトークンが「ソーシャルトークン」と呼ばれるもので、コミュニティの参加券として用いられるものです。つまり、ファンクラブの会員証がトークンとして、ブロックチェーンでやりとりできるようになっているということです。
ファンクラブの会員証がトークンになる。そのトークンにはファンとしてどんな活動をしてきたかが記録されています。つまり、しっかり真面目にファン活動をしてきた人のトークンには唯一無二の価値が生まれるということです。ただの会員証が資産になる。なんでもデジタル資産になり得てしまうWeb3ならではのムーブメントですね。
主なソーシャルトークン事例
- RAC
- チリーズ
- ラリー
バズワード⑥DeSci
6つ目のバズワードはDeSciです。
そろそろ言葉が頭に入ってこなくなってきました。De~や〜Fiなど、Web3が一般に普及することを目指すならもうちょっとわかりやすい言葉を使って欲しいものです。
これは「Decentralized Science」の略で、分散型サイエンスという意味です。これはブロックチェーンを使って科学分野の研究を加速させようという試みです。
研究者は多くの時間を使って助成金獲得のための書類作成や研究に費やされていて、どうしても短期的に結果が出やすい研究テーマを選ばざるを得ません。科学は世界の公共財と言われますが、実際には国同士、大学、企業が競争するために秘匿されたり、研究結果を自由に活用できていない現状もあります。
研究分野においても、NatureやScienceといった出版社が大きな力を握っており、プラットフォームが支配するWeb2.0と似たような課題がたくさんあります。
そうした課題を解決するために、知識や資金調達を公共財として共有するためにWeb3を活用しているのがDeSciです。
知識や資金調達をどのようにコミュニティのリソースとして共有していくのか、これまでの産業社会独特の仲介者を排除し、どのようにプロジェクトや研究者がオーナーシップを持っていくべきか、などの模索が必要不可欠であり、ここにWeb3がフィットしてきたというわけである。
現状はバイオテクノロジーが中心となり発展してきているものの、この分野だけではなく、サイエンス、つまり科学全体でもDeSciのムーブメントは加速していく。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
すでに社会問題を解決するために生まれたプロジェクトで、誰もが参加・支援できるコミュニティが生まれています。新しい研究結果を共有したり、みんなで資金調達を行ったりする自立分散型の研究プロジェクトです。もちろんこれでも短期的に結果が出やすいものに資金が集まるという傾向は変えられないかもしれませんが、他の問題の多くは解決できそうですね。
主なDiSci事例
- ビータダオ
バズワード⑦ReFi
また〜Fiが出てきましたが、これで最後なので勘弁してください。
ReFiとは「Regenerative Finance(再生金融)」と呼ばれる分野で、保護された天然資源に基づいた通貨を発行する仕組みです。
イメージが難しいですが、資本主義、社会経済が地球にダメージを与えていることはある程度共通の認識だと思います。しかし地球環境は僕たちの社会経済の土台であり、環境を破壊するビジネスは長期的な利益を阻害している(価値を失っている)と言うこともできます。
ReFiとは「自然の資本を蔑ろにせず、自然資本の破壊と、自然資本の保存と回復に関する利益とコストを内部化する通貨システム」です。
つまり、自然資本を消化したら価値が減り、自然資本を回復させたら価値が増える。そんな通貨で経済を回そうということ。
「金」が「マテリアルとしてのGold」に裏付けされた価値があり、「日本円」には日本政府の信用に裏付けられた価値があるように、ReFiの通貨は自然資本に裏付けられた価値があります。
経済成長とは乱暴に言えばその経済圏で流通する通貨の増加です。つまり、ReFiが普及すれば、自然資本を保護しないと経済成長できないということで、もしこれらが国を超えて普及すれば、今の社会、人類の営みを根本から覆すポテンシャルを持っています。
主なReFi事例
- クリマダオ
ということでここまでWeb3のバズワードを7つ見てきました。僕はWeb3に関する本を何冊か読んでいますが、それでも知らない言葉に出会いました。ここで紹介されたものは全てすでにサービスが提供されており、現実に存在しているものです。正直、全部理解できたとは言い難いですが、その事実は受け止めないといけません。
Web3はWeb2.0と比較されることも多いが、共存していくものだと理解しているし、一瞬で世界はWeb3にリプレイスされるとも思っていない。まだまだ誕生したばかりであり、社会にフィットする領域を業界全体で模索しているフェーズなのである。
Web3が今の社会に少しずつ滲みて出ていくことで、Web2.0の仕組みでは解決できなかった社会の課題が、解決できるようになっていくだろう。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
このことは非常に重要です。Web1.0から2.0に変わった時も、変わらず自分でサーバーを立て何にも所属せず自立して情報発信をする人が居続けるように、Web3に変わってからもWeb2.0のサービスは相変わらず利用され続けるでしょう。あくまでもWeb2.0では解決できない課題に対して、Web3が解決策を提供するということです。
個人がオーナーシップを持つ世界
Web3の概念、バズワードと、抽象論から具体論まで説明したところで、もう一度、抽象論に戻りましょう。結局、Web3によって何が変わるのでしょうか?バズワードで紹介したサービスを見て「似たようなものは前からあるんじゃない?」と感じたかもしれませんが、結局のところ、何が違うんでしょうか?そこを理解するための抽象論です。
Web3によって、つまるところ社会はどう変化するのだろうか。Web3に向き合う中で重要なことは、シェアリングエコノミーからオーナーシップ型のエコノミーへと価値観の変化が起きている点だ。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
シェアリングエコノミーでさえ、ここ数年のバズワードだと思っていたのに、もうそこから価値観の転換が起こるんです。社会の流れが早すぎてついていけません。笑
本書では、その変化を次のように説明しています。
(政府など)
↓
プラットフォームトラスト
(FacebookやAirbnb、Uber)
↓
プロトコルトラスト
(パブリックブロックチェーン上のプロトコル)
もともと、人は政府など公的機関を「信用(トラスト)」していました。今も通貨や公共サービスに関しては政府を信用して利用しています。Web1.0では「信用」が不足していました。誰もが自由に、といえば聞こえがいいですが、情報の発信元が信用できるのか判断する手段がなかったからです。
Web2.0においてはプラットフォームが信用の土台になりました。つまり、プラットフォームそのものや、プラットフォームが持っているデータが信用になったのです。Twitterでフォロワーが100万人いる人のツイートは、フォロワー100人の人のツイートより信用できるでしょう。
シェアリングエコノミーも、プラットフォームが持つデータが信用の土台になります。つまり、口コミです。Airbnbは民泊という個人間の信用できない取引に、口コミという信用の土台を持ち込みました。「相手は個人で、宿泊事業のプロではないけれどいい口コミが100件もあるから信用できる」から、大手ホテルではなく民泊を利用するんです。プラットフォームが持つ口コミを信用の土台とするのは、Uberなどさまざまなシェアリングエコノミーに共通しています。
シェアリングエコノミーが「口コミを信用の土台にしている」というのは面白い見方ですね。口コミを信用の土台にしているという点では、他の多くのSNSもシェアリングエコノミーと言えるかもしれません。みんなが使っているという口コミ的なものが、そのSNSの力を表していますよね。
しかしこれだと最初の信用を築くのが非常に難しいという課題が生まれてしまいます。
一方、Web3が信用の土台にしているのは「プロトコル」です。プロトコルとは通信や取引を行うための規約・ルールのことです。ブロックチェーンは運営が民主化され、改ざんできず、全ての取引が全体に可視化され、そのデータは利用するそれぞれの個人がオーナーとして管理しています。
だからこそ、Web3においては「プロトコル」規約やルールそのものが信用の土台になるんです。
そのプロトコルが非常に公正であるとわかれば(プロトコルはブロックチェーンで公開されている)、そのプロトコル自体を信用して取引する。そのプロトコルに従って取引するため、取引相手が信用に足るかどうかは関係ないのです。
Web3では、ルールを提供するのはプロトコルと呼ばれるソフトウェアだからだ。
先ほども簡単に説明したが、プロトコルとは、スマートコントラクトと呼ばれる自動化されたソフトウェアのプログラム自体を指している。プログラム内に一定のルールそのものを定義づけしておくことで、ルールを内包するソフトウェアは「Aが行われればBを行う」「Bが行われればCを作動させる」といった具合に、常に一定の挙動を行うことになる。
これがブロックチェーン上で24時間、365日自動執行される形になるのがスマートコントラクトであり、この時スマートコントラクトは単なるプログラムとしての意味合いだけではなく、ルール自体を意味するプロトコルとして昇華されるのである。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
なかなか理解が難しい概念ですが、第三者を必要とせず取引を成立させるブロックチェーンは、そのブロックチェーンが定義するルール自体が重要です。逆にそれ以外に重要なことはありません。そのルールはユーザーに公開され、ユーザーが民主的なプロセスで作り上げることができるため、ユーザーは”ユーザー(利用者)”ではなく、”オーナー(所有者)”のような立場になるということですね。
イノベーションの破壊的加速を招くDAO
Web3によってどのように世界が変わるのか。一番大きな影響を与えるのは、DAOという新しい組織形態だと思います。本書でも後半数章を使い、DAOという組織や作り方、入り方、いろいろな種類のDAOについて解説されています。
DAOは「自立分散型組織」のことで、ブロックチェーン技術によって可能になった新しいコラボレーションの形です。
DAOを一番わかりやすく説明するとすれば、「中心のない、ミッションドリブンのコミュニティ」と思っていただければいいだろう。
「サロン」という言葉は聞いたことがある人も多いはずだ。会社とは違う、価値観やミッションをもとに集まる集団である。
<中略>
DAOは感覚的にはサロンに近いものの、DAOとサロンで大きく異なるのは、「中心に人がいるかどうか」である。
<中略>
DAOの場合は、中心のリーダがいなくても組織自体が自立的に活動し続けられる仕組みになっている。Web3の価値観に則って、組織は分散が前提だからである。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
こちらは本書で紹介されていた会社、サロン、DAOのイメージです。上下関係のある中央集権的な組織が会社だとすると、上下関係はないけれど中央集権的な組織がサロン、そして上下関係がなく権利が分散されているのがDAOです。
DAOにはいろいろなメリット、既存の組織との違いがあります。
例えばガバナンス(組織統治)です。株式会社では取締役会や株主総会によってガバナンスを保っています。一方、DAOのガバナンスはトークンによって行われていて、そのトークンはブロックチェーン上で管理されています。トークンは24時間365日、動き続ける存在なので、毎日どこかで株主総会が行われているようなものです。
イメージとしては、例えばDAOが持つフォーラム(掲示板)で誰かが議論を持ち上げ、トークンを持つ人がその議論に参加します。そして議論の方向性が固まってくると、誰かが代表して提案書を書き、トークン保有者に投票を投げかけます。そして過半数が賛成するとプロジェクトが進行します。
トークンはブロックチェーン上で管理されているため、過去に何に投票したか、どんな議論を持ち上げたかなどもすべて可視化されています。そして投票のルールもプロトコルによって柔軟に調整されます。例えば、そのDAOに積極的に貢献している人には投票の重み付けがましたり、DAOの価値観や行動規範によってさまざまなに定義されています。
上場企業は独立した監査を受けた財務諸表を提出する必要があるが、株主はある時点での瞬間でしか組織の財務状況を見ることができない。
対してDAOの貸借対照表はパブリックブロックチェーン上に存在するため、全ての取引に至るまで、常にリアルタイムで完全に透明性が保たれている。これにより、汚職や検閲のリスクが大幅に軽減される。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
ブロックチェーンという透明性が高い場所で、トークンを用いて運営する。だから既存の組織よりガバナンスが強いという主張ですね。といっても結局はDAOがどういうプロトコルを持つか次第です。普通にお金で変えるトークンを一人一票にしたら、実質的に株式会社と変わりませんし、貸借対照表が常に公開されているというのも、近視眼的な経営につながるリスクもあります。この辺はDAOを盲信するのではなく、DAOによって何ができるかを考える必要がありそうですね。
データの取り扱いも既存の企業と大きく異なります。プラットフォーマーは自社のサーバーにユーザーのデータを溜め込み、保有しています。だからこそ漏洩や情報活用が問題になるわけですが、そもそもDAOはブロックチェーン上にあるのでそうした問題とは無縁です。ブロックチェーンは全ての取引履歴、データが、すべてオープンになっているので、情報漏洩が前提としてあり得ないんです。
企業による個人情報、顧客データの流出事件は頻繁に起きている。欧米諸国を中心に、プライバシーや個人情報への意識が高まっており、もはや企業が抱えられるレベルではなくなってきている。
Web3はこの点において、いたってシンプルだ。ブロックチェーンを利用しているため、はなからすべてがオープンなのである。隠しようがない。このブロックチェーンの性質を「検証可能性」といい、世界中のどこにいても、ブロックチェーンを見てしまえば、すべての履歴を過去にさかのぼって追うことができる。
DAOにおけるすべての行動と資金の流れが誰にでも検証可能であるため、従来型の企業の仕組みよりも透明性が高い。
引用:Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”
情報漏洩の心配がない。だって最初から全部公開されているから。っていうのはいいんだか悪いんだかよくわかりません。この点でもやっぱり金融分野のDeFiはハードルが高そうですね。でも全部公開されていることが安心、信頼につながるのも確かなので、相性がいいプロジェクトではものすごく効果的だと思います。
結局、DAOとWeb3は広がるのか?
ということで今回は「Web3とDAO-誰もが主役になれる”新しい経済”」を紹介しました。
随分と長くなってしまいましたが、おかげで僕自身はDAOとWeb3の輪郭や概念が掴めてきました。本書ではDAOの入り方や作り方、実際に運営されているDAOの事例、さらに今後の未来についていろいろ書かれているので、ぜひ読んでみてください。
本書を読むまで、Web3の本命はメタバースとNFTだと思っていましたが、DAOの方が本命なんじゃないかと思いました。NFTはどうしても投機的なニュースが目立ちますし、資金力がものをいう世界なので資本主義の課題である格差はむしろ広がるように思います。もちろんいろんなNFTがありますが、Web3の本命になりそう、10年、20年後のスタンダードを作りそうなNFTプロジェクトは、ほとんどDAOの形をとっています。
ちなみにDAOの代表例はビットコインやイーサリアムなどの暗号資産だと言われています。イーサリアムはブロックチェーン上にあるプロトコルで、非中央集権的です。イーサリアムの仕様変更は、ビットコインを持っている人、つまりDAOの参加権を持つ人の間で民主的に決められています。ブロックチェーンが始まったビットコインというプロジェクトが、ブロックチェーンの未来であるDAOの代表例でもあるなんて面白いですよね。
そしてメタバースはまだまだ謎が多い。デバイスも、メタバース内で提供されるサービスもまだまだ足りていません。あと数回、大きな技術革新がないと厳しいんじゃないかな、と思います。
そう考えると、Web3の本命はDAOで、DAOは呼び方や形を微妙に変えながらも社会に浸透していくのではないかと思います。
といっても、DAOにもまだまだ課題はあります。DAOは「プロトコルトラスト」つまりルールへの信用で成り立っているはずですが、実際にはアイコンとなる人が中心となっている例がほとんどです。結局、まだプロトコルトラストはまだ浸透しておらず、誰か人が旗振り役をしないとうまく機能しないようです。
それに、民主的なプロセスが必ずしも正解というわけではありません。強烈なビジョンを持って推し進める人がいる場合、その人を中心にした中央集権的な組織の方が効率的に進むはずです。
イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズのようなビジョナリーが、DAOの一員として少しの投票権しか持っていなかったらもったいないですよね。彼らは中央集権的にやらした方が社会に大きなインパクトを生み出してくれます。
そうした課題を少しずつ乗り越えながら、もしかしたら株式会社とDAOのハイブリットのような形が生まれるかもしれませんし、株式会社の仕組みのまま一部の意思決定プロセスをDAO化する既存企業が生まれてきたりするかもしれません。
いずれにせよ、Web3の”今”の解像度が上がりました。この記事で書いたこと、本書に書かれていることのほとんどは未来予想ではなく、今すでにあることです。早すぎる時代の変化についていくためにも、これからもDAOやWeb3にはアンテナを張っておきたいと思います。
この記事を書いた人
- かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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