こんにちは。夫です。
今日も資産形成の本を一冊。ハワード・マークス氏という方の「投資で一番大切な20の教え」です。
”一番大切”な教えが20個もあるなんて、その時点でなんやねんwという感じですが、著者のハワード・マークスさんは16兆円近いお金を運用する世界最大級の資産運用会社「オークツリー・キャピタル・マネジメント」の創業者。そんな人が一番大切な教えが20個あるというんだから仕方ありません(笑)
今回は本書の中から、僕が個人的に「これは重要だ!」と思ったポイントを6つにまとめて紹介します。
20の教えの中で大切なのが6つしかなかったわけではありません。3つくらいにまたがって教えてくれることを僕なりに1つにまとめたり、今の僕には理解しきれないポイントは省いた結果、6つになったという感じです。たぶん20個全部、等しく重要だと思うので、今回紹介する6つが役に立つなと思ったらぜひ本書を読んてみてください。
・本書を読んだことがあり、復習したい人
・本書を読んでみたいと思っていて、その前に概要だけ知りたい人
・個別株投資を実際に行っていて、長期で資産形成するための学びが欲しい人
特に投資を始めて数年、強気の米国株相場しか経験していない人にとっては必読の一冊です。
決して難しい本ではないのですが、内容としては「インデックスファンドの積立投資でOK」という感じではありません。長期で市場平均、つまりインデックスファンドを上回るための考え方が書かれた本です。もしあなたがインデックスファンドの積立投資などについて学びたいのなら、以前Intro Booksで紹介した「投資の大原則」がオススメです。
それでは早速、投資で一番大切な20の教えからピックアップした6つを見ていきましょう。
投資は簡単ではないことを忘れない
投資は簡単ではない。簡単だと思うのは愚か者である。
チャーリー・マンガー(バークシャー・ハサウェイ副会長)
まず始めに認識すべきことは「投資は簡単ではない」ということです。
最近、日本でも米国株がブームになって、インデックスファンドへの積立投資を続ければ”簡単に”資産が築けるといった風潮があります。
その風潮が行き過ぎて、リスク感覚が麻痺した「レバレッジETF」が人気になったりもしていますね…
でも何事も言うは易し行うは難しです。
冷静に考えたら、日本で米国株投資が注目され始めたのはここ数年、個人投資家が気軽に投資できる環境が整った(ネット証券の取り扱いが増え、ETFやインデックスファンドが増えた)のはこの10年程度の話です。
つまり、再現性が高く間違いのない投資とされているインデックスファンドへの積立投資も、実際にその方法を20年、30年という長期で行い、資産を築いた人は(少なくとも日本人では)ほとんどいないはずです。
なのに「投資は簡単」「継続すれば必ず資産が増える」「これで間違いない」といった話が溢れています。
もちろん、ただインデックスファンドに積立投資を続ければ、ほとんどの場合資産は増えるでしょう。でも、ITバブル崩壊からリーマンショックの終わりまで、米国株は13年間も横ばいでした。その間には30%以上の暴落が2回も発生しています。そんな中で何年も倹約を続け、資産形成を続けるなんて、”簡単に”できるのかはそれこそ20年、30年後にしかわかりません…
個別株投資を行い、市場平均以上のリターンを狙うなら難易度は更に跳ね上がります。
投資家は世界中にいて、中にはノーベル賞級の頭脳を持った人もいるでしょう。投資歴30年以上の猛者もいるでしょう。職業として一日8時間以上、寝ている時以外は常に投資について考えているような人もいるでしょう。
彼ら全員の合計が市場平均なのです。つまり、市場平均以上のリターンを得るということは、彼らに打ち勝つということです。簡単なわけがありませんね。
ハワード・マークス氏は、優れた投資家には「二次的思考」があると言います。
様々な企業をリサーチする中で「この企業は伸びる!」「この企業は割安だ!」というものを見つけるのはそこまで難しくありません。
でもそれはまだ「一時的思考」です。
「二次的思考」を持った人は、「なぜこの企業が伸びるのに、まだ株価が伸びていないんだろう?」「なぜこの企業は割安で放置されているのだろう?」と考えます。
もしその企業が本当に伸びるなら、世界中の頭脳明晰な投資家が注目して、株価はすぐに高すぎる水準まで行くはずです。
もしその企業が本当に割安なら、世界中の頭脳明晰な投資家が注目して、株価はすぐに割安じゃない状態まで上がるはずです。
つまり、可能性としては、世界中の頭脳明晰な投資家より先にその企業を発見することができたか、もしくは自分には見えていないリスクがあるということです。
世界中の頭脳明晰な投資家が四六時中、上がる株を探しているのに、それより早く自分が上がる株、割安な株を見つけ出せるなんて考えにくいので、見えていないリスクがあると考えたほうがまともですね…
ハワード・マークス氏は良い株を見つけた時、次のように考えるようアドバイスしています。
- 割安な株を見つけたら「なぜ世界中の何千もの投資家がその株を買わないのか?」と問いかける
- リスクに対してリターンが大きくなる株を見つけたら「自分は何か隠れたリスクを見逃していないか?」と問いかける
- 売買が成立したら「自分はこの企業の株が割安だと考えているのに、なぜ相手は自分にこの株を売ってくれたのだろう?」と問いかける
この問いかけは大切ですね。当たり前過ぎて忘れがちですが、僕たちが株を買ったということは、どこかに売った人がいるはずです。僕たちはこれからこの株が上がると思っているから買うわけですが、売った人はそう考えではないということ。相手がバカなのでしょうか?でも相手は百戦錬磨も機関投資家かもしれませんよね。
投資プロセスを単純なものだと感じている人は、概して二次的思考の必要性、あるいは二次的思考というものが存在すること自体に気づいていない。誰でも投資で成功できると勘違いしているものは多いが、みなが成功できるわけではない。ただ、一時的思考をするものが多ければ多いほど、二次的思考をするものが享受できるリターンが増えるというメリットもある。常にすぐれた投資リターンを達成するには、後者の仲間入りをしなければならない。
– 投資でいちばん大切な20の教え
ここから先を読む前に、本書から引用した上記の文章をしっかり読んでください。
「投資は難しい」という前提を認識した上で、「じゃあどうすれば投資で成功できるのか?」を考えていくことが重要です。
次に「本質的価値」について紹介しますが、投資は簡単だと勘違いしたままだと「数年分の決算書さえ読み込めば本質的価値はすぐに分かる」などとまた勘違いをしてしまいます。
本質的価値に注目する
投資で確実に成功するには、まず最初に本質的価値を正確に計測することが不可欠だ。さもなければ、投資家として成功しつづけるという夢は、夢のままで終わってしまう。
ハワード・マークス
もっともシンプルな投資の原則は「安く買って高く売る」ということです。100ドルで買った株を120ドルで売ったら20ドルのプラスになる。この原則に従えば、誰が見ても確実に投資で成功することができます。
問題は、何に対して「安い」「高い」を判断するのかです。
もちろん答えは一つではありません。テクニカル派の人であれば、「50日移動平均線」に対して安い、高いが重要だと言うかもしれません。
ですがここでの答えは「本質的価値」に対してです。
以前Intro Booksで紹介した「バフェットの財務諸表を読む力」は財務諸表から企業の本質的価値を分析していましたね。ハワード・マークス氏も「ウォール街のランダム・ウォーカー」の著者バートン・マルキールさんと同じく、テクニカルやモメンタムで長期に渡って勝つことはできない、としています。
本質的価値を軸においた投資手法は「バリュー投資」と「グロース投資」に分けられます。
バリュー株、グロース株というと全く逆の投資手法のように思えますが、ハワード・マークス氏が言うには、見ている時間軸が違うだけで、本質的価値を軸に置いているという点で同じなのだそうです。
・バリュー投資家は、たとえ本質的価値が将来的にほとんど増大しないとしても、現在の本質的価値が現在の株価と相対比較で見て高いと確信すれば、その株式を買う
・グロース投資家は、たとえ現在の本質的価値が現在の株価と相対比較で見て低くても、将来的に十分な利益を生み出すほど本質的価値が急増すると確信すれば、その株式を買うしたがって、どちらのアプローチを採用するかは、割安感と成長性のどちらかではなく、今日の本質的価値と明日の本質的価値のどちらを重視することではないかと私は考える。
– 投資でいちばん大切な20の教え
そしてハワード・マークス氏は「本質的価値を下回る価格で買う」こと、つまりバリュー投資が投資で成功するためにもっとも信頼性の高い方法だと言います。本質的価値を下回る価格の株を見つけて買うことができたら、後は市場が本質的に気付くだけでいいからです。
とはいえ、想定以上に長い間、市場が本質的価値に気づかない可能性もありますし、時間が経って企業の競争力が低下し、本質的価値が下がるかもしれません。また、もっとも高い可能性として、自分の見立てた本質的価値が間違っている場合もあります。
ですが、本質的価値の増大に賭けるグロース投資は、話題になりやすく、将来の成長性はすぐに織り込まれてしまう場合がほとんどです。また、将来の見立てが間違っていた時に大きなダメージを受けてしまう可能性もあります。
また、現在、過去の数字を元に本質的価値を割り出すより、まだ実現していない将来の本質的価値を推測するほうが間違う可能性が高いのは言うまでもありません。
本書では本質的価値の見極め方について、具体的な数式や方法を教えてくれているわけではありません。それらは「バフェットの財務諸表を読む力」のような専門書がたくさんあるので、それらで学んでいきましょう。
リスクを理解しコントロールする
私の考えでは、すぐれた投資家はリターンを生み出す能力と少なくとも同じくらい、リスクをコントロールする能力を持っているという点で卓越している。
ハワード・マークス
ハワード・マークス氏は「投資とは未来に対処すること」だと言います。将来のことが分かる人などいないので、投資には必ず不確実性、つまり想定通りにいかないリスクがあります。
リスクを理解して投資することは非常に大切で、本書では「リスクを理解する」「リスクを認識する」「リスクをコントロールする」という3つに分けて解説してくれています。
投資の世界では、リスクとはボラティリティ、つまり価格の変動性や将来の不確実性を意味しますが、ハワード・マークス氏はもっと現実的に「資産を失う可能性」だと言います。
投資の世界ではリスクとリターンは常に比例する、と言われますよね。それはある意味その通りなのですが、これを曲解して高いリターンを得るには高いリスクを取らなければならない。そして高いリスクをとれば、高いリターンが得られる、と解釈されてしまうことがあります。
でもこのロジックは完全に破綻しています。リスクが高いものが高いリターンを生むなら、結局それはリスクが低いことになるからです。
ハワード・マークス氏はリスクとリターンの関係性について「リスクの高い資産は、資本を引きつけるために、より高いリターンの見込み、期待を提示しなければならない」としています。
つまり、リスクとリターンは比例するというのはある意味正しいけど、それは高いリターンを期待させないとリスクが大きいものに誰も投資してくれないからで、実現する可能性はまったく関係ないということです。
本書ではリスクのいろいろな種類や、リスクが生じる仕組みについても触れてくれています。でも、大切なことは「発生しなかったからと言ってリスクが存在しなかったわけではない」です。
例えばある投資によって資産を10倍に増やすことができたとします。素晴らしい成績ですが、この投資にリスクがなかったわけではありません。
10分の1の確率で10倍に成長し、10分の9の確率で倒産しゼロになる。もしそうなら、この投資の期待リターンはゼロ。たまたまうまく行っただけで、成功した投資とは言えないんです。
ハワード・マークス氏は「欠陥住宅は地震が来るまで分からない」という言い方をしています。確かに、結果的に地震が来ず、欠陥住宅で快適に過ごせるかもしれませんが、欠陥がなくなったわけでも、本質的な安全性があるわけでもありませんよね。
そしてリスクはあくまでも将来に対する可能性なので、正しく評価することはできません。結果的に10倍になった株が、どれだけのリスク(株価が上がらない可能性、低迷する可能性、倒産してすべてを失う可能性)があったのかを後から知ることはできないからです。
もう一つ、リスクに対する面白い特徴を紹介すると、リスクはほとんどの場合、一般的な認識と逆に動くということです。
なぜなら、
- 誰もがリスクが高いと考えている資産は誰も買わないから価格が下がり、リスクがほとんどない水準まで低下する
- 誰もがリスクが低いと考えている資産は多くの人が投資して価格が上がり、リスクも上がってしまう
からです。
つまり、みんながハイリスクだと考える企業の株価は、どんどん下がっていきますよね。そしてもし、企業の現在価値と時価総額がイコールになれば、実質リスクゼロになります。一方、みんながリスクが低いと考えて株価が上がっていけば、本質的価値を超えてどんどんリスクが高くなっていきます。
サイクルを認識する
ほとんどすべてのものにはサイクルがある、と肝に銘じることが必要不可欠だと思う。確信をもって言えることはあまりないが、これだけは確かだ。いつだって、振り返れば物事はサイクルに従って動いている。ひたすら一方向に動き続けるものなどない。
ハワード・マークス
市場のサイクルについては聞いたことがある人も多いと思います。その仕組を本書では次のように説明しています。
- 経済が好調期に突入する
- 金融機関が繁盛し、資本基盤を拡大する
- 悪い材料が見当たらず、リスク回避志向が消える
- 金融機関が資金供給の拡大に動く(投資資金が拡大する)
- 金融機関が競争のため金利や与信基準の緩和などを行う
ここまでが経済の上昇局面で、これが行き過ぎるとバブルが発生します。企業が設備投資に積極的になり、個人は借金して家や車を買い、余剰資金のほとんどをリスク資産(株など)に投じます。当然、緩和された基準で投資した結果、失敗するプロジェクト、返済の遅れなどが増え始めます。
- 損失を出した金融機関が融資を消極化させる
- リスク回避志向が強まり、金利の上昇、与信基準の厳格化などが起きる
- 投資できる資本が縮小する
- 資本不足に陥った企業のデフォルトや倒産が起きる
- 経済が不景気に突入する
そしてこの時、融資や投資は必要最小限、優良案件に厳選して行われるため、その多くが大きな成果を生みます。結果、経済が好調に転じ、、、最初に戻って繰り返す、、というわけです。
経済全体では上記のようなサイクルですが、投資の世界ではもっと単純です。
- 最初に、先見の明のある一部の人が状況が良くなると考え始める
- 次に、多くの投資家が実際に状況が良くなっていることに気付く
- 最後に、すべての人が状況が永遠に良くなり続けると思い込む
これが強気相場で、弱気相場も順番は同じような感じで起こります。
- 最初に、先見の明のある一部の人が良い状況が永遠には続かないことに気付く
- 次に、多くの投資家が実際に状況が悪くなっていることに気付く
- 最後に、すべての人が状況が悪くなり続けると思い込む
ここで大切なことは「今サイクルのどこにいるのか?」を考えることです。サイクルの大きさや期間を完全に知ることはできませんが、ある特定の動きが永遠に続くと考える投資家は、いずれ資産を失います。
米国株は2008年、リーマンショックの底から一方通行で上がり続けてきましたね。誰もが「米国株最強!」と叫ぶ今、強気相場の最終段階のような気もします…
逆張りを学ぶ
みんながどん欲な時に恐怖心を抱き、みんなが恐怖心を抱いている時にどん欲であれ。
ウォーレン・バフェット
リスクとサイクルについての項目を深く読むと、一つ大きな事実が見えてきます。
それは、多くの人と同じ考え方で投資で成功することはできない、ということです。
みんながリスクが高いという銘柄は、結果的にリスクが低くなります。
みんながリスクが低いという銘柄は、結果的にリスクが高くなります。
みんなが状況が良くなり続けていると考える時は、強気相場の最終段階です。
みんなが状況が悪くなり続けていると考える時は、弱気相場の最終段階です。
当たり前のことですが、株価が上がるには高値で買う人がいないといけませんし、下がるには安値で売る人がいないといけません。ほとんどの人が同じことを考えた時に、その流れが終わるのは当然ですね。
ハワード・マークス氏は素晴らしい投資成績を上げるために重要な要素は2つだと言います。
一つは、他の人が気づいていない、あるいは評価していない資産の価値に目を向けること。つまり、本質的価値に対して低く評価されている銘柄を探すことです。
そしてもう一つは、その資産の価値に市場が気づくまで持ち続けることです。
「落ちるナイフは掴むな」という投資の格言があります。下落相場の途中で手を出すのではなく、落ちきって価格がでもこれも矛盾した、現実にはほとんどありえないことです。
なぜなら、みんながナイフが落ちる(株価が下がる)まで待っていたら、そこまで株価が下がらないからです。
つまり、逆張り投資とは「今は下落している。落ちるナイフは掴むなの格言に従おう」とみんな考えている時に、果敢に投資することなのです。
ただ下落している銘柄に投資するのが逆張りではありません。リスクとサイクルを理解し、大衆の逆を行くのが逆張り投資です。
本質的価値を間違えない限り、みんなが売っている時に買うことができれば、もっとも小さなリスクでもっとも高い利益を上げることができます。
そして本当の掘り出し物、大化け株は、
- あまり知られておらず、十分に理解されていない
- 一見してファンダメンタルズに疑問がある
- 人気がなく、リターンが低迷している
ような銘柄の中にしか存在しません。
TwitterやYouTubeで話題になっている株に手を出しちゃう人も少なくないみたいですが、そんなところに大化け株はほとんどないということですね…
ディフェンシブに投資する
経験豊富な投資家がいる。大胆不敵な投資家がいる。しかし、経験豊富で大胆不敵な投資家はいない。
ハワード・マークス大きな過ちを犯さないかぎり、投資家が正しく行わなければならないことはほとんどない。
ウォーレン・バフェット
ハワード・マークス氏の言葉は、大胆不敵、つまりリスクを取ってアグレッシブに投資する人は、いずれ市場から退場するということを意味しています。
ウォーレン・バフェット氏の言葉も同様で、大きな過ちを承知で大胆不敵に投資することを戒めています。
個人投資家の最大の強みは、時間です。機関投資家は四半期、年間のリターンで評価され、給料が決まるので、どうしてもアグレッシブにならざるを得ません。
でも僕たち個人投資家は、例えば老後資金が目的であれば老後まで、人によっては何十年も時間をかけて、最終的にリターンが出ればOKです。
だからいちばん大切なことは、リターンを上げることではなく、間違いを犯さないこと。特に、一発で市場から退場を迫られるようなハイリスクな投資を避けることです。
本書ではサイモン・レイモー博士の著書「負けないテニス」の分析を紹介しています。
これは、プロのテニスプレーヤーが、相手が打ち返せないほど強く正確なショットを多く打ったほうが勝つ「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスプレーヤーはミスが多かったほうが負ける「敗者のゲーム」であると分析したものです。
つまり、勝つ方のプレイで勝負が決まる「勝者のゲーム」と、負ける方のプレイで勝負が決まる「敗者のゲーム」ですね。
言い換えると、多くの得点を獲得したら勝利するのが「勝者のゲーム」、失点が少ないほうが勝利するのが「敗者のゲーム」です。結果的に同じ意味に聞こえますが、プロセスは全く違いますね。
これは「投資の大原則」の共著者であるチャールズ・エリス氏の著書「敗者のゲーム」の由来にもなっています。
勝負が「勝者のゲーム」になるか「敗者のゲーム」になるかは、勝敗を決める要素をどこまでコントロールできるかにかかっています。
プロのテニスプレーヤーはどこに打ち返すか、どう打ち返すかをかなり正確にコントロールできるため「勝者のゲーム」になりますが、アマチュアの場合、コントロールできる範囲が小さいので「敗者のゲーム」つまりミスが少ないほうが勝てるのです。
では、投資はどうでしょうか?
投資という勝負において、投資家がコントロールできることはなにがあるでしょう。
実際には「何にいくら投資するか?」以外コントロールできることは全くありません。経済全体の流れも、政府の金融政策も、各国の経済政策も、そして投資した企業の経営者や従業員の能力、ライバル企業のイノベーション、そして世界中の他の投資家の思惑や行動…
投資家は株価に大きく影響するこれらを一切コントロールできません。
つまり、投資はアマチュアのテニスと同じく「敗者のゲーム」だと言うことです。
だから僕たちが考えるべきは「どうやって点数を取るか」つまり上がる株を見つけるか、ではなく、「どうすればミスを防ぐことができるか」つまり、悪い銘柄に投資せず、市場全体が停滞するような期間を避けることができるか、です。
強気相場に浮かれた投資家は10年後消える
ということで今回はハワード・マークス氏の「投資で一番大切な20の教え」を紹介しました。
では最後に、今回紹介した中でも特に印象的だった部分を抜き出しておきます。僕は定期的にこれらを見直して、勘違いした大衆投資家にならないよう、自分を戒めたいと思います。
言われてしまえばその通りですが、忘れがちですよね。僕が買い注文を出し、約定したということは、誰かがその価格で売ったということです。
僕は買いだと思っているのに、相手は売りだと思っている。同じ株を取引しているのに、解釈が全く違っています。そして、相手は百戦錬磨の機関投資家、ITバブルの前から市場に参加している熟練投資家かも知れません。
・なぜ相手はこの銘柄を売ったのだろう?
・自分が見落としているリスクはなんだろう?
・相手に見えていなくて、自分に見えている要素はなんだろう?
株を取引する度、こうしたことを考えていきたいですね。
これも言われてしまえばその通りなのに、ハッとさせられました。
僕たちはよく「この銘柄はリスクが高そう」「こっちはリスクが低いだろうな」といったことを考えますが、その考えは常に逆転させる必要があります。
「この株は上がる!」という情報にあふれています。そうした銘柄は多少割高な気がしても投資すべきのように思えますが、実際には期待リターンがどんどん下がっていることに気づかないといけません。
注目されればされるほど、株価が上がり、その分、成長が実現した時の期待リターンも下がります。そして、もし成長が実現しなかった時の下落リスクはどんどん高まっています。
注目銘柄に投資するのは、そうとう考えないといけませんね…
これも当たり前なのですが、高いリターンを上げる投資家がすごいのではありませんよね。本当はその企業の経営者や従業員がすごいのであって、投資家は別に株を買っただけで何もしていません。
投資家は、株を選ぶ以外、コントロールできることが一切なく、他の全ては政府や経営者、業界の動向や経済の流れに左右されます。
「俺は勝てる投資家だ」という考えがいかに見当違いかよく分かりますね。
分かってはいても、高いリターンを生む大化け銘柄を探してしまい、高いリターンを出したら自分がすごいと勘違いしてしまうのが投資家の性でしょうか…
本書の特徴は具体的なところをできるだけ省き、大切な考え方や概念にフォーカスしているところです。だから10年近く前の本なのに全く古さが無い。たぶん30年後に読んでも勉強になります。
そして米国株の強気相場が10年以上続き、多くの人が「米国株は上がり続ける!」と考えている今こそ、熟読すべき一冊だと思います。
この記事を書いた人
- かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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