蜂蜜に救われた主人公を描く「今日のハチミツ、あしたの私」

今日のハチミツ、あしたの私 小説・エッセイ
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今日は、食べることがすきな人や自分の居場所に悩んでいる人におすすめの小説『今日のハチミツ、あしたの私』をご紹介。

著者は寺地はるな(てらちはるな)さん。

会社勤めと主婦業のかたわら小説を描き始め、2014年に『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。

最近では『ガラスの海を渡る舟』が発売されています。

本書は蜂蜜を通じて変わる一人の女の子の話で、読むと自分のために頑張って生きようと思わせてくれる作品です。

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あらすじ

妻

過去、わたしがIntro Booksで紹介している小説は、裏表紙に書かれているあらすじを紹介 → もう少し詳しく説明、という流れになっています。が、今回は裏表紙の内容については触れずに詳細から入らせていただきます。

出会い

主人公:塚原碧は中学生の頃、いじめに遭っており「明日なんて来なければいい」と思っていました。

そんなある日、一人の女の人に出会います。

女の人は唇が荒れている碧を見て、小さな瓶を取り出し、中に入っていた蜂蜜をリップクリームの代わりになる、と碧の唇に塗ります。
そして、不思議な痩せ方をしている碧を心配します。碧は誰にも言えずにいた”食べると吐いてしまうこと”を話します。

「胃が荒れてる時は食前に蜂蜜をひと匙食べるといいの。胃の粘膜を保護してくれるから」

女の人はこう言って小さな丸いパンに蜂蜜を塗り、碧に渡します。
蜂蜜のおいしさを感じた碧を見て、女の人はこう言います。

「蜂蜜をもうひと匙足せば、たぶんあなたの明日は今日より良くなるから」

そして碧の手に蜂蜜の瓶をのせ、じゃあね、と歩いて行ってしまいます。

女の人を通じて食べることの楽しさ・大切さを思い出した碧は以降、吐くことをやめます。

碧はその後、中学では変わりなく過ごしますが、高校はすこし遠い街で親戚の家に下宿させてもらいながら通い、平穏な生活を送ります。

そして大学でもおおむね平穏な日々が続き、就職活動では女の人との出会いをきっかけに食に関する仕事に就きたい、と食品関係の会社を受け、働きはじめます。

新たな環境

時は過ぎ、碧は30歳に。
一緒に暮らしていた恋人:安西が突然、実家に帰って家業を継ぐ、と言い出します。
実質、安西からのプロポーズという形で、碧は安西の故郷に移住することになります。

移住前に何度か安西の実家へ行くも一度も出会えていなかった安西の父へ、改めて挨拶に行きます。
碧は初対面の安西の父にこう言われます。

「このお嬢さんの面倒までは見られない」

そして安西の父は、碧の恋人である安西に対し、お前の結婚相手ならじきに俺が見つけてやるから、と言います。
仕事を辞め、アパートも引き払い、帰る場所もどこにもない状態の碧。
安西の父の無礼さに腹が立ち、こう言います。

「わたしがどんな人間かもご存じないくせに、なんなんですか」

安西の父はそこまで言うなら蜂蜜園をやっている黒江という男から滞納されている地代を回収してこい、と言います。それができたら結婚、という形で。

翌日、碧は黒江の蜂蜜園に行きますが、金はないから帰れ、と言われてしまいます。

そのまた翌日、碧は黒江の蜂蜜園に再び訪れ、こう言います。

「お金は、とりあえず今日はいいです」

<中略>

「わたしに養蜂を教えてくれませんか」
黒江の目をまっすぐに見る。黒江はポケットに両手を突っ込んで、黙っている。
「指導料をお支払いします」
そのお金で、安西の父に地代を払えばいいんです。

黒江は下を向いて「なんで、そこまでする」と呟く。
「そこまでして、安西の息子と結婚したいのか」

「ずっと昔、蜂蜜をつくっている、という女の人に会ったことがあります」

<中略>

「一度だけしか会ったことのない人です。その人に蜂蜜をもらって、食べた時、蜂蜜ってこんなにおいしかったんだと思いました。もうちょっとだけ生きてみようと思いました。その人にいつか、もう一回会えたらいいなと思ったし、その人みたいに、いつか誰かを助けられたらいいな、とも思いました」

<中略>

「わたし今、仕事もないし、結婚するつもりの相手ともなんかこの先いまいちどうなるかわからないし。家もないし。三十歳になったし。お金払って養蜂なんて習ってる場合じゃないのかもしれません。でも逆に、今しかできないことなんじゃないかなって思って」

これを聞いた黒江は碧になんと答えるのか、碧は安西と結婚できるのか、気になった方はぜひ手に取って、読んでみてください。

食と自分を大切に

以上、かなり簡単にですが『今日のハチミツ、あしたの私』のあらすじをご紹介させていただきました。

碧は中学の頃出会った女の人に、食べると吐いてしまうということだけでなく、みんなに嫌われているんです、といじめられていることも打ち明けます。

女の人はその話を聞いて、こう言います。

「違うね。卒業しても、高校に行っても、大学に言っても、就職しても、ずーっとそのままだと思う。あなたこの先もずーっと、みんなに嫌われたまま生きていきそう」

<中略>

「あなた自身が、あなたを大事にしてないから。あなたがあなたを嫌っているから。だから周りの人はみんな、ますますあなたを大事にしないし、嫌いになる。こいつはそういうふうに扱ってもいいんだって思われてしまう」

妻

「あなた自身が、あなたを大事にしてないから」この一言はグザっときますね…胸が痛い…

碧はその時、なんで見ず知らずの人にそこまで言われなければならないのだろうと思いますが、自身をそして食を大切にしはじめます。

時は過ぎ、碧はとある人に、なんでこんなに手をかけてごはんを作るの、と聞かれます。
どうせ食べたらなくなっちゃうんだから適当に済ませればいいのでは、という声を受け、こう返します。

「なくならないよ」
なくならないんだよ。碧は繰り返す。
「食べものが身体をつくるのはあたりまえだけど、それだけじゃなくて。誰かと一緒にごはん食べて楽しかったとかおいしかったとか、そういう記憶ってずっと残るから、食べてもなくならないよ。記憶が残るなら、それはごはんも残ってるってことだよ」

本書を通じ、食をおそろかにせず生きていくこと、自分を大事にすることの大切さを学びました。
あなたも碧のように1回1回の食事を大切にし、蜂蜜をひと匙足して今日より良い明日を迎えてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、蜂蜜には約190種類の栄養成分が含まれており、疲労回復や腸内環境を整えてくれます。さらに、ダイエットや美肌といった美容効果もあり、料理に加えると味が引き立つ優れもの。

本書にもそんな蜂蜜が入ったレシピがいくつか出てきます。

妻

わたしも今日からコーヒーに入れている砂糖代わりに、ヨーグルトに入れているジャム代わりに、蜂蜜を使おうと思います…!…あ、家に蜂蜜なかった…まず買いに行くところからですね…

ではまた。

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