こんにちは、夫です。
今日は先週書いた「左ききのエレン名言集①|クリエイターは読め」の続き。前回は1〜5巻までの内容から個人的チョイスで名言を紹介したので、今回は6〜10巻から。
左ききのエレンの中でも5〜6巻は朝倉光一の新人時代のエピソードや、エレンがニューヨークに渡ってからのエピソードなど、特に好きな場面が多い。どのシーン、言葉をチョイスしようか迷いましたが、会社で働く社会人に刺さりそうなものをピックアップ。
名言集に入る前に、左ききのエレンの中で一番好きなエピソードを紹介させてください。
プレゼンはテンポ|岸アンナ VS 加藤さゆり
左ききのエレンには、ためになるエピソードがたくさんあるのですが、その中でも特に好きなのが8巻から9巻に出てくる岸アンナ VS 加藤さゆりのシーンです。
世界的ファッションブランドのボスで「五番街の女王」と呼ばれる岸アンナに、エレンのマネージャーとして加藤さゆりがプレゼンする場面があります。世界的ブランドの経営者でありデザインを統括するクリエイティブ・ディレクターと新人アーティストの無名マネージャー。圧倒的な力の差があり、全てを支配したがる岸アンナは、エレンを自社ブランドのイメージキャラクターとして使いたいと考えています。
でも加藤さゆりはエレンを覆面アーティストとしてプロデュースしたい。そこで、女王と商談することに。
強者は他人のモノを奪っても、まかり通るモノなのよ
と一切交渉に応じる気がない岸アンナに「即興プレゼン」を申し込むさゆり。
岸アンナのプランを「ダサい」と切り捨て、自分のプランを提示するのですが、その言葉の応酬はもちろん、さゆりは服装など細かいところまで事前に計画。そして岸アンナに
この娘のプレゼンは、美しい
とまで言わせ、自分のプランで岸アンナから支援を得ることに成功します。
このプレゼン、文字で書いても伝わらないと思うのでサラッとだけ紹介しましたが、左ききのエレンで一番好きなキャラクターである加藤さゆりが一番かっこいいシーンなので紹介しました。ビジネスパーソンなら絶対読んでほしい。良いプレゼンとは何なのか、その答えを教えてくれますし、強者に挑む時の大切なマインドセットが学べます。
それでは、余談は終わりにして、左ききのエレン6〜10巻の名言をエピソードを交えて紹介。
左ききのエレン名言集
一つだけアドバイスを。
同業者にファンだなんて言ってはいけない。
君の限界を決めてしまうから。
美大で就職活動をしている朝倉光一。デザイナーの採用では作品面接、与えられた時間内に自分の作品を披露する一人展覧会のようなものがあります。
朝倉光一は一番人気の広告代理店の作品面接に臨むのですが、そこで面接官として登場したのが八谷さん。後に光一の上司となる神谷雄介の先輩でライバルで、広告業界を代表する凄腕デザイナーです。
八谷さんは目立たない人で、凄腕デザイナーとは思えないほど地味。でもチームの力を大切にしていて、後に神谷雄介と一緒に独立するほどの人です。デザイナーというより、チームをマネジメントして高い次元に引き上げるマネージャー、ディレクターといった感じなので、クリエイター以外にも刺さる言葉が多い(あとロマンチスト)。
そんな大物が面接官として訪れたので、思わず朝倉光一は「ずっとファンで…」と言ってしまいます。それに対して答えたのがこの言葉です。
めちゃくちゃいい言葉。同業者にファンだなんて言ってはいけない。憧れるだけでは超えられませんから…これはクリエイティブな仕事ほど意識したい。音楽やデザイン、その他色々なアートを仕事として目指す時、きっかけは誰かのファンになることだと思います。でもいつまでも「ファンマインド」じゃいけない。自分もプロとして活躍するなら、かつて憧れた人は同業者、ライバルです。
サラリーマンには4種類おる。
①替えが利かない”有能”
②替えが利く”有能”
③替えが利かない”無能”
④替えが利く”無能”
この中で一番会社に必要な人材はどれや?
尊敬する先輩であり上司、神谷雄介が独立し、ブラック労働で知られる柳チームに入ることになった朝倉光一。最初はリーダーの柳さんのやり方に疑問を持ったものの、数年経てば「柳ジュニア」だと呼ばれるほど、デザイナーとして成長しました(といっても熱血新入社員の朝倉光一は見る影もなく、とことんデザインを追求する仕事の鬼みたいになってしまいますが…)。
デザイナーとしては成長した朝倉光一ですが、あまりにも過激なやり方から、下請けのデザイナーに恐れられ、自分が獲得した仕事を降ろされてしまいます。
朝倉光一は「あれは俺の案件だ!」と柳さんに詰め寄るのですが、「ちゃうわ。会社の案件や。」と言い返されます。「お前は替えが効くが、デザイナーは替えが効かん。だからお前を外す」として始まった柳先生の特別授業です。
①替えが利かない”有能”
神谷雄介のような会社のスターです。この場合は、下請けのデザイナーも替えが効きません。
②替えが利く”有能”
替えが利かない有能のようにユニークな才能はありませんが、努力して学べば誰もがなれる会社の主戦力です。
③替えが利かない”無能”
ユニークでなにかあるけど役に立たない。どこかで活きるからすぐ転職すべき人です。
④替えが利く”無能”
新人で特別なスキルもないうちはだいたい替えが利く無能です。
さてこの4つのうち、会社に一番必要な人材は誰でしょうか?
①と思いきや、柳さんは②と言います。①はスターですが、独立していなくなることも多いですし、特殊な才能を持っているので誰も真似できず、組織としては属人化してしまいます。一方②は④の新人を同じレベルまで引き上げてくれるので、組織としての力が高まります。
このあと朝倉光一に「お前はいいぞ。替えが利く有能やからな」と言われ、「俺は天才になれなかった」と愕然とします。この柳流の組織論。めちゃくちゃ厳しいです。スターに憧れる人を、そんなもんいらんと切り捨てるわけですから。さらに、スターを目指して努力してきた人間に「替えが利く人材」になれと言うのですから。厳しいですが、たしかに組織論としては正しいかもしれません…ちなみに妻が一番好きなキャラクターは柳さんだそう。将来はまわりに恐れられるキャリアウーマンになるのかもしれませんね…
やりたい仕事と向いてる仕事が、
同じだったらなあ…
場面は変わってニューヨーク。エレン側のエピソードです。チームエレン(?)の一員であるルーシーは学歴はないけど語学が堪能、運動神経抜群、コミュニケーション力にも優れています。しかし夢は映画監督。
そんなルーシーにさゆりは「もっと向いてる職業あるんじゃない?」と言ってしまいます。それに対するルーシーの返答がこの言葉。
才能と戦う人間にとって、これほどキツイ言葉はありませんね。誰しも何かの才能を持っているはずです。でもそれがやりたいことと直結している人はほとんどいない。左ききのエレンのコンセプトは”天才になれなかったすべての人へ”。…この言葉が響くなら、ルーシーの気持ちもわかるはずです。
よかったな。
できねえ事を認めることはできる様になるより難しいんだ。
だから、よかったな。
前回の記事でも左ききのエレンで一番好きなキャラクターとして紹介した沢村さん。沢村さんは朝倉光一の最初の上司です。
まだリクルートスーツを着て熱血新入社員の朝倉光一。カタログの撮影現場にお手伝いというか見学気分で訪れた朝倉光一ですが、本来担当する先輩が別件のトラブルで連絡がつかなくなってしまいました。そして、撮影現場にいる制作会社の人にとっては、リクルートスーツを着た朝倉光一が唯一代理店の人間、つまり決定権を持っている責任者です。
勝手も分からないなか急に責任者になった朝倉光一。絶体絶命です。カメラマンやスタッフに「この画角でOKですか?」「こういう感じにしようと思うのですがどうでしょう?」「これとこれ、どっちが良いですか?」と聞かれ、青白い顔で「い、いいんじゃないでしょうか…」「お、おすすめの方で…」とメチャクチャな返答をしてしまいます。
ですが、一旦トイレで落ち着いて、これまで学んだことを振り返り、しっかり考えることに。
自分ができないことを認め、制作会社の人に「教えてください!」と頭を下げ、なんとか仕事を完遂。
トラブルで来れなかった先輩の代わりに沢村さんがやって来るのですが、「なにもできませんでした」と泣き崩れる光一にかけた言葉がこれです。
いやあ、沢村さん、ほんといい上司。この出来事から憧れの広告代理店に勤め、テンションアゲアゲで活躍してやるぜ!という感じだった朝倉少年も一つ大人になり、”仕事”ができるようになっていきます。誰でも最初から活躍できませんよね。「教養としての投資」という本の中で、「大学までで身に付けた能力で活躍できると思うなら世の中を甘く見すぎ」という言葉を紹介しましたが、それにも通じるものがあります。できないことを認め、一つ一つ成長していく。それが大切ですね。
仲間がいるという事は、少年漫画のように一緒に旅することじゃない。
カンヌに来ると勇気が湧いてくる。自分と同じように孤独と戦う仲間がいる事に。
彼らは悪魔が囁く夜と、戦う仲間だ。
今回最後に紹介するのは、八谷さんのこの言葉。広告賞のカンヌでのパーティーで、神谷雄介を誘い出し、「俺と独立しないか?」と誘う八谷さん。
神谷雄介にとって八谷さんはまだ超えられていないライバルです。「なんで俺なんだ?」と聞く神谷雄介に対して、八谷さんは
大事なのは実力じゃない。
足を引っ張られている気分になることもあるだろう。思い通りに動かず苛立つことも…
だが、彼らの存在に救われる時がある。
クリエイターは突き詰めれば誰もが孤独だ。何を作ろうが、何人で作ろうが、必ず一人にならなくてはいけない時がある。未だに悪魔が囁く夜があるよ。
「どうしてここまでやる?」
「こんなにこだわっても人には伝わらない」
「これくらいで十分だろう」
そんな時、俺はこう考えるようにしている。「きっと神谷雄介ならここで妥協しない」
いやあ、ロマンチスト八谷さんの言葉は素晴らしい。神谷雄介がデザインはデザイナーの能力だと考えている一方、八谷さんは個人の力量ではなくチームの時代が来ると考えているます。
その理由の一つが、このエピソードからわかりますね。
何かを作るというのは非常に個人的で、自分自身と向き合い続ける行為です。「これくらいで良いだろう…」と思ったときがその人の限界。だからこそ「あいつならここで妥協しない」と考えられる仲間が大切なんです。
僕も音楽をやっているのでよくわかります。レコーディングでは特に、「これくらい引けてれば十分だろう」「これ以上こだわっても誰もわからないよ」と思う瞬間があります。実際、プロにミックスしてもらってバンドサウンドで聞いたら、ギター単体で聞いて気になった部分など自分でもほとんどわかりません。でもそこで終わってしまったら、自分の実力はそこまで。仲間がいるから「これくらいでいいだろう…」という悪魔の囁きと戦えます。
左ききのエレンを新社会人に読ませたい
ということで今回は、左ききのエレン名言集の2回目ということで、6〜10巻から、僕が好きな言葉を選びました。
今回は特に、社会人向けの言葉が多かったですね。
左ききのエレンはアーティスト、クリエイターの話と思われがちですが、”天才になれなかったすべての人へ”というキャッチコピー通り、アーティストやクリエイター以外の人、才能と戦う人に向けた作品。
自分にはこんな才能があると思っていたのに全然通用しなかったり、才能がないと思っていたところでなぜか活躍してしまったり、”仕事”をしないといけないのに気づけば妥協してただの作業になってしまったり…
社会人に出れば毎日が思い通りに行かないことの連続です。左ききのエレンはそんな人にこそ読んでほしい。特に、社会に出て想像と現実のギャップに苦しむ新社会人ほど、読んでほしい。
ということで最後に、左ききのエレンとは関係ないのですが、仕事に関する一つの小話を。
ある時、旅人が石を積んでいる職人A、B、Cに出会いました。
旅人が「何をしているんですか?」と一人ひとりに質問したところ、職人Aは「石を積んでいる」と答えました。
職人Bは「教会を造っている」と答えました。そして最後の職人Cはこう答えました。
「人々の心を癒やすための仕事をしている」と。
仕事をしているのは誰でしょうか?世の中に価値を生み出すはずの仕事が、気づけばただのルーチンワーク、作業になってしまう。そんなときに必要なのは八谷さんがいう「悪魔が囁く夜と戦う仲間」かもしれません。
この記事を書いた人
- かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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