こんにちは。夫です。
今日は珍しく漫画から。「左ききのエレン」から最高に響く言葉を紹介しようかなと。
ざっくりいうと広告代理店のデザイナーと画家(アーティスト)の2人のエピソードが中心なのですが、広告関連の仕事をしながら音楽などでアーティスト活動もしている僕にとっては、学びになることがたくさんあった本です。
今日は「左ききのエレン名言集」ということで、アーティストやデザイナーに限らず、なにかを表現しているすべてのクリエイターの力になる言葉を紹介していきたいと思います。
それではまず、左ききのエレンとはなんぞやというところから簡単に。
「天才になれなかった全ての人へ」左ききのエレン
「左ききのエレン」は2016年から1年ちょっとの間『cakes』というサイトで連載されたかっぴーさんの漫画「左ききのエレン」が原作。2017年10月7日からは『少年ジャンプ+』で別の方が作画を担当され、「左ききのエレン」としてリメイク版が連載されています。2019年にドラマ化されたことも話題になりました。
リメイク版から話題に火が付いた感じですが、原作にも注目が集まり、原作を再編集してさらに限定版の「0巻」も出版するクラウドファンディングでは、なんと応援総額5300万円超え。
ちなみに僕は『cakes』もかっぴーさんもはじめまして。妻が読んでいたので知りました。妻は左ききのエレンのクラウドファンディングにも参加して原作もすべて手に入れた大ファン。
ストーリーを簡単に紹介すると、デザイナーの朝倉光一と、特別な才能を持つアーティスト山岸エレン。基本的にはこの2人の、交わるようで交わらない日々が描かれています(が、そのまわりのキャラがすごくいい)。
朝倉光一がデザイナーを目指し、山岸エレンが絵を描くのを辞めていた高校時代、朝倉光一が広告代理店に就職し、いろんな課題を抱えながらも成長していく新社会人時代。エレンがアーティストとして注目され、朝倉光一もデザイナーとして実力を付ける青年時代(?)と、いくつかの時間軸が交差するので、一度読んだだけだとイマイチ理解できないかもしれません。
左ききのエレンという作品が伝えたいのは「才能」についてだと思います。それは、「天才になれなかった全ての人へ」というこの作品のキャッチコピーからもわかります。
この作品の素晴らしい点は、才能という定義しづらいものついて、真剣に考える機会を与えてくれること。そして何より、その定義しづらい才能によっていろんな価値で苦悩する”人間”が描かれていることです。ここ数年出会った漫画の中で最高ランク。僕のまわりにいる人も、左ききのエレンを紹介してハマった人は多い。
左ききのエレンの概要については、ざっくりこんな感じで。もっと紹介したいポイントはたくさんありますが、「左ききのエレン名言集」は何度かに分けて書く予定なので、そのときにまた紹介したいと思います。
それでは早速。今日は第1回ということで、1〜5巻に出てくる言葉を紹介します。広告関係の仕事をしていなくても、アートには縁がなくても、人間生きている限り必ずなにかを表現し、創造しています。
これから紹介する言葉も、「天才になれなかった全ての人へ」向けて書かれた言葉です。
左ききのエレン名言集
夢見てるやつが10万人いたとして、残るのは10人がいい所だ。
”万が一”これが現実ってやつだ…
いきなり厳しい言葉。高校時代のエピソードで出てきます。
「横浜のバスキア」と呼ばれ注目を集めるエレンですが、この頃エレンは絵を描くのを辞めていました。エレンは売れない画家だった父を亡くしていて、絵を描くこと、夢を追いかけることに激しい嫌悪感を持っていました。
そんな事も知らず、デザイナーを夢見る少年朝倉光一は、「横浜のバスキアと勝負する!」みたいなテンションで、学校にアートを飾ります。「横浜のバスキア」が無視できないくらい良いアートを作れば、きっと現れると思ったんでしょうね。
そんなことを繰り返し続けたある日、ついにエレンはブチギレ。父が画家で、絵に関して並外れた才能を持つエレンにとって、朝倉光一の絵は遊び同然だったんです。
それに対して朝倉光一は「遊びじゃねえ!本気でやってんだ」と反論。しかし、エレンにビンタされ「現代アーティスト、何人言える?好きなら10人くらいは言えるか?じゃあ、美大を目指しているやつは?」と聞かれ言葉に詰まる朝倉光一。そこで出てきたのが、この言葉です。
夢を追いかけるというのは美しい行為ですが、幸せになれる行為ではありません。僕のまわりには音楽で生きていくために努力している人が何人かいます。彼らを不幸だとは思いませんが、現在の生活に満足して幸せを謳歌しているという人は、、いませんね。そして確かに、音楽でプロを目指している人の数と、ぱっと名前を挙げられるアーティストの数を比べると…万が一、ですね。
YouTubeで「好きなことで、生きていく」という言葉がもてはやされましたが、実際YouTuberを目指した人のうち、成功している人はごくごくわずか。やりたいことを追いかけられる自由な現代だからこそ、その道が険しいことはちゃんと考えないといけませんね。
いいんだよ仕事の話だけで。
男だから。
これは朝倉光一が大手広告代理店に勤め始めた新入社員時代のエピソードで出てきた言葉。
特別な才能もない、不器用な朝倉光一は広告代理店に入社し、寝る間も惜しんで働きます。持ち前の真っ直ぐさで愚直にアイデアを出し、ついに大きな案件のプレゼンで勝利!でかい仕事に関われる、と思った途端、上司から経験不足を理由にプロジェクトから降ろされます。
当然ショックを受けた朝倉光一ですが、一緒にプレゼンした先輩デザイナーに飲みに誘ってもらったときも「あれは俺の仕事だ。おれが考えて、俺がプレゼンしたんだ。おれの、おれの、、、」と上の空。
励まそうとする先輩の言葉も聞かず帰宅してしまいます。
その後、先輩からの電話。ちょっと冷静になった朝倉光一は「さっきはすみません、失礼な態度で、、、」と謝ろうとしたのですが、先輩は「なんのこと?それより明日、朝イチでCMキャンペーンの打ち合わせが決まったぞ」と仕事の話。そして最後に「頼むぞ、光一」
電話を切った後に先輩が言ったのが、この言葉です。
余計な慰めを言われたくない時、ありますよね。この時朝倉光一は自分の実力不足ではなく、めちゃくちゃ努力したのに組織的な都合で大事な仕事を降ろされたわけです。こんな時、「まあ次も頑張ろうぜ」なんて絶対言われたくない言葉です。
だったら…サラリーマンやれよ
新しい案件での打ち合わせ。
担当営業も納得していないのに、上司同士が企画の大枠を固めてしまった。会社ならあるあるですよね。僕もクライアントでの提案で、担当者同士で「これでいきましょうよ!」「めっちゃいいですね!」と盛り上がっていたのに、後で「すみません、上司からこの方向でと指示がありまして…」と言われたり、僕も「すみません、予算的にはやっぱりこっちで…」と伝えたり、そんな経験は少なくありません。
新人デザイナーとしてイケイケな朝倉光一は、担当営業の苦悩も知らず声をかけてしまうのですが、「お前、クリエイターが主役だと思ってるだろ?」「俺らが汗水たらして、靴すり減らして取ってきた案件を、面白くねえ、予算がねえと文句ばかり言って」「クリエイティブって言えばなんでも許されると思ってる」そして最後に「本物のアーティストでもないくせに」とキツイことを言われてしまいます。
朝倉光一は「本物のアーティストにはなれなかったんですよ…」とつぶやいた時、その担当営業が最後に言ったのがこの言葉。
いやあ、どっちの気持ちもわかる。僕は去年まで広告代理店でディレクターをしていたのですが、まさに営業とデザイナーの間に立つ立場。仕事の話だけじゃなくて、音楽活動でもそう。自分たちがやりたいことと、リスナーが求めていること。俺らはアーティストだと言ったって、人様からお金を受け取るなら、それは仕事ですからね…
俺たちはサラリーマンだけど、夢があるサラリーマンだろ
「だったら…サラリーマンやれよ」と厳しい言葉を言われた朝倉光一ですが、ここから大逆転。
その後、同期の営業と飲みながら、「デザインは伝えるのは仕事」というクリエイターの主張と、「営業は売るのが仕事」という営業側の主張。1つの仕事に対する2つの正義を認識した朝倉光一が言ったのがこのセリフ。
この言葉を言った後、朝倉光一はチーム一丸となって企画を練りだし、上司に言われた通りの「A案」、デザイナーとして伝わる広告を重視した「B案」、そして、上司が納得しつつ、伝わる広告である「C案」を作成。見事、「C案」を通すことができました。
1つの仕事に対して2つの正義があり、その2つはどちらも間違っていなくて両立する。そのことに気づくことが、大人になるということなのかもしれません…
負けない方法とか、折れない方法なんて俺だって知らん。
何度も負けるし何度も折れる…
だからお前らに一番必要な力ってのは…
再起する足腰だ
時は戻って朝倉光一、エレンともに高校時代。
朝倉光一は美大に入るため、アトリエで絵の勉強をしています(このアトリエにはエレンもいるのですがこの話のときはまだ絵を描いていない)。
そのアトリエの先生が、受験モードに入っている生徒に「受験はゴールじゃない。クリエイターの人生は長い」とした上で言ったのが上の言葉です。
現に朝倉光一は広告代理店に就職してから、折れまくりです。それでも諦めず、ふてくされて「A案」だけ作るのでも、意地になって「B案」だけ作るのでもなく、その折衷案である「C案」を作るという、まさに仕事をやってのけたわけです(言われたことだけやるとか、やりたいことだけやるとか、それはもう仕事じゃないですからね)。
俺は俺が諦めるまで、諦めない
このセリフ、左ききのエレンの中では何度も出てきて、大人になった朝倉光一も言います。が、ここで紹介するのは3巻に出てくる、エレンの父の言葉。
エレンの父は朝倉光一らが通うアトリエの先生の先輩でもあるんですが、作品が売れず苦労を続けます。そんな中、娘(エレン)の特別な才能に気づきそこでもまた苦悩。最終的には事故で亡くなるのですが、自殺と言われるほど追い詰められていたそう(本書の中では明らかにされていませんが、エレンは自殺と考えていませんし、それに気づいたことが再び絵を描くきっかけになります)。
僕もこのセリフが大好きです。アーティスト側のセリフですが、社会人となって”仕事”をする朝倉光一の支えにもなっている。表現者としてのアーティストと、仕事人としてのデザイナーが対比される本書ですが、この言葉はその両方が言う言葉です。
クソみたいな日に、いいものつくるのがプロだ
「いいんだよ仕事の話だけで。男だから。」と言った朝倉光一の先輩デザイナー神谷雄介の言葉。
彼は超優秀デザイナーで、若くして自分のチームを持ち、やがて独立していきます。光一にとっては尊敬できる先輩、師匠であり、ゆくゆくは超えるべきライバルとなる。ナルトでいうカカシ先生、ワンピースのゾロにとっての鷹の目のミホークみたいな感じでしょうか(個人的感覚)。
そんな彼も独立を決め、唯一の心残りはまだ成長途中の朝倉光一。辞める前に教えたプロフェッショナルの流儀が、この言葉です。
万全の状態なんて存在しない。寝てなくても、要求が無茶でも体調が悪くても、その中でひねり出したものが自分の実力の全て。言い訳しない、常にベストを目指すプロの言葉ですね。
NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」で神谷雄介を取り上げてほしいくらい、彼の仕事に対する向き合い方は勉強になります。
君が私より優れたアイデアが出せるなら、私は立場に関係なく君に従おう。
逆にそれができないなら、立場に関係なく私に従ってもらう。それが対等だ。
クリエイターとして生きるなら作ったものだけで勝負しろ。この世界に頑張ったで賞などないのだから。
時は変わって朝倉光一の大学時代。
大学の活動の一環として、ファッションショーをやることになった朝倉光一。そのメンバーの中に、岸あやの(世界的ファッションブランドのボスの娘で学生にしてファッションデザイナーとして活躍)がいて、自分がリーダーなのに意見が通らないことにふてくされていました。
そんな光一に「半生だけなら猿でもできる。挫折に酔うな。学びのない挫折にドラマはない」と厳しい言葉のあとに言ったのがこのセリフ。
”THE BEST IDEA IS BOSS(最も優れたアイデアに従え)”というクリエイターの信念を光一が学ぶ瞬間です。
広告の世界では”OFFER IS KING”という言葉もありますが、それと同じくらい重要なのが”BIG IDEA”広告のコアコンセプトです。この辺は以前「セールスライティング超実践ガイドブック」で紹介しました。
コネなんてただの1枚のカードだ。
元々持ってるカード、新しく手に入れるカード。捨てなきゃいけねえカード。
その組み合わせで勝負する人生ゲーム…
ズルいカードなんてあるか。
朝倉光一が勤める広告代理店のベテランコピーライター、沢村さんの言葉。
沢村さんは定年間近で、バブル期には「サドのサド村」と呼ばれ制作会社から恐れられるほどシビアな仕事をする人でした。「24時間、戦えますか?」「企業戦士」といった言葉が使われるような頃、敏腕コピーライターとして活躍した沢村さんも、体を壊したり心を病んだりして業界から出ていく仲間を何人も見送ってきた経験からすっかり丸くなりました。
クライアントの社長令嬢とのトラブルがあり、営業の流川くん(「だったら…サラリーマンやれよ」の人)が「あのコネ娘」とボヤいたときのセリフ。
いやあ、かっこいいですね。コネや学歴、見た目、、、いろんなもので「あいつはズルい」みたいに考えてしまいますが、それらすべてひっくるめてその人の実力です。頭ではわかっていても、こんなに卓越したセリフ、なかなか言えません。
沢村さんは左ききのエレンの中でも2番目に好きなキャラ。ちなみに社長令嬢とのトラブルですが、沢村さんは「おっさんは若者がドタバタしてる時のためにヒマしてんのよ」といって、社長とスパッと話をつけて解決させました。いやあ、ホントかっこいい。
才能とは集中力の質である
これは名言というか、左ききのエレンの中で学びになった言葉なのですが、才能の正体は集中力の質であり、その質には3つの種類がある。その組み合わせによって強みやタイプが変わる、というものです。
集中力の3つの質は
- 深さ…集中の深さ
- 長さ…集中の持続時間
- 早さ…集中モードに入るまでの時間
です。
例えば、浅くて長くて早い人は、マネジメントやサポートに向いているかもしれません。
集中が浅いというのは悪い事のような印象がありますが、同時にいろんなことにある程度集中できるということでもあります。つまり、マルチタスクで長い時間集中することができ、必要なときにパッと集中モードに切り替える事ができる。臨機応変な対応が必要な仕事には向いています。
深くて短くて遅い人は、パフォーマータイプでしょうか。
深く没頭することができるけど、何時間も持続することはできない。また、ルーティーンなどを持たないとなかなか集中モードに切り替えられない人は、ハマれば最高のパフォーマンスをする人です。アーティストやスポーツ選手などに多そうですね。
僕はどのタイプだろうな。ちょっとだけ深くて、割と短い。そこそこ早いとは思う。そんな感じです。没頭すれば時間が早く感じるタイプではありますが、寝食を忘れ、というほどではない。何時間も集中を持続するのはしんどくて、1,2時間に一回は息抜きをしているイメージ。ただし必要なシーンではパッと集中モードに入れると思う。妻はどんなタイプだろう…?
この集中力の質の話、左ききのエレンの軸の一つでもあり、これから出てくる色んなキャラクターに対して語られます。みなさんも自分や自分の周りの人について「あいつはどの才能タイプだろう?」とか考えてみると面白いかもしれません。
クリエイターとして戦うなら、左ききのエレンは良書
さて今回は左ききのエレン名言集の1回目ということで、1〜5巻までの間で僕が好きな言葉を紹介しました。
今回紹介した中で僕が一番好きな言葉は、、、沢村さんの「コネなんてただの1枚のカードだ。」というものですね。僕は沢村さんが大好きなんですが、彼、もう定年してしまうのであんまり出てこないんですよね。
「左ききのエレン」のいいところは、アートとビジネス、両方が学べるところ。
広告関係の仕事をして音楽活動をしている僕にとっては、学びになることや共感できるところがめちゃくちゃ多いんです。
ちなみに1〜5巻は割と朝倉光一側の話が多かったのですが、これ以降はエレン側の話も増えてきます。
次は6〜10巻からまた名言集を作ろうと思うので、楽しみにしてください。
それではまた。
この記事を書いた人
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かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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