「アガワ流生きるピント」で視点を変え、不安や悩みを解決!

小説・エッセイ
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生きていると悩みは尽きもの。
今日はみんなが持っている不安や悩みに対し、アドバイスをくれる『アガワ流生きるピント』をご紹介。

著者は阿川佐和子(あがわさわこ)さん。

阿川佐和子さんは1953年東京都生まれのエッセイスト、作家。
ああ言えばこう食う』で講談社エッセイ賞、『ウメ子』で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』で島清恋愛文学賞を受賞。さらに『聞く力』が2012年年間ベストセラー総合1位に。
テレビでは『ビートたけしのTVタックル』に出演中。

本を手にしたときからどこかで聞いた名前だと思っていましたが、毎週土曜の朝にやっていたテレビ『サワコの朝』の人だ…!

本書は阿川さん宛に寄せられた全37の悩みに対し、長年聞き手の仕事をしてきた自身の体験をもとに、少々ピントがずれながらも答えていく方式。

また、本書には阿川さんの他にもう一人、担当編集者である向坊健(むかいぼうけん)さんが登場します。

向坊さんとは仕事を通じて20年以上交流があり、互いにズケズケとモノを言えるほどの仲だそう。そんな向坊さんのことを阿川さんは「下心も恋愛感情も湧かないボーイフレンドの一人」と言います。

本書の魅力は2人の掛け合いと阿川さんの着眼点
届いた悩みに対する向き合い方やこんな視点から見ることもできるなんて…!と勉強になる部分が多くあります。

また、人はみな様々な不安・悩みを抱えているということが改めてわかります。

今回、Intro Booksでは7つの悩みをピックアップしてご紹介。阿川さんと向坊さんのやり取りはラジオを聞いているかのようで、読書が苦手な方でも比較的に読みやすいかと思います…!

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仕事が忙し過ぎてヘトヘトです

社の方針で、私の部署はどんどん人員が減らされていて、八人いた部署が三人になってしまいました。当然のことながら、仕事の負担は増すばかりで、毎日ヘトヘト。上司はどんどん仕事を振ってくるし、ブラック企業にいるような気分です。お陰で、ストレス性の胃炎になってしまいました。
(52歳、女性、会社員)
──阿川さんの担当編集者は、僕も含めてみんな優しいでしょうけど、この質問の方の上司は容赦ないみたいですよ。

ん?アナタに優しくされたことあったっけ?でもたしかに相手が上司だとこういう嫌味の応酬もできないだろうから、つらいでしょうね。だからといって胃炎になるまで我慢しちゃダメですよ。仕事に限らずですが、私は精神的につらくなると身近な人を捕まえて、とにかく愚痴ります、甘えます、泣きます。
<中略>
愚痴る対象は家族や親友でなくてもいいんですよ。むしろ愚痴る相手を絞ってしまうと、受け止める側も「またかよ」ってうんざりしちゃうでしょ。この人とはもう二度と会わないだろうというような疎遠な関係の人のほうが、優しくしてくれる確率は高いですね。仕事で初めて会った人とか、宅配便のおにいちゃんとか。

──愚痴っただけでは、何も解決しないんじゃないですか?

でも、友人知人初対面の人合わせて五人くらいに愚痴るのを繰り返したら、そのうち気づくのよ。ああ、自分の悩みはなんてちっぽけなんだ、大した問題ではないな、世の中にはもっとつらい思いをしている人がいっぱいいるぞってね。ついでに喋ることによって頭が整理されます。
<中略>
この相談にある「仕事を振ってくる上司」も、きっと責任のある立場に置かれていっぱいいっぱいなんですよ。そのストレスを部下にぶつけて発散させているだけかもしれない。

阿川さんはエッセイストとしてのお仕事のほかにテレビ出演などもあり、原稿書きや対談の資料読みなどに追われてパニックになることも。
そんなときはやらなきゃいけないことを箇条書きにして、ボードに貼り付け、ササッと片付けられそうなものから片付けているそう。
この自身の経験から、最後にこう言います。

残る二人の部員と結託して「八人が三人になった場合、どんなに頑張っても現実的にできることは限られてきます。できることを箇条書きに整理してみましょう。まず達成できそうなことから始めてみますから、あとはフォローお願いします。一緒に頑張りましょう!」なんて具合に進言してみるとか。
<中略>
「うるさーい!」とか感情的に逆ギレされたら、しかたないね。この上司は人間的に存在できないと見定めて、ニッコリ笑って静かに見つめ返し、冷たくその場を去る。そしてその上司の悪口をみんなで言い合ってストレスを発散させる、ってのはどうかね?
あとね、いちばん大事なのは身体ですから。まず寝ること。
<中略>
もうダメだと思ったら、とりあえず寝る!

結論
短い仕事から片付ける。愚痴る。そして寝る。

わたしだったら『体調悪くなるくらいの環境だし、もう仕事辞めたらよくない?』って軽率な発言をしてしまいそう。先輩の立場を加味したうえで、仕事の進め方や愚痴を言う相手をアドバイスする阿川さんはすごい…!

上司の辛辣な言葉に傷ついています

職場の部長(女性)には、かつてはよく飲みにつれていってもらうなど、可愛がってもらっていましたが、最近は「あなた、頭つかってるの?」「そんな仕事ぶりで恥ずかしくないの?」など、キツく叱責されるようになりました。周りの同僚からも同情されるほどです。「あなたとは気心が知れてるから、つい言いすぎちゃうの。ごめんね」などと後で詫びが入ることもありますが、我慢の限界です。本来なら、部長の上司である局長(男性)に訴えるべき話ですが、局長と部長はデキているという噂もあるので、躊躇しています。
(45歳、女性、公務員)

──いわゆるパワハラですね。

<中略>
同じ言葉でもAさんに言われるとパワハラに聞こえるけど、常日頃「ステキな先輩だ」と思っているBさんからだと、傷つかないってことがあるでしょう。ここが微妙ですよね。
この質問の方には失礼かもしれないけれど、たとえばそのパワハラ部長の立場になって考えてみてください。もし上に訴えられたらたぶん、「これだけ可愛がって面倒見ていたつもりだったのに、まさかパワハラで訴えられるとは思わなかった」とショックを受けるにちがいない。おそらくいじめたなんて自覚はないと思いますよ。

──でも、もう我慢の限界なんですよ。何とかしないと!

まずは同士を探してみたらどうですかね?自分と同様に部長に対して不満を持っていそうな職場の仲間に話してみる。それで「私もそういう思いした」「えっ、本当?今度お茶飲もう」ってなると、ちょっと元気が出るでしょう。一人で抱え込んでいると耐えられない問題も、共有できる仲間を見つけて、特に女性の場合は、話すだけでかなり発散できるから、気持が楽になるはずです。その上、なんだか新しい友だちができた気分で、ささやかに嬉しくなるの。
その新たな友だちは、単に「嫌な上司を抱えている」という共通の話題一つでつながっているだけの関係ですからね、さほど長続きはしないと思うけど。
<中略>
でも、たとえいっときの仲だとしても、一緒に愚痴を言い合える仲間がいるのは大事なことなのよ。悪口は蜜の味、毎日の活性剤ですよ。
<中略>

──阿川さんも、そういう悪口で絆が生まれたご経験が?

もちろん、ありますよ。食事会である「人物」の話をしているうちに、そこに集まっている女性陣がみんな、同じように「嫌なヤツ」と思っていることが発覚した途端、盛り上がって盛り上がって、気づいたら、その「人物」の話題だけで2時間半経っていた。そのとき私、感動したんです。「2時間半も盛り上がれる話題を提供してくれるその『人物』は、もしかして偉大な人なのではないか」ってね。
<中略>
でも、そのとき、さんざん悪口を言い尽くしたら、疲れちゃってね。そのあと、「自分はなんて下劣な人間だろう」ってことに気がついた。そうしたら、さらに気が晴れていましたね。吐くだけ吐いたらイライラが収まったし、興奮して悪口を言っているうちに、もしかしたら自分たちにも非があるのではないか、という気持にもなった。
<中略>
でもいっときの発散は必要なのよ。

──職場の結束が固まれば、いっそのこと有志一同で局長に訴え出してはどうですかね。集団で来られたら、たとえデキていても簡単にはかばい切れないでしょう。

でもね、その上司の肩を持つわけじゃないけれど、「有志一同で局長に訴える」という作戦が成功したとして、そのあとどうなるか、想像してみてください。
まず相談の方を含めた「有志一同」はスカッとするでしょう。ざまあみろってな感じでね。でも、この「有志一同」の結束は、たぶんそこまでだと思う。確たる敵を失ったら、仲良くする理由がなくなるんですよ。
<中略>
一方のパワハラ部長はダブルパンチですよ。可愛がっていたつもりの部下から総スカンを食って、その上、バレていないと思っていた局長との関係も知れ渡ることになる。しかも、当の局長は、私を守ってくれなかった。もうボロボロでしょう。
<中略>
そこまで、その人の人生を追い詰める覚悟はありますか?
この質問の内容から想像すると、そのパワハラ部長は、ちょっと独断的で口は悪いけれど、まあまあ明るい性格なのではないかと思うんですよ。陰湿にいじめるような気持はないのではないかと。だからこそ、ときどき気になって、「気心が知れているから、つい言い過ぎちゃって」と、エクスキューズを入れるのではないかしら。
実のところ私も、この上司のような態度を取る傾向があります。すごく親しい友だちには、気を遣わないでいいと思うから、他の人に紹介するとき、敢えて悪く言ったりするのね。
<中略>

──僕も阿川さんのご友人に紹介されるとき、「酔っ払いで」とか「節操がなくて」とか言われて、だいぶ傷つきました……。

あら、ゴメンあそばせ、傷ついていたようにはぜーんぜん見えなかった。
<中略>
今でも私には、「親しいからこそ悪く言う」という癖が抜けていないんだけれど、ときどき「言い過ぎたかな」と反省することはあります。
だからね。このパワハラ部長も、そんなに相手を傷つけているという自覚がないのかもしれない。そういう場合は、「みんなで訴える」という、一見合理的に思われる方策を取る前に、さりげなく本人にぶつけてみたほうがよくないですか?
<中略>

──上司になかなか言い出せないくらいだから、どうせなら仲間を道連れにしたほうがよくないですか?

まあ、それでもいいけど、大勢で言われるショックってのは、かなり大きいのよ。私、経験があるの。
中学生のとき、私はミュージカルが好きだったんだけど、まわりの友だちはだいたい和製グループサウンズのファンだったんですよ。そうしたらあるとき手紙を渡されて。
「アガワと友だちになりたいとは思っているけれど、どうも趣味が合わない。無理に合わせなくてもいいけれど、少し変えてみたらどうでしょう。みんながそう言っています」って数人の連名で。ガーンとショックを受けましたよ。「みんなが言っている」という言葉がいちばん怖かった。みんなが私のことを悪く思っている(本当かどうかはわからないけれど)と知った瞬間、地獄に落ちた気分がしたものね。
一人の意見ではなく、多くの人がそう思っているというプレッシャーには、「私が悪いのかしら」と思わせてくれる説得力がある。だからその分、冷静に穏やかに、威圧的にならないで。
<中略>

──しかし、これだけパワハラが問題になっているご時勢に、この上司も、よくこれだけキツいことを言えますね。

上司の立場になって初めて、わかることもあるんだと思う。「下ってつらい」と言いますけど、案外下は気楽ですよ。言われたことに、「はい」とか「いや」とか「あったま来た!」とか言っていればいいんですから。
上司は部下に仕事をふって、ある程度の成果を出してもらわなくてはいけないし、「いい」とか「いや」とか言っている場合じゃないことがあるわけです。
<中略>
上司も威張っているようで、案外気を遣っているのです。
でも誰もが優秀な上司にはなれない。だから、感情的になったり部下に対する扱い方を誤ったりする。上司って大変なんだと、そのあたりの気持を汲むことも少し考えてみてはいかがでしょうか。真っ向から反発するのではなく、ちょっと力を抜いてみるとか、笑いで返すという手もあると思うのです。
<中略>
ウチの秘書なんて、そのあたりの切り返しは上手なんだ。私が「先週末の仕事はきつかった。一人でどうなるかと思ったわよ。あなたはお休みしてたから、よかっただろうけど」って週明けに嫌味を言うと、「いえいえ、休んでいる間もずっとアガワさんのことを心配しておりました。片時もアガワさんのことを忘れたことはありません」なんて返してきます。そうすると「このー」とか言って笑うしかないでしょう。
正当なる権利を主張することも大事ではあるけれど、上司がムキになる同じ力でこっちがムキになるよりも、ちょっとズラして返すことができる部下のほうが、後々きっと、いい上司になると思いますよ。
<中略>

結論
「同士」を作るか、笑いで返しましょう。

わたしなら『局長に一度個人的に相談してみたら?』と言うかな…デキてるとか関係なく、直属の上司に言いづらいことであればその上に言うしか解決できない気がする…阿川さんは上司の立場に立つことが多いからか上司側の肩を持つ発言が多い印象ですが、「その人の人生を追い詰める覚悟はありますか?」にはドキっとしました。覚悟がある人なんているのだろうか…

不倫相手が私のお店に家族を連れてきました

飲食店を経営しています。ひょんな流れで女性のお客さんと関係を持ったら、彼女が夫と子どもを連れて来店しました。「この通り夫もいるんだから、もう、これっきりにしましょう」というメッセージなんでしょうか……正直、戸惑っています。
(36歳、男性、飲食店店主)

──何ですかね、この女性。訳わかんないです。

まあ、女の考えていることは、男には理解できないでしょうねえ。逆もそうかもしれないし。
<中略>
なにかこの女性には自分なりの理屈があるんだと思いますね。
私自身はこういう大胆な行動は取れないと思うけど、もしかしてこれは、「私にはこの通り、家族がいるから関係は終わりにしましょう」と言う別れのメッセージではなくて、むしろ「こちらが私の家族です。どう見えます?でもあなたのことを好きなの。どうすればいい?」という挑戦状の提示なのでは?「私の家族を見た後で、あなたの気持を確認したいの。さあどうする?もう止める?それともこの関係を続けます?」と相手の気持を探るための行動なのではないでしょうか。

──えーっ!わざわざそんなことしなくてもいいじゃないですか。万が一にも夫に気づかれてしまうかもしれないし、そう思ってるんだったら、LINEかメールで伝えればいいじゃないですか?

でもLINEやメールじゃ、実感は伝わらないものね。だらだらと文字で説明するより、実物と対面させたほうが面倒臭くないし、空気は伝わりやすいでしょ。夫と子どもを連れていって、直に相手の真意を探りたい、自分に対する愛の覚悟の度合いを知りたい、そのほうが手っ取り早くない?
<中略>
そもそも、もしこの女性が最初からこの関係に終止符を打ちたいと思っているなら、それこそLINEかメールのほうが早いでしょう。
<中略>
迷っているんですよ、自分自身が。だからいっそ会わせちゃおうってね。

──阿川さんもいざとなったら、こういう手を使うタイプですか?

私は無理。こんな大胆なことはできませんね。リスクが大きいから。かつてある人から「アガワの中にはオジサンが潜んでいる」と言われた女です。私って考え方が半分、オジサンらしい。でもときどきいるよね、こういうタイプの女性。別れた彼氏を結婚式に呼ぶとかね。
<中略>
さて、話は逸れましたが、この質問についてアドバイスするならば、「利害関係が生じるリスクの大きいお客様とそういう関係を持つときは、よくよく覚悟を決めてお付き合いくださいませ」ってところでしょうか。
<中略>

結論
「さあ、どうする?」という挑戦状と受け止めましょう。

これっきりにしましょうというメッセージだと捉えてもう終わらせたらいいのに、と思ったのはわたしだけ…?わたしも向坊さんと同じく、この女性が何を考えているのか訳わかんない…

70歳の母に好きな人ができて、亡父が悲しんでないかと心配です

父が10年前に亡くなり、母は70歳で元気なのは良いのですが、最近、同じ年くらいのカレシが出来たみたいで、「会うたびにトキめくのよ」なんてノロけられます。幸せそうなのはめでたいですけど、パパっ子だった私は、父があの世で悲しんでいるんじゃないかと思い、素直に喜べません。母とどう接すればよいのでしょうか。
(40歳、女性、会社員)

──これは、やはり娘さんからすれば、複雑な思いでしょうね。

でも、いいじゃないですか、これから子どもができる心配があるわけじゃないし、遺産のもめ事も起きないんでしょ?ん?起きるの?(笑)それ以前の感情的な不快感でしょうかね、この相談の方のお気持は。お母さんが父親以外の男に夢中になっていることが許せないのだと思いますが、一人きりになったお母さんの心や日常を支えてくれる人がいるのは、ありがたいことですよ。

──子どもとしては、そのカレシが信頼できる人なのかも、気になりますよ。

そりゃ、その男に騙されているとか、財産を食いつぶされているとか、借金を負わされてるとか、お金が関係してくると話は別ですけどね。
<中略>
でも、金銭的に互いに独立した大人のお付き合いをしているとしたら、それは素晴らしい老いらくの恋ですよ。いつまで続くかはわからないけれど、もしかしてその男性が丈夫でちゃんとした方ならば、万が一、お母さんが病気になっても、面倒をみてくれるかもしれない。介護するとき、一人でも誠意のある協力者がいてくれると、娘さんも助かると思うなあ。

──だけど、結婚するってことになると、諸手をあげて賛成はできないのも分かる気がします。

結婚するかもなんて、今から心配してもしょうがないし、若いときと違って、結婚しなくても十分幸せかもしれないわよ。なんかこのお問い合わせの方、自分の娘がボーイフレンドを連れて来て急激に不安になっている母親の心境ですな。
<中略>
もちろんお相手にもよるだろうけど、百歩譲って、質問者の娘さんも、ちょっとだけお母様の気持とか人生について考えてあげてみてはいかがでしょうか。
もし自分が未亡人になったあと、心ときめく人に出会っちゃったと想像してみたら?恋に年齢制限はないですからね。過去は過去。今は今。これからお母様が過ごす日々が、もしドキドキに満ちていたり人に愛される安心感を持つことができたりしたら、きっと最期まで悔いのない人生になると思いますよ。

結論
70歳で恋ができるのは、いろんな意味でめでたいことと思いましょう。

第三者からみれば微笑ましい話ですが、当の本人からしたらたまったもんじゃないですよね…わたしなら母とどう接すればいいか?という問いに対しては『今まで通り接して、その手の話になれば相槌を打ってあげるくらいでいいんじゃない?』と言うかな…お母さんはこの恋をとにかく誰かに聞いてほしいとウズウズしていると思うので…

結婚して15年ですが、子どもができません

私たちは結婚して15年たちますが、子どもができないまま、高齢期出産の年代になってしまいました。夫婦仲はよく、夫は「いまのままでもいいじゃない」と言っていて、不妊治療をしてまで、子どもが欲しいわけではないようです。でも私は、もう残り時間が少ない、と焦っています。
(40歳、女性、会社員)

<中略>
私、子どもの頃から子どもが好きだったんです。犬と猫とどっちが好きって聞かれるたびに、「人間の子どもがいい」って答えてた。
<中略>
それなのに何の因果か60歳すぎまで結婚しなかったせいで子どもには恵まれず。だから、この方の切ないお気持は理解できます。女にはタイムリミットがあるからねえ。
<中略>
ただ、ご夫婦でたくさん話し合った末、あるいは不妊治療にも挑戦した結果、最終的に子どもが授からないと決まったとしても、自分は不幸だと思わないでほしいですね。ご主人との仲はよいのだから、きっとお二人にとって別の幸せが待っているんですよ。将来必ずや「新しい窓」が開かれると思います。
座右の銘というと大げさですが、私は、「神様が一つの扉を閉じたら、必ず新しい窓を開けてくださる」という言葉を大切にしています。
<中略>

──阿川さんの人生でも、「新しい窓」が開かれてきたんですか?

そうそう、まさにそうなのよ。いま振り返ると、ラッキーなことに「新しい窓」がその都度、開いてきたのよね。
今から40年近く前、専業主婦になりたいという望みを果たせず悶々としていたら、ひょんなことからテレビのリポーターを務めるということになった。それが後々、報道番組のアシスタントをすることにつながったんですね。
で、報道の世界へ入ってみたものの、期待に応えるような働きができなくて怒られてばかり。結婚の道はさらに閉ざされ、さりとて仕事で褒められることもなく。一念発起してテレビの仕事をやめて米国に一年間遊学して戻ってきたら、「週刊文春」の対話のホストになれとお声がかかりました。その後も、レギュラーで出ていた番組が終わったら、また別の番組にレギュラーで出ることになったり。諦めていた結婚も、遅まきながら実現したしね。振り返ってみれば、前方が閉ざされると横の窓が開いたり、先行きが見えなくなると隣の窓が開いたりって、そういう繰り返し。
<中略>

──そして今や、大女優への道を歩まれている……。

アナタ、さらっと嫌味を言うのが上手ねえ。それも人生を快調に乗り越えるための才能かもよ。でも、思い通りにならなかったことをいつまでも悔やんで、当初の夢が叶わないからといってふてくされず、他人様に声をかけられたら、これが「新しい窓かな」と信じて、とりあえず窓に頭を突っ込んで、しばらくは必死になってみる。自分が描いていた将来とは違う結果になったとしても、探せばそこには必ずしあわせが潜んでいるはずです。
<中略>

結論
一つの扉が閉じたら、必ず「新しい窓」が開きます。

過ぎたことを振り返っても仕方がないですが、子どもが欲しいのであれば結婚前にきちんと話しておけばいいのに…と思っちゃいました。結婚は子を授かることだけがすべてではありませんが、そこが重要なのであればきちんと話しておくべき…。ちなみにわたしは子どもに対して消極的なので、夫には結婚前から常日頃言っていましたし、今も言ってます。もう耳たこでしょう、いろいろすまん夫よ…

パパとママがラブラブだったりケンカしたりします

うちのパパとママは、ときどきすんごい喧嘩をします。離婚しちゃうかも、と心配になりますが、いつの間にか、ラブラブにもどっています。結婚ってよく分かりません。
(14歳、女性、中学生)

──どうやら、激しいご両親のようですね。

中学生のお子さんに、こんなことを言うのもナンですけど、昔の笑いネタ……かな?に、「外れた襖と夫婦喧嘩は、ハメれば直る」っていうのがありますよね。ほほほ、ごめんあそばせ!
<中略>
どんなに激しい喧嘩をしても、またラブラブに戻る手立てをご両親はちゃんとご存じだということですよ。
あなたのパパとママは、きっと二人とも熱い人間なのだと思います。だからぶつかり合うと、激しくなるのでしょう。でもその激しいぶつかり合いがあるからこそ、仲直りするとアツアツになる。言ってみれば、メリハリがあるご夫婦ということで、お互いにそのメリットを楽しんでいるふしもあるんじゃない?

──いわゆる、「喧嘩するほど仲がいい」ということですかね。

そうよ。こういうご夫婦が激しい言い争いをしなくなって、お互いに口もきかず、バカに家の中が静かになったら、そのときは本気で心配したほうがいいと思います。もっとも最初から、そんなに言い争いもせず、口数も少なくて、でもそれなりにバランスの取れた仲のいい夫婦ってのも世の中には存在しますから。夫婦ってのは、それぞれ違うのです。それぞれのバランスで成り立っているのですよ。

──お父様が超恐かった阿川さんのご家族も、夫婦喧嘩はしょっちゅうでしたか?

うちは夫婦喧嘩というより、父が一方的に不機嫌になって、突然、怒鳴り散らすことが多かったから、あれは夫婦喧嘩と言えるのか?怒鳴られた側は、なにがいけなかったのか、にわかにはわからない場合もありましたからね。
<中略>
そもそもどんな夫婦でも、お互いに育った環境が違うわけで、長年大事だと信じていた考え方や流儀や価値観が一致するはずはない。「価値観が似ているので結婚しました」というケースは多いし、当初は本当にそう思って共同生活を始めるのでしょうが、いざ一緒に暮らし始めてみたら、「ぜんぜん価値観も趣味も違うじゃん!」って落胆することのほうが多くて、最初の期待が大きい分、ショックも大きくなる。最初から「違うな」と思っているほうが、あとが楽なのかもしれませんよ。

──阿川さんも結婚されて、「違うな」って感じでしたか?

ウチの旦那さんと生活を始めた頃に、朝ご飯に玉子はどうする?って聞いたら、「目玉焼きがいい」って言うんですね。私は当時、スクランブルエッグが好きだったんだけど、しかたないから目玉焼きを作ったんです。で、焼き始めたら、「蓋をして黄身を白くしないでね」って言うの。ああ、そうなのか、私はいつも、ちょっと水を差して蓋をするけどなと思いつつ、蓋をせずに作って、上から黒胡椒をかけたの。そしたら今度は、「黒胡椒より白胡椒が好きなんだけどな」だって。えー、私は黒胡椒派なのに。そこで私はキレましてね。「一つも趣味が合わない!なんで結婚したのかわからんぞ!」って。
<中略>

──おっ、いきなり離婚危機か?(笑)

でもね、そうしたら、アチラさんが一言。
「いいじゃない、趣味が倍に広がって」
その言葉には、へへーってひれ伏しました。なるほどね、結婚ってそういうことかとそのとき理解しました。違う人が近寄れば、その違いが際立って、それまで知らなかったことを経験するチャンスにもなるんだなってね。
<中略>
私も最近はとんとスクランブルエッグを作らなくなって、目玉焼き派ですからね。人間は変われるものです。
だからね、中学生ちゃんよ。結婚に幻滅しないで、面白い化学実験だと思ってご両親をよおーく観察しておきなさい。「ああ、自分はこういうところを参考にしよう」とか「これだけは真似したくない」とか、興味深い項目をたくさん発見できると思います。そして大人になって好きな人ができて結婚してみたら、ご両親と同じように、「信じられなーい」って子どもに呆れられるような激しい喧嘩をする夫婦になるかもしれないのよ。あー、あれほど嫌だと思ってたのに、自分は親と同じことしてるぞって驚愕する日が必ずや訪れることでしょう、ひっひっひ。

──そんなアドバイスじゃ、この女の子、結婚する気なくしそうですよ。

そうかしら?ちょっと話がずれるけど、私はだいぶ昔から、〈旅は趣味の合わない人と行くといい〉と思っています。そのほうが予想もしなかった発見があるから。
<中略>
結婚してまだ数年の私が言うのも僭越とは存じますが、結婚も旅と同じだと思います。根本的な価値観とか笑える勘どころとか、冠婚葬祭に関する考え方とか、自分が譲ることのできない大切なものを一緒に大切にしてくれる相手なら、あと違うところだらけでもなんとかなる。趣味や味の好みなんてものは、二人になれば倍に広がって楽しくなるのです。あ、そのことを教えてくれたのは私の旦那さんでありますが。

──それ、アドバイスというより、ノロケですよ!

失礼しました。まあ、とりあえずご両親は心配ないでしょう。激しい喧嘩の余波で、余計なとばっちりを受けないように気をつけて。あと、壊れ物にはご注意ください。ガラスとかいろいろ飛んできそうだからね。

結論
外れた襖と夫婦喧嘩は、ハメれば直る。

結婚に関する考え方は良くも悪くも身近な大人で決まりますよね…でもこの女の子にこれだけは伝えたい。『阿川さんの言うように結婚は自分が知らなかったことを経験するきっかけになって意外といいもんだよ』と。それにしても、阿川さんの旦那さんが言った「趣味が倍に広がっていいじゃない」って言葉、ステキですね…!

何でもやりっ放しの癖がなおりません

一人暮らしを始めて2年。毎日のように電気のスイッチを消し忘れて出社してしまいます。風呂上がりのバスタオルは置きっぱなしで、脱いだ服もそのまま。子どもの頃から「だらしがない」と親に叱られ続けています。でも、わざとではなく本当に忘れてしまうんです。自分でも、そのうち鍋に火をかけたまま外出して、火事を起こすようなことになりはしないかと、不安です。
(23歳、女性、会社員)

──阿川さんは最近よく、ご自身のことを「もう認知症かも」って言われますよね。この方の気持が分かるんじゃないですか?

そうなのよ。どこに老眼鏡を置いたかすぐに忘れるし、最近はマスクね。こないだも、持っていたはずのマスクを見失って、早くマスクをかけなきゃと思うから息を止めて焦って探して。そうしたら、「それ、マスクじゃないんですか?」って言われて気づいたら、顎にひっかけてた。情けない。
<中略>
それはともかく、質問の方は、血液型がB型でしょうかね。私の友だちでB型の女性は、とにかくいろんなことを忘れます。ドアは開けっぱなし、電気のスイッチはつけっぱなし、電車のチケットは失くす、携帯をどこに入れたか見つからない。だけど彼女の場合、忘れっぽいというより、次にやることに頭が行っていて、後ろを振り向かないからだと思うんです。いつも次のことを考えているから、しかたないのよ。
<中略>
ちなみに、私の周りには、忘れっぽい人が多いです。うちのダンナは何でもやりっ放しだから、「ぱなしおじさん」と呼んでます(笑)。「ぱなし亭主」ってけっこうたくさんいるらしいわね。アナタは大丈夫?奥様に叱られてない?

──新型コロナが広がって家飲みするようになったら、グラスをそのままにして寝ることが多くなって。翌朝、妻から「ちゃんと洗っといてよ!」と叱られます。

それは単に、酔っ払ってるせいだろ!私の一番下の弟なんて、小さい頃、そんなにボーッとした性格ではないんだけど、なぜか忘れ物が多くて。そういう子は、小学校の担任の先生から「忘れ物をしました」っていう札を首から掛けられて家に帰らせる規則があったのね。そしたら弟は翌日、その札を学校に持っていくのを忘れた(笑)。

──それは、先生より一枚上手だったってことですね(笑)。阿川さんは若かりし頃は、忘れるほうではなかったんですか?

若い頃はそれほどでもなかったと思うけど。あ、でも、学校に行こうと思って玄関で靴を履いたら、「忘れた!」と思って靴を脱いで二階の自分の部屋に戻ると、「はて、何を忘れたんだっけ」ってなって、思い出せないからまた階段を下りて玄関に行くと思い出す。で、また階段を駆け上がる。
それを繰り返していたら、父から、「お前はベートーヴェンか!」って言われましたね。終わりそうでなかなか終わらないのがベートーヴェンの曲の特徴で、それみたいだということです。
<中略>
そうそう、忘れていたけれど、高校時代の友だちが、「忘れる」ことを「アガワる」って言っていたなあ。私の名前が動詞にされるほど、私のもの忘れは当時から有名だったらしい。
<中略>
大人になってから、高校時代の友だち何人かと街中で久しぶりに再会したことがあって。「いやあ、元気?ところでM子って、今、何してるの?」って私が聞いたら、一人が「○○会社で働いているの」って答えて、それからしばらくお喋りして、また私が「で、M子は今、何してるの?」って質問したら、全員が私を振り返って、「アガワ、大丈夫?」って呆れられたのを思い出しましたよ。
<中略>

──阿川さんの忘れっぽさは、今に始まったことではないことが分かりました。

……そのようですね。この方の質問まで忘れそうなので、話を戻すと、相当に忙しいのだと思う。考えなければならないこと、しなければならないことで頭がいっぱいで、常に時間に追われている。だから、一つ一つの動作に身が入っていないのではないですか?あるいは忙しくはないけれど、いつも他のことをボーッと考える癖のある性格なのでは?
<中略>
私もどれだけ他人様にご迷惑をおかけしたことか。出かけたあと、マンションの管理人さんに電話して、「すみません、鍵がしまっているかどうか、忘れてしまって」とか「火をつけっぱなしにして出てきちゃった気がするのですが、ごめんなさい」って、部屋の確認をお願いしたことが、何度もあります。
そういう人間は、指さし確認の習慣をつけることが大事ですって、友だちに言われました、私。「前方確認、よーし!ドアの開閉、よーし!」って電車の車掌さんがやるみたいに、出かける前に台所の入り口で、「火の元、消した、よーし!電気、消した、よーし!」って。そして、玄関を出る前にもう一度、「マスク、持った、よーし!鍵はどこだ、バッグにある、よーし!」

──なるほど、そこでまやれば大丈夫かもですね。

でもね、玄関の鍵をかけたあと、「あ、老眼鏡、忘れた!」と言って、またベートーヴェンですよ。まあ、口に出して確認する癖をつけると、少しは意識が変わると思いますよ。
<中略>
それでも私がいろいろ忘れるので……、結婚してからも、豆のシチューを弱火で温め直しているうちに、すっかり忘れて、変な匂いがするのに気づいて台所に駆け込んだら、豆はあとかたもなく真っ黒焦げになっていたことがありまして。それ以来、ウチのダンナさんが、「火は消したか!?」っていうシールをたくさんつくってくれて、台所の壁、ガス台の前、玄関の扉など、あちこちに貼ってくれました。ただ、これも見慣れると、ただの景色にしかならないのが問題ですが、ないより、マシかな。
そうだ、携帯電話の着信音を、「火は消したか!」に変えてみたら?電話が鳴るたびにハッとして、あちこち走り回るようになるんじゃない?
どういう手立てを講じようとも、「自分が忘れっぽい」という自覚があるのは、いいことだと思いますよ。少なくとも「直さなきゃ」という気はあるんだから、それだけで偉いと思う、この質問の方も、私も!

結論
携帯電話の着信音を「火は消したか!」にしましょう。

我が家は夫がマフラー、電子タバコ入れ、服、イヤーピース、携帯、と様々なものを落として帰ってきます。そのときは落ち込んでいるんですが、数日経つとケロッとしていて、数ヶ月経つと別のものを落として帰ってくるので腹が立ちます…不安になってほしいものです…

妻流ツラいときの対処法

ということで今回は『アガワ流生きるピント』より、7つの悩みとアドバイスを取り上げさせていただきました。

他にも、やたらとモテて困っています、高校生の息子がエロに興味を持っていないようです、妻のカバンに使いかけのコンドームが入っていました、就活が始まるのになりたいものが見つかりません、など、様々な悩みに対して答えられています。

少々ピントがずれることもありますが、それでも悩みに対して解決策の一つを見いだしてくれる本書。
解決策がいやそれはちょっと…というものであったとしても、暗い気分から明るい気持ちになれるのでオススメです。

最後に、わたしがツラくなったときに実践している方法を紹介して終わりたいと思います。

それはズバリ、感情の赴くままに動くということ。

ツラくて涙が出るなら泣く、ツラくて誰かに愚痴を聞いてもらいたくなったら話す、ツラくて何もしなくないときは何もしない、これがわたしの対処法です。

といっても、「ツラくてつらさを与えてきた張本人を殴りたくなったら殴る」わけにいきません。感情の赴くまま動いても変わらない、むしろ悪化すると思ったときは『わたしは大人、こんなところで人を殴ってはいけない…』となんとか心を落ち着かせる方にシフトチェンジします。

そして感情のままに動いた後は、ツラいと感じた原因と同じ悩みを持っている人が過去にいないかYahoo!知恵袋などで調べます。

同じような悩みを持っている方が一人でもいると心強いというか安心します…!

最後に、調べ終わったら、寝ます。
寝て、現実から目を背けて、新しい明日を迎えます。

…とこれがわたしのツラいときの対処法。

ちなみに、著者の阿川さんはつらくなったり悲観的な気持ちになった際、寝るまたはもっとつらいことを考えることで少し気を楽にし、対処しているそうです。

人間生きていれば悩むことも、ツラいことも、困難にぶち当たることも、たくさんあります。
なんでわたしだけ…と思うこともありますが、みんな同じように何かしら悩んだり苦しんだりしています。

わたしだけじゃない、こう考えると少し心が軽くなるかもしれません。

ではまた。

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インナーカラーがやめられない。
座右の銘は日々成長。

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