ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集|ユダヤ人成功者が学んでいる逸話

ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集|ユダヤ人成功者が学んでいる逸話 自己啓発
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こんにちは。夫です。
今日もいい本を持ってきましたよ。「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」です。

夫

お金や経済の世界で、ユダヤ人というと特別なイメージがありますよね。本田健さんの「ユダヤ人大富豪の教え」も昔大ヒットしました。今回は世界中に成功者を輩出し続けているユダヤ人が、何千年も教え伝え、子供の頃から学んでいる「タルムード」から、成功哲学のエッセンスを紹介していこうと思います。

ということでまずは、そもそも「ユダヤ人」ってどういう人達?という話から。

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世界中に成功者を輩出するユダヤ人

ユダヤ人とは、その名の通り「ユダヤ教を信仰する人々」のことで、正しくはユダヤ教徒と呼ばれます。イスラエルの国内法では「ユダヤ人の母から産まれた者、もしくはユダヤ教に改宗し他の宗教を一切信じない者」と定義されているみたいです。
歴史を学ぶと、ユダヤ人がどういう立場にいるのかよくわかります。特定の国を持つことができず、迫害を受けながらも信仰によって結ばれてきました。

夫

ユダヤ人というと大富豪のイメージがありますが、それはもともとお金を扱った商売を卑しいと見られていた時代に、迫害されていたユダヤ人には金融業をやるしかなかった、という側面もあるようです。

今回は歴史の記事ではないので、さらっとユダヤ人と言われている有名人を何人か紹介しておきましょう。
ユダヤ人は世界人口の2.5%ほどと言われていますが、ノーベル賞の22%、数学界のノーベル賞と呼ばれるフィールズ賞の30%、チェスの世界チャンピオンの54%がユダヤ人だそうです。他にも経済や芸術など、多方面で多くのユダヤ人が活躍されています。

  • イエス・キリスト…キリスト教の開祖
  • ジークムント・フロイト…精神分析学の創始者と言われる心理学者
  • カール・マルクス…「資本論」を書き社会主義の考え方を生んだ思想家、経済学者
  • ロスチャイルド家…金融分野で成功した大富豪一族
  • ボブ・ディラン…半世紀以上活躍し続ける歌手
  • ロバート・オッペンハイマー…原子爆弾を開発した原爆の父
  • デーブ・スペクター…日本のテレビ番組で活躍するコメンテーター、プロデューサー
  • アルベルト・アインシュタイン…相対性理論で知られる物理学者
  • スティーブン・スピルバーグ…ジュラシック・パークで知られる映画監督
  • レイ・クロック…マクドナルド創業者
  • ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン…Google創業者
  • マーク・ザッカーバーグ…Facebook創業者
  • スティーブ・バルマー…マイクロソフト元CEO
  • ミルトン・フリードマン…自由主義を提唱した経済学者
  • ジョージ・ソロス…世界三大投資家の一人
  • ダニエル・ラドクリフ…ハリーポッターで知られる俳優
  • マイケル・ブルームバーグ…世界最大級の金融情報メディアBloombergの創始者
  • ナタリー・ポートマン…アカデミー賞主演女優賞を受賞した女優
  • ロザリンド・フランクリン…DNAの二重らせん発見に貢献した科学者
  • ジャネット・イエレン…バイデン政権下の財務長官
夫

さて、さらっと調べて見つかった人の中から、個人的な好みでかなり厳選しましたが、多方面で活躍されていることが伝わったと思います。以前は金融分野で知られていて、あのゴールドマンサックスもユダヤ系です。しかし最近はビジネス分野で知られていて、アメリカのテクノロジー企業のトップ20の30%、トップ50の20%、トップ200の19%がユダヤ人だそうです。

そんなユダヤ人が子どもの頃から毎日読んで、学んでいるのが今日紹介する「タルムード」です。日本でいう「日本昔話」のようなもの、というとタルムードに失礼かもしれませんが、物語形式でいろんな教訓を与えてくれるものです。

一つ注意があって、タルムードはそもそもヘブライ語で書かれたものが聖典としてあり、何十冊にも渡る長編です。それを僕は「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」で読んで学び、そして僕自身が解釈したものがこの記事です。
厳密にタルムードの教えと同一ではありません。本書の日本語訳の際、僕が意訳したりまとめたりする中で、大事なメソッドが抜け落ちてしまうこともあります。

夫

もし本気でタルムードを学ぶなら、本書を始めとして専門書で学んでくださいね。この記事はあくまで興味づけ。タルムードってなんだろう?という状態から、タルムードって面白い!と思ってもらえたら万々歳です。

ユダヤ人に想定外という言葉は存在しない

本書の著者、石角完爾さんは国際弁護士として世界中で活躍する中でユダヤ教の教えと出会い、ユダヤ教に改宗した方です。ユダヤ教の改宗は簡単にはできません。石角完爾さんはユダヤ式の結婚式を挙げ、割礼手術を行い、ようやくユダヤ人になることができました。
それほどユダヤ人、ユダヤ教に惹かれたのは、ユダヤの教えが内面を豊かにして、体を健康に導き、仕事やビジネスにも活力を与えてくれた、つまり人生で大切なことを多く教えてくれたからだといいます。

そんなユダヤ人に特異的な考え方が、「多次元的な思考」です。多次元的というのは、物事を別の角度で見るだけでなく、別の立場でも見ることです。
そのため、ユダヤ人に「想定外」という言葉が存在しません。リンゴが空に向かって落ちたら多くの人はパニックになりますが、多次元的に考えるユダヤ人は驚きません。そもそも「なぜリンゴが落ちるのか?」ということを様々な角度から考えているからです。

ユダヤ人が多次元的な思考を持っている理由は、奇想天外な聖書(神のやること多次元的に考えないと理解できない)を読んでいること、そしてこのタルムードを、幼少期から学んでいるからです。

夫

タルムードはお母さんが子どもに読み聞かせるように引き継がれてきたそうです。その時、お母さんは結論を言う前に「この状況になったらどうする?」と訪ねます。子どもが答えると「それはなぜ?」と聞き返します。高度なディベートのような訓練を子どもの頃からやっているんですね。この記事を読むときも、ぜひ「自分ならどう考えるだろう?」「なぜそう考えたんだろう?」と考えてみてください。

それでは早速、タルムードの中から「魔法のザクロ」という話を紹介します。

タルムードの金言①魔法のザクロ

あるところに三人兄弟が住んでいた。兄弟がそれぞれ成人に達したので、10年間各地で修業をすることにした。兄弟は旅立ちの前に誓いあった。また10年後にこの家で会おう。そして、それぞれ10年の間に見つけた最も不思議なものを持ってくることにしよう。

一番上の兄は東に行き、旅人から世界の隅々まで見える不思議なガラスのコップを買った。このコップから世の中を見ると、世界の隅々まで見えるのである。一番上の兄はこれこそ世界で最も不思議なものに違いないと確信した。

二番目の兄は西に行き、ある町で絨毯売りに出会った。絨毯売りが持っていた絨毯は勝手に動き出し、絨毯売りは「この絨毯は生き物です。空高く飛んでいくことができるのです。これに乗ればどこよりも鳥より早く飛んでいくことができます。」と説明した。
二番目の兄はこの空飛ぶ絨毯を最も不思議なものだと思い、その絨毯を買った。

一番下の弟は南に行き、不思議な森に出くわした。その森の中へ入っていくと、1本の不思議なザクロの木が立っていた。そのザクロの木は花がいっぱいついているのに、実は一つしか生っていない。不思議に思ってそのザクロの実を取ろうと手を伸ばすと、ザクロは掌にポトッと落ちてきた。すると不思議なことに咲いていた花の一つが急に真っ赤に熟れたザクロに変わった。一番下の弟はこれこそ最も不思議なものだとザクロの木を持って帰ろうと思った途端、ザクロの木はぱっと消えてしまった。
手の中にあるザクロの実だけが消えずに残っていた。

10年後に再会した兄弟はそれぞれ持って帰ったものを互いに見せあった。世界の隅々まで見渡せるガラスのコップで見ると、ある国のお姫様が重病でベッドに寝ている姿が映った。傍らで王様が「誰か治してくれないか?早く治してくれるものはいないか?どんな医者に頼んでもこの娘は回復しない。早くしないと死んでしまいそうだ」と嘆いている。

これを聞いた三兄弟は急いでいこうと、魔法の絨毯に乗ってお姫様のもとに飛んでいった。そして一番下の弟が、これを食べればお姫様の病気がきっと良くなるに違いないとザクロの実を半分に割り差し出した。お姫様がザクロを食べると、顔に生気が戻り、力強く立ち上がることができた。

王様は感激し、三人兄弟にこう申し出た。
「お前たち三人のおかげで姫が重病から回復した。三人兄弟の誰でも、姫と結婚して良い。三人で話し合って誰が結婚するか決めなさい。」

すると姫が、「私に質問させてください」と割って入った。

まず一番上の兄に「あなたは世界の隅々が見渡せるガラスのコップで私の重病を発見してくださいました。そのコップは今でも元のままですか?」と聞いた。
一番上の兄は「はい、全くそのままです」と答えた。

二番目の兄に「あなたは魔法の絨毯に乗って私のところにいち早く駆けつけてくれましたが、その絨毯は今でも空を飛べますか?」と聞いた。
二番目の兄は「はい、全く元のままで空も飛べます」と答えた。

三番目の弟に「あなたは私にザクロの実を食べさせて病気を直してくれました。そのザクロは今でもそのままですか?」と聞いた。
一番下の弟は「いえ、お姫様に半分差し上げたので、今は半分しかありません」と答えた。

夫

さて、ちょっと中断。この後、お姫様はこの三人の誰かと結婚すると宣言するのですが、それは誰でしょう?なぜその人を選んだんでしょう?少し考えてみてください。考えたら、続きを見てみましょう。

そこで姫は高らかに宣言した。
「私は一番下の弟と結婚します。彼は私のために大切なザクロを半分失ったのですから」

教訓:ノーペイン、ノーゲイン

あなたは誰と結婚すると思いましたか?それはなぜですか?

ぜひそれを言語化してみてください。

「魔法のザクロ」の話が教えてくれるのは、「何かを失わなければ、何も得られない」という人生の本質です。
大切なことは、何かを失うことが先で、何かを得るのが後だ、ということです。また、何も失わずに何かを手に入れる事はできませんが、何かを失ったからといって、必ず何かが得られるわけではありません。それでも、先に何かを失わないといけないのです。

例えば、起業して成功するには、起業資金や顧客獲得、商品開発など、苦労やお金という痛みが先にあり、その結果として成功が得られます。しかし、起業資金を投じ、顧客獲得や商品開発に奔走したからといって、必ず成功するわけではありません。でも、起業資金を投じ、顧客獲得や商品開発に奔走しなければ、成功することはありえません。

夫

同じことが人生のあらゆる点で言えます。料理をするという手間を投じるか、お金を払わなければ、美味しい料理は食べられません。一生懸命勉強しないと、学歴も資格も手に入りません。楽器の演奏も、つまらない練習を何時間もしないと、楽しい演奏はできません。

大切な教訓:
何かを失ったからといって、何かが手に入るわけではない。それでも、先に何かを失わないと何も得られない。

タルムードの金言②金の冠をかぶった雀

ソロモン王はユダヤの最も有名な王である。賢者の王は鷲の背に乗って空を飛び、両国内の隅々まで視察して回ったと言われている。

ある日、ソロモン王が鷲の背に乗って飛んでいた時、体調が悪くなり、鷲から落ちそうになった。
それを見ていた雀たちが何百羽と寄ってきて、ソロモン王が落ちないように支えた。これに感謝したソロモン王は雀たちに「お前たちに何でも欲しい物をあげよう」と言った。

雀たちは巣に戻り、何をもらうか大議論した。
「いつでも身を隠しておけるぶどう畑」「いつでも水が飲める池」「いつでも食べ物に困らないよう野原に落穂を撒いてもらう」などいろいろな意見があった。
そんな中で、ある雀が「ソロモン王と同じような金の冠をかぶって飛んだら、さぞかし誇らしく格好いいだろう」と言い、雀たち全員が「そうだ」と賛成し、意見がまとまった。

雀の代表がソロモン王のところに行き、「王様と同じ金の冠を雀全員にください」と申し出た。それを聞いたソロモン王は「それはあまりいい考えでないな。考え直してきたらどうだ?」と助言したが、雀たちは冠が欲しいと繰り返した。「それほど言うなら仕方がない」とソロモン王は、雀たちの願いを叶えた。

夫

さてここでストップ。なぜソロモン王は、冠が欲しいという雀に「あまりいい考えではない」と言ったのでしょうか?そして、雀たちはどうなったでしょう?ここでも少し時間を取って、この物語の結論と教訓を想像してください。

金の冠をかぶった雀たちは喜々として大空を飛び回った。今まで猟師たちは雀などに目もくれなかったが、金の冠をかぶっているために、全国で雀が狩られるようになった。
仲間たちはみんな撃ち殺され、とうとう最後の5羽になった時、最後の5羽はソロモン王のところに駆けつけ、「私達が間違っていました。金の冠はもういりません」と言った。

雀から冠が取り外され、少しずつ雀は平和を取り戻し、何年かのうちにまた元の数に戻った。

教訓:財産を見せびらかすと身を滅ぼす

僕も株式投資を始めてから、色んな方法で情報収集をしています。が、意外なほど自分の投資している銘柄や資産を公開する人が多いことに驚きます。そうした人たちこそ、「金の冠をかぶった雀」の話を聞いたほうが良いかもしれませんね。

正直、ここ数年の株式相場は、相当変なことをしない限り、誰でもある程度儲かったと思います。この雀はバブル相場に浮かれる投資家と同じように思えます。

でもそうした人たちがどうなったか、それは歴史を見ればわかりますよね。数年前、ビットコインに投資して「億り人」になった人が次々登場しました。一方で、何億円と儲けたつもりになり、ガードが甘くなった結果、巨額の税金が払えなくなった人も少なくありません。彼らはビットコインで損をしたわけではないんです。何億円という管理画面上の含み益に浮かれ、税金のことを考えず売買したり、浪費したりしてしまったのです。

もっと最近だとSPACやレディットブームもありますね。レディットというSNSで個人投資家同士が結託して株価を吊り上げたり、ということが今年の頭から何度かありました。しかし企業の本質的価値を考えず、ただ株価を吊り上げただけなので、レディット銘柄はすぐに暴落してしまいました。
冷静に外から眺めると、レディット銘柄は個人投資家同士のババ抜きです。後から入った人は暴落に巻き込まれるだけです。

ユダヤ人が金融の世界を牛耳るようになったのは「金の冠をかぶった雀」を知っていたからかもしれません。卑しい職業だと言われた金融で、利益を見せびらかすことも、築いた財産に浮かれることもなく、着実に影響力を増していきました。卑しい職業だった金融は、今ではエリートの花形のような印象になっています。

大切な教訓:
利益を見せびらかしたり、利益に浮かれたりするものは必ず滅びる。自分が受け取るべき利益の適正さを把握し、着実に、堅実に成果を育てていく。

タルムードの金言③キツネとぶどう畑

ある日、キツネがぶどう畑のそばを通りかかった。あまりに美味しそうなぶどうが垂れ下がっているので畑に入って取ろうとした。ところが、ぶどう畑は柵に囲まれていて、太ったキツネはその隙間を通れない。そこでキツネは考えた。
「何日か空腹を我慢すれば、痩せて柵の隙間を通れるようになるに違いない」

キツネは狩りを辞め、巣の中に籠もり、何日も空腹を我慢した。やっと柵を通れるくらい痩せてきたので、巣穴から出てお目当てのぶどうにありついた。

そのぶどうはあまりに美味しいので、ついキツネは夢中になって食べ続けた。そして、生っていたぶどうを全て食べつくしてしまった。

我に返ったキツネは自分の腹がぶどうでパンパンに膨れ上がって通り抜けられなくなっている事に気がついた。このままでは自分の巣穴に帰れない。そこでキツネは考えた。2つの選択肢がある。

一つは、苦しいけれど食べたぶどうを吐き出して胃袋を空にして戻る。
もう一つは、猟師に見つかる危険を冒して柵の中にとどまり、ぶどうの木の間に身を隠して、入ったときと同じように痩せるまで待つ。

さて、キツネはどちらを選択しただろうか?

教訓:リスクコントロール

タルムードにはこのように、結論を教えてくれないものもあります。
あなたならどちらを選びますか?それはなぜですか?

夫

僕なら、1つ目の選択肢、もったいないけど全部吐き出す方を選びます。猟師に見つかる可能性があるなら、さすがに美味しいぶどうといってもリスクが高すぎます。

この話は結論を教えてくれないので、いろいろな解釈があります。ここでは石角完爾さんの解釈を紹介します。石角完爾さんの解釈を聞きながら、自分ならこんなふうに考える、という意見を持つといいかもしれません。

ユダヤの教えでは、どちらの選択をしても正解ではありません。吐き出してしまったなら、何日も空腹を我慢したかいがないですし、柵の中にとどまるのは命の危険があります。

じゃあ、最初からぶどうを諦めるのが正解でしょうか?
それも違います。ユダヤ人は行動の前にリスクを分析し、最小限のリスクで、最適な効果が選べる方法を探します。

例えば、代表的な方法は「ぶどうは少し味わうけれど、柵から出られなくなるほどいっぱい食べない」というもの。少し食べて柵から出て、また次の日に入って少し食べて、ということを繰り返せば、少し時間がかかりますが、全部のぶどうを食べることができます。

他にも、例えばリスやネズミなど他の小動物に頼む事もできます。自分ではリスクを冒さず、食べすぎて出られなく心配もない他人に仕事を頼むのです。もちろん見返りとしてぶどうの一部を分け与えるなどが必要です。

でも、それだと完璧ではありません。これだとリスがわざわざキツネの分のぶどうまで取ってくるメリットがないからです。
キツネはリスに自分にしか用意できない特別な報酬を用意する必要があるかもしれません。自分だけが知っている、溜め込んでいたおいしい木の実を分けてあげるから、ぶどうを少し取ってきてと頼めば、リスにもメリットがあるので取引が成立するかもしれません。

夫

ユダヤの子どもたちは、寝る前に母親からこうした物語を読み聞かせられ、自分で答えを探すよう促されます。この物語から何個もの方法を見つけ出し、もっともリスク・リターンが釣り合った最適解を見つけ出すのです。世界的なエリートが多いのも納得ですね。

大切な教訓:
行動する前にリスクを分析し、あらゆる方法から「最小リスクで最適効果」となる選択肢を探す。リスクは冒すものではなく、コントロールするものである。

タルムードの金言④用心しすぎたアラブの商人

ある時、アラブの若者が商人として初めての砂漠の旅に出た。途中で砂嵐があると何日も足止めをされるので、用心のために三日の行程に必要な水の倍の量を持っていくことにした。
しかし、倍の量の水は1頭のラクダでは運べないため、2頭のラクダを用意した。余ったラクダは目的地について売ればいいと考えた。

ところが砂嵐はなかったものの、途中で水の重さにラクダがへばり、歩けなくなってしまった。やむを得ず若者はラクダを捨て、いちばん重要な積み荷だけを背負って歩くことにした。

ところが半日も歩かないうちに砂嵐が襲ってきて、全く方向がわからなくなってしまったため、その場に留まり、砂嵐が収まるのを待つことにした。

砂嵐は三日三晩続き、食料も尽きてしまった。ようやく砂嵐が収まった時、若者には積荷を背負って歩く力は残されていなかった。

若者は荷物を捨て、水筒だけを持って命かながら近くの村にたどり着いた。
彼はラクダも、積荷も、全て失った。

教訓:過剰な用心はいい結果を生まない

先程のキツネの話と逆で、今度の話は過剰に用心しすぎるな、という教えです。ユダヤ人はリスクをコントロールしますが、それは決して過剰に心配するということではないんです。
この話からは、過剰な用心は逆に危険だと教えてくれます。大切なのは、リスクを分析し、適切な範囲でコントロールすることなのです。

つまり、「心配」するのではなくどうすれば最適な結果が得られるのか、「考える」ということです。この若い商人は、リスクを重視し、対策を取りました。それ自体は間違いではありませんが、同時に「この量の水を運ぶことができるのか?」も考える必要があったのです。

例えば資産形成の場合を考えてみましょう。リスクを取って、全額ハイリスクなIPO株などに投資するのはよくありません。暴落や市場の変化で全てを失ってしまう可能性さえあります。
一方で、リスクを心配するあまり、全額銀行預金やタンス預金にしておくのも良い結果を生みません。お金の価値は時代とともに価値が減るからです。

だからこそ資産形成では、資産を積極的に増やすための株式、安全性の高い金銀、債券、柔軟に対応できる現金など、複数分野に分散して行うことが重要になるんです。

欲張ったキツネは、今風に言うと「NASDAQの3倍レバレッジETFに全額投入」している、過去の株高に浮かれた人です。将来のことはわかりませんが、正直僕はそうした人が50年後も裕福であるとは思えません。
一方、2倍の水を用意した若い商人は「株はリスクがあるから定期預金だけ」という人です。この人も50年後にどれだけ裕福になっているか、あまり想像できませんよね。

大切な教訓:
リスクをコントロールするとは、過剰に用心したり、心配したり不安になったりすることではなく、考えて適正なリスクに抑えることである。

タルムードの金言④難破船の三人の乗客

ある時、船が嵐にあって難破した。流れ着いたのはフルーツの実る島であった。船はその島で修理を済ませてから出港することになった。乗客は三人いた。

一人の乗客は、いつ修理が終わって船が出てしまうかわからないので、取り残されたら大変だと、船から降りなかった。何日も空腹だったが、船が出てしまう心配のほうが強く、我慢することにした。

もう一人の乗客は島を降りたが、船が見える範囲でフルーツを食べ、船の修理が終わる様子を見て急いで船に戻ってきた。たくさんは食べられなかったが空腹を満たし、水分補給もできた。

三人目の乗客は、そんな簡単に船の修理はできないと思い、島の中まで入ってフルーツをたくさん食べた。船は見えなかったが、まだ大丈夫と次から次へのフルーツを食べた。お腹いっぱいになって戻ってきたら、船は出港したあとで島に取り残されてしまった。

全く船を降りなかった乗客は、その後の航海に耐えきれず死んでしまった。島に残された乗客も、無人島から脱出できず、そこで一生を終えた。

教訓:適正にリスクを計算したものが生き残る

「キツネとぶどう畑」「用心しすぎたアラブの商人」に続いて、「難破船の三人の乗客」もリスクコントロールの話です。

三人の乗客の違いは、リスクへの考え方の違いでした。一人目の乗客はリスクを重視するあまり、リターンを得ることができませんでした。三人目の乗客はリスクを取りすぎて、結局リターンを得ることができませんでした。
リターンを得ることができたのは、適正な範囲でリスクを取った二人目の乗客だけです。二人目の乗客は、フルーツを手に入れることと、出港する前に船に戻ること、この2つを計算し、柔軟に対応しました。

日本には「石橋を叩いて渡る」や「念には念を」と言った言葉がありますが、ユダヤの教えは、石橋を叩き壊しても意味がないし、叩かずに渡って壊れても意味がない、ある程度叩いて大丈夫、つまり、橋が壊れる可能性が適正なリスクの範囲内であればOK、ということを教えてくれます。

また投資の話になりますが、着実に資産を増やしている人ほど、実は大半をローリスク・ローリターンの金融商品で運用しています。そして資産のごく一部で大きなリスクを取り、成功すれば大きなリターンを得ています。当然、資産のごく一部なので、失敗しても資産全体への痛手がないように調整しています。

夫

僕も資産の8割を安全性の高い投資に割り当てています。でも結局、残り2割も安全性が高そうなところに入れてしまっているので、僕の場合はもう少し適正にリスクをとっていったほうが良いかもしれませんね。

大切な教訓:
慎重になりすぎても結果は出ない。大胆になりすぎると失敗する。リスクを計算し、あらゆる選択肢を考え、「最小リスクで最適効果」を探す。

タルムードの金言⑤ヘブライの王の助言

ある村に、毎日のように自分の不幸を嘆いている男がいた。男の言い分はこうだ。

「俺の家は狭いうえに、子どもが4人もいて、おまけに女房が太っているので、自分は毎日立って寝なければならない。ひどい話じゃないか。こんな狭い家に住む俺ほどこの世で不幸な人間はいないだろうよ」

この不満を聞いたヘブライの王は男のこう命令した。
「お前のその狭い家の中で、ニワトリを10羽飼いなさい」

王の命令に嫌々従った男は、こう不満を申し立てた。
「女房と子どもだけでも足の踏み場もないのに、ニワトリ10羽をそこで飼うなんて、糞にまみれて寝よというのですか。前より不幸になりましたよ」

これを聞いたヘブライの王は、さらにこう命じた。
「それでは、ニワトリ10羽に加えて、羊を10匹家の中で飼いなさい」

男は王の命令だから従ったが、国中の人間に向かって自分は王の命令のおかげで世界一不幸な目にあっていると言いまわった。
しばらくしてやっと王は「ニワトリ10羽と羊10匹は家の外で飼ってよい」と命令を変えてくれた。

次の日、男は王のもとに感謝の品々を持って駆けつけてこう言った。
「私は大変な幸せな男です。今や、私の家には家内と子ども4人、広々と暮らせるようになりました。ありがとうございます」

教訓:幸福と幸福感は別

「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」から引用する話はこれで最後です。少しこれまでと毛色が違うものをチョイスしました。

この話が教えてくれることは何でしょうか?

ユダヤの知恵は「今生きている人生をどう有意義に過ごすか」ということにあります。この物語は、今生きている現状をどうみるかで、幸福感に違いが出ることを教えてくれます。

この物語に出てくる男は、結局最初と全く同じ状態にいますが、不幸を嘆いていたのに、幸せを感じるようになりました。変わったのはモノの見方です。

僕たちは日本に生まれて育っているので、世界でもトップクラスの生活をしているはずです。先進国でも、水道の水が安心して飲める地域はそこまで多くありませんし、どこに行ってもコンビニと自販機があり、何かを食べるときに「お腹を壊すんじゃないか…」という不安になることもほとんどどありません。犯罪率も低く、国民皆保険が完備され、寿命も長い。

しかし、国民の幸福度は決して高くありません。
世界でもトップクラスに幸福な生活をしているはずですが、世界幸福度ランキングで日本は62位。自殺率ランキングでは世界第7位と、とても幸福度が高いとは言えません。

その原因は、この男のように自分の不幸な面ばかり見てしまっているからではないでしょうか。
テレビやSNSを通じて他人と比較して自分にないものばかりが目についてしまう。そうではなく、今あるものに目を向けることが必要なのかもしれません。同じ状況にあっても、幸福に感じるか、不幸に感じるかは、ものの見方次第です。

大切な教訓:
幸福と幸福感は別である。同じ状況にあっても、ある側面を見れは不幸に、また別の側面を見れば幸福に感じる。他人と比べてないものに目を向けるのではなく、自分自身に今あるものに目を向けよう。

ユダヤ人が心に留める5つの言葉

ということで今回は「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」から5つの逸話と、それぞれの教訓を紹介しました。もちろん本書にあるタルムードの逸話はもっとありますし、僕の好みで選んだので結構偏りもあります。

この記事でタルムードに興味を持ってもらえたら幸いですが、ユダヤ人が子どもに教える5つの心構えを紹介して終わりにしたいと思います。

  • 適正…身の丈にあった報酬をもらい、身の丈にあった生活をする
  • 自己規制…日々勉強を重ねる
  • 自己抑制…誘惑に負けないよう自分を抑える
  • 自己管理…自分自身をしっかり管理する
  • 正直…嘘をつかず、正直に生きる

ユダヤ人は金融分野で成功した人が多いので、金の亡者のように思われがちですが、タルムードでは「決して金の奴隷になるな」と教えます。だからユダヤの人は、貧しくても収入の10分の1を寄付する習慣があります。「金貨がパンパンに詰まった財布には、祝福は訪れない」という言葉もあります。

タルムードという教えを何千年も受け継いできた、物質的な豊かさよりも智慧に重きを置くユダヤ人。
しかし、タルムードを読めば、なぜ世界的な成功者や著名人にユダヤ人が多いのか、その理由がよくわかります。子どものころから、ただ知識を得ることではなく、答えのない逸話から考えることを訓練し続けているんです。

最後に、そんなユダヤ人の性質をよく表していると思う、本書で一番好きな一文を残しておきます。

Eat poorly, Think richly.
貧者のごとく食べ、豊かに考える

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