こんにちは。夫です。
前回紹介した「採用の思考法」でも書きましたが、僕は最近、採用面接を担当する機会がありました。これまで採用について真剣に考えたことがなかったので、これを機に数冊本を買って勉強してみたのですが、採用を舐めていたなあと反省してます。
「採用の思考法」では採用力は経営力である、採用面接は選ぶ場だけでなく、応募者から選ばれることも重要な役割、採用という仕事が企業にとってどれだけ重要かを学ぶことができました。
何冊か読んだので、もう一冊採用系の本を紹介したいと思います。それが「最高の人材が入社する採用の絶対ルール」です。
本書も基本的なメッセージは同じ。採用は会社にとって非常に重要で、人余り時代のマインドセットが通用しないということを教えてくれています。さらに本書はイラストや具体例などが豊富でめちゃくちゃわかりやすい。ちなみに僕は面接する時、会社にこの本を持って行き、面接する直前まで付箋を貼った箇所を読み直していました。笑
ということで、被る内容も多いのですが、「最高の人材が入社する採用の絶対ルール」も僕が大切だと思う箇所をまとめて、これからは本ではなくこの記事を面接前に読み返すようにしようと思います。
今回も”これから面接する時に役立つ”部分をピックアップしていくので、面接官を担当する機会があればぜひ活用してください。
4つのカテゴリから人材要件を考える
「採用の思考法」では「採用で一番やってはいけないことは、採用基準を下げること」として、採用基準を下げるならお客様に提供する価値品質を下げるか、徹底して育て上げるだけの覚悟をしないといけないと言われていました。
本書「採用の絶対ルール」でも採用基準、つまり自社に必要な人材を定義する重要性を教えてくれます。また、採用基準を決めるための具体的な方法も教えてくれています。
まずは採用基準を決めるための「4つのカテゴリ」をみてみましょう。自社の採用基準がこの4つのカテゴリから見てふさわしいものか、考えてみてください。
- 必須要件…自社で働く上で欠かすことができない要素。この能力がないと自社の環境に適応できず、良い結果を生まないであろう要素。
- 優秀要件…不可欠ではないがあると良い要素。この要素を持っていると一層の活躍が期待できるが、入社の時点では必須ではない要素。
- ネガティブ要件…ない方が望ましい要素。この要素があると入社後に自身の力を伸ばすことができなかったり、会社の評判を下げたりする恐れのある要素。
- 不問要件…世間的には良いとされていても、自社では問わない要素。
この4つのカテゴリを、自社のハイパフォーマーが持っている要素やビジネスプロセスから考えていきます。
僕の場合、「素直さ」と「自発性」は必須要件ですね。自由な会社なので、これを持っていない人はまともに働くことができないかもしれません。仕事に直接関わる能力はすべて優秀要件ですね。入社してから学べます。
AIには代替できない面接官の仕事
ちょっと本質とずれますが、本書のコラムの中で「面接官の仕事は何?」というのがあったので紹介します。
面接官の仕事。そんなの応募者を見極めることだろ、と思うかもしれませんが、そうではありません。筆者は応募者を「惹きつけること」が面接官の一番大切な仕事だと言います。
ただ見極めるだけであれば、適正試験やAIにもできます。最近は聞きませんが、一時期AI面接などを導入する企業もありました。もちろんAIにも課題はあるものの、代替できることは間違いありません。
一方、「惹きつける」という仕事は人間にしかできません。「採用の思考法」でも紹介しましたが、応募者は無数の企業の中から、自分に適した会社を選ぶ立場です。内定をもらっても、惹きつけられなかったら入社してくれません。しかも、内定を出したくなるような優秀な人材は他の会社からもたくさん内定をもらっているはずです。
もし応募者に「こんな人の下では働きたくない」と思われてしまったら、取り返しがつきませんよね。好条件で内定を出しても、優秀な人材は入社してくれなくなります。そうなると優秀じゃない人を採用するために採用基準を下げ、という採用の失敗ループにハマってしまうんです。
面接官の仕事は第一に応募者を「惹きつけること」、次に応募者を「見極めること」です。この優先順位があるかどうかで、面接時の態度や質問内容は大きく変わりますね。
採用面接の常識を疑え
さてここからは本書の第3章「応募者から選ぶ」から、採用面接の常識を疑っていこうと思います。本書では7つの間違った常識が紹介されていますが、その中から僕自身が大切だと思った3つをピックアップします。
志望動機を語れない人は不採用?
採用面接でほぼ間違いなく聞かれることといえば、志望動機ですね。就職白書2018によると、企業が採用基準で重視する項目として、「人柄」に次いで「自社への熱意」なのだそうです。
まさに自社への熱意を問うのが志望動機ですね。
多くの企業が志望動機を聞いてしまう理由は、主に2つあります。
1つは志望動機がしっかりしている人は、入社後に馴染みやすい傾向にあるからです。志望動機が高いということは、会社についてしっかり調べ、理解しているので入社後に「あれ、こんなはずじゃ…」となる確率は低いでしょう。
これは納得できる理由ですが、問題はもう一つの理由です。それは「御社に入社したい」と言ってほしい、面接官のエゴです。面接官としては採用を出したら入社してほしいので、安心感が欲しいという心理もあるでしょう。
ですが本書では、志望動機は応募者に任せるものではないといいます。
普通のビジネスで考えたら当たり前です。自社の商品を熱烈に欲しがっていない人はダメな顧客なのでしょうか?そんなわけないですよね。問題は顧客ではなく、魅力を十分に伝えられていないこちら側にあるはずです。
営業する時、見込み客に「自社製品の魅力を語ってください」などとは言わないはずです。むしろこちらから「この商品はこんな魅力があって…」と説明するでしょう。
ビジネスの現場では当たり前なのに、なぜか採用面接では真逆のことが行われています。志望動機を語れない人を低く評価するのではなく、どうすれば志望動機を持ってもらえるかという方向に思考を逆転させる必要があります。
志望動機を聞くなんて、冷静に考えたらおかしな話ですね。応募者は企業を選ぶ立場でもあるわけですから、企業にとってはお客さんです。そう考えたら、一時期問題になった「圧迫面接」なんて問答無用。今時そんなことをする企業は少ないと思いますが、モラルの問題よりビジネスセンスの問題ですね。そうした企業の多くは、優秀な応募者から選ばれず消えていったでしょう。
コミュニケーション能力は重要?
経団連の調査によると、企業が求める人材要件で16年連続1位が「コミュニケーション能力」です。確かにコミュニケーション能力が高ければ、協調性がありそうで、社内のメンバーともうまくやっていき、問題にも対処できそうな印象がありますよね。
前回紹介した「採用の思考法」では、コミュニケーション能力は後から伸ばせる能力だから面接時に重視する必要はない、と言っていましたが、本書では別の問題も指摘しています。
コミュニケーション能力を採用基準に含める問題は、コミュニケーション能力は定義できるものではないという点ですす。コミュニケーション能力が高いというのは、ハキハキと受け答えできる人でしょうか?それとも質問にすぐ答えられる人でしょうか?エピソードを語れる人でしょうか?巧みな質問をする人でしょうか?聞く力がある人でしょうか?
では、質問された時にじっくりと考えて黙り込んでしまうような人はダメでしょうか?もしかしたら、時間をかけて最適な答えをズバッと答えてくれるかもしれません。これも立派なコミュニケーション能力ですよね。
面接では面接官が質問して、応募者が答えるという形が一般的です。この場合、どうやって聞く力を判断すれば良いのでしょうか?たとえ言葉数が少なくても聞く力は重要なスキルです。
採用基準にコミュニケーション能力を含めると、面接官がそれぞれバラバラに評価してしまい、採用基準として機能しません。また、結局「話がうまい」ことに目を奪われてしまいます。でも、話がうまいことと仕事ができることは関係ありませんよね。
見極める必要のない能力を問うな
いろいろな人と面接すると、つい贅沢になってしまいます。さっきの人はあんな能力を持っていたな、とか、こんな能力もあったらいいな、などが増えてきて、採用基準の能力リストが膨れ上がっていくのです。
もちろん、全ての基準を満たすスーパーマンに出会えたらいいですが、滅多にいませんし、スーパーマンを採用したい企業は多いので、競争も上がってしまいます。それに、採用基準が増えすぎて、本当に大切な能力を持っていないのに、それ以外の能力をたくさん持っているという理由で魅力的に見えてしまうかもしれません。
面接はとにかく相手の能力を見極めれば良いわけではありません。何でもできるスーパーマンを見極めるのではなく、自社に必要な能力だけを見極め、それを持たない人を間違って採用してしまわないようにすることが大切です。
本書では2つの観点から、面接時に見極める能力を教えてくれます。
入社前に最低限持ってほしい能力は、最初の1、2年を生き残るための能力です。多くの場合、1、2年で目立った成果は出せません。1年目は人間関係を作りながら、制度やルールを学んでいき、2年目には仕事に慣れて少しずつ社内のことが見えてきます。その後、本格的に活躍していくわけですが、そのためには最初の1、2年を生き残る必要があります。
社内環境から必要な能力を考えてみてください。OJTがしっかりしている企業や教育担当がそばについて教えてあげる環境であれば、必要な能力は「真面目に取り組むこと」や「素直さ」かもしれません。そうでない場合は自発的に周囲に働き、自ら学んでいく必要があるので、また違った能力が必要になるでしょう。
可能であれば、入社3年目以降に必要で、育成が困難なものも採用基準に入れておきましょう。重要なのは「育成が困難なもの」です。例えば仕事で広範囲な法律知識が必要だとします。入社1、2年目の人間関係を作り、仕事を覚えていく中で、法律に関する専門知識も身に付けていくのは簡単ではありません。社内に育成する環境がないなら、すでに法律知識を持っている人を採用する必要があります。
自社で活躍するために必要な専門スキルを挙げてみてください。それは仕事を覚えながら身に付けられるものでしょうか?そのスキルを身に付けるためのプログラムが社内にあるでしょうか?
この2つの視点から、面接時に見極める能力を厳選していきましょう。
面接でのNG質問集
ここまで、面接前に知っておくべき採用面接の間違った常識を紹介してきました。最後に、面接の現場でやってはいけないNG質問をおさえておきましょう。ついつい質問してしまいがちなものばかりですが、必要な能力を見極められないだけでなく、「応募者を惹きつける」ことができなくなってしまうものです。質問を考える時に必ず意識しておきたいですね。
NG1:やりたいことを聞く
最初のNG質問は「入社したらどんなことをやってみたいですか?」という質問。ありがちですよね。しかし当然、応募者はまだ募集要項を見た程度で、詳しい仕事内容までは知りません。専門職やキャリア採用では効果的な場合もありますが、ほとんどは募集要項からわかる程度の表面的な答えしか返ってきません。
会社への理解度を知るために質問されますが、残念ながら会社への理解度とその人の優秀さには何の関係もないのです。
逆に聞くべきは仕事に対する考え方や価値観です。本書では次のような例が紹介されています。
NG2:志望度を聞く
次のNG質問は「志望度はどれくらいですか?内定が出たら入社していただけますか?」という質問。これはすでに言ったように、志望動機を聞くものなのでNGです。出会ってすぐの相手に「私のことどれくらい好きですか?」と聞くようなもので、意味がないだけでなくナンセンス。相手の立場を考えれば「第一志望です。内定をもらえたら入社します」としか言えないことがわかるはずです。
逆に、応募者がどんな企業に入社しようとしているのかを聞きましょう。本書で紹介されている例はこんな質問です。
NG3:面接官が喋りすぎる
次のNGは、質問ではないですが、面接官が喋りすぎてしまうというパターンです。自社の説明をしようとしたり、場を盛り上げようとしてつい話すぎる面接官は珍しくありません。本書では全体の時間を10とすれば、面接官が話すのが2以下にすべきだと言います。
緊張をほぐすなら、最初に「面接にお越しくださりありがとうございます。面接を担当する〇〇と申します。短い時間ですが、××さんのお話を聞かせていただけたらと思いますので、よろしくお願いします。」のように、こちらから自己紹介して、面接に来てくれたことへの感謝を伝えましょう。
NG4:追求する質問
面接官として、応募者の話を深掘りすることは重要です。ですが、ちょっと間違えると追求しているような印象を与えるので注意が必要です。間違っても揚げ足を取ったり、否定的になるのはいけません。面接という特殊な場で、すべてを明確に説明するなんてことは不可能だからです。
例えば、仕事に対する価値観を聞いて「新しい価値を提供して豊かな社会を作りたいです」のような回答が返ってきたとします。この時「抽象的ですね。新しい価値とは何ですか?」のような深掘りの仕方はNGです。
相手の意見を受け入れ、その上で深掘りする。本書では「新しい価値、いいですね。企業は常に新しい価値を生み出すのが使命ですから。例えばどんな価値を提供してみたいですか?」のように聞くと、相手もリラックスして話せるので、深掘りすることができます。
NG5:なぜ?どうして?その理由は?
次のNG質問は「なぜ?どうして?その理由は?」です。同じ理由で相手の答えに対し「その考え方は違うんじゃないですか」のように否定的に返すこともNGです。
これはシンプルに相手を萎縮させてしまうからです。萎縮させてしまったら本音を引き出すことも、その人の本当の能力を知ることもできなくなります。
そもそも面接で質問する理由は、採用基準に合っているかを知るためです。そう考えたら「その考え方は違うんじゃないですか」などの否定的な返答には意味がありません。もしその考え方が根本的に異なり、採用基準に合わないなら不採用になるだけで、面接の場で正す意味がありません。一歩間違えれば圧迫面接と捉えられ、悪評が広がってしまいます。
相手の返答はどんなことであれ、まず肯定しましょう。その返答の理由が知りたければ「そう思うようになったエピソードはありますか?」と聞いてみてください。ただ「なぜですか?」と問い詰めるより、相手の本音を深掘りできるはずです。
NG6:仕事と関係のない質問、差別的な質問
相手の能力を見極めるため、仕事と関係のない専門的な質問をしてしまうことがあります。よくあるのは政治や経済ですね。「今の政治の問題は何だと思いますか?」「日本経済が良くなるためにどうすればいいと思いますか?」といった質問は、一見意味がありそうですが、実際は無意味です。確かにこうした質問にスラスラ答えられる人は優秀かもしれませんが、答えられなくても仕事に支障が出ることはほぼないからです。
また、政治の話題は差別的な質問にも繋がります。厚生労働省は採用において「応募者の基本的な人権を尊重すること」「応募者の適正・能力のみを基準として行うこと」を挙げています。
支持する政党や信仰する宗教、思想に関わる質問は就職差別につながるとしており、出生や家族に関することや尊敬する人物などもNG質問としてあげられています。
選ぶ面接官から、選ばれる面接官に
ということで今回は「最高の人材が入社する採用の絶対ルール」を紹介しました。
本書の中では、企業として採用がうまくいくようにする仕組みづくりや、求職者を集めたり、内定辞退を防止するためのマインドセットなど、採用に関するあらゆるポイントがまとめられています。僕は面接官を担当することになったので、面接に関するものを中心に取り上げましたが、採用に関わるどんな人も一度は読んだ方がいい良書です。
採用に関する本を数冊読みましたが、共通していることもいくつかありました。
- 志望動機は聞かない。そもそもナンセンスな質問で、志望動機を持ってもらえるよう面接官から働きかける
- コミュニケーション能力は問わない。入社後に身につけられるし、面接だけでは判断できない
- 面接は「選ぶ」場ではなく、応募者に「選ばれる」場でもあり、面接官の仕事は応募者を惹きつけること
などです。
いろいろな本で共通しているということは、それだけ重要で、かつ多くの人が間違っているポイントだということです。
改めて、面接する前にちゃんと本で勉強しておいて良かったなと思いました。何も知らずに面接していたら、今回挙げたNG質問のいくつかは当たり前のようにしていたかもしれません…
世の中にマーケティングの本は多いですよね。どんな企業でもマーケティングは必要だからです。本屋に行けばマーケティング専用コーナーがあるでしょう。コミュニケーションも重要で、たくさんの本があります。人事やマネジメントにも専用のコーナーが用意されていると思います。
でも、採用のコーナーが用意されている本屋さんは見たことがありません。Amazonでも「人事・労務管理」というカテゴリに入れられていました。でも人事と採用って、全く別ですよね。
でも採用はどんな小さな組織でも必要になる仕事です。ある意味、マーケティングやコミュニケーションより、ビジネスに影響がある仕事でしょう。自社に足りないどんなスキルも、採用で解決することができるからです。
僕は今回、採用に関する本を数冊読んで価値観が変わりました。これまでマーケティングこそ最強のスキルだと思っていましたが、採用力の方がずっと大切なスキルです。採用力があれば、マーケティングの天才を仲間に入れることができるからです。
採用はビジネスマンに必須のスキル。経営力にも並ぶ、会社の未来を作る仕事である。そう実感できたので、これからも採用の本はいろいろ読んでみたいと思います。学びになるものがあればどんどん紹介していきますね。
この記事を書いた人
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かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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