【BIG HIT】K-Popに学ぶエンタメ世界戦略

【BIG HIT】K-Popに学ぶエンタメ世界戦略 ビジネス・マーケティング
【BIG HIT】K-Popに学ぶエンタメ世界戦略

こんにちは。夫です。

夫

僕はメインの仕事がマーケティングで、趣味でバンド活動をしています。なのでぼんやりと「自分のキャリアにマッチしているのはアーティストのプロデュースなのかなー」と考えることもありますが、今日紹介するのはそんな音楽分野の仕事について解説された本。

音楽業界って、なにやっているのか見えない部分が多いですよね。もちろんアーティストの活動や作品は目に見えますが、裏方にいる人たち、マネージャーとプロデューサーってなにが違うの?レーベルとか事務所ってなにやってんの?っていうのはあんまり知られていません。

夫

僕は音楽活動をしている中で、そうした裏方の人と話す機会もありますが、感覚としては音楽業界の中でアーティストは1%程度。99%は裏方の人という印象です。

そんな音楽業界の仕事について書かれた本「BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル」を紹介します。

音楽関連の本はいろいろありますが、裏方の仕事についてこれほどイメージできる本を他に読んだことがありません。
というのも、本書は音楽業界で働きたい人に向けて書かれたものだからです。キレイな部分だけでなく、裏方の泥臭い部分からプロダクション(事務所)のビジネスモデルや仕事内容まで、実際に数多くのK-POPアーティストのプロデュースに関わってきた筆者の実体験を交えて書いてくれています。

夫

さらに本書の後半、付録には「事務所に就職すればアイドルと仲良くなれますか?」みたいな、音楽業界で働きたいと思っている人との一問一答もあります。音楽業界で働きたいと考えている人は必読の一冊です。

ユン・ソンミ

韓国国内の4大総合エンターテインメント企業の一つJYPエンターテインメントに新卒で入社。その後、FNCエンターテインメントなどでコンテンツの企画・制作・マーケティングに従事し、現在はFirstOneエンターテインメントでアイドルの総括プロデュースを担当している。数多くのアーティストのデビュープロジェクトに参加・統括、アルバム企画、制作、マーケティングを行ってきた。その経歴を背景にエンターテインメント業界に就職したい大学生やビジネスパーソン向けに講座を開いている。

夫

ちなみに僕はK-POPに詳しくありませんが、筆者が新卒で入社したJYPエンターテインメントはNiziUやTWICEが所属しています。間違いなく今の音楽シーンを世界的に牽引しているのはJ-POPでもRockでもなくK-POPなので、別ジャンルに興味がある人にとっても学びは多いと思います。Intro Booksでは以前「それでは音楽は街を救う」という本を紹介しました。こちらも音楽ビジネスの本なので、興味があればご覧ください。

「それでも音楽はまちを救う」ミュージックツーリズムという音楽のあり方
今日紹介するのは八木良太さんの「それでも音楽はまちを救う」という本。 タイトルだけ見ると音楽の価値や活動についての本かなと思いますが、音楽ビジネスに関する本です。この本が発売されたのは2020年8月。つまり、コロナ禍です。 20...

音楽プロダクション(事務所)の仕事

そもそも音楽プロダクションはどんな仕事をしているのでしょうか。CDを製造したり流通するのはいわゆるレコード会社の仕事です。著作権の管理や宣伝広告のプロモーション、メディアへの売り込みなどもプロダクションが担うこともありますが、一般には音楽出版社、レコード会社の仕事です。

夫

最近は明確に区別がない場合もあるようですが、ある記事では「レコード会社や音楽出版社は音源などの”著作物”を扱い、プロダクションはアーティストなど”人”を扱う」と説明しているものもありました。

本書ではプロダクションには3つの大きな仕事があるといいます。

その1、どのようなメッセージを投げかけるか方向性をはっきりさせること

プロダクションは社会にどんなメッセージを投げかけたいか?という思いから始まり、そのメッセージを投げかけるのに最適なアーティストを選びます。もちろんメッセージによって誰を選ぶのか、どのようなトレーニングをするのかが大きく変わります。

その2、内部と外部の関係をうまく調整すること

複数人のグループの場合、ひとりひとり目標や価値観は違います。プロダクションはそれらを一つにまとめ上げ、リスナーとコミュニケーションを取る方向性を整えていきます。
以前のプロダクションは才能のあるアーティストを発掘し、投資して育て上げ、コンテンツを作り、というアーティストの夢をサポートする立場でした。
しかし現在、全ての音楽はグローバルビジネスであり市場規模も拡大しています。アーティストの夢を叶えることも重要ですが、メッセージ、コンテンツを作る段階からプロデュースするようになりました。

その3、ステージにだけ集中できるよう、アーティストをマネジメントする

エンターテインメントの中心はアーティストです。その裏に膨大な人の努力が隠れているとはいえ、結局はアーティストが素晴らしいエンターテインメントを提供できないと成り立ちません。そのためプロダクションはアーティストが精神的、身体的に健やかでい続けられるように守ることも重要な仕事で、最高のコンディションでパフォーマンスできるようマネジメントする必要があります。

夫

僕は現在プレイヤーとして音楽を楽しんでいる&趣味として自分たちの好きなようにやっていますが、やっぱりトップレベルの人たちはスタートから違いますね。「なんでこんなに素晴らしいパフォーマンスができるんだろう…」と思うことがありますが、メッセージから始まり、そのメッセージを届けるために育て上げられ、最高のパフォーマンスでそのメッセージを届けられるよう、プロダクションをはじめとする裏方が全力を尽くしているんですね。

プロダクションの目標は、大衆が楽しめる音楽、コンテンツを作ることです。私は大型、中小、スタートアップまでさまざまなプロダクションを渡り歩き、数多くのプロダクションの代表、またはこれからプロダクションを作ろうとしている人々、プロダクションを立ち上げたばかりの人々を見てきました。出会った人々に共通する目標は、「音楽、または音楽と関連したコンテンツ、アーティストを通じて、自らのメッセージを大衆に伝える」ということでした。
プロダクションは、メッセージが込められたコンテンツを使って利益を生む事業でもあります。他と違うのは、この全プロセスが人を通じて行われ、人の感性がこもって初めて成立するという点です。
引用:BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル

一枚のアルバムが世界に届くまで

夫

続いて、アーティスト活動の核心である「アルバム制作」を見てみましょう。僕もいくつかアルバムを出したことがありますが、「この曲出したいなーアルバム録ろうぜ」って程度でした。しかし当然、世界に届くアルバムはそんなに単純ではありません。

K-POPアーティストにとって、アルバムをリリースし、プロモーション活動を行う期間を「活動期」といいます。これは日本のメジャーアーティストも似たようなスケジュールで動いています。そんなアーティストの活動の起点になるアルバム制作ですが、大きく次の6つのステップで進みます。

  1. アーティストの分析&方向性の決定…アーティストの特性と能力を把握し、リサーチ、データ分析をもとにターゲットと方向性を設定する。
  2. コンテンツ企画…コンセプトアイデアやプロモーションアイデアを企画する。この段階でアルバムデザインやビジュアルデザインの企画も作成する。
  3. コンテンツ制作…音源、ミュージックビデオ、その他のプロモーション素材の作成
  4. コンテンツ流通…音源、アルバムを発売し、流通会社と契約・流通を行う
  5. プロモーションの企画、実行…プロモーションコンテンツの詳細を企画し、オンライン・オフラインチャネルでのプロモーションを実行。メディア広報も行う。
  6. コンテンツ提携及び事業…グッズ展開やゲームとのタイアップなど、コンテンツを活用した付加事業を行う。

1枚のアルバムをリリースするため、アーティストはもちろん、関係するスタッフ、社員に至るまでが心血を注ぎます。「このアルバムにどんなメッセージをこめるか」という部分に始まり、悩みながら音楽を作り、関連コンテンツを企画・制作し、流通させ、プロモーションと公演ビジネス(ツアー)を行います。つまり、1枚のアルバムでアイドルに関する全ての業務がつながるのです。
引用:BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル

BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル:K-POPアルバム販売量の推移

BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル:K-POPアルバム販売量の推移

夫

アーティスト活動におけるアルバムの重要性は知っているつもりですが「1枚のアルバムでアイドルに関する全ての業務がつながる」とまでとは思いませんでした。でも上の画像を見てわかる通り、全世界のアルバム市場規模がどんどん減る中、K-POPアルバムの販売量はどんどん伸びています。これだけこだわるからこそ、それだけ多くの人に届くということでしょう。

成功するアイドルが他と違う3つの要素

続いて、数多くのアーティストをプロデュースしてきた筆者が考える、成功するアイドルと成功しないアイドルの違いを見てみましょう。

夫

僕はバンド活動を通じて「こんなに才能もあって努力もしているのになんで売れないんだろう」と思うすごいプレイヤーをたくさん見てきました。実際、アーティストを志す人が1万人いたら、そのために必要な才能を持って努力できる人が100人。その中で実際にヒットチャートに名前が載るのは数人程度でしょう。その数人に共通する要素は、ロックバンドでもK-POPでも同じだと思います。

K-POPといえば、やはりBTSの名前が真っ先に上がります。何曲もビルボードチャートで1位を獲り、2年連続グラミーション、2020年までの5年間の年間アルバム販売量ランキングでも圧倒的1位。

また、昨年は日本の「第54回 オリコン年間ランキング 2021」で、BTSのアルバム「BTS,THE BEST」が年間1位を記録。この日本のオリコン年間ランキングで海外アーティストが1位になったのは1971年のエルヴィス・プレスリー、1984年のマイケル・ジャクソンに続く37年ぶり3組目なのだそうです。エルヴィスもマイケル・ジャクソンもソロアーティストですが、海外グループアーティストとしては史上初の快挙なんだとか。

そんなBTSの成功要因は無数にありますが、統合すると次の3つが言えます。

その1、既存アイドルグループとの差別化

BTSはダンスミュージック中心の既存アイドルと違い、「ヒップホップアイドルグループ」としてデビューしています。アングラで有名だったラッパーをキャスティングすることで、真新しいコンセプトでデビューしています。

夫

アーティストにとって一番嫌なのは「〇〇っぽい」って言葉ですよね。まあそれが憧れのアーティストとかだったら納得はできますが…でも「〇〇っぽい」と言われる以上、大ヒットは見込めません。似た存在があるからです。BTSはこれまでになかったコンセプトだったからこそ、いきなり25万枚のアルバムを販売したんです。

その2、SNSを活用したコミュニケーション

BTSがデビューした頃、アーティスト個人が公式SNSアカウントを運営することはリスクが大きいと考えられていました。SNSで不用意な発言をしてしまい炎上、アイドルのイメージが壊れるというのは十分考えられるケースですし、普通のプロダクションなら避けたいリスクです。
しかしBTSはSNSを積極的に活用し、ファンと直接コミュニケーションを取りました。
その結果、「ARMY」と呼ばれるBTSのファン集団も登場しました。「ARMY」をただのファン集団と呼ぶのは無理があります。BTSのファンとしての活動だけでなく、人種差別問題と戦うための寄付や途上国のダンススクール支援、絶滅の危機に瀕しているクジラの保護など、政治的な影響力さえ持つようになり、社会現象といえます。

プロモーション手法も大きく変わりました。アルバムリリースに合わせ大規模なプロモーション活動をするのではなく、365日休むことなく多様なコンテンツをSNSやYouTubeに公開しています。
これまでと違う方法でコミュニケーションを取って成功できたのは、プロダクションがそれだけ明確なメッセージを作り、BTSのメンバーはもちろん関係者に浸透させたからでしょう。

その3、リアルなメッセージ

BTSは10〜20代が共感できるメッセージを音楽に込めました。そのメッセージはあらゆるコンテンツに浸透し、BTSが提供する全てのエンターテインメントに一貫性をもたらしています。この一貫性こそ、熱狂的なファンを生んだ秘密です。
10〜20代が共感できるメッセージを伝えるため、BTSメンバー自身が10代から20代に、少年から男性へ成長する過程をリアルに伝えてきました。

もちろん結果的に大ヒットするかどうかは環境的な要因も不可欠です。そのため、ただ運が良かったと分析することもできますが、運が巡ってきた時に掴み取るには、相応の準備が必要です。

「曲がいい」だけでは足りない

本書ではアルバム制作やミュージックビデオ制作のもっとリアルな現場のエピソードもたくさん出てきます。ほんの小さなアイデアが大ヒットに繋がったアルバム企画や、「人生で最悪のミュージックビデオ撮影」の話など、業界関係者や業界を目指す方にとって面白い話だと思います。

夫

その辺の話を取り上げても面白いのですが、長くなるのでさまざまな制作プロセスの中で見えてきた重要な事実「曲がいい」だけでは足りないという部分を紹介したいと思います。

本書を読むとよくわかりますが、一般的に感覚的、センス重視な印象がある音楽産業が、実際には入念なリサーチ、データに基づき、仮説を組み立て、さまざまなアイデアをもとに議論する、ひとつひとつのピースの絶妙な組み合わせで成り立っていることがわかります。
焦点が当たるのはステージに上がるアーティストですが、アーティスト一人の才能で成り立っているわけではないんです。

しかしそれほど入念に考えられたコンセプトに基づき、プロの作曲家や編曲家が携わり生まれた曲であっても、全部がヒットするわけではありません。グラフィックデザイナーやビジュアルコーディネーターがそのアーティストの見栄えを完璧なものにしても、まだヒットするかはわかりません。

結局は、人にうまく届けられるかどうか。それが勝負を分けます。つまり、プロモーションです。
アルバムのプロモーションというと、テレビ出演やプレスリリース、CDショップなどへの流通、そしてツアーやサイン会などをイメージしますよね。でもそれだけじゃありません。

プロモーションは大きく事前・流通・事後プロモーションに分けられます。
事前プロモーションはアルバムリリースの期待感を高めていくフェーズで、ディーザーコンテンツ(本リリースの前に一曲だけハイライトリリースしたり、アートワークの一部を事前に公開したりすること)を届けたりします。その過程でファンからのフィードバックが得られるので、場合によってはコンテンツを臨機応変に変更することもあります。
流通プロモーションは最も人の目に触れる部分で、テレビ出演やショーケースと呼ばれるお披露目会も行われます。報道関係者向けの報道ショーケースもあれば、ファンクラブ会員向けのファンショーケースなど、いろいろな形があります。

夫

このショーケース、僕はあまり馴染みがなかったんですが、プロダクションが一番力を入れるところらしいです。テレビ出演などはテレビ側の都合もありますが、ショーケースはプロダクションがハンドリングして、魅せたい世界観をしっかり伝えることができるからです。

そしてリリースしてから行われるのが事後プロモーションです。一昔前までアルバムはリリースした最初が最も売れ、そこから徐々に低下していくことが当たり前でした。しかし最近はストリーミングサービスの普及で新しいライトユーザーをどんどん取り込めたり、SNSをきっかけに指数関数的に話題が拡散したりすることから、事後プロモーションの重要性が高まっています。
リリース当時は注目されなかったアルバムが、数ヶ月経ってヒットチャートを逆走するように順位を上げていくなんてことも珍しくありません。

アーティストやプロモーション活動は、近年のアイドル産業においていっそう重要な要素だと考えられるようになりました。いくら良質なコンテンツ、コンセプト、音楽で武装したところで、1分間に数百、数千もの音楽とコンテンツが生まれつづける市場では、大衆から選ばれないと意味がないからです。どこか一つ秀でているからといって成功できるわけではなく、スタート段階からマーケティング的な観点でアプローチすることが、このように競争が熾烈な世界で成功するための方法のひとつと考えられています。
アルバム1枚の価値を大衆に伝え、知らせること。選ばれずに素通りされたかもしれない音楽、映像、アーティストを世間に見てもらうこと。それが、この業界の仕事です。
引用:BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル

プロダクションの稼ぎ方

ここまでプロダクションが何をしているのかを見てきました。

夫

先ほど引用した「アルバム1枚の価値を大衆に伝え、知らせること。選ばれずに素通りされたかもしれない音楽、映像、アーティストを世間に見てもらうこと」というのは強い言葉ですね。K-POPに限らず、エンタメ産業を支える事務所に共通して言えることだと思います。

さて続いてはプロダクションの収益についてです。プロダクションの収益源はアルバムや公演、ライセンス、タイアップなどによる広告費、グッズ販売などいろいろなものがあります。
意外なことに、その中で一番大きいのが「アルバム販売と関連ビジネス」です。プロダクションによって比率はさまざまですが、JYPエンターテインメントやBig Hitエンターテインメントでは、2020年の売り上げの約半分がアルバム関連ビジネスです。

よく「CDの時代は終わった」なんて言われますが、実際には違います。K-POPにおいては特に、業界関係者の努力によりアルバムにはさまざまな価値が生まれ、ストリーミングやダウンロード販売が増えているにもかかわらず、アルバムの販売量も増えるという現象が起こっています。
ストリーミングで音楽を聴くのにアルバム販売が増えているということは、アルバムに「音楽を聴く」以外の価値を持たせているということです。ファンであることの証やコレクター品という役割や、アルバムを持っていることで参加できるイベントやコミュニティなど、価値の持たせ方はさまざまです。
「音楽を聴く」ことがアルバムの価値ではないので、LP(レコード)やカセットテープなどアナログな形でのリリースも増えてきました。

BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル:アルバムを購入する理由

BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル:アルバムを購入する理由

夫

これは僕も実感があります。僕もCDを買うことがありますが、CDで買って一回聞いたら、あとはストリーミングで楽しみます。笑 じゃあ買わなくていいじゃんって話ですが、やっぱりアルバムが欲しいっていう気持ちはあるんですよね。

アルバムの次に重要な収益源が公演ビジネスで、プロダクションによって少なくとも10%、多くて30%程度を占めています。
もちろんこの分野はコロナ禍で甚大なダメージを受けました。しかし公演にはさまざまな方法があり、結局は時代に対処できるかです。筆者は「昔ながらのやり方から脱却し、思考の転換によって新しいマネジメント活動のあり方を見出し、試みる」ことが今のプロダクションには必要だと言います。

未来のアイドルに必要なもの

それでは最後に、これからのアイドルに必要な要素を見ていきましょう。

筆者はコロナ禍のように予測できない異常事態が世界規模で発生したり、新しい技術が数年で市場を変えてしまうような現代において、コンテンツの力がますます重要になると言います。
コンテンツはエンターテインメントの核心なので重要なのは当然です。確かに変化が激しい時代ほど、資本力に頼った力任せのプロモーションなどは通用しにくくなりますから、今後ますます重要度が増すのもその通りだと思います。

では、より良いコンテンツを生み出し、ヒットにつなげることができる未来のアイドルに必要な要素とはなんでしょうか。

夫

本書では「アイドル」という言葉を使っていますが、アーティストといっていいと思います。K-POPアイドルもロックバンドも、さらにはアニメや映画など他のものも、エンターテインメントを通じて人々に変化を与えるという点では同じだからです。

1つ目、確かな方向性

何より重要なのは方向性です。ここまででわかる通り、ヒット作品はアーティストの才能で生まれるわけではありません。プロダクションを始め、作品に関わる各分野のプロフェッショナルが一つの目的に向かって邁進した時に生まれます。
方向性が定まっていないと、個人の才能や個人の目標が優先され、コンテンツに一貫性がなくなります。行き着く果てはただの自己満足。もしくはお金のためにとりあえず作業的にリリースするなんてことになってしまいます。

だからこそアーティストは明確な方向性を持ち、プロダクションはその方向性を作品に関わる全員に浸透させる必要があります。

2つ目、アーティストの自己肯定感と人柄=人間らしさ

結局、プロダクションが社会に届ける商品は「人」です。上っ面だけでなく本質的にコンセプトと「人」が一致していないといけません。計画的なプロモーションや各分野のプロフェッショナルが生み出した作品がもたらした信頼やイメージは、「人」によって一瞬で崩れ去ります。
SNS時代には、アーティストの何気ない一言が炎上したり、仲の良い知人から情報が漏れたりすることも珍しくありません。なので、裏表のある人は活躍できません。

幼い頃から徹底的にトレーニングされ、熾烈な競争を勝ち抜いてデビューを果たしたアイドルは、素晴らしい能力と人柄を併せ持っています。一方でデビューしてからもプライベートと呼べる時間はほぼ存在せず、厳しいトレーニングはずっと続きます。一歩間違えれば人間らしさを失ってしまう、間違いを犯してしまう微妙なバランスで成り立っているのが現代のアイドル産業です。
筆者はこれを「現在のアイドル教育システムの限界」と言います。

だからこそ、プロダクションはアイドルの自己肯定感を育み、歌やダンス、立ち振る舞いなどだけでなく、人柄の教育を最優先に投資すべきだといいます。

夫

今やアーティストが自分でSNSを更新する時代なので、本質的な人となりは重要ですね。もちろん、ただでさえ精神的にギリギリのラインで活動しているアーティストが、高いパフォーマンスを出し続けるためにも、それを支える関係者の人となりはもっと重要だと思います。

3つ目、競争ではなく共生の価値観

アイドル産業は厳しい競争によって成り立っています。競合に情報を漏らすわけにはいかないため、同業他社との協力や社員同士の交流もかなり少ないのが実情なのだそうです。
しかし、リスナーは新しいコンセプトや見たことがないものを常に望んでいます。業界の在り方がこのままであれば、どんどん尖ったコンセプトに突き進み、いずれ限界がくるでしょう。

だからこそ、プロダクションの壁を超えた共生が求められてます。異なるプロダクションに所属するアーティストがシナジーのあるコラボレーションをするだけで、ファンにとっては見たことがない新しいものに生まれ変わります。

夫

最近はプロダクションの枠を超えた面白い企画が日本の音楽業界でもどんどん生まれてきているように思います。競争ではなく共生。全てがランキングという形で可視化されてしまう音楽業界だからこそ難しい問題ですが、ファンにとってそうした垣根は関係ありませんからね。

音楽業界でキャリアを築く

ということで今回は「BIG HIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル」を紹介しました。

夫

ざっくり概要を掻い摘んでみましたが、本書で一番面白いのはいわゆる裏話的な部分だと思います。「音楽業界ってこんなことあるんだ…」みたいなのがたくさんありました。

今回は省きましたが、本書では1章丸々割いてスターを生み出す職業について教えてくれています。「こんな仕事があったんだ!」って思うものもたくさんあるので、最後に簡単に紹介したいと思います。音楽業界で働きたい方はぜひ読んでみてください。

  • A&R…アーティストのブランディングを統括し、ほぼ全ての業務をまとめ上げる司令塔
  • キャスティングマネージャー…アーティストの資質がある人物を練習生にキャスティングする
  • トレーナー…練習生のスキルを磨きプロフェッショナルへ育てる仕事。歌やダンスのトレニーングだけでなく、心理状態のケアや性教育、道徳や常識を教えることもある
  • ビジュアルディレクター…アーティストのビジュアルコンセプトを定め、コンセプトが実現するようヘアメイクやスタイリストに要請する
  • マーケター…日々進化するテクノロジーやトレンドを把握し、アーティストを知ってもらうことに全力を注ぐ
  • ファンマーケター…ファンとのコミュニケーションを設計し、アーティストとファンの架け橋を作る
  • マネージャー…アーティスト本人について家族よりも深く理解し、最高のコンディションでステージに上がれるようにする

ビジュアルディレクターという仕事は「目で見て楽しむ音楽」でもあるアイドルにはなくてならない仕事です。当然、かっこいい・可愛いだけでは通用しません。歌って踊るという超ハードワークを行うアイドルに対しては、アクセサリー1つでさえ綿密に意味を持たせ、パフォーマンスへの影響を考慮しないといけません。

夫

ここで取り上げたのはもちろんごく一部。マネージャー1つとっても送迎などを担当するマネージャーもいれば、放送やイベント出演のための営業活動をするマネージャー、スケジュール管理やメンタルケアに特化したマネージャーもいます。さらにアルバム制作や公演を行うとなれば、さらに多くの人が関わってきます。

繰り返し書いている通り、本書を読めば音楽産業が特定の才能や感覚、運ではなく、さまざまな分野のプロフェッショナルが1つの方向性に向かって全力を注ぐことで成り立っていることがわかります。

夫

僕は「自分が音楽産業に入るならこの仕事かなー」なんて思いながら読んでいましたが、音楽産業に関わりたいなら必読の一冊。ぜひ手に取ってみてください。

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