こんにちは。夫です。
本によって人に向き不向きがありますし、万人が絶対に読むべき本ってそんなに多くありません。「人を動かす」や「7つの習慣」など、そのレベルの伝説的名著くらいです。でも今日紹介する本はこれらとならび、万人が絶対に読むべき本だと思いました。
それが本書『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』です。
以前紹介した「THINK AGAIN」も素晴らしい本でしたが、本書も同じくアダム・グラント氏の本です。
僕は「THINK AGAIN」から読みましたが、いい本だったので過去に出版された「GIVE&TAKE」も読んでみました。一般的にはこっちの方が有名ですし、僕もこっちの方がより万人が読むべき一冊だと思います。最近本屋さんでは「THINK AGAIN」が平積みされていますが、ぜひ「GIVE&TAKE」も手に取ってみてください。
ペンシルベニア大学ウォートン校の史上最年少の終身教授で、組織心理学者。フォーチュン誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」や、同誌の「THINKERS 50(世界でもっとも重要な50人のビジネス思想家)」にも選ばれ、Googleやディズニー、ゴールドマンサックス、国連など、超一流巨大組織でコンサルティング及び講演活動を行う。本書「GIVE&TAKE」は24ヶ国語以上で翻訳され、世界中の人々の「働く意義」を変えた大ベストセラー。
さあ前置きは不要!さっそく本書の内容を見ていきましょう。本書は400ページ近い大著ですが、メッセージは非常にシンプルです。
成功から程遠い人の正体
大きな成功を収める人にはわかりやすい3つの共通点があります。「やる気」「能力」「チャンス」です。
ビジョンに基づいた高いモチベーションを持ち、それを実行し達成する能力を持っている。もちろんそれだけでは成功できません。どうしても”運”の要素が絡んできます。だからこそ、チャンスをものにできるかが重要です。
でも本当にこの3つで成功できるのでしょうか。本書では成功者の様々なエピソードから、第4の要素を見つけました。
それが本書のテーマである「GIVE&TAKE」です。どのようにGIVEし、どのようにTAKEするかで、成功が大きく左右されるんです。
私たちが働く社会は人々が密接に結びつき、そこでは人間関係と個人の評判がますます重要になっている。
そしてビジネスで誰かと関わるたびに、こんな選択をすることになる – 相手からできるだけ多く価値のあるものを受け取るべきか、それとも見返りを気にせず価値あるものを与えるべきか – 。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
アダム・グラント氏はグーグルからアメリカ空軍に至るまで、様々な組織を研究を行い、この選択こそが成功に決定的な影響を及ぼしていることを見つけたそうです。
そして数十年に及ぶ研究から、GIVE&TAKEの関係において、どのくらい与え、どのくらい受け取るのが望ましいと考えるかは、人によってまったく異なることもわかってきました。
そして本書では、GIVE&TAKEの関係のあり方によって「テイカー」「マッチャー」「ギバー」の3種類と読んでいます。
テイカーは常に、与えるよりも多くを受け取ろうとする人です。相手の利益より自分の利益を優先します。
マッチャーは最も多くの人が属しているカテゴリで、与えることと受け取ることのバランスを取ろうとします。マッチャーにとって大切なのは「公平」で、GIVEとTAKEを五分五分に保とうとします。
そしてギバーはテイカーと逆に、相手の利益を中心に考え、受け取る以上に与えようとする人です。
こうした分類の注意点として、誰もがはっきり分類できるわけではない、ということは意識しておきましょう。家族に対しては「ギバー」として多くを与えようとする人が、職場では「テイカー」として多く受け取ろうとする、なんてことも普通にあります。でも人間関係、取引単位でみたら、基本的にこのどれかに属していることがわかりますよね。
さあ「テイカー」「マッチャー」「ギバー」の中で、どのタイプが一番成功に近いでしょうか?
空気を読めばわかりますよね。「ギバー」が成功に近いはずです。もし「テイカー」が一番成功するなら「相手を搾取しまくれ!」というトンデモない本になってしまいます。
調査によれば、成功から程遠い位置にいるのは、ほとんどがギバーだ。どの重要な職業を例に取っても、ギバーはいつも割りを食っている。それは、自分の成功を犠牲にして、相手の利益を優先しているからなのだ。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
しかし意外なことに、成功から一番程遠い人がギバーなんです。ギバーはエンジニアリング業界、医者、販売員、様々な職業において、もっとも低い成績を出していました。
アダム・グラント氏の調査では、テイカーやマッチャーの販売員は、ギバーの販売員の2.5倍も稼いでいました。ギバーはテイカーに比べ収入が14%低く、犯罪の被害者になるリスクは2倍。さらに人への影響も22%劣るという結果が出ています。
まさかの成功するなら相手を搾取するテイカーになれ!というトンデモ本なんでしょうか…いえ、この話には続きがあります。
成功から程遠い位置にいるのは、ギバーでした。
では成功に一番近いのは誰でしょうか。直感的にはギバーの逆の性質を持ったテイカーですよね。
でもアダム・グラント氏は調査結果を見て驚きました。一番成功している人も、ギバーだったんです。
一番生産性が低いエンジニアのほとんどはギバーです。でも、最も生産性の高いエンジニアもギバーでした。
最も成績が低い学生はギバーでした。他人の課題を手伝ったりして自分の時間が取れなかったからです。でも、一番成績がいい学生もギバーでした。
販売員でも、ギバーの多くは売上が低かったのですが、一番売上が大きい販売員もギバーだったんです。
このように、ギバーは成功への階段の一番下だけでなく、一番上も占めているのだ。どの職業であれ、ギブ・アンド・テイクのやり方と成功の関連を調べてみれば、ギバーが「バカなお人好し」なだけでなく、「最高の勝利者」にもなれることがわかるだろう。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
本書の目的は第一にこの事実を知ってもらうことです。成績が悪く、成功から程遠いギバーが、実は一番成功に近い場所にもいるということ。そして、ではなぜ同じ性質を持ったギバーは、ある人は成功からほど遠く、ある人は成功に近づくのかその違いを理解し、1人でも多くの「成功するギバー」を生み出すことこそが本書の目的です。
テイカーが勝つ時、たいていの場合、誰かが負けて損をします。でもギバーが勝った時、誰も損をしません。むしろみんなが幸福になり、応援されて勝ちます。テイカーの勝利は”価値を得る”ことですが、ギバーの勝利は”価値を生み出す”ことだからです。成功するギバーが世の中に増えたらどうなるか、想像するだけで楽しくなりますね。
世の中の大半はゼロサムゲームではない。
<中略>
ギバーであることの恩恵は時間とともに大きくなっていく。もちろんリスクもあるが、長い目で見れば、素晴らしい結果をもたらしうるのだ。ジョワ・ド・ビーブル・ホテルを創業した著名な起業家チップ・コンリーは、こう説明する。「ギバーであることは100メートル走では役に立たないが、マラソンでは大いに役立つ」
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
もちろん、人生という数十年の長いマラソンで、ギバーであることは大いに役立ちます。そして、電話もインターネットもない時代には、ギバーであることの恩恵を受けるにはかなり長い時間がかかりました。マラソンの距離が長いんです。
しかし現代では人間関係や評判は一瞬で世界中に広がります。つまり、ギバーが恩恵を受ける時間もどんどん短くなり、ギバーであることの優位性が増していくということです。
どうすればギバーになれるのか、と思うかもしれませんが、ほとんどの人はギバーの側面も持っています。スーツを着て職場の席に着くと、テイカーとしての顔が出てくるだけなんです。なので基本的には意識するだけ。ギバーであることが仕事でも、人生でも大いに役立つんだと知っておくだけです。
ギバーであることの強み
ではここからはギバーであることの様々な強みを見ていきたいと思います。本書ではそれぞれ大量のエピソードや研究結果をもとに話してくれていますが、僕が特にピンときたものをピックアップしていきます。
先ほど言った通り、ギバーになる秘訣は、ギバーの強みを理解し、自分の中にあるギバーを前面に出すこと。ぜひ本書を読んで、ギバーの素晴らしい強みを感じてみてください。
ギバーの強み①ゆるい繋がり
人脈づくりの重要性は誰しも理解しています。人脈というネットワークからは、有益な情報や多種多様なスキルを得たり、必要に応じて権力を利用することができます。様々な調査から、豊かな人脈を持つ人はより高い業績を出し、昇進も早く、収入も高いことがわかっています。
そしてこの人脈こそ、ギバーの強みの一つです。
自分から奪い取っていく人と、自分に何かを与えてくれる人だったら、後者とつながりたいと思う人がほとんどです。テイカーもマッチャーも人脈を作ることができますが、ギバーほど長続きせず、価値も生みません。
ちなみにある調査では、初対面で一番好感を持たれるのは意外なことに「権利意識が強く、人を利用したりする傾向のある人」なのだそうです。そうした人には良くも悪くもエネルギーや自信があるので、初対面では好印象なんです。
でも、自分に利益をもたらさない人間をどう扱うかで、その人の人間性がわかります。テイカーは新しい人脈を作るのは得意ですが、それを持続させたり、拡散させたり、新しい価値を生むには向いていないんです。
助けてくれた人にお返しをするどころか、テイカーとマッチャーはしばしば先を見越して、近々助けてもらいたいと思っている人に親切にする。
<中略>
マッチャーが、受け取ることを期待して与える場合、助けてくれそうな人にだけ与える。マッチャーとしては、新説が報われないのなら意味がないからだ。
こうしたギブ・アンド・テイクの関係のデメリットが生じてくるにつれて、テイカーとマッチャーが構築するネットワークは質・量ともに制限されていく。どちらのデメリットにしても、ネットワークを目先の利益だけで見ていることが原因で、そうなると誰が一番得をさせてくれるかということが大前提になる。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
人と会う時、テイカーとマッチャーは利害関係で考えてしまいます。一方、ギバーは「この人にどんなことをしてあげられるのか?」を考えます。この差は10年、20年というマラソンでは大きな差を生みそうですね。
ちなみにSNSのプロフィール写真を見るだけでテイカーかギバーかがわかるそうですよ。あくまで傾向ですが、でかでかと自分の顔写真をプロフィールに載せている人は大体テイカーなんだとか。この傾向はSNSだけではなく、会社の決算報告書やパンフレットを見れば、CEOがテイカーかギバーか結構な精度で見分けられます。
また、人間関係に利害関係が割り込まないギバーでは、休眠状態のつながりが長く、増えていくこともメリットです。休眠状態のつながりというのは、最近連絡を取っていない知り合いのことですね。
そしてこの休眠状態のつながりこそ、人脈において大きな価値を持ちます。今の職場の人間関係からは、今の職場の枠組みの中に思考が限定されてしまいます。でも中学時代の友人で、全く違う業界で活躍しているつながりからは、全く新しい思考を得ることができるんです。
テイカーは相手から奪った経験があるので、休眠状態のつながりを復活させることは簡単ではありません。しかしギバーなら、人間関係を持つことで相手にとってもメリットが大きいので、休眠状態のつながりに「久しぶりーちょっとアドバイスが欲しいんだけど…」とメッセージを送るだけで、大量の知識やエール、具体的な協力を得ることができるんです。
密接に結びついた社会は、人間関係や個人の評判をより見えやすくしている。これはつまり、テイカーである代償も、ギバーである利益も、どちらも増幅するということだ。
<中略>
ギバーは豊かなネットワークを発展させ、それを強化することができるのである。人に親切にするのはごく当たりまえ、仲間のギバーをネットワークに引き寄せ、関わるすべての人の分けまえを大きくする。本当に助けが必要なときには休眠状態の知り合いにつながり、思いがけない支援を受けることができる。
<中略>
寛容であることをモットーに人とかかわっていれば、見返りもおのずとついてくる
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
ラインを開いて昔の友達に連絡してみる。それでどれだけ返信がもらえるか、助けてもらえるか。確かにこれは成功を大きく左右する大きな力でしょうし、人生の満足度にも影響しそうですよね。僕は過去の人間関係をばっさり終わらしてきたタイプなので、ちょっと意識を改めないといけません…
ギバーの強み②利益のパイを大きくする
続いてのギバーの強みは、利益のパイを大きくすることです。テイカーの勝負は限られたパイの奪い合い。あいつが10万円儲けたら、自分が10万円儲けるチャンスを失った。そう考えるのがテイカーです。
実際、この考え方はビジネスの現場ではある程度必要かもしれません。営業で契約を得るということは競合の契約チャンスを奪うことですし、一人しかいない部長になろうと思ったら、部長を目指して頑張る同僚に勝たないといけません。
でも、ギバーの勝利はパイ全体を大きくします。
(テイカーは)他人に頼りすぎると、守りが甘くなってライバルに潰されてしまうと思っているのだ。
<中略>
ギバーは、頼り合うことが弱さだとは考えない。それよりも、頼り合うことは強さの源であり、多くの人々のスキルをより大きな利益のために活用する手段だと考えている。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
つまり、自分が勝ち上がって昇進することより、チーム全体でいい方向にいくことを考えるので、結果的にチームの生産性があがり、得られる利益の総量が大きくなるということです。出世競争で負けた有能な人が競合に引き抜かれたら、テイカー的には自分の昇進チャンスが増えるので良いことですが、ギバー的には全体のパイが小さくなるのでよくないことなんです。
「7つの習慣」には「信頼残高」という考え方が登場します。人に親切にすると信頼残高が貯まり、必要に応じて引き出せる。逆に普段から信頼残高を貯めておかないと、助けが必要なときに残高不足で助けてもらえない、という考え方です。
この考え方でいうと、ギバーはかなりの信頼残高を貯めていることになります。
事実、ギバーの人となりからするとクリエイティブな才能や突拍子もないアイデアを生むタイプには思えませんが、クリエイティブ分野で活躍するギバーもたくさんいるんです。
そしてその理由は、信頼残高が高いので突拍子もないアイデアでも認められ、支援してくれる可能性が高いからです。一方、テイカーは信頼残高が足りていないので、特殊なアイデアを思いついても周りから「そんなの無理だよ」と言われ実現しにくいんです。
これはすごくわかります。いつもチームのために頑張っている人が「これがやりたいです!」って言ってきたら、「ちょっと難しいんじゃないかな…」と思っても応援してあげたくなりますよね。
ちなみに職場ではどうしてもテイカーになってしまう、、という人は「責任バイアス」を克服することが重要なのだそう。
責任バイアスとは、自分がやったことを過大評価してしまう傾向のことです。例えば、夫婦にそれぞれ具体的な貢献度合いや、タスクの分担について聞いたとき、必ず合わせて100%になります。一方が「自分は家事の60%をやっている」と答えたら、もう一方は「自分は家事の40%をやっている」と答えないとおかしいですよね。
でもほとんどの場合、責任バイアスによって自分の貢献度合いを過大評価してしまうので、合計が100%を超えてしまいます。
この認識をもって、自分がやったことについて考える前に、相手がしてくれたことをリストアップする。根っからの正真正銘テイカーでない限り、こうしたちょっとした意識だけで相手への感謝やチームへ貢献しようという気持ちが生まれます。これを無意識でやっているのがギバーです。
ギバーの強み③可能性を掘り出し、育てる
すでに結構な長さになってきたので、ここからはできるだけ簡潔にまとめたいと思います…ギバーの強み3つ目。人を育成する能力です。
当然ですが、上司がテイカーなら部下はやる気を無くします。成果を出しても評価されない、それどころか自分の手柄にしてしまうようなテイカーの元で働いていたら当然です。
マッチャーは自分に利益があれば、部下をしっかり育成しようとします。部下の能力が上がり、自分の評価もあげてくれそうであれば、しっかり育ててくれるんです。もちろん部下の成長が自分のメリットにつながるなら、という条件付きなので、将来性のある部下に限られます。
でも「将来性のある部下」を見抜くのは簡単ではないですよね。たまたま最初のプロジェクトが上手くいっただけの人を高く評価し育てようとして、高いポテンシャルを持っているのにまだ発揮できていない才能を見逃してしまうかもしれません。
ギバーはそもそも自分の利益を出発点にしないので、将来性のあるなしで判断しません。他人に与えることが目的なので、すべての人の中に可能性を見出そうとします。だからギバーの周りからは、優れたパフォーマーが生まれやすいんです。
未来のリーダーを発見するため、企業は毎年、才能の査定に何十億ドルも使っている。このやり方は人気があるが、ギバーはこれに致命的な欠点が1つあることに気づいている – 才能を見つけることからはじめているのがダメなのだ。
<中略>
リーダーや指導者の立場にあると、まず相手の才能を探したくなるものだが、ギバーはその誘惑に負けまいとする。そして誰でも一流になれると考え、やる気があるかどうかに着目する。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
そしてさまざまな調査から、人が才能を伸ばすきっかけは生まれ持ったものではなく、「やる気」や「粘り強さ」だということがわかっています。
さらにテイカーやマッチャーは、自分が目をかけた部下が期待はずれだったとき、より多くの投資をしてなんとか回収しようと考えてしまいます。目をかけた分のリターンが得られないと損失なので、取り返そうと必死になってしまうんです。
一方、ギバーにはそうした感覚はありません。同僚や自分のチームを守ることを重視するので、もしも部下が才能を発揮できなければ、才能を発揮できる新しい場所に移るよう促します。
意外なことに、部下をクビにできるのはギバーのほうなんです。でもギバーのクビに「切り捨てる」といったニュアンスはありません。その部下がより自分の能力を発揮できる場所に「送り出す」という感じです。
ギバーの強み④パワーレス時代の影響力
交渉においては相手の立場で考えることが大切。
営業テクニックや交渉術に関する本を読んだことがあるならご存知だと思います。
もちろん相手の立場を考えるのはギバーの得意分野。それどころか無意識に進んで相手の立場を考えてしまいます。一方、テイカーは有利に交渉を進める能力はありますが、関心が自分にあるのでそこそこの成果しか出せません。
しかしギバーはもう一つ、より多くの人に良い影響を与え、交渉でもなんでもスムーズに進められる強みを持っています。
テイカーは、弱みをさらけ出せば、自分の優位と権限を危うくすることになると心配する。かたやギバーは、それよりずっと楽に自分の弱さを表に出す。それはギバーが、人に力を振るうことではなく、人を助けることに関心があるからで、だから、自分の弱点をさらすことを恐れないのだ。弱さを見せることで、ギバーは信望を集めているのである。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
もっとわかりやすく言うと、ギバーは人に「へえ!すごいですね!教えてください!と言えるということです。一方テイカーは大なり小なり「それぐらい俺も知ってるけど?」という態度が出てしまいます。
これがギバーがポジティブな影響力を持てる理由です。交渉上手は交渉下手の何倍も相手に質問することで知られています。テイカーが最初から自分の考えを押し付けようとするのに対し、ギバーは相手が欲しいものを聞き出そうとするんです。
ある研究では相手に「アドバイスを求めること」そのものが、交渉を合意する確率をあげるとも言われています。「この商品すごく良いですよ」というより「この商品、どう思いますか?もっと改善したほうがいいところがあれば教えてください」といったほうが成約率が上がるということです。
営業やマーケティング関係の本を読んで、説得するより質問して聞き出すことや自分が話すのではなく相手に話させることの重要性は理解していましたが、純粋なギバーはそれを学ぶまでもなく、自然にやっているということですね…小手先のテクニックじゃ敵いません…
成功するギバーになる
ここまで、ギバーが持つさまざまな強みを見てきました。一つ一つが自己啓発書やビジネス書のテーマになるほど奥が深いものですが、ギバーはそれを自然に実行できてしまうんです。
でも思い出してください。一番成功している人はギバーでした。しかし、一番成功から遠いところにいるのもギバーです。なぜ成功するギバーと、成功しないギバーがいるのでしょうか。
本書の後半、成功するギバーになる2つの秘訣をみていきましょう。
自己犠牲的なギバーになるな
ギバーはとことん与えようとします。しかも与えることを苦痛だとも思っていません。本書によると、与えることに時間とエネルギーを注ぎすぎても、ギバーは燃え尽きないと言います。ギバーが燃え尽きるのは、与えたことでもたらされた影響が前向きなものでなかった場合です。
成功しないギバーは、与えすぎて燃え尽きることはなくても、意味のないことに奉仕しすぎて燃え尽きることがあります。ギバーはマラソンで恩恵を受けるので、途中で燃え尽きてしまったら成功できません。
ギバーが燃え尽きないために意識することは、「自己犠牲的なギバー」ではなく「他者思考的なギバー」になることです。自己犠牲的なギバーは自分の利益を一切考えず、ただ与えます。自分にとって意味、価値がないことにも与えてしまうので、燃え尽きてしまいます。自己犠牲的なギバーは、恩恵を受けるまでの時間が長かった(恩恵を受ける前に燃え尽きるリスクが高い)こともわかっています。
多くの調査から、自分の幸せをかえりみず与え続ければ、精神的・肉体的健康を害するリスクが高まることを発見した。しかし、他人のことだけでなく自分自身のことをも思いやりながら、他者思考的に与えれば、心身の健康を犠牲にすることはなくなる。
ある調査によれば、6ヶ月以上にわたり、自分自身と他人のどちらにも同じくらい利益になるよう与えた人々は、幸福度と人生に対する満足度が大いに高まったという。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
これは別にマッチャー的に考える(ギブした結果を求めてギブする)のではありません。ギブする時に、自分にとっても意味があることかを考えるということです。募金で例えると、自己犠牲的なギバーは目についた募金箱に片っ端から全財産を入れますが、他者思考的なギバーは自分にとって価値のある募金活動を見つけ、そこにしっかり募金するという感じです。
テイカーに気をつけろ
成功できないギバーの多くは、テイカーに搾取されています。テイカーは奪うだけ奪って与えません。それでもギバーは与えようとするので、テイカーが肥え太る一方でギバーは痩せ細ってしまいます。
だからギバーはテイカーとの付き合い方には注意しないといけません。
テイカーとつき合うときには、マッチャーになればいいのだ。ただし、最初はギバーでいたほうがよいだろう。信頼は築くことこそ難しいが、壊すのは簡単だからだ。それでも、相手が明らかにテイカーとして行動したら、ギバー、マッチャー、テイカーの3タイプを使い分け、ぴったりの戦略を撮るのが得策だろう。
<中略>
テイカーを相手にするときには、自衛のために、マッチャーになるのがいい。ただし、3回に1回はギバーに戻って、テイカーに名誉挽回のチャンスを与える。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
本書ではテイカーの見分け方もいろいろと書かれていますが、ギバーは相手への理解度、共感度が高いので、テイカーを見抜くこと自体は難しくありません。相手がテイカーとして振る舞うなら、ギバーとして無条件に与えるのではなく、マッチャーとして五分五分の関係に持ち込むことが大切です。
このことからわかる通り、GIVE&TAKEの形は一つではありません。立場や状況によっていろいろな形があります。ときにはテイカーであることが有利に働くこともあるでしょうし、マッチャーが損をすることもあるでしょう。だからこそ自分の特性を理解して使いこなす必要があります。
成功するギバーは、どうせ私は利用されてもいいのだと決めてかかったりしない。人に惜しみなく与えること自体が危険なのではなく、誰に対しても、たった一つのギブ・アンド・テイクのやり方で対応することの方が、よっぽど危険なのだ。
心理学者のブライアン・リトルは、ギバーが人間の第1の天性であったとしても、成功できるか否かは、マッチャーを自分の第2の天性にできるかどうかにかかっていると主張し値得る。成功するギバーの多くが、人はみな善人だという信念から出発するが、同時に、周囲の状況を注意深く観察して潜在的なテイカーを割り出す。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
僕は第1の天性がおそらくマッチャーなので、ギバーを第2の天性にできるかが成否をわけそうですね。といっても何度か言ったように、人はそれぞれの要素をどこかで持っています。ギバーであることの強みを理解し、自分の中のギバーに目を向けることが鍵になりそうです。
今日は一つのギブをしよう
ということで今回は『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』を紹介しました。
ギバー、与える人が成功する理由は明確。なんといってもビジネス書や自己啓発書で語られる成功の原理原則を、自然と実行しているのがギバーなんです。でもそもそもなぜ世の中には天性のギバーがいるんでしょうか?本書では、行動経済学者ロバート・チャルディーニ氏の研究から次のように考えています。
困っている人に共感すると。相手に強い愛着を抱くので、相手との一体感を覚えるのだと、チャルディーニは主張する。困っている相手を自己意識に同化させ、相手の中に自分自身を見出すのである。
これこそが、私たちが人助けをする理由なのだ。つまり、実際には自分自身を助けているのである。
<中略>
与えるときはたいてい、相手に得をさせたいという欲求と、自分自身も得をしたいという欲求が複雑に混ざり合っているのだ。テイカーやマッチャーはおそらく、他人の利益にも自分の利益にもなると感じれば与えるのだろう。
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
「自分はテイカーだ…成功できそうにないな…」と感じている人にも朗報です。ギバーは共感力が高いので、相手に利益を与えることと、自分が利益を得ることは同じ意味を持っているんです。相手が嬉しければ自分も嬉しい。だから与える。ギバーは、自分が嬉しい気持ちになるために与えているという点で、テイカーでもあるんです。
つまりギバーとテイカーの違いは、どこまで自分と相手を区別しているかだけ。自分と相手を同一視すれば、利他的にギブすることに何の抵抗もありません。
大抵の人は職場ではテイカーでも、家庭ではギバーでしょう。妻や子どもが幸せなら自分も幸せ。だから妻や子どもを幸せにするためにどんどんギブできます。そのギブの領域の大きさこそが、テイカーとギバーを分けていると言えるかもしれません。ちなみに、先ほど出てきたロバート・チャルディーニ氏は名著「影響力の武器」の著者です。
最後に、本書の後半に書かれていた学生へのメッセージを引用します。著者のアダム・グラント氏は大学教授で、学生たちによく「ギバー、マッチャー、テイカーの3タイプの中で、成功から程遠いのは誰?」と聞きます。ほとんどの学生はギバーが成功からほど遠いと考えているようです。
「君たちは、ギバーは成功できないと思っているかもしれない。確かに、何の見返りも期待せず、ひたすら他人を助けている人たちのなかには、成功の階段の一番下に転げ落ちる人もたくさんいる。しかし同じギバーであっても、ほんのちょっと工夫をすれば、階段の一番上に登ることができるんだ。
他人の人生に”ちょっといいこと”を起こすことに、注意とエネルギーを集中してみてほしい。そうすれば、成功はおのずとついてくる。僕にとって苦しい戦いになるだろうが、君たちが間違っていることを証明してみせようじゃないか」
引用:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代
ギバーこそが成功に一番近い。その認識こそが多くの人をギバーにします。だってテイカーも自分の利益のためならギバーになれるはずですから。最初に書いた通り、本書は「7つの習慣」や「人を動かす」と並び、人生を大きく変えてくれる一冊です。定期的に読み直して「ギブすること」の重要性を思い出すようにしたいと思います。
この記事を書いた人
- かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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