【Z世代マーケティング】本当に必要?現役マーケター解説

【Z世代マーケティング】本当に必要?現役マーケター解説 ビジネス・マーケティング
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

こんにちは。夫です。

夫

僕は広告・マーケティング関係の仕事をしているので、話題のマーケティング本はだいたい目を通すようにしてます。そんな中、今回取り上げるのは「Z世代マーケティング」中田敦彦のYouTube大学でも紹介された話題書ですね。

話題書なので僕も早速読んでみたのですが、僕の中ではちょっと意外な結論にたどり着きました。それは「Z世代マーケティングなんて存在しないんじゃ?」「そもそもZ世代という言葉自体、上の世代のアレルギーから生まれてるんじゃない?」というもの。

夫

なぜそう感じたのか、本書の内容を紹介しながら僕の経験なども踏まえて見ていきたいと思います。Z世代マーケティングを否定するような結論にたどり着きましたが、それは本書の内容が微妙だったわけではないです。Z世代というものを捉えるのには最適な一冊。マーケティング実務にも普通に役立ちます。

・Z世代とはなんなのか?数々のデータやインタビューからZ世代理解の解像度が上がる
・リーダー層はこれから(顧客として、部下として)社会に出てくるZ世代とどう関わるべきなのか?そのヒントが得られる。
著者のジェイソン・ドーシー、デニス・ヴィラは世代研究・コンサルティング企業CGKの共同設立者。65の国と地域で質的・量的研究を行い、等身大のZ世代を様々な角度から研究した結論として「従来の一般的なマーケティングや人材採用、マネジメント手法はZ世代相手に通用しない」と考え、ビジネスリーダーの育成などに取り組む。

Amazonで購入

Z世代の定義

夫

ということで早速本書の内容に入っていきますが、そもそもZ世代とはなんだ?ということを話すために、世代ごとのおよその生年を見てみましょう。

Z世代マーケティング:各ジェネレーションの生年

Z世代マーケティング:各ジェネレーションの生年

これが本書「Z世代マーケティング」で提唱されている各世代の分類です。世代をどう分類するかにはいろいろな定義があり、日本の人材会社ビズリーチの記事では次のように定義されていました。

ビズリーチ:日本と欧米の世代論

ビズリーチ:日本と欧米の世代論

夫

「何年生まれはZ世代」と明確に区切る年があるわけではないですが、2022年現在で言えばおおよそ10歳から26歳くらいがZ世代というわけですね。僕が普段一緒に仕事している人もZ世代が増えてきました。ちなみに僕はY世代の後期です。

本書はこの世代を「Z世代」と定義して、そのZ世代を研究していますが、生まれた年だけではっきり区別できるわけではないとも言います。Z世代、Y世代などの枠組みは、傾向が異なる人々を理解するためのヒントでしかありません。
つまり「Z世代だからこう」というわけではなく、あくまでも「もちろんY世代で同じ傾向を持つ人もいるが、Z世代と呼ばれる年代の人にはより顕著にこうした傾向がある」のような形で考えてください。

世代による違いが生まれる理由

ではそもそも、なぜ世代によって異なる価値観や購買傾向があるのでしょうか。
その理由はシンプルで、社会的に大きな出来事を経験したかしていないか/経験したとしてその時どういう立場だったのかといったことが、その人の人格形成に大きく影響するからです。

例えばZ世代の多くは9.11同時多発テロの記憶がありません。9.11の時に大学生だった人は、おそらく9.11によって人生が変わったでしょう。テロと戦い続けるという決意を持ったことはもちろん、社会の混乱の中でキャリア選択にも影響したはずです。

また、Z世代の多くはリーマンショックの時、まだ実質的な購買力を持っていない0才〜10代前半でした。一方その頃30代でようやくマイホームを持ったという人にとっては大きな衝撃で、マイホームを失ったり、ローンに苦労したり、職を変えたりといった影響があったはずです。

夫

こうした社会的に大きな出来事がその世代の特徴を作るんですね。思春期の頃にiPhoneに衝撃を受けた僕たち世代にとってアップルはどこまでも特別な存在ですが、僕より下の世代になるとアップルってものすごく身近な存在なんですよね。

また、2020年に始まったコロナ禍も世代によって全く違った印象があります。テクノロジーに不慣れな50代は急激な変化に戸惑い、状況が変わってもパフォーマンスを発揮できる30、40代にとってはキャリアアップのチャンスになり、まだ仕事を覚えていない20代にとっては孤独感や不安を覚えから手探りで仕事に望んでいたでしょう。

夫

この経験は10年、20年経っても残ります。コロナ禍をチャンスに変えた30、40代は1人でも問題なく仕事ができた経験からフリーランスなどに転身する人が増えるかもしれません。入社直後からテレワークで仕事を覚える、人間関係を作ることに苦労したZ世代は、10年、20年後にはものすごく面倒見のいい上司になっているかもしれません。

Z世代の特徴

Z世代が生きる社会的状況

ここからはZ世代の特徴をさまざまな角度から見ていこうと思いますが、まずは社会的状況です。本書はアメリカを中心にした傾向なので、日本のZ世代について考える時はまた別のデータが必要になりそうです。

まず、Z世代は9.11同時多発テロを歴史上の出来事としてしか知りません。アメリカが膨大な軍事費を注ぎ込み、遠く離れた地域でテロと戦い続けている理由も、知識として知っていても自分の感情、体験とは結びついていません。

夫

大混乱だった米軍のアフガン撤退。アメリカでは避難殺到でバイデン大統領の支持率が大きく下がりましたが、Z世代はどう感じたんでしょうね。

他にも象徴的な出来事が2008年、オバマ大統領が初の黒人系として当選したことです。他にもここ数年ではセクシャルハラスメントや性的暴行の被害体験を告白・共有する「#Me Too運動」や黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える「BLM」、各州で次々と同性婚が合法化されるなど、多様性に関する変化を思春期に体験しています。

もちろんリーマンショックとその後の株高も印象的な出来事でした。親世代がリーマンショックの不況で仕事を失い、学費や家のローンで苦労するのを見る一方、歴史的な株高やビットコインバブルで大金持ちになる人もいました。
後述しますが、こうした経験からZ世代はお金に保守的で、若い頃から老後の資産形成に積極的になっています。

テクノロジーと超動画嗜好

Z世代の95%は週1回以上ソーシャルメディアを利用し、1%は30分スマホから離れていると落ち着かず、男子26%、女子33%が1日10時間以上スマートフォンを使っています。

そんなに長時間スマホを触って何をしているかというと、動画試聴です。
Z世代はGoogleでテキスト検索する代わりにYouTubeで検索し、エンタメを見るのはもちろん、化粧やファッション、スキル習得、学校の勉強にまでYouTubeを使っています。

夫

もちろんSNSにもかなりの時間を使っているのですが、驚いたのは「写真にタグ付けしない、いいねしない」という行為が無視と同義で、友達かどうかはSNSの反応で決まると考えているZ世代も多いそうです。

SNSによるメンタルヘルスもZ世代独特の問題として紹介されています。Z世代の42%はSNSが自己評価に影響し、39%は自尊心に、37%は幸福感に影響すると答えているそうです。さらに、46%がインターネットテクノロジー全般がメンタルヘルスに悪いと考えているそうです。

夫

スマホが発明されなければよかったと考えているのも、Z世代では34%にのぼります。テクノロジーが進歩して便利になったと思いきや、そのテクノロジーの負の側面を思春期に味わっているのもZ世代なんですね。ちなみに僕は1年くらい前に個人SNSアカウントを全部閉鎖。コロナ禍で飲み会の誘いが減りましたが、人生の満足度は上がった気がします笑

Z世代のお金と資産形成

Z世代の親世代はリーマンショックの不況で苦しんだ世代。職がなくなり経済が落ち込む中、多額の学費や住宅ローンに頭を悩ましていました。だからこそZ世代はお金に対してシビアです。Z世代の12%がすでに老後のための貯金・投資を始めているそうですが、Z世代の大半が10代であることを考えると驚きですね。
また、まだ貯蓄を始めていないものの、状況が許せば最優先で取り組むべきと考えているのが69%です。

借金はなんとしても避けるべきと考えているのが23%、大学進学についても70%の人が学費ローンではなく、在学中に働いたり、奨学金を使ったりして資金を工面しているそうです。

夫

ネット証券が増えて投資のハードルも下がってきたので、その辺も影響しているのかもしれませんね。ちなみに若い人がメインで使っている印象のネット証券ですが、利用経験の割合でいうとやっぱり40代以上の方が多いようです。

他にも、車や住宅といった大きな出費についても他の世代とは違う傾向があるようです。Z世代の多くはライドシェアが普及し、公共交通機関でスマホ決済できる時代に生きているので、車の所有欲はそこまでありません。所有するとしても中古セダンのようにリセールバリューがいいものを選ぶそうです。

夫

一方で、住宅については91%がいつかマイホームを持ちたいと考えているそう。といってもZ世代の多くはまだ住宅について真剣に考える年齢ではないので、このデータは世代というより単純な年齢によって変わってきそうですね。

Z世代マーケティング

ここまではZ世代の特徴について見てきましたが、ここからはZ世代に対するマーケティングについて考えてみましょう。

Z世代が企業に期待する3つのこと

まずはZ世代が企業に期待する3つのことです。

  • 出費に値する価格:リーマンショック後にお金を使うことを覚えたZ世代は年齢の割に保守的で値段に非常にシビア。セールやリユースに抵抗がない(たとえお金をたくさん稼いでいても)。ただし品質が低いものは許さない。ナイキやアディダスのように価格が高くてもそれに見合う価値を提供してくれるものを選ぶ。
  • パーソナライゼーション:Z世代の24%が紙の新聞を読んだことがない。上の世代がパーソナライゼーションに対し不快感、不信感を持つのとは対照的に、コンテンツも広告もパーソナライゼーションされているのが当たり前。44%は自分の探しているものを事前に理解していないウェブサイトからは離脱する。
  • 社会的責任:企業が社会的立場を表明するブランド広告(企業の貧困援助や寄付など)を当たり前に目にしてきた。企業は利益追求だけでなく、世の中に役立つことを示すべきだと考えている。SNSで企業活動が透明化されているため、ただブランド広告を打ち出すだけでは不十分で、社会的責任を企業文化にまで染み込ませる必要がある。

1つ目の「出費に値する価格」と3つ目の「社会的責任」は他の世代にも同じことが言えると思います。社会的責任を重視する動き自体は半世紀前からありましたし、どの世代も出費に対して価値と価格のバランスを注視しているはずです。インターネットの進歩によって情報が得やすくなり、若い世代の方がお金に関するリテラシーが高いという傾向はあるかもしれませんね。

2つ目のパーソナライゼーションも僕自身が広告・マーケティング関係の仕事をしてるので強く実感しますが、Z世代に限らず広い世代に言えることです。

夫

僕は普段の仕事で50代以上がメインターゲットのプロモーションをすることがありますが、やっぱりパーソナライゼーションされた施策の方が費用対効果が高い。50代以上だからテレビや新聞のブランディング広告でいいや、なんて考えるマーケターはとっくに絶滅してると思います。

つまりこの3つに対しては、Z世代に対するものというより、2020年代におけるマーケティングトレンドだと思います。Z世代はこう、他の世代は違う、と考えてマーケティングをすると痛い目に合いそうですね。

Z世代版カスタマージャーニー

続いてはZ世代版カスタマージャーニーを見てみましょう。

夫

カスタマージャーニーというのは、潜在顧客が優良顧客になるまでの一連の流れを図式化し、各接触ポイントごとのマーケティング施策を考えるもの。僕もよく作ります。

ITmedia:カスタマージャーニーの例

ITmedia:カスタマージャーニーの例

本書ではZ世代のさまざまな特徴、購買傾向から、Z世代に特化したカスタマージャーニーの一例を教えてくれています。

  1. ポジショニング:Z世代は商品を検討する前にブランドの立ち位置(理念、ストーリー、世の中との関わり方)を知ろうとする。売れた帽子と同じ数の帽子を小児がん患者に贈るアパレル企業がZ世代から大きな支援を得る。
  2. エンゲージメントと認知:商品が自分に合っていると認識させる必要がある。以前のテレビCM、雑誌広告、屋外広告などではエンゲージメントと認知が得られない。ハウツー動画など購買を度外視した関係構築が求められる。
  3. 初回トライアル:Z世代に対しては特に手軽でリスクの低い購買体験が重要になる。ワンクリックで購入&返品できることが常識になっている。Z世代の96%がいい返品体験をしたショップでまた購入したいと答えている。
  4. ブランドロイヤルティ: Z世代が期待する有形体験(価値、手軽な購入、返品等)と無形の感覚(ブランドのポジショニングなど)を整合的に届けること。購入に関わるさまざまな体験は品質よりも重要。
  5. リファラル:Z世代は購入も体験もせずに製品・サービスについてSNSで話すことがある。「この新モデルすごくいい」など。企業はそうしたSNS上の動きに反応することが求められる。また購入前、購入後のいずれにおいてもシェアしたくなる仕組みを持つことが重要。

これがZ世代版カスタマージャーニーですが、いかがでしょう?マーケティングについて勉強されている方なら、従来のカスタマージャーニーから組み合わせ、言葉のチョイスを変えただけであることがわかると思います。

夫

ストーリー、ナラティブによるポジショニングが重要である、購買体験のリスクを下げることが重要など、かなり当たり前のことですよね。

僕の個人的な感覚ですが、Z世代版カスタマージャーニーも、Z世代が企業に求めることと同じく、おおよそどんな世代に対しても言えることなんじゃないかなと思いました。
ただしそれは本書で提唱されていることに価値がないわけではありません。Z世代版カスタマージャーニーというより、スマホ・SNS時代のカスタマージャーニーなんじゃないかということです。

Z世代に特化したマーケティング施策は不要

ということで今回は「Z世代マーケティング」を紹介しました。

夫

本書ではさらにZ世代の働き方について触れ、これからZ世代を部下に持つリーダーのためのアドバイスもたくさん書かれています。こっちはマーケティングに限らず、全ての人が知っておくべきことだと思うので、ぜひ読んでみてください。

今回、Z世代マーケティングを読んだ僕の結論としては「Z世代に起こっている変化の多くはZ世代だけでなく、全世代に対して起こっている」つまり「Z世代という枠組みで考えるのではなく、全世代向けの”時代”と捉えた方がいい」ということです。

夫

例えば「パーソナライゼーション」というのは、多くの世代にとっても当たり前になっています。今時「アマゾンのおすすめが的確すぎて気持ち悪い!」とかいう50代も少ないでしょう。もちろん日常的にアマゾンを使っている割合が多いのはZ世代だと思いますが。

Z世代に特有の傾向を生んださまざまなイノベーションや社会的出来事は、当然ですがZ世代以外も経験しています。その経験を多感な思春期の頃にするか、大人になってからするかではもちろん影響の度合いは違うでしょうが、Z世代だけが体験していることというのはほとんど存在しません。

夫

企業の社会的責任を追求する動きもZ世代のものではなく、むしろ今お金を持って社会で活躍している世代の動きですよね。そうした人たちの動きが、Z世代には当たり前になっているというだけで、決してZ世代が生んだムーブメントではありません。

こうしてテキストで書くと難しいのですが、僕の感覚としては、年齢によるライフステージの差はもちろんあるものの、それ以外のものは世代というより時代の影響が大きいと思います。
つまり、就職しているか、マイホームを持っているか、結婚しているか、子どもがいるか、など年齢によるライフステージが違えば、価値観や購買傾向は違ってくるでしょう。でもそれはZ世代だからというものではありません。Z世代も30代、40代になれば同じような価値観、購買傾向の変化が生まれてくるはずです。

一方、社会的な出来事やイノベーションによって生まれた変化は、全ての世代、同じ時代を生きる全員に共通する変化です。もちろん、60代と10代ではイノベーションに対する感度は違うでしょうが、いまや60代でもスマートフォンを使いこなし、アマゾンで購入し、スマホ決済を使っています。
資産形成においても、60代は窓口で、Z世代はネット証券で、みたいな違いはありません。60代はこれまで窓口しか選択肢がなかったから窓口を使っていただけで、ネット証券が利用できるようになった今、次々ネット証券に移しています。

夫

このように考えると、Z世代マーケティングなんてものが本当に存在するのか?企業戦略としてZ世代とそれ以外のように分ける意味があるのか?疑問に思いませんか?

Z世代に対しては今回紹介した新しいカスタマージャーニーを使い、他の世代には古いカスタマージャーニーを使うというのは、賢いマーケティング戦略ではないと思います。
実際、僕は60代にマーケティングする時も、ネット広告を中心に本書で書かれたZ世代版カスタマージャーニーのようなものを使っています。

夫

ということで僕の結論としては、本書を読んで学ぶことは多いけれど、それがZ世代にしか当てはまらないと考えてしまうのは大きな間違いになる、ということです。あなたはどう思いましたか?ぜひ本書を読んで考えてみてください。

Amazonで購入

コメント

タイトルとURLをコピーしました