【禅マインド】ビジネスエリートのための「教養としての茶道」

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こんにちは。夫です。

最近、「教養としての〇〇」という本が増えていますよね。Intro Booksでも「教養としての投資」「教養としての数学」という本を紹介しました。

こういうタイトルを見ると流行に乗っかったつまらない本だな〜とか思ってしまうんですが、読んでみるとハズレが無いんですよね。

ということで、今日紹介するのは竹田理絵さんの「世界のビジネスエリートが知っている教養としての茶道」です。

余談ですが、僕の母、茶道を習っていて、資格だか免許だかを持っていました。僕はまったく茶道に詳しくないので、何流とか全然知りませんが…(笑)

本書にはお茶会の作法とか茶道具についても書かれているのですが、今回は「世界のビジネスエリートが知っている」というところにフォーカスを当てて、ビジネスでも役立つ茶道の心得やマインドセットなどを中心に紹介していこうと思います。

本書のポイント
・外国人が憧れる(でも多くの日本人が理解していない)文化や歴史について知れる
・スティーブ・ジョブズが取り入れた禅のマインド。禅のマインドが体現された茶道からはシンプルさの極意が学べる
・究極の自己啓発「利休七則」について学べる
・知っておくだけで心が安らぐ禅語を学べる

それではまず「茶道」とはそもそも何なのか。なぜ世界中のビジネスエリートが茶道に憧れるのかを見ていきましょう!

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ビジネスエリートが憧れる茶道

「茶道ってなんですか?」
「お抹茶って緑茶と違うんですか?」

あなたはこうした質問に答えられますか?

海外の多くの国では、その国の歴史や宗教、文化、政治について質問すると、ものすごく詳しく、胸を張って説明してくれるそうです。
一方、日本では、茶道に限らず、神社とお寺の違いや「いただきます」など日本独自の言葉、日本の成り立ちなどを詳しく語れる人は多くありません。

確かに、日本の民族衣装である着物も、一人で着れる人は少ないですし、古事記や日本書紀も学校ではほとんど学ばないですよね…

これにはいろいろな理由があります。
戦後の教育で、それまでの日本が悪いものだと教えられ、日本文化についてちゃんと教えられてこなかった。戦後復興や高度経済成長期に外国の文化や技術を貪欲に取り入れ、急速に欧米化が進んだ、などです。

でも一番大きな理由は、そんなことを意識しなくても十分幸せに生きることができたからだと思います。

島国なので外国人と触れ合う機会も少ないですし、多くの地域と比べても国や民族間の摩擦は目立ちません。
紛争地域で、日々他の民族の脅威にさらされていたり、移民国家で文化も生い立ちも全く違う人に囲まれて生活していると、「自分とは何なのか?」つまりアイデンティティを強く持たないとやっていけません。

だから、そうした国の人ほど、自分たちに固有の文化や歴史、宗教を深く理解し、主張することができるんだと思います。

日本文化を知らない日本人、、というのは、自分のアイデンティティを意識しなくても楽に生きれてしまうくらい良い社会というということでもあるんですが、それはそれで寂しいですよね…

茶道の精神=禅マインド

ということで簡単に、茶道の歴史と、茶道とはなんだという話をちょっとしましょう。

まずそもそもの「お茶」ですが、茶道といえば「抹茶」ですよね。

僕も抹茶というのを飲んだ経験はあまりないのですが、緑茶や烏龍茶などいろんなお茶がある中で、唯一「茶葉そのものを飲むもの」なのだそうです。

普通、お茶って茶葉をお湯や水で抽出しますよね。
でも抹茶は粉末状の茶葉をお湯に混ぜ合わせたもので、茶葉そのものを飲んでいるんです。

だから風味は段違いですし、一方で丁寧に作らないと飲みづらい。その繊細さも抹茶の魅力なのだそう。

お茶そのものの歴史は古代中国にまでさかのぼりますが、”お茶を飲む行為”そのものの裏にある精神性を重視され始めたのは、安土桃山時代、千利休の少し前です。

それまで娯楽のためや薬として飲まれていたお茶に、「禅」という考え方が取り入れられ、お茶そのものより精神性や修練に重きを置かれたのが「茶道」というわけです。

江戸時代には幕府の儀礼として大名や武士など当時のエリート層の嗜みとして広がりました。
明治時代には「上に立つならまず茶道を習え」と言われるほど、財界人や経済人にとって必須の教養になりました。

あの松下幸之助は事業を成功させた後、茶道にものすごく感銘を受けて、数々の政治家を輩出した「松下政経塾」では茶道が必修科目になっているそうです。

なぜそれほどまでに茶道、突き詰めればお茶を飲むという”休息の時間”を、世界中が注目するのでしょう?

それはやはり、ただの”休息の時間”を文化、芸術、精神修練の場にまで高めた茶道の精神が、外国人が最も憧れる「おもてなし」の精神を体現しているからです。

滝川クリステルが国際オリンピック委員会のプレゼンで「お・も・て・な・し」と言って大フィーバーしたくらい、おもてなしの精神は外国人の憧れです。そう言えば、日本のおもてなしを提供するはずだった東京五輪は、外国人から見てどうだったんでしょうね…?

そして、茶道の精神の根本にはスティーブ・ジョブズも取り入れた「禅」の教えがあります。

そもそも抹茶を日本に持ち込んだのは、宋(中国王朝)ので修行していた栄西で、栄西は禅宗の臨済宗を日本に伝えた僧。そして禅寺では、「茶礼」と呼ばれるお茶を修行僧みんなで分けて飲むという作法が定着していきました。

そして戦国時代、千利休が登場する少し前に、庶民にも広がっていたお茶と、禅の精神が再び融合し、「茶道」が生まれます。

さっくり茶道の成り立ちについて紹介していきましたが、ここからはビジネス、人生で役立つ茶道の教えを見ていきましょう。

ビジネスに役立つ禅の教え

人生の本質「利休七則」

まず最初に紹介するのは「利休七則」という千利休が残した茶道の心得です。細かく見る前に、まずは利休七則をご覧ください。

茶は服のよきように点て
炭は湯の沸くように置き
花は野にあるように生け
夏は涼しく冬は暖かに
刻限は早めに
降らずとも雨の用意
相客に心せよ

さあどうでしょう。どうでしょうと言われても困りますよね。千利休は弟子にこの7つの教えを伝えると「それくらい知ってるよ!」と言い返されたそう。すると利休は「もしこの7つができているなら、私があなたの弟子になるよ」と答えたそう。当たり前に聞こえるけれど、実際には難しい、ということですね。それぞれ見てみましょう。

茶は服のよきように点て

「服」というのは飲む人にとって良い湯加減ということです。

歴史好きの間では有名な石田三成の「三献のお茶」というエピソードがあります。
豊臣秀吉がお寺に立ち寄ってお茶を求めたとき、一杯目はぬるいお茶が出てきました。のどが渇いていた秀吉はぬるいお茶を一気に飲み干します。「もう一杯」というと、今度は少し熱いお茶が出てきました。それを飲んで「もう一杯」というと、今度は高価な熱々のお茶が少しだけ出てきました。

一杯目は秀吉が喉の渇きを潤せるようにぬるいお茶を。二杯目はゆっくり飲めるように熱めのお茶を。三杯目はじっくり味わってもらえるように高級なお茶を少しだけ。

これが「茶は服のよきように点て」です。
つまり相手への気配りですね。

相手の状況や気持ちに応じて適切な対応をするというのは人間関係の基本。自分本位ではなく相手本位というのは、ビジネスの基本です。

炭は湯の沸くように置き

千利休の時代はお湯を沸かすのも一苦労。適当に炭を置いて火をつけても熱が分散してお湯は沸きません。かといって、お客様が来てから炭を並べ直したりしていたら待たせてしまいますし、散らかってしまいます。
いつお客様が来てもいいように、いつでもお湯が沸かせるよう準備しておきなさいという、準備の大切さを説いた言葉です。

チャンスをつかめるのは、チャンスが来たときに掴む準備をしていただけ。これもビジネスでは非常に大切な本質ですね。

花は野にあるように生け

花を飾るときは、野に咲いているように飾るという、引き算の美学です。
豪華絢爛なフラワーアレジメントも美しいかもしれませんが、お茶を飲むという休息の時間にはふさわしくないかもしれません。
余計なものを省き、そのもの本質を浮かび上がらせるというのは、いろいろな日本の芸術に共通した理念です。

ビジネスのプレゼンでもそうですよね。スティーブ・ジョブズのプレゼンはとにかくシンプルでした。ワンスライド・ワンメッセージ。余計な装飾を省くことで、プレゼンの目的である「メッセージを伝える」という本質を浮かび上がらせています。

スティーブ・ジョブズのプレゼンは「3分間で100億円を生む」と言われるほど、かっこいいだけでなく成果にも直結しました。今では当たり前になったシンプルなプレゼン資料ですが、以前はパワポで無意味な動きや文字の湾曲とか、使っちゃってましたよね…

夏は涼しく冬は暖かに

これはそのまま、心地よい空間を作るということです。
言葉にすると簡単ですが、当然千利休の時代にエアコンはありません。夏は打ち水をしたり、風通しを良くしたり、さらには涼しげな掛け軸や、ひんやりしたガラス製の茶碗を使い、冬は湯気が上がりやすい大きな釜で湯を沸かし、冷えにくい茶碗を使ったりと試行錯誤していました。

刻限は早めに

単純に時間は早めに、余裕を持ちましょうということなのですが、大切なのはその裏にある精神性です。
茶道の精神の根本はおもてなし。せわしなくしていたらもてなす側は細かな気配りができませんし、もてなされる側も気配りやお茶の風味を落ち着いて味わうことができません。

江戸時代には相手との約束で遅刻すると「時泥棒」という罪で言い訳不要で10両の罰金になったそうです。お金は借りることができますが、時間は返すことができませんからね。
ちなみに10両というのは、現在の価値でだいたい130万円くらいです。当時の人がどれだけ時間を大切にしていたかが分かりますね。

降らずとも雨の用意

千利休の時代は天気予報も折りたたみ傘もありませんから、雨が降ったら濡れるしかありません。お茶会の最中に「もし雨が降ってきたら…」と考えていたらゆっくり味わうことができませんよね。
だから、たとえ降らなくても傘を用意して、お客様には雨の心配なんかせず、お茶を味わっていただこうということです。

雨を例にしていますが、その他の要素でも同じでしょう。余計な心配事があっては、今目の前のことに集中できません。

僕は以前、WebディレクターとしてWebサイトの制作なんかを行っていましたが、まさに準備、想定の大切さを痛感する仕事でした。日々想定外のことが起こり、油断しているとプロジェクトが頓挫してしまいます。どんなときでも臨機応変に対応できるように準備しておくこと。ディレクション能力の本質はそこにあると思います。

相客に心せよ

相客とは同席したお客様のことで、心せよとは気配りしなさいということ。
前の6つはもてなす側からもてなされる側へのメッセージでしたが、これはお客様同士の心の在り方です。茶道にはいろんな作法がありますが、もてなされる側が意識する作法もたくさんあります。

1人の身勝手なお客さんのせいで場の空気が悪くなってしまうことはよくありますよね。会議でも、参加者の一人が批判的で話が進まないとか、経験があると思います。

ビジネスの現場でも、クライアントと接するときは丁寧なのに、部下や同僚には横暴な人、いますよね…でもやっぱりそうした人は長く成果を出し続けることができません…

これが利休七則。簡単なようで難しい、ビジネス、人生の本質です。

あなたは今、大切な人が急に家を訪れてももてなすことができますか?
現在では急に訪ねてくる人が悪いのですが、心づもりとしてはいつだれが来ても、最高のおもてなしができるよう、心と環境を整えておく。その大切さを教えてくれるのが利休七則です。

後いくつか、茶道にも共通する禅語をいくつか紹介したいと思います。禅の本質は「今この瞬間」にフォーカスすること。考えることが多すぎて「今この瞬間」を忘れている現代人にこそ響く禅語です。

茶道の基本精神:和敬清寂

茶道の基本精神を表す言葉で「和やかな心、敬い合う心、清らかな心、動じない心」という意味があります。
茶道には細かな作法がありますが、それらはすべて、和やかな心で、お互いを敬い合いながら、清らかな心で、動じずに落ち着いて、お茶を飲むためのものです。

今、コロナ禍で社会が余裕を失っていますよね。SNSのちょっとした言葉に多くの人がとんでもない反応をしたり、社会全体に息苦しい雰囲気があります。

足りないのは何でしょう?
僕は、政治的リーダーでも、病床でも補助金でも、コロナの治療薬でも無いと思います。

和敬清寂の中で言うなら、「和」と「敬」、和やかに過ごし、互いに敬い合う心構えが足りないんだと思います。

心=体:身心一如

心と体は一つのものだ、ということです。
最近は心理学、医療の分野でも、心と体が同じものだということが科学的に証明されてきました。楽しくなくても笑顔を作るだけでストレスホルモンが減少したり、ケガをしても気分がいいと治りが早いといったデータがたくさんあります。

茶道にある作法は、茶道の精神、つまり禅マインドを体のほうからコントロールするためのものです。

例えば、「畳のふちは踏まない」という作法があります。昔は畳のふちに家紋が書かれていたりして、家紋を踏むということは相手の顔を踏むのと同じくらい失礼だという考え方がありました。
ちょっとしたことですが、「相手に失礼になるから、畳のふちは踏まないでおこう」と思って歩くことで、茶道の基本精神である「敬い合う心」を体現することができるのです。

今あるものに集中する:本来無一物

人間、本来なにも持っていない。裸で生まれて、なにも持たずに死んでいく。
だから余計なものに執着するな、という教えですね。

似たような禅語で「明珠在掌」というものがあります。これは、本当に大切なものは、掌の中にあるということ。

「自分探しの旅」という言葉もありますが、旅先で自分を見つけたらそれはそれでびっくりですよね(笑)。そもそも自分たちはなにも持っていないし、少ししか無い本当に大切なものは身近なところにある。その意識が大切なんだと思います。

今日の運勢は自分次第:日々是好日

この言葉を検索すると「毎日毎日が無事でよい日であるということ」と書かれています。僕もそう解釈していましたが本書には次のように書かれていました。

天気に晴れや雨があるように、私たちにも調子のいい日と悪い日があります。
しかしどのような日でも、自分にとってはかけがえのない大切な一日です。自分の考え方一つで毎日が好日となります。

僕もこちらの解釈のほうが好きです。どんな日も、自分自身の在り方、考え方、捉え方次第で、良い日にも悪い日にもなる。だったら、自分を変えて毎日良い日にしたほうがいいですよね。

何事も適切な時期がある:春来草自生

「はるきたらばくさおのずからしょうず」と読みます。まあそのまま、春になれば草は勝手に生えるという言葉なのですが、これは人の成長やチャンスの捉え方を表した言葉です。

努力しても成果がでない、他の人のほうがうまくやっている。そう感じるときがあるかもしれませんが、それは他の人に春が来ていて、あなたにはまだ来ていないだけ。春が来れば草が勝手に生えるように、時が来れば努力は実を結びます。でも、もし冬の間に努力をやめてしまったら、春に実がなることは無いでしょう。

調子が良いとき、悪いとき、とか何をやってもうまく行かないときと、なぜか全部がうまくいくときってありますよね。そんなときも腐らず続けられるかどうかが、春にチャンスをつかめるかの分かれ道ですね。

教養としての茶道

ということで今回は「世界のビジネスエリートが知っている教養としての茶道」を簡単に紹介しました。

本書ではもっと具体的な茶道の作法やエピソードが散りばめられていますが、僕自身、茶道について詳しくないので表面をさらっと撫でるような紹介しかできませんでした。が、この本で茶道に興味を持てたので、もうちょっと色んな本を読んで勉強してみたいと思います。

茶道の本質にある「禅」は一時期興味を持って色んな本を読みました。Intro Booksでは以前「怒らない禅の作法」も紹介しましたね。禅に興味はあるけどとっつきにくい、、、そんなときは、禅の精神を体現化した茶道から入ってみるのもいいかもしれません。

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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