「正しさ」が生む苦しみ|悪魔とのおしゃべり

悪魔とのおしゃべり 小説・エッセイ

最近イライラすることが増えた、ストレスが溜まっている、という方へ、ぜひ紹介したい『悪魔とのおしゃべり』という本。

妻

わたしは元々怒りっぽい性格なんですが、コロナ禍で感情の起伏が激しくなった気がします。何事にも過敏に反応してしまい、イライラしたり落ち込んだり…と感情に振り回されています。

著者はさとうみつろうさん。

札幌の大学を卒業後、10年間エネルギー系の東証一部上場企業に勤める。「社会を変えるためには1人1人の意識の変化が必要」だと痛感し、2011年にブログ「笑えるスピリチュアル」を開始。斬新な視点が話題となり、またたく間に各種ランキングで1位を獲得。
2014年、読者や周囲の声に応える形でサラリーマンを引退し、全国各地でトークショー&ピアノライブを開催。また、音楽活動にも力を入れており、ロックバンド”サノバロック”のフロントマンとしてメジャーレーベルから『グラビトン』を発売し、オリコン初登場27位を記録。

妻

では早速内容に入りましょう!…の前に。本書に書かれている内容はすべてが正しい内容というわけではありませんので、あしからず。

あらすじ

本書は価値観ぶった斬り実用エンタメ小説。

主な登場人物は以下2名。

  • さとうみつろう
    └一人称:僕。「彼女が欲しい」「お金が欲しい」「働かずに生きていきたい」という願望を抱く。
  • 悪魔
    └一人称:よ。小さくてかわいくおしゃべり。

大学4年生のみつろうは古本屋で偶然見つけた1冊の本で悪魔を呼び出そうとします。
が、悪魔は出てこず、13年の月日が過ぎます。

世界にある「ありきたりな教え」や「道徳的な成功法則」に飽ききっていた14年目のある日、みつろうの前に突如として悪魔が現れ、こう言います。

今日から貴様を「悪」の手下にしてやろう。

…ここからみつろうと悪魔とのおしゃべりが始まります。

正しさを、疑え!

みつろうは今になって急に出てきた悪魔を茶化します。
そんなみつろうに対して悪魔は調子に乗るな、消すぞと脅します。

そんなに小さくてかわいいのに「消すぞ!」って……。

小さいから、「弱い」とは限らない。
善だから、「良い」とは限らない。
悪だから、「悪い」とは限らない。

いや、「悪」は、「悪い」でしょ、漢字も一緒だし。

悪いと思うから、「悪く」思えるだけだ。
「悪」さえも、良い方向へ利用すればいいのさ。
すると貴様にとってその「悪い」が、「良い」になる。
そもそも、親や教師の教える「善い行い」をやり続けて、幸せになった奴はいるのか?
こんなにもたくさんの「正しい教え」が世界には溢れているのに、街は今日も不満だらけじゃないか。「正しさ」では世界が救えなかった何よりもの証拠だ。
むしろ、「正しさ」こそ、世界をダメにしている。

悪魔は万引きをした少年を例に挙げ、万引きをした少年は家に帰って罪悪感に苦しむ理由はなぜかとみつろうに聞きます。
みつろうは誘惑に負けて悪いことをしたからだと言いますが、悪魔はこれを否定します。

違う。彼が「万引きした」という罪悪感に苦しむ理由は、「万引きは悪いことだ」と誰かが彼に教え込んだせいだ。
苦しみが生まれるのは、「正しい教え」のせいなのさ。

妻

猫は魚屋さんに並ぶ魚を奪って食べることがありますが、そのことに罪悪感はありません。その理由は「万引きは悪いことだ」と猫に教えた者がいないから。正しさこそが人間を苦しめている

ではこの罪悪感に苦しまない方法はあるんでしょうか?
悪魔はこう教えてくれます。

疑えばいいだけだ。
悪を犯した自分を責める前に、自身が抱えた「正しさ」をまず疑ってみるのだ。

<中略>

「正しさ」について疑っている期間、苦しみは消え続ける。なぜなら苦しんでる者は、例外なく「正しさ」を前提に抱えているからだ。
そして、疑っている期間その「正しさ」は揺らぐ。
すると、「正しさ」の副作用でしかない「苦しみ」はかならず消えるのだ。

妻

例えば、早起きが苦しいのは遅刻してはいけないという正しさを抱えているから。苦しいと思うのは正しさというものを抱えているからなんですね…

さらに、悪魔はこう言います。

すでに、抱え込んでしまったモノ。
すでに自分が「正しい」と思い込んでしまったモノ。
それらを、真っ先に疑ってみろ。

すでに、自分の中に抱えている「正しさ」を疑えと?

そうだ。あなたの世界は、そこからしか変わらない。
自身が頑なに信じている「正しさ」を疑った瞬間から、あなたの価値観は柔軟性を取り戻すのだから。

妻

正しさとは、迷惑をかけないために大声を出してはいけないなど、○○をしてはいけないということにも置き換えることができます。抱えた正しさの数だけできないことが増えてしまっている現実…

増え過ぎた「正しさ」から貴様らを救えるのは、もう悪しかないのだ。
「悪」だけが、貴様ら人類に残された最後の可能性なのだ。
さぁ、だから言え。「私は悪になる」と。高らかに、宣言しろ。

みつろうはそう言われてもと渋ります。悪魔はそんなみつろうに対し、これまでと何も変わらない人生が待っているだけだと言います。さらに、理解できるアドバイスなど聞く意味がないとまで言います。

自分が持っている知識で消化できることを、「理解」と言う。
ということは、「理解できるアドバイス」とは、自分自身がすでに持っている知識を超えていないということだ。
そんなものに、いったいなんの意味があるのだろうか?
<中略>
現状を、変えたいのだろ?じゃあ、全く理解のできないアドバイスが必要じゃないか。「悪」という名のな。

このやりとりでみつろうは悪魔と一緒に、本書を通じて善を疑い「悪」を広めると宣言します。

怒れるヒーロー

悪魔の正しさを疑う授業が始まります。

みつろうは授業に入る前にまずその個性的な笑い方がどうにかならないか、なんだか腹が立つとまでと言います。

怒ってないで、貴様も一緒に笑えばいいじゃないか。
イーッヒッヒッヒ。
いいか、悪魔は怒らない。

<中略>

だって、悪には怒る理由がないのだよ。
悪い政治家、悪の総ボス、お代官さま。
どれか1つでも、怒っているイメージができるか?

「越後屋、お主もワルよのう。クックック」
「お代官さまこそ、エッヘッヘ」
本当だ!悪い奴は、みんな笑ってる!

逆に、いつも怒っているのは誰だと思う?

みつろうは少し考え、こう答えます。

「やいやい、悪代官!!ついに、しっぽを掴んだぞ!!」
おっと。怒っているのはいつも正義の味方ですね。
あのアニメの主人公も、あの映画のヒーローも、みーんな、怒っている。

貴様らは、そんな正義のヒーローに憧れている。
いや、正確に言うと「憧れるように仕向けられて」いる。
「正しさ」を広める善の勢力によってな。

みつろうは声を荒げてこう言います。

せ、正義のヒーローをバカにしないでください!世界のために、戦っているんですよ?

ほら、また怒る。
「自分を犠牲にしてまでやったのに!」と怒りを撒きちらすくらいなら、「他人のため」には何もしないでいいから、ただ微笑んで座ってくれないか?
そっちのほうが、よっぽど誰かのためになる。やってることがバカみたいじゃないか、正義のヒーローって。

正義のヒーローをバカにされたみつろうは怒って家を飛び出し、近所の回転寿司で昼食を取ろうとします。
が、人気のチェーン店ということもあり、30分ほど待つことに。
やっと席に着けてマグロを注文したところ、アナゴが出てきて怒り爆発。
そこで悪魔の声が聞こえてきます。

どうして、人は怒ると思う?
<中略>
どういう時に、人は怒ると思う?

相手が、どうしようもないことをしでかした時に怒ります。
マグロをアナゴに間違えるなんて、ギネス級の聞きまちがいですよ。

違う。相手に期待しているから、怒るのだ。
<中略>
全ての「怒り」は、相手に期待しているから発生するのさ。
まちがった商品が出てきて怒ったのは、「商品をまちがえない立派な店員だろう」という相手への期待があったからだ、
30分待たされて怒ったのは、「すぐに食べさせてくれる店だろう」という期待があったからだ。

妻

例えば、子どもがおもちゃを買ってくれないお母さんに怒るのは「親だから買ってくれるはずだ」と期待しているから。怒りは全て自分の期待から発生すると悪魔は言います。

ということは、全ての怒りは相手のせいじゃなく、相手に期待した自分のせいだということになる。
<中略>
街を歩いていたら急に外国人に怒鳴られて、「どうして、サムライの格好をしていないの!ここ日本でしょ?」と言われてるようなもんさ。

みつろうは自身が昔から怒りっぽいことを悪魔に伝えます。悪魔は相手や世界に、期待しすぎているからだと言います。

これは、良いニュースだ。
相手の行動は、変えられない、でも自分の期待値は、変えられる。
要するに、相手へ何も期待しなければいいのさ。
これは、システムの原理を使ったアンガーマネージメントだから例外なく効く。
「誰にも」「何にも」期待していない人間は、怒ることが絶対にできない。
先に抱えた「期待」がなければ、怒りたくても絶対に怒れないのさ。
そして、だからこそ悪い人はいつも笑っているのだ。
世界に、期待などしてないからな。

妻

正義のヒーローは「君ならもっと正しくなれる」「世界を平和に!」と他人へ期待します。自分の期待通りの色に世界を染めようとしています。でも世界は広い、自分の期待通りになんてなりません。なので不可能な夢を見るより、世界への期待をただ捨て去ればいいと悪魔は言います。

さらに、悪魔は自分にも期待をするなと言います。
ここでは自分への期待を3段階に分けて説明してくれます。

  1. 「過去の自分」への期待(後悔)
    「私なら、もっと良い選択ができたはずなのに」と過去に後悔してイライラ。
  2. 「未来の自分」への期待(幻想)
    「未来の自分は、きっとバラ色の人生を送り豪邸に住んでいるだろう」と期待し、今住んでいるアパートに怒りが込み上げる。
  3. 「今の自分」への期待(焦り)
    「こんな場合じゃない」など、もっとふさわしいしい場所を探して焦り始める。

「自分」に期待しているから、怒るのさ。悪のようにいつでも笑っていたいなら、何にも期待するな。
自分にも、他人にも、世界にも、相手にも期待してはいけない。

ここで先ほどマグロとアナゴを間違えた店員さんがやってきます。
やっとマグロを持ってきたか…と思って見ると、手に持っていたのはタマゴ。
みつろうは悪魔とのやり取りで怒りが湧かなくなり、逆に笑ってしまいます。
タマゴを受け取り、食べて満足して家に帰ります。

イイヒマニア

ある日、娘と公園に行くみつろう。
ブランコを漕ぐ娘を真横で眺めているみつろうに悪魔が声をかけます。

この世は、ブランコだ。
「ブランコ全体」が見えるその位置なら、乗っている者には気づけないことが色々と分かる。
ほら、貴様の娘を見ろ。
右に行っては、左に返る。
また右に行っては、左に返る。
貴様ら人間は、こうやって二極間を行ったり、来たりしているだけだ。

みつろうは悪魔の話を聞いてあることを思い出します。

それって、コインのたとえ話が有名ですよね。
10ミリのコインを、5ミリにスライスしても「裏」と「表」がある。
10ミリのコインを、5ミリにスライスしても「裏」と「表」がある。3ミリにしても、0.01ミリにしても。
どれほど薄くスライスし続けても、そこには「裏」と「表」がある。
最終的に、スライスしすぎて消えたなら「裏」と「表」も同時に消える。

そうだ。何事でもそうなのだ。
「片側」だけで存在することなどできない。
絶対に両面で1セットなんだよ。
貴様ら人間はよく、「世界から悪を消し去りたい」と言う。実はそれは、簡単に実現できる。神を殺せばいいのだ。神が消えた瞬間に、悪も消える。
逆に言うと、もしも世界から「悪」が消えてしまったら、神も消えてしまうのさ。

妻

この世に存在するものは全て両面で1セット…言い方を変えると、悪いことは良いことを、悲しみが喜びを、と悪いことが良いことを生み出しています。

ほら、娘のブランコをみろ。
前にばかり進むブランコなどあり得ない。
「後ろへ戻る」からこそ、「前へ進める」のだ。

ブランコに乗っている側は「こんなに前に進んでいる!」と言いますが、ブランコの外側から見ると、前に進んでいるようで実は後ろへ戻るための「はずみ」を蓄えていることがわかります。

乗る者の態度が、まちがっているから、苦しむのさ。
「特定の方向」だけを期待するな!
真横のここから見たブランコは、右と左に揺れているだけだ。
「右」のほうが良いなんてない。
「左」のほうが良いもあり得ない。
右と左の価値に、差などないのだ。

そんな話をしていると娘がブランコから落っこちて泣き出します。
娘は痛いから泣いているのではなく、上手にブランコから着地できなかったことに悔しいと泣いていました。

みつろうは失敗したんじゃない、成功し始めたんだよと、先ほどの話を基に話します。

成功だけをゲットする必要はない、なぜなら10もの成功を得たようで10もの失敗する機会を失っているんだから、楽しい日も悲しい日も苦しい日も後から振り返ると全部が「イイヒ」に変わるんだと言い、家に帰ります。

「正しさ」とは

以上、『悪魔とのおしゃべり』に書かれている内容から3つ、紹介させていただきました。
他にも本書には願いや勘違い、運についてなどが書かれています。

今回紹介した内容はまだ理解しやすい内容ですが、中には哲学や宗教的な話もあり読みづらい部分も。
でも悪魔やみつろう、その他登場するキャラクターがなるべくわかりやすい内容で大切なことを繰り返し言います。
哲学や宗教的な話に興味があるけど難しくてなかなか手を出せていないという方はぜひ、本書を一度手に取って読んでみてください。

最後に、わたしが、あなたが今持っている「正しさ」とは本当に正しいものなのでしょうか?

「正しさ」を持つことは悪いことではありません。
しかし今持っている「正しさ」は別の「正しさ」とぶつかります。
自身の「正しさ」に縛られ、感情の起伏が激しくなり、無限にある他の選択肢をつぶすことになります。

今ある「正しさ」をただ疑う。
それだけで自分の人生・生き方が無限に広がり、選択肢が増えることを本書で学びました。

悪魔は悪を象徴する悪いものという意味ですが、本書ではそのイメージが少し変わるかもしれません。

ではまた。

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