RAPPORT(ラポール)最強の心理術〜信頼関係を築くコミュニケーションの原則

ビジネス・マーケティング
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こんにちは。夫です。

今日紹介するのは「RAPPORT(ラポール)最強の心理術」という本。心理学系の本を読むのは久しぶりです。大学生の頃、コピーライターの勉強をしていたときは心理学の本を片っ端から読んでいたんですけどね…妻が「心理学BEST100」という本を買っていたので、一緒に買ってしまいました。

このRAPPORT(ラポール)という言葉、一般的には聞き馴染みがないですよね。
直訳すると「信頼関係」という意味なのですが、コピーライティングやマーケティングでは秘訣の一つとしてよく登場する言葉です。

コピーライティングやマーケティングが目指すものって、潜在的な見込み顧客に自社の存在を知ってもらって”関係を構築”して、顧客になってもらうことです。
つまり、ラポールを築くことこそが、コピーライティングやマーケティングの目的なのです。

ラポールという言葉を知っている人はNLP(神経言語プログラミング)も知っているかもしれません。これはミラーリング(相手の行動や言葉を真似る)、マッチングやページング(会話のテンポや声の調子を相手に合わせる)といったテクニックで、営業なんかだとよく言われるものです。

しかし今日紹介する「RAPPORT(ラポール)最強の心理術」は、NLPのような小手先のテクニックではありません(NLPを否定しているわけではありませんよ)。
もっと根本的な、人と人とがコミュニケーションを取り、信頼関係を築くときの原則となるメソッドを与えてくれるのが本書です。

ということで、本書の内容に入る前に、本書の著者であるローレンス・アリソン氏とエミリー・アリソン氏の簡単な紹介と、本書を読むとどうなるのか、ということを紹介したいと思います。

名前から想像できたかもしれませんが、ローレンスさんとエミリーさんは夫婦です。夫婦で同じことに関心を持って、一つの本を世に送り出すというのは素敵ですね。

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犯罪心理学から生まれた最強の心理術

ということでまずは、本書の裏面にある著者紹介を見てみましょう。

ローレンス・アリソン
リバプール大学教授。2004年35歳のとき、イギリスで最も若い教授に就任。現在は、リバプール大学の重大インシデント研究所の所長として、調査と教育を続ける。ロンドン同時爆破テロ(2005年7月7日)、バンスフィールド油槽所爆発火災(2005年12月11日)、ボクシングデー津波(2004年12月26日)への対応、無数の事件の捜査など、400件以上にのぼる重大インシデントの主要な心理的デブリーフィング(大規模災害や悲惨な事故などで精神的ショックを経験した人に対する支援)を担当し、捜査機関、軍隊、安全保障関連にまつわる重要な事例に直接貢献してきた。
また、重大事件や犯罪者のプロファイリングに関する10冊の書籍を含む、200以上の国際的に高い評価を受けている出版物を作成し、高リスクの意思決定、子どもの保護や倫理的に健全な活動の直接的な支援、効果的な尋問方法の改善について、世界的な影響を与える意義深い仕事を行っている。

いやあ、イギリスで最も若い教授って、まさに「天才!」って感じですね。重大インシデントというのは「甚大な被害につながる事故が発生するおそれがあると認められた状態」を指すようです。危機管理、犯罪心理のプロフェッショナルですね。

エミリー・アリソン
リバプール大学研究員。20年以上にわたり、暴力や虐待などで人間関係が崩壊した家族の治療法を考案し、実施する。その治療プログラムはイギリスの80以上の学校、10以上の犯罪対策チーム、その他多くのケアサービスや警察の専門チームで採用されている。家庭内の虐待や暴力に取り組むための「エンゲージ(関与する)」アプローチは、従来の「分離・隔離」方法に代わるものとして、イギリス国内で導入された。
アリソン夫妻は、これまで何百もの重大事件に心理学上のアドバイスを提供してきた。さらに、イギリスやアメリカの捜査機関、国防や安全保障関係の職員、その他に多数の政府機関や企業に対して、「ORBIT」と呼ばれるラポールを基盤にした面接モデルのトレーニングを行っている。

エミリーさんはリバプール大学の研究員なので、ローレンスさんの妻であり部下、という感じでしょうか。エミリーさんはテロのように大きな異常事態より、家庭内不和や職場関係など、もう少し身近な分野での心理学を専門にされているようです。

著者プロフィールを見て分かる通り、ゴリゴリの研究者が書いた本です。だいたいこういう本って読みにくいんですが、そこは心理学の専門家。僕のような素人にもわかりやすいように書いてくれています(これもラポールの一種ですね。小難しい言葉ばかり使う人と信頼関係は築けません)。

2人ともテロや事故など危機的状況、犯罪や暴力などまさにラポールが崩れた(信頼関係が全くない状態)を専門にされていて、ただ研究しているだけでなく、警察や軍隊、教育機関に実際にプログラムを提供したり、教えたりされています。

こうした危機的状況においてラポールを築き、状況を好転させた方法を、僕たちの日常にも取り入れられるように教えてくれる。これが本書の魅力ですね。

本書は400ページを超える分厚い本ですが、この中には多くの事例があります。
例えば、拷問にも耐えたテロリストから情報を引き出した諜報員、錯乱した放火魔を言葉だけで落ち着かせ自首させた女性警察官など、読んでいて手に汗握るような事例がたくさんあります。学びがある本ですが、それだけでなく読み物としても面白い。

それにしても、犯罪心理学、重大インシデント研究を専門にした研究者2人の夫婦。普段どんな会話をしているのか気になりますね…なんかすごい読み合いとかしてそうですし、感情をあらわにすることが許されなさそう…まあただの偏見ですが(笑)

では本書を読むことで僕たちはなにを得ることができるのか。本書のプロローグからいくつか引用したいと思います。

毎日毎日、私たちは誰かと関係を形成し、維持しているのだが、私たちの人付き合いが上手くいっている時、その背後にはラポールがきちんと働いている。にもかかわらずそれに気づくことはほとんどない。
<中略>
私たちは、ラポールの作り方を学ぶことができるのだろうか。心理学者としての私たち夫婦の研究によると、答えは完全にイエスだ。ラポールの公式を学べば、みなさんはどんな人が相手でも、今より満足できる関係を築くことができる。ラポールを形成をするには、相手に共感する技術、あるいは相手に自分を合わせる技術など、たくさんの人間関係の技術を必要とする。それらの技術のうちで、最も大変なのは、自分のことばかり考えるのではなく、自分の労力を費やして他の人に耳を傾け、相手のことを理解しようとする技術である。
<中略>
最新の研究によると、私的な関係でも、仕事上の関係でも、深く、意味のある結びつきを持っていることが精神的な健康や寿命に関係することが明らかにされている。ラポールを学ぶ必要があるという理由は、これで十分だろう。
本書で語られるラポールの秘訣を学べば、読者のみなさんは

・新しい友人関係や結びつきを築くことができ、社会的な孤立を避けることができる
・これまでのさまざまな人生の段階で築いてきた、配偶者、子ども、友人、両親といった人たちとの既存の関係を、さらに強固にし、深化させることができる。
・同僚とも、上司とも、大切な顧客とも直接的な結びつきが持てるようになり、コミュニケーションが改善されることによって、効果的なビジネス関係を築くためのドアの鍵が開かれることになる。
・読者のみなさんはわからないかもしれないが、自然に他者を理解する能力が高まり、困難で厄介な状況においても、破滅的なやり方ではなく専門的なやり方で取り組めるようになる。

ラポールは、健康的な人間関係の基礎であり、効果的なコミュニケーターになるための秘密の武器である。本書を読み終える頃には、それを達成するために必要なあらゆる道具をそっくり手にしているであろう。

ちょっと長くなりましたが、大事なことは「ラポールは学べる」「自分のことではなく相手のことを考えることが重要」「ラポールがあればさまざまな人間関係がうまくいく」「さらに健康的で長寿になれるかも!?」ということです。

興味が湧いてきましたか?
何十年も実績のある専門家2人が400ページ以上書いた秘密のメソッドを、僕のような素人が正しく全部を伝えることはできません。なので、僕が個人的に面白いなと思った部分、使えるなと思った部分を抜き出して、自分の解釈で書いていきます。
あなたがラポールを学び、身に付け、実践していきたいと思うなら、ぜひ本書を手にとって見てください。この記事がそのきっかけになれば幸いです。

あなたはどのコミュニケーションタイプ?

早速ですが、心理テストをやってみましょう。

心理学系の本を読むと、たまに心理テストが入っていて自分のタイプを分析してくれるから面白いですよね。以前紹介した「話を聞かない男、地図が読めない女」でもそういうテストがありました。僕ら夫婦はどうだったかな?

あとで詳しく説明するので、まずはそれぞれ考えてみてください。
やり方は単純で、各質問に0〜3点(全く当てはまらない〜いつも当てはまる)で回答し、それぞれの行に合計点数を記入するだけです。

例えば僕の場合、1行目の1つ目の質問が「3」、2つ目が「2」、3つ目が「2」で一行目の合計は「7点」になりました。あとでもう一度この表を出すので、いったん飛ばしてもOKです。

1 どうするのが一番いいのか人に助言する 責任を取るのが好きだ 他社に明確なプランを設定し、期待を与える 合計__点
2 人に判断を押し付けない 人をサポートし、勇気づける 会話を始めるのは簡単だ 合計__点
3 よく笑う、よく人と話す 他の人といるのが楽しい 温かく、親切な態度 合計__点
4 経緯を持って人に接する 人を自然に信用する しばしばお世辞を言う 合計__点
5 自分が間違えていたら謝罪する 人からの手助けを求める 自分はうまくできていても自慢はしない 合計__点
6 我慢する 思慮深く、反省する 感情を抑制する 合計__点
7 明快で簡潔 要点を直接的に言う 怒らせずに批判を返せる 合計__点
8 自信がある 自分の考えと意見に確信を持つ 言うべきときは自己主張できる 合計__点

 

1 物事を簡単に進めさせない 自分の言ったことを人にやってもらいたい 小さな間違いも指摘し、自分の正しさを示す 合計__点
2 親のようなアプローチをとる 上から目線で話す 沈黙で相手が気詰まりだと思うときには、自分が話す 合計__点
3 良い点を褒める すぐに自己開示をする だれからも好かれたい 合計__点
4 新しい状況では不安を感じる 不確かだとためらう 自分が悪くなくともお詫びをする 合計__点
5 もし不愉快ならスイッチを切り替える できる限り衝突を避ける 人前では静かにしている、また人の後ろに隠れようとする 合計__点
6 人にイライラを感じる もともと人を信用しない 人がうまくやると腹が立つ 合計__点
7 言葉でやり合うのが好き 議論では皮肉を言う 自分の間違いは自分で責任をとるべきと考える 合計__点
8 議論では後で意見を言うのが好きだ 人との議論を楽しむ 自分の基準に達しているかどうかで人を判断する 合計__点

数が多いので、感覚でパッパッと答えていきましょう!エクセルとかを使える人はどの行が何点だったかメモっておくと便利です。

それでは、この心理テストにどういう意味があるのか、本書のメソッドを紹介していきます。

4つのコミュニケーションタイプ

本書では、ラポールの重要性やラポールを築くための方法をいろいろ教えてくれます。しかし問題は、人の性格はさまざまだし、状況がバラバラなので、一概に「こうすればOK!」というものが無いということです。

生まれつきリーダータイプの人もいれば、マネージャーとして裏方で支援するほうが向いている人もいるでしょう。活発に議論をして結論を導くのが好きな人もいれば、色んな人の意見を聞いてまとめるのが好きな人もいます。

なので、まずは自分がどういうタイプなのかを把握するために上記の質問をしました。

これによって分かるのは、本書が提唱する「動物サークル」で自分がどのタイプにいるかです。

本書では、膨大な研究からコミュニケーションが大きく4つのタイプに分かれることを発見しました。といっても、人によってどれか特定の方法でコミュニケーションを取るというわけではなく、状況や相手との関係性によって、使い分けている4つのタイプです。
つまり、全員がある程度すべての要素を持っていて、職場の会議ではこのタイプ、家族との会話ではこのタイプ、友達と遊ぶときはこのタイプとこのタイプの中間くらい、のように使い分けているのです。

その4つは、

  • ライオン(コントロール):責任を引き受け、人を導く力があるが、独善的になってしまうこともある。
  • サル(強力):有効的な強力とチームワークを発揮することができる。しかし一方で、チーム間で親しくなりすぎてしまい馴れ合ったりすることもある。
  • ネズミ(追従):相手にコントロールを任せ、相手の話をよく聞き、謙虚に対応できる。ただし弱々しく見えたり、風見鶏のように振る舞ってしまうこともある。
  • ティラノサウルス(衝突):自己主張が強く、率直にものを言うことができる。一方で攻撃的になったり相手を罰したりするやり方を取ってしまうこともある。

です。

なるほど。たしかに、僕は趣味のバンドならティラノサウルスタイプで、互いに衝突し合いながら議論することがありますが、職場や妻との会話では、あまり正面から議論しようとはしません。自分の中にもいろんなタイプがいるんですね。

この4つの動物タイプは、良い悪いではありません。状況やコミュニケーションのやり方によって、良くも悪くもなります。
ではそれぞれの動物タイプの良いところと悪いところを見ていきましょう。

  • ライオンタイプの良い点:責任感が強くリーダーシップを発揮する。決断力があり、チームを率いることができる。
  • ライオンタイプの悪い点:威張り、独善的で、人の意見を聞かず他人をコントロールしようとしてしまう。
  • サルタイプの良い点:協力的でお互いにサポートし合う。状況に対して適切な温かさと愛情を示す。
  • サルタイプの悪い点:相手との人間関係の境界線を踏み越え干渉しすぎてしまう。好かれたいという思いが強く、結果や正義より仲間意識を優先してしまう。
  • ネズミタイプの良い点:謙虚で忍耐強い。相手を大切に扱い、判断するときにも慎重に状況を調べる。
  • ネズミタイプの悪い点:回避的で弱々しく、決断をためらう。対立を避けようとするあまり信用を失い、不確かな態度を取ってしまう。
  • ティラノサウルスタイプの良い点:素直。無遠慮に思えるかもしれないが、傷つける意図はなく、ただ正直なだけ。
  • ティラノサウルスタイプの悪い点:攻撃的で脅迫的。人を恐怖で動かしたり、攻撃したり、皮肉を言ったりする。

これを見ながら、昨日の職場での会議でのあの発言は、悪いライオン的だったかな?あのときは良いネズミとして事前にリスクを見つけることができたな…などと考えてみてください。どんな人でも、少なからず全ての面があるのではないでしょうか?

行き過ぎたリーダーシップはメンバーのパフォーマンスを下げてしまいますが、「みんなで仲良く!」じゃあ結果はでません。
常に、その立場、状況において、どういうコミュニケーションをすることがベストなのかを考える必要があります。

そのために大切なことが、いつも「自分は今、どの動物タイプを使ってコミュニケーションしているのか?」を考え、「その動物タイプの悪い面が出ていないか?」を冷静に考えることです。

先ほど出した心理テストは、あなたがどの動物タイプの傾向があるかをざっくり知るものです。
もちろん状況によって違います。職場ではネズミタイプで物事をどんどん進めていくと言うよりはリスク回避でパフォーマンスを出すタイプかも知れませんが、家で子どもに対してはライオンタイプでリーダーシップを発揮しているかもしれません。

ですが、概ね人には傾向があり、職場でライオンタイプの人の多くは、家でもライオンタイプでしょう。会議をガンガン前に進めていく人は、家族で週末旅行に行くときもガンガン物事を決めていきそうですよね。

先ほどの心理テストの内容をもう一度載せておきますね(スマホだったら見づらいかも…)。

1 どうするのが一番いいのか人に助言する 責任を取るのが好きだ 他社に明確なプランを設定し、期待を与える 合計__点
2 人に判断を押し付けない 人をサポートし、勇気づける 会話を始めるのは簡単だ 合計__点
3 よく笑う、よく人と話す 他の人といるのが楽しい 温かく、親切な態度 合計__点
4 経緯を持って人に接する 人を自然に信用する しばしばお世辞を言う 合計__点
5 自分が間違えていたら謝罪する 人からの手助けを求める 自分はうまくできていても自慢はしない 合計__点
6 我慢する 思慮深く、反省する 感情を抑制する 合計__点
7 明快で簡潔 要点を直接的に言う 怒らせずに批判を返せる 合計__点
8 自信がある 自分の考えと意見に確信を持つ 言うべきときは自己主張できる 合計__点

こちらは、あなたの動物タイプで、良い面が発揮されている傾向を表してくれます。
この8つの項目でライオンを頂点に、時計回りでレーダーチャートを作ってみてください。僕の場合はこうなりました。

RAPPORT(ラポール)最強の心理術:夫の良い動物タイプ

「良いライオン」タイプが強くて、「良いサル」タイプが弱い。この「ライオン/サル」「サル/ネズミ」という中間地点も低いので、サルのタイプが僕には薄いようです。

確かに、良いサルの特徴である「協力的でお互いにサポートし合う」というのはあんまりないかもしれません。一人で黙々とやりたいタイプです…

1 物事を簡単に進めさせない 自分の言ったことを人にやってもらいたい 小さな間違いも指摘し、自分の正しさを示す 合計__点
2 親のようなアプローチをとる 上から目線で話す 沈黙で相手が気詰まりだと思うときには、自分が話す 合計__点
3 良い点を褒める すぐに自己開示をする だれからも好かれたい 合計__点
4 新しい状況では不安を感じる 不確かだとためらう 自分が悪くなくともお詫びをする 合計__点
5 もし不愉快ならスイッチを切り替える できる限り衝突を避ける 人前では静かにしている、また人の後ろに隠れようとする 合計__点
6 人にイライラを感じる もともと人を信用しない 人がうまくやると腹が立つ 合計__点
7 言葉でやり合うのが好き 議論では皮肉を言う 自分の間違いは自分で責任をとるべきと考える 合計__点
8 議論では後で意見を言うのが好きだ 人との議論を楽しむ 自分の基準に達しているかどうかで人を判断する 合計__点

こちらの質問はあなたの動物タイプで、悪い面が発揮されている傾向を表しています。

同じように悪いライオンを頂点に、時計回りでレーダーチャートにしてみてください。僕はこうなりました。

RAPPORT(ラポール)最強の心理術:夫の悪い動物タイプ

「悪いライオン」の傾向が低いのですが、たしかに威張ったり他人をコントロールしてやろうという思いはあまりありません。

一方で高い項目が、「悪いネズミ」と「悪いティラノサウルス」です。

確かに、自分の得意分野以外では優柔不断で、決断を人に任せてしまいます。これは「悪いネズミ」の特徴ですね。職場などではありませんが、趣味や友人関係では、意見がぶつかると「とことん議論してやろう」と攻撃的になっているところがあるかもしれませんね…

こうして自分がどういう動物タイプなのかを知ることで、コミュニケーションの問題を回避することができます。

「あ、今自分の”悪いネズミ”が出ているな。ふわふわした回答をするんじゃなくて、決断を任せたいとはっきり言うか、ちゃんと決断しよう」とか、「今自分の”悪いティラノサウルス”が出ているな。議論に勝ってもたいして得をするわけでも無いし、あまり攻撃的になるのはやめておこう」のように考えることで、自分の弱点が引き起こしてしまうトラブルを回避できます。

もちろん、良い動物タイプを見て、「自分は”良いサル”が弱いから、意識的に人と協力することを頑張ったほうが良さそうだな」とか、「”良いライオン”タイプを伸ばして、もっと積極的にリーダーシップを取っていこう」のように考えることもできます。

本書は心理学の本です。心理学の本は、こうすれば相手はこう動く、のように、相手に働きかけることをメインにすることが多いのですが、本書は違います。
本書でははっきりと「他人をコントロールすることはできない。自分がコントロールできるのは、自分のことだけ」と書いてあります。

その部分を引用しましょう。

他人をコントロールすることはできない。できるのは自分の行動だけだ。
「この人といると、どうして私はこんなふうに行動してしまうのだろう」と考える習慣をもってはいけない。だれかがいつもあなたのボタンを押していると感じるかもしれないが、あなたのほうが彼らにそのような行動をとらせているかもしれないのだ。相手の行動に期待するのではなく、自分の目標に合うような反応の仕方をするように仕向けることが大切だ。

こちらが悪いティラノサウルスの面を出してしまったら、相手も反発して悪いティラノサウルスで返してくるか、悪いサルのように馴れ合って議論しないようにするでしょう。

しかし、良いティラノサウルスのように率直に接すれば、相手も正直に向き合ってくれる(良いティラノサウルス)か、良いサルのように協力してくれるかもしれません。

こちらが悪いライオンのように独善的に接したら、相手は悪いネズミのように弱々しく、決断を避けようとしてくるでしょうが、良いライオンのようにリーダーシップを発揮すれば、良いネズミとしてリスク管理をやってくれたり、結果が出るまで忍耐強く付き合ってくれるでしょう。

こちらが悪い動物タイプで接したら、相手も悪い動物タイプで返ってくる。こちらが良い動物タイプで接したら、相手も良い動物タイプで返してくれる。コントロールできるのは自分の行動だけですが、自分をコントロールすることで、相手の反応も変えることができるんです。

本書では4つの動物タイプについて、それぞれに1章を割いて詳しく説明してくれています。
悪いライオンではなく、良いライオンであるためにはどうすれば良いのか。良いライオンを更に伸ばすにはどうすれば良いのか、といったことがたっぷりとそれぞれの動物について解説されています。

が、そこまで書くとすでにかなり長くなっているこの記事の終わりが見えてこないので、会話力が格段的に高まる「SONAR」の技術を紹介して終わりにしたいと思います。これを普段から頭の中に入れておけば、コミュニケーションの衝突は格段に減るはずです。

会話力が格段に高まる「SONAR」の技術

会話は、情報の発信と受信の繰り返しです。相手がAと言ったら、こちらはBと返す。この一連の流れ、つまり反射の連続がコミュニケーションの正体です。
相手が何を言うかはコントロールできませんが、こちらがなんと返すか(どう反射するか)はコントロールできますよね。
この返し方を格段にうまくするのが「SONAR」と呼ばれる技術です。

まず、やってしまいがちな悪い反射を見てみましょう。
それが「要求」「皮肉」「非難」「否認」「対決」です。

要求、皮肉、非難、否認、対決…言葉だけでトラブルになりそうなオーラが出てますね。でもトラブルになったコミュニケーションを思い返すと、自分もどこかでこの悪い反射をしてしまっているんですよね…

例えば、「宿題をしなさい(要求)」して「そんなもんやる価値無いよ(否認)」と子どもが答える。それに親が「そんなんじゃろくな大人にならないね(皮肉)」を言い、子どもが「お父さんだってたいした大人じゃないでしょ(対決)」と返す。さらに親が「とにかく宿題をやれ!(要求)」とさらに要求し、「宿題のことしか考えてないお父さんのほうがバカでしょ(非難)」と返す…

「要求」「皮肉」「非難」「否認」「対決」という反射をする限り、コミュニケーションは悪くなる一方です。このやり取りの最後は親が「お前には何を言っても無駄だ(非難)」と言って終わりでしょうか。どう転んでも良い決着はしなさそうです。

そこで使えるのが「SONAR」という反射です。
これは「単純反射(Simple)」「両側反射(On the one hand)」「非論争(No arguing)」「肯定(Affirmation)」「リフレーミング(Reframing)」の頭文字をとって「SONAR」と呼ばれています。

それぞれを簡単に見てみましょう。

  • 単純反射(Simple)…相手の言葉で意味がある部分を選び、言葉通り直接的に返す。
  • 両側反射(On the one hand)…相手が相反する考え、相反する感情、相反する事実を述べた時、ようやくして反射する。
  • 非論争(No arguing)…論争になりそうな部分を調べ、論争を進めるのではなく、「今の意見についてもっと話して」などと深堀りする。
  • 肯定(Affirmation)…否定的な発言は無視し、相手の発言のポジティブな部分を探し、そこだけ反射する。
  • リフレーミング(Reframing)…相手の発言の意味や隠れた価値観や信念を推測し、反射する。

なんとなく難しそうですが、案外どれも意識すればできることばかりです。まあ、普段のコミュニケーションで意識する、ということが一番難しいんですが…

単純反射は、冒頭でも出したNLP(神経言語プログラミング)でも良く使われるテクニックです。
相手が「宿題はやりたくない」と言ったら、そのまま「宿題はやりたくないんだね」と返す。クライアントとの打ち合わせで「上司から無茶な要求をされて…」と言われたら「無茶な要求をされたんですね」と返す。
単純ですが、相手が話したことのうち重要な部分を反射すれば、相手はその部分についてより深く語ってくれますし、こちらが話を聞いているという合図を送ることができます。

両側反射は少し難しいですが、相手が何かを言う時、よく聞くと相反する主張があることは珍しくないんです。
例えば、クライアントに新商品を提案している時、「確かに性能が良いのは分かるのですが、価格的に上司の許可が降りないので無理ですね」と言われたとします。この時、性能が良いことは分かっている(導入する価値がある)という主張と、価格的に無理(導入しない)という2つの相反する主張があります。
ここで「性能について評価していただいてありがとうございます」(ビジネスシーンなので単純な反射ではなく言い換えている)などと返せばどうでしょう?
次に相手から返ってくるのは「はい、特にこの部分の性能は〜」などとポジティブな言葉のはずです。

コピーライティングでもよく使う技術ですね。コピーライティングの場合、相手から直接返答があるわけではないですが、相手から返答がありそうなことを事前に予測してコピーを書きます。これも単純反射、両側反射ですね。

非論争と肯定は、衝突を避けるためにぜひとも意識しておきたい反射です。
同僚から「最近営業成績が悪くてさ…」と言われたときに、単純反射で「営業成績が悪いんだ…」と返すのはあまりおすすめしません。あなたの営業成績が良ければ皮肉に聞こえますし、相手は営業成績が悪いことを認めてほしくて話しているのでは無いからです。
単純に反射すると論争になってしまいそうな話題に対しては、論争にならないよう話のポイントを少しずらしたり(なにか悩みでもあるの?)、相手の肯定できる部分を見つけて返す(へえ、去年は部署でNo1だったのに?だってあの大口クライアント、成約したんだろ?)ことが効果的です。

そして、反射の中で最も難しいのがリフレーミングです。リフレーミングでは、相手の発言ではなく、相手の真意や価値観に対して反射します。

子どもが「宿題はしたくない」と言った時、本当は宿題がしたくないのではなく、別の意図があるはずです。
宿題をやるよりゲームがしたいのかもしれませんし、学校で嫌なことがあって反発したい気分なのかもしれません。

もしゲームがしたいから宿題がしたくないのであれば、宿題をすればゲームができるというリフレーミングが効果的かもしれません(成績が良かったらゲームを買ってあげるよ、という物で釣る方法は良くないですが…)。

他にも、宿題をゲームのように楽しんでできるように変えてみるのも良いかもしれません。

嫌なこと、面倒なことをゲームのように楽しいものにしてしまう。ゲーミフィケーションと呼ばれるものですが、結構身近に存在します。例えば、任天堂が出している「大人の脳トレ」。脳トレなんて面倒だしつまらないものですが、ゲーム化することで、楽しんで脳トレしていますよね。これは面倒な脳トレをゲームにリフレーミングしています。

動物タイプを使いこなしコミュニケーションの達人になる

ということで今回は「RAPPORT(ラポール)最強の心理術」を紹介しました。
結構長い記事になりましたが、実は全部で10章あるうちの2つの章についてしか書いていません。

本書では、ラポールを築く(親密な人間関係を築く)ことのメリットや、多くの心理学が言葉だけでなく表情や身振り手振りについても扱う中なぜ「言葉」に特化しているのか、ラポールの根幹となる4つの原則、そして各動物タイプの詳細な扱い方など、ラポールについて網羅的に紹介してくれています。

本書のサブタイトルは「謙虚なネズミが、独善的なライオンを動かす方法」です。
この言葉通り、本書のエッセンスは、独善的で威圧的なリーダーと接するとき、さらに威圧的なライオンとして踏み潰すのでも、ティラノサウルスとして正面衝突するのでも、サルとして媚びへつらうのでもなく、「良いネズミ」という立場から、相手を独善的なライオンから優秀なリーダーに変えることができる、という点にあります。

そのために大切なことが、自分の動物タイプを理解し、どの動物タイプで接すれば相手がどの動物タイプで返ってくるかを知っておくことです。

サブタイトルに「謙虚なネズミ」と持ってきているのは、謙虚さ、つまり良いネズミとしての特徴が最も重要で、他の動物タイプの基礎になっているからです。筆者は最初に謙虚さをマスターしてから、他の動物タイプの良い面を取り入れるようにしていくと良い、と言います。

もちろん、本書を読んだからといってコミュニケーションの全てをマスターできるわけではありません。なにより、日常会話で「今自分の動物タイプは…」「相手がこういう動物タイプできたから、こっちはこの動物タイプで返そう」などと考えることはできないですよね。

筆者もそんなことは絶対に無理だといいます。
ただ、それでも毎日ちょっとした意識を続けることが大切だと言います。Twitterで不満をつぶやく前に、10秒だけ我慢してみる。子どもに独善的なライオンで接しそうになった時、ちょっと深呼吸してみる。
失敗しても自分を責めず、ただちょっとした意識を続けることが大切なんです。

心理学を学んだからといって全てがうまくいくわけではありません。失敗するし、うまく行かないこともある。でもちょっと意識するだけで、トラブルがちょっと減ったり、ちょっといい人間関係が築けたりしたら、学んだ価値があるのではないでしょうか。

最後に、本書のエピローグから、大切なメッセージを引用して終わりたいと思います。

私たちができることといえば、せいぜい物事が悪くならないようにするくらいのことである。疲れているときには、余計なことを言ってしまったり、ツイッターで心無いつぶやきをしたり、メールやフェイスブックで発言をしたりする。こういう小さな、ネガティブなコミュニケーションは、他の誰かの1日を台無しにしてしまう。行動には感染力がある
<中略>
私たちは、お互いに気持ちよく生きてゆける文化を生み出なさなければならない。たとえ今、私たちが暮らしている場所がそうでなかったとしても。忍耐強くなろう。反射できる人になろう。人を理解しよう。口論してやりたいという衝動に屈してはならない。困難な不正や怒りから目を背けてはならない。
<中略>
ラポールは、人とのやり取りを向上させる鍵であり、愛する人との親密さを深める鍵であり、地域との結び付きを強める鍵であり、他社理解に役立ち、私たちが暮らしている社会全体での衝突を減らす働きをする。
ラポールは、あなたの人生を良くするだけではない。ラポールは世界全体をも暮らしやすい場所へと変えてくれる。ラポールの努力をする価値は、十分すぎるほどにあるのである。

マーケティング、コピーライティングに役立つテクニックが得られるかと期待して読み始めた本書でしたが、自分の小ささを知りました。ラポールは、マーケティングのテクニックじゃない。僕たちが暮らす社会全体がちょっと暮らしやすい社会になる、そのための秘訣なんです。

ということで締めくくりたいと思いましたが、せっかくなので妻の動物タイプも紹介します。

はい、ドン。こんな感じになりました。

RAPPORT(ラポール)最強の心理術:妻の良い動物タイプ

RAPPORT(ラポール)最強の心理術:妻の悪い動物タイプ

良い動物がちっちゃい…(笑)。そして悪い動物が、ティラノサウルスで一致…我々夫婦は揉めたら正面衝突し合うしかなさそうです…

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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