これからのリーダーに必要なスキルは?|LEADER’S LANGUAGE

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こんにちは。夫です。

今日紹介するのはデビッド・マルケ氏の「LEADER’S LANGUAGE-言葉遣いこそ最強の武器」です。記事とかで名前をお見かけした記憶はありますが、著書を読むのは初めて。タイトルに惹かれてジャケ買いしちゃいました。

著者のデビッド・マルケ氏、エリート校をトップで卒業し海軍に入り、原子力潜水艦の艦長まで勤めた方。

本書は「私は自分が特別だと思っていた」という一文で始まり、自分は誰よりも優秀な成績を収め、自分は観察力や自制心に優れ、責任感が強くて思考力が高く、周囲に気配りができたから出世できたのだ、、と書かれています。

が、その後、「〜と私は誤解していた」と続きます。

そう、本書はエリート校を卒業し、原子力潜水艦という国家レベルで重要な組織のリーダーを勤めたデビッド・マルケ氏が、挫折し、自分の能力ではどうしようもないことに気づいたことから始まるんです。

デビッド・マルケ氏は順調に出世していたのですが、ある時、原子力潜水艦「サンタフェ」の艦長が急に辞任したことで、サンタフェの艦長に任命されました。
そのサンタフェというのが、パフォーマンスが最低、離艦率(離職率のようなもの)も50近くある艦隊の中で最低のどうしようもない艦隊だったんです。

デビッド・マルケ氏は自分の能力を発揮し、部下に指示を出し、なんとか立て直そうとするのですが、状況は悪化するばかり。

彼はこれまでのリーダーシップ(高い能力で部下に指示を出し正しい方向に導く)が通用しないことに気づきます。

そして彼は古いリーダーシップから、新しいリーダーシップに変えました。それからたった12ヶ月後、全艦隊の中で最悪だった離艦率はゼロに。最低だったパフォーマンスは、視察で歴代最高評価を獲得。

急激な成果ですが、艦長のデビッド・マルケ氏の能力が上がったわけでも、一人一人の能力が上がったわけでも、無能な人を解雇したわけでもありません。

そうなったのは、士官や水兵へのプレッシャーを強くしたからではない。私が一歩下がり、彼らが私に歩み寄るようにしたおかげだ。その結果、1人のリーダーと134人の部下は、自ら行動し考える135人のリーダーとなった。

彼が変えたのは、規則や仕事内容、能力ではなく、コミュニケーション方法、つまり言葉(LEADER’S LANGUAGE:リーダーの言葉)です。

彼は海軍を離れた後、この経験を活かしてより良いリーダーを育成するための活動を行っています。
海軍のような厳密な組織だけでなく、コールセンターの離職率を激減させたり、企業の売上規模を倍にしたり、子どもを寝かしつけるストレスを軽減したり、減量に成功したり、仕事だけでなく生活の面でも、LEADER’S LANGUAGE:リーダーの言葉は効果を出しました。

本書はそんなLEADER’S LANGUAGE:リーダーの言葉のノウハウや効果をまとめたもの。エピソードがたくさんありますが、重要なポイントだけを抜き出して紹介したいと思います。

リーダーじゃないから関係ない、と思うかもしれませんが、先ほど引用した一文を思い出してください。

1人のリーダーと134人の部下は、自ら行動し考える135人のリーダーとなった

そう、成果を出すには、リーダーと部下という関係ではなく、全員が主体性を持って考えるリーダーでなければならないんです。

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新しいプレーブック[バリュエーションを許容する]

まず、僕たちは求められるリーダーシップが変わってしまったことを認識しないといけません。
本書ではそれを「古いプレーブックと新しいプレーブック」と呼んでいます。プレーブックとは長年の経験などに基づく定石が書かれた戦略集のようなもの。

例えば、

  • 会議では最後に社長が決断を下す
  • 新人は議事録をとる
  • 仕事の納期・期日は守るべきだ

などです。

僕たちが普段無意識にしたがっている古いプレーブックは産業革命時代に形作られました。

例えば、工場でパーツを作る場合、不良品は少ない方がよく、可能な限り同じパーツを生産する必要があります。ファストフードのハンバーガーはいつどこで食べても同じ品質のものでなくてはいけません。

これらは全て均一でばらつきのないものを効率的に生産するためのプレーブックです。

これが悪いわけではありません。発注したパーツが不揃いで不良品だらけだったり、お店やスタッフによって味が違うファストフード店も問題でしょう。

でも今、この古いプレーブックでは通用しない場面がたくさんあります。このプレーブックは原則として、変化やばらつきを許容しません。だから周りの環境が変わった時に対応できないんです。

そこで本書では、仕事を「赤ワーク」と「青ワーク」にわけ、その2つが融合した新しいプレーブックを提唱しています。

赤ワークの仕事は「実行」です。何かを実行する時、ばらつきは少ない方が効率的です。
一方、青ワークの仕事は「意思決定」です。意思決定をするためには、できるだけばらつきが多く、さまざまな意見を交換し合う必要があります。本書ではこれを「バリュエーション」と呼んでいます。

言葉で説明すると難しいので、「赤ワーク」と「青ワーク」の違いを簡単にまとめておきましょう。

赤ワーク

青ワーク

バリュエーションを避ける バリュエーションを歓迎する
証明する 改善する
行動する 決断する
同じことを繰り返す 同じことは起こらない
肉体を使う 認知能力を使う
個人プレー チームプレー
実行する 計画する
指示に従う 独創的になる
調和を重視する 多様性を重視する
単純 複雑
視野が狭い 視野が広い
序列が厳しい 序列がない

こうして並べるとどちらにも良い点、悪い点があることがわかりますね。だから本書のエッセンスは「融合」です。「指示に従わず独創的になれ!」ではなく、「指示に従うべき赤ワークと独創的になる青ワークを組み合わせろ!」ということです。

しかし、多くの組織では赤ワークがメインのプレーブックを使い、赤ワークが使う言葉を使っています。

例えば、タイムカードや工数といった言葉は赤ワークのものです。なぜタイムカードを導入するかというと、従業員を管理するためですよね。ばらつきを抑えて均一に働かせたいといいう、赤ワークの考え方です。
他にも、人事評価では、前四半期で自分が出した成果を「証明」することが多いと思います。何を改善したか、これから何を改善するかで評価されることは稀でしょう。

もちろんタイムカードや工数で管理するべき仕事もありますし、成果を証明することも大切です。しかし、そうでない仕事まで赤ワークのプレーブックに従っているのが実情ではないでしょうか。

ばらつきを抑えて均一に働かせるためのプレーブックの中で、独創的な仕事はできません。そもそも求められる能力や成果のタイプが違うからです。
決められたことを実行するだけであれば、適度なストレスはプラスに働きます。納期が近づくほどパフォーマンスが上がることも珍しくありません。

でも何かを改善する、新しいことを考える、という場合、そもそもばらつきを生むのが仕事になります。ばらつきがない状態では改善も、新しいものも生まれようがありませんよね。そうした仕事は、ばらつきを抑えて均一に働かせるためのプレーブックの中ではできないんです。

ちなみに僕が働いている会社は青ワークに特化していて、タイムカードはもちろん、就業時間も出社義務もありません。一般的な会社と逆ですね笑。みんな独創的に働いているので、確かにクリエイティブな仕事ができる空間ですが、納期や仕様変更によるトラブルは日常茶飯事…なにごともバランスですね…

ということで、ここからは本書で提唱される6つの新しいプレーブックを紹介していこうと思います。

本書ではさまざまなエピソードを元に説明してくれていますが、ここではできるだけ端的に、本書を読んだ人が復習する時に使いやすいようなイメージで紹介していきますね。この記事を読んでもピンとこないという方…本書が面白くないのではなく僕のまとめ方が下手なだけなので、ぜひ読んでみてくださいね(笑)

LEADER’S LANGUAGEが提唱する新しいプレーブック

新しいプレーブック①時計を支配する

古いプレーブックは「時計に支配される」ものでした。タイムカード、就業時間、納期、工数、スケジュール、進捗、、、これらは全て古いプレーブックの言葉で、時計に支配されるためのものです。

時計に支配されることの弊害は実感があると思います。指示された仕事をやり始めて「あれ、何かおかしいな?」と感じたけれど、今日の夕方までに終わらせないといけないからとりあえず進める。そんな経験があるのではないでしょうか?

僕は以前、Web制作の仕事をしていたのですが、その時はクライアントの要望を聞いて「かしこまりました!今週木曜に提出しますね」と答えたあと、「あれ、この仕様ちょっと問題あるんじゃ…」と思いながらとりあえず進めちゃった経験が何度もあります…

人が時計に支配される理由は単純で、その方が楽だからです。
朝9時から夜5時まで働いてくださいと言われた方が、いつ働いてもいい成果を出してくださいと言われるより楽なんです。一度決まったスケジュールを変えるより、ちょっと疑問があってもそのまま進めた方が楽なんです。

新しいプレーブックの時計を支配するとは「中断する」ということです。
実行モードの「赤ワーク」の間は時計に支配されて問題ありません。その方が効率的だからです。でも違和感があったとき、間違いに気づいた時、もっと良い方法を気づいた時、それ以外でも一度見直した方がいいタイミングで中断し、時計の支配を離れ意思決定の「青ワーク」に移行しましょう。

言うは易く行うは難しです。
古いプレーブックに慣れた僕たちは、中断は無駄なものという思い込みがあります。中断して見直して、なんの問題もなく再スタートするなら、中断は時間の無駄でしかありません。

だから本書ではまず第一に、リーダーが中心となって中断できる環境を作ることが重要だといいます。
リーダーが「今の進捗は?」「早く終わらせような」という言葉を使えば、中断を言い出すのは難しいでしょう。でも例えば「時間はたっぷりあるな」「準備はどれくらいできている?」「2時間後に一度確認しよう。その前でも気がかりなことがあったら言ってくれ」といった言葉を使えば、中断を言い出しやすくなります。

他にも「中断」という言葉にネガティブな響きがあるので、別の言葉を使うことも提案しています。「タイムを取ろう」という言葉を使ったり、イエローカードを用意して中断したい時はそれを掲げるなどです。それでも作業を始めてからの中断が難しければ、最初から中断して青ワークに切り替える時間を決めておくことも効果的です。

新しいプレーブック②強要ではなく連携する

産業革命後しばらく、リーダーと部下は明確に分かれていました。
工場長が指示を出し、全員がそれに従う、という形です。この状態で効果的なプレーブックが、先ほど紹介した「時計に支配される」と「指示を出し強要する」ことです。工場長が「今日中に100個の製品を作るぞ」と決めたのに、部下が「70個でよくないですか?」「それより製品Bを作りましょうよ」と言い出したら困りますよね。

学校教育がまさにそうですよね。先生が「数学の授業を始めます」と言ったら、みんなで一斉に数学の教科書を開いて数学の勉強するのが当たり前。国語の教科書を開いていたら怒られます。

ですが、現在の仕事の多くはリーダーが決めたことをそのままやっていればいいわけではありません。複雑な仕事ほど、実行する人が決めないと正しく判断できないことがたくさんあります。
例えばプログラミングは、全体を管理するリーダーにはわからず、実際にプログラムを書いている人にしかわからないこともたくさんあるでしょう。

だからこそ、強要すべき時は適度に強要し、効率的に作業を進める。そして、強要すべきでない時は連携して、正確な現実の理解、よりよい判断、適切な仮説を立てることが重要です。

問題は、強要するつもりがないのに、実は強要してしまうケースです。

例えば、2択を迫る質問。これは実質的に答えを限定してしまうため、強要しているのと変わりません。
「問題はないか?」という質問は「はい、問題ありません」という答えを期待しています。上司からこう聞かれて「いいえ、問題だらけです」と答えられるシーンは多くないでしょう。

他にもリーダーが自分を肯定するような質問をしてしまう場合もあります。会議の最後に「じゃあ結論はこれでいいよね?」と聞く場合。これも「いいえ」と答えるのが難しい質問です。

こうして聞くと、強要せず相手の意見を聞いているつもりで、実は強要してしまっているケース、少なくないですね…

ではどういう指示の出し方、質問の仕方がいいのか。
本書ではいろいろな方法を教えてくれていますが、その中でも活用しやすそうなのが「2択でなく程度を訪ねる」というもの。
基本的にリーダーが発する「はい/いいえ」型の質問は、強要のニュアンスを含んでしまいます。

なので例えば「この企画を進めるべきか?」と聞くのではなく「この企画の優先順位はどれくらいだと思う?」など「どのくらい」という言葉を使った質問にしましょう。

このことを意識すれば、パーセンテージを聞いたり、指の本数で程度を表現するタイプの挙手投票などいろいろな意見の聞き方が考えられます。

新しいプレーブック③責任感を持って行動する

「時計を支配する」「強要ではなく連携する」は、主に「青ワーク」になるためのものでした。学校教育や古いプレーブックで「赤ワーク」が当たり前と教えられてきた僕たちが、立ち止まって「青ワーク」を取り入れるためのプレーブックです。

繰り返しですが、本書は赤ワークを否定しているわけではありません。3つ目のプレーブックはよりよい「赤ワーク」のための「責任感を持って行動する」です。

わかりやすい例をあげると「〜してはいけない」という言葉は責任感のない言葉です。この言葉には人から言われたルールに従っているだけというニュアンスがありますよね。一方「〜しない」という言葉はどうでしょう?自分で決断したニュアンスがありますよね。この少しの言葉の違いが、赤ワークの責任感に大きく関わります。

責任感を持って行動すると、ただ命令に従うのではなく、何かを学ぼうとします。さらに行動や結果に対する責任感があると、成果を証明するのではなく、よりよく改善していきたいというモチベーションにも繋がります。
また、一つ目のプレーブック「時計を支配する」では中断することが効果的だと紹介しましたが、行動に対する責任感があると、より良い結果のために中断することに抵抗がなくなります。

責任感を持って行動する人は、他人からの指示に「かしこまりました!」とだけ答えることはありません。
なんのためにやるのか、どれくらい時間を使うべきなのか、求められている成果はなんなのか、いつ作業を始めればいいのか、立ち止まって見直すタイミングはいつか、素早く進めるために作業を細かく分割することはできないか。そんなことを考え、相談するはずです。

本書では責任感が過熱する危険性についても触れています。責任感を持ちすぎて「これは絶対に最後までやり切るべきだ」と固執して、立ち止まって考えたり、方向転換ができなくなってしまうようなケースです。それを避けるためには、決断者、作業者、評価者を別にすることが重要ですが、そもそも強要ではなく連携ができている組織ではそうした過熱は起きにくいと思います。

新しいプレーブック④区切りをつける

過去、イノベーションは数十年単位で起こりました。
例えば、内燃機関が開発されたのは、蒸気機関が発明されてから83年後。内燃機関を使った自動車が発明されるのは、そこから27年もかかりました。そして、世界で初めての大衆車フォードのモデルTが発売されたのは、さらに22年もかかっています。
そこから100年以上、自動車は細かなモデルチェンジ、アップデートはあったものの、基本的な仕組みや工程は変わりませんでした。

でも2008年、テスラが電気自動車を発売してから12、3年で、ほぼ全ての自動車メーカーが内燃機関ではなく、モーターを使った電気自動車に取り組むことを発表しました。

改めて言うまでもありませんが、イノベーションの速度は加速する一方です。1つの産業が100年繁栄し続けることはほとんどなく、20年前には存在しなかった産業が世界を動かしています。そんな時代で成果を出し続けるために必要なのが次のプレーブックです。

次のプレーブックは「区切りをつける
1つのプロジェクトが動き出した時、それは完了するまで一直線に進めることが当たり前でした。でもそのやり方だと、変化のスピードが早くなった現在では通用しませんし、最適な答えに辿り着けない、完了してから取り返しのつかない損失を生んでしまうこともあります。

NASAの「チャレンジャー号爆発事故」を聞いたことがあると思います。打ち上げてすぐに爆発し、宇宙飛行士7名が犠牲になった大事故ですが、これは当初のスケジュールに固執するあまり、安全規定のいくつかが無視されていたことが原因の一つと言われています。
かつて自動車業界を支配したフォードも、同じ自動車を作り続けることに固執してシェアを減らしていきました。

他にも、もう売れなくなった製品を作り続けたり、もう誰もやりたいと思っていないボロボロのプロジェクトがとりあえず一応は進んでいたり、中断できない、進路変更できないことの弊害はいろいろありますよね。

「赤ワーク」の仕事は実行です。だから一旦「赤ワーク」に入ると、進路変更ができなくなってしまうことがあります。でも、周りの環境は常に変わりますし、実行し始めてから明らかになることもあります。

でも「赤ワーク」はそういう仕事なので、仕方ありません。「赤ワーク」のまま進路変更したり、周りの環境に対処することはそもそもできないんです。

しかし、意識的に区切りをつけることで、「青ワーク」に切り替えることができます。「青ワーク」に切り替え、「赤ワーク」の仕事内容を見直し、必要に応じて方向修正を行う。これを細かく、適切なタイミングで行います。

そのためには、仕事を区切り「青ワーク」に戻ってくるタイミングを決めておく、区切りをつけた時は能力や結果ではなく、工程や行動に注目して振り返ることが大切です。

新しいプレーブック⑤完了させるのではなく改善させる

大ヒットしたディズニー映画「アナと雪の女王」を見たことがありますか?
この物語、もともとはアナとエルサは姉妹でさえなく、エルサは邪悪な雪の女王で、勇敢なヒロインが悪の女王と戦う設定でした。

ただ、制作チームはこの物語がいまいち面白くないと気づきました。でも、もう公開日も公表してしまっています…
そこで制作チームは「どれだけ時間を掛けてもいいから、新しい答えを見つけよう」と考えました。この段階で彼らは「時計に支配されず、時計を支配する」という新しいプレーブックに従ったのです。

でも原作を深く読み込んでいろいろなバージョンを考えても、なかなかいい物語になりません。そもそも、原作があるものを映画にするのに、原作から外れすぎるのは問題です。しかも、膨大な予算が費やされた大型のプロジェクトです。何はともあれ、終わらせないといけません。普通に考えれば…

ディズニーの制作チームは「とにかく終わらせる」という古いプレーブックの重圧から解放され、物語をゼロベースで構築し直すことにしました。そもそも雪の女王は悪役である意味は?という物語の根本であるヒーロー、ヒロインと敵の関係性まで白紙にして考え直したんです。
そして、邪悪な雪の女王は、自分でもよくわからない力に翻弄される主人公の姉エルサになりました。

これは、

  • 原作に忠実であるべきだ
  • 公開日が決まっているからそこから逆算したスケジュールに従うべきだ
  • すでに多額の予算がかけられた以上、何がなんでも完成させないといけない

という古いプレーブックでは決して出てこなかった決断だと思います。彼らはすでに決められた方向性や期日に従うのではなく、より良いものに作り替える、改善するという新しいプレーブックに従ったんです。

僕はディズニー作品が好きで、最近Netflixを解約してDisney+に切り替えたのですが、こういう創造性あるチームが作品を作るなら、これからのディズニーにも期待できますね。

「区切りをつける」でも紹介しましたが、今は変化が早く、予想外のことがいくらでも起こる時代です。こういうコンセプトのプロジェクトだから、こういう形で完成させないといけない、という考え方は危険です。コンセプトそのものが通用しなくなることもあるからです。

とにかく仕事を終わらせるという態度から、より良いもののために改善するチームにするためには、いろいろな考え方を逆転させないといけません。

プロジェクトがひと段落した時、多くの人は「振り返り」「反省」をします。でもこうした言葉は過去に目を向けているので、改善することができません。
プロジェクトがひと段落した後「どこが問題だった?」と問いかけるのではなく、「ここから先の工程をより良くするためにはどんな変更ができる?」と問いかけましょう。

また、こうした改善は内側に意識を向けて見つけるものと思われがちです。自分達の能力や立場、現状に照らし合わせて考えてしまいます。
でも、本当の意味での改善は外側にヒントがあります。例えば「〇〇さんがこのプロジェクトを引き継ぐとしたらどうすると思う?」「競合のA社が同じことを考えていたらどんなやり方をする?」などです。

新しいプレーブック⑥序列を越えてつながる

さあいよいよ最後のプレーブックです!

「安全第一」「品質第一」いろんな標語がありますが、実際のところ、多くの組織では「序列第一」になっています。
過去、組織に起こった事故や犯罪、大きな失敗を分析すると、序列を意識するあまり部下が指摘できない、上司の命令に従うため悪意なく悪事に手を染めてしまう、問題があるとわかりきっているのにそのまま進めてしまう、ということが多くあります。

だから最後の新しいプレーブックは「序列を越えてつながる」です。

「序列第一」には本当に大きな問題があります。考えずに行動してしまう、ミスを他人のせいにしてしまうなど、序列の力が強い組織にいいところは一つもありません。企業の不正、犯罪はだいたい序列第一が要因な気がします…

とはいえ、企業には平社員、主任、係長、課長、部長、、と明確な序列があります。組織によってはそれで席や服装に違いがあることもあります。そこまで目立たなくても、常に会議で発言力を持つ人、役員と繋がりが深い人、雇用形態などいろいろな形で序列があります。

だから大切なのは、組織として権力の勾配を小さくすることです。

権力の勾配を完全になくすことはできませんし、まったく権力の勾配がない状態がベストでもありません。新人と古参、立場やスキルによる違いは現実に存在しますし、誰かが責任を持って決める時は権力の勾配も必要になります。
しかし、意味もなく役職によってデスクや服装を分けるなど、権力の勾配が強化されるような制度、構造はなるべく省くようにしましょう。

一番ダメなのは立場や経歴を振りかざすことですね。「私は課長だぞ」「決定権は私にある」「新人のくせに〜」といった言葉が出た瞬間、もっといいアイデアがあっても誰も発言できなくなります。

新しいプレーブックを現場に応用しよう

ということで今回はデビッド・マルケ氏の「LEADER’S LANGUAGE-言葉遣いこそ最強の武器」を紹介しました。

この記事を読んでいるのは、すでに本書を読んで復習のために読んでいる人もいれば、まだ読んでいない人もいると思います。

たぶん、まだ読んでいない人は新しいプレーブックがなぜ大切なのか、ピンと来ていないと思います。なんだか当たり前のことばかり書いているな、現実の組織では実現できない夢物語だな、と感じているかもしれません。

実際その通りで、LEADER’S LANGUAGEに書かれていることの多くは当たり前のことです。そして、多くの人が大切だと思っているのに、実際には実現できていないものです。だから本書では実例やエピソードを中心にそれぞれのプレーブックをわかりやすく教えてくれて、後半の3章は「新しいプレーブックを現場に応用する」ためのノウハウに割いています。

とはいえ、本書はリーダーシップとコミュニケーションという大きなテーマを扱っているので内容が深い…素晴らしい本なのですが、記事としてうまくまとめるのが難しかったです…なので、最後に古いプレーブックと新しいプレーブックを見比べてみましょう。

古いプレーブック

新しいプレーブック

時計に従う 時計を支配する
強要する 連携を取る
服従する 責任感を持って実行する
とにかく終わらせる 区切りをつける
能力を証明する 成果を改善する
自分の役割に同化する 垣根を越えてつながる

こうして並べると古いプレーブックの問題点、新しいプレーブックの大切さがわかると思います。
確かに、労働集約型で工場で決められたものを作るだけの仕事であれば、古いプレーブックの方が効果的でした。でもそうした仕事はどんどん減ってきています。

仕事だけでなくプライベートもそうですよね。家族や人間関係のあり方も多様化しています。古いプレーブック、なんか絵に描いたような昭和の亭主関白な家庭に見えませんか…?

本書が提唱する新しいプレーブック、その元になるバリュエーション(ばらつき)を許容するという考え方と、実行の「赤ワーク」と意思決定の「青ワーク」の融合というコンセプト、一冊通して読んでみると、より良い働き方、より良い人間関係に欠かせないものだと良くわかります。

すでに本書を読んだ方は、たまに復習がてらこの記事に戻ってきてください。僕もたまにこの記事を見て復習し、本書を読み返して新しい学びがあれば加筆修正します。まだ読んでいない方、ぜひ本書を読んでみてください。一家に一冊、一社に一冊あれば、成果や関係性が劇的に変わると思います。

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