銀行を淘汰する破壊的企業|2025年との付き合い方はこう変わる

ビジネス・マーケティング
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こんにちは。夫です。

今回紹介する本は山本康正さんの「銀行を淘汰する破壊的企業」です。

この方の本、「2025年を制覇する破壊的企業」が昨年話題になりました。読もう読もうと思っていたら、新しいのが出ちゃったので今回はそちらを読むことに。「2025年を制覇する破壊的企業」はテクノロジーによって世界を変える11社として、アップルやアマゾンなどを紹介。今回はその「金融」バージョンです。

僕は職種としては広告・マーケティング関連ですが、働いている会社は金融分野です。
かつ、本書の中には僕が投資している企業も登場します。

ということで、金融分野にも投資分野にも軽く足を突っ込んでいる僕の視点から本書を紹介していきます。

本書では銀行で働く人や銀行に対するアドバイスもありますが、そこまで深堀りしません。金融がこれからどうなっていくのか、それによって生活がどう変わるのか、そして、その未来で活躍する企業とは、という部分を紹介していきます。

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Google出身の金融専門家

本書の内容に入る前に、まずは著者、山本康正さんのプロフィールを簡単に。

ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、Googleに入社。金融機関に対し、フィンテックの導入やデジタルトランスフォーメーション推進支援などに従事。現在はフィンテックや人工知能を専門とするベンチャーキャピタリストでありながら、同分野へのコンサルティングも行う。京都大学大学院総合生存学館特任准教授も務める。

すごいプロフィールですね。ハーバードの大学院卒でGoogle出身。この時点で頭が上がりません…理学修士ということは、専門は金融やテクノロジーではなく、数学や物理、科学だと思います。専門外の分野でこれほどの活躍。超人ですね。

ちなみに、特任准教授を務める「京都大学大学院総合生存学館」というのはこういうところらしいです。

総合生存学館は、世界を変える精鋭が育つ教育研究の場であり、グローバル人材の育成を目指す5年一貫制の博士課程大学院です。 気候変動、災害、地域紛争、エネルギ−・食料・水、超高齢社会、貧困・格差、人工知能など、現代社会が直面する様々な課題に挑戦し、強い意志をもって解決策を実践する次世代型リーダーの育成を目指します。そのために、人文学、自然科学、社会科学、情報科学などの個別専門分野を統合、俯瞰する集合知を追究し、文理の壁を超えて人間および産業・社会システムの生存と未来開拓に関する新しい総合学術(統域科学)の創生を目指します。
京都大学大学院総合生存学館-HP

うん、よくわからないですが、すごいところですごい立場にいるということですね。

本を読むとき、著者のバックグラウンドを知ることは非常に重要だと思います。というのも、そこから本書の隠れたメッセージや、意図が見えてくるからです。

本書に書かれていることには、一見納得できないこともあると思います(大手メガバンクや地銀が淘汰されるなんて、だいたいの人はすんなり受け止められない)。
そんなとき、著者のバックグラウンドが役立ちます。山本康正さんは金融の専門家ではなく、物理や数学、そしてGoogle出身ということからテクノロジーの専門家であることがわかります。

僕も理系出身なのでそうなのですが、当然、数学や科学を尊重し、数学や科学が重要であると考えます。

山本康正さんもそうだと思います。

何が言いたいかというと、その人のバックグラウンドにあるものは、少し割り引いて見たほうが良いということ。本書に書かれていることに僕は納得しましたが、それは科学的な視点から見たら、です。人間的な視点で見ると、あと数年でそこまでの変化はたぶん来ないだろうな、、とも少し思っています。

ということで、本書の内容を見ていきましょう。
銀行や保険などを利用するユーザーとして気軽な気持ちで読んでください。もしあなたが金融機関に勤めている、金融機関に投資しようと考えているなら、本書を読んでくださいね。

すべての銀行手数料は無料に

もしこんな未来がきたら…と想像すると嬉しくなりますが、本書ではズバリ、2025年にはすべての銀行手数料が無料になる、と言います。

ここでキーになってくる企業は、Google、アップル、アマゾン、Facebook。通称GAFAです。

すでにGoogleやアマゾン、アップルなどが金融サービスに乗り出している事は知っていると思います。アップルペイは日本でも導入されていますし、まだ日本では使えませんが、アップルカードも始まりました。そのうちアップルバンクが登場する、というのは特に驚くことではありません。

なぜそうした企業は金融に乗り出すのか?
投資はビジネスの世界では「モート(堀)を築く」とも呼ばれますが、つまり圧倒的な参入障壁を築くためです。

アップルはすでにかなり深いモートを築いていて、顧客は簡単に乗り換えたりしません。しかし、もしさらに金融までアップルを使うようになれば、、、
給料がアップルバンクに振り込まれ、iPhoneに登録したアップルカードで買い物を行うようになれば、ちょっと新型のiPhoneが高いという理由でアンドロイドに乗り換えることはないでしょう。

一時期、Facebookが仮想通貨に参入しようとしていました(規制もあり今のところ実現していませんが)。Facebookが何をしたかったのか。仮想通貨で儲けたかったわけではありません。Facebookユーザーが、Facebookを使う、圧倒的な理由を作りたかったのです。
Facebookは極論、ただのアプリケーションなので、Facebookみたいなサービスを誰かが作って、圧倒的な資本投下でシェアを奪うことは可能です。一瞬でしぼんでしまいましたが、今年始めはクラブハウスがそうなるんじゃないかと話題になりましたね。

他のSNSでもそうですがもっと便利なもの、もっと面白いものが登場したらそちらを使うでしょう。アプリをダウンロードするだけです。つまり、Facebookにはモートがあまりない(圧倒的なユーザー数、これまで積み重ねてきた開発や特許などはモートと言えますが)。

モート、つまり圧倒的な参入障壁については、以前書いた「教養としての投資」で詳しく紹介してます。

でももしFacebookが発行する通貨を日常的に使うようになれば。
親が子どもに仕送りするときFacebook Messengerで「今月の分、送るね」といって送金できるようになれば。割り勘するとき「あとでMessengerで送っとくね」となれば。ちょっと便利な他のSNSが登場しても、Facebookを使い続けるでしょう。

つまり、2025年似銀行を淘汰する破壊的企業は、手数料収入が欲しくて金融に乗り出すのではないということです。

これは銀行手数料だけではなく、保険やローンなども同様です。
金融は規制や乗り換えハードル、実店舗など、強力なモートを持った産業です。GAFAを始め、テック企業が欲しいのは売り上げではなく、あくまでもモート。

ユーザーを囲い込み、自社製品やプラットフォームを使い続けてもらえるなら、手数料を無料にするくらい当然ということです。

本書ではさらに、銀行の3つの収益(貸し出し、手数料、運用)がどうなっていくのかや、先日IPOして話題になったロビンフッドが証券会社をどう変えていくのかなども語られています。投資している人間として、ゲーム感覚で投機されているロビンフッドは、認めたくないものの無視できないサービスです。

預金よりデータを持つ企業が金融を支配する

続いてはデータ。ソフトバンクの孫正義氏が「21世紀の石油」と呼んだアレです。
これまで、金融機関が持つ力は銀行なら預金額、証券会社なら運用額で測られていました。

菅総理が就任してから、地銀再生がなにかと話題になりますが、メガバンクが預金量でも店舗や地域性でも強くなりすぎて、地銀の存在価値が問われているんです。たしかに僕も地銀ってまったく縁がない…

しかし預金量が多いメガバンクも余裕綽々、とはいきません。孫正義氏が「21世紀の石油」データは、預金額よりも力を持っているんです。

わかりやすいのがローンと保険です。
アマゾンがローンや保健事業に乗り出したとしましょう。アマゾンが持っているもの、それは膨大な購入データです。
例えば、アマゾンで健康関連の本を何度も購入し、サプリメントやスムージーなどの定期便を購入し、ランニング用品シューズを定期的に購入していたら、かなり健康意識が高い人だということがわかりますよね。

この分野でわかりやすい取り組みがアップルの「Apple Watch」です。Apple Watchを着けていたら体温や心拍数など健康状態、運用状態が把握することができます。

そうしたデータをもとに、医療保険を提供できたら。
今よりもっと最適化された保険商品が、安い価格で提供できるでしょう。保険加入者の健康状態が悪化する前にアマゾンのおすすめにサプリやスムージーを表示することもできます。Apple Watchでそろそろランニングしようと通知することもできます。

TECHNOKING」で紹介したテスラは「テスラ保険」という自動車保険を提供していて、既存の保険より30%も安いそうです。テスラは走行データを細かく計測しているため、安全運転のドライバーには格安で保険を提供できるんです。単にゴールド免許か、過去の事故歴があるか、その程度の情報で判断している既存の保険とは大違いですよね。

銀行は24時間空いていて当たり前

午後二時前、オフィス街のATMには長蛇の列が…ちょっと現金をおろしたいけれど今日は日曜日。コンビニで数百円の手数料を払っておろす…支払い明細に書かれている「振込手数料はご負担下さい」の文字…

今では日常茶飯事のこうした出来事も、2025年にはほとんど目にしなくなるかもしれません。

この流れはすでに始まっていて、メガバンクもスマホアプリをリリースしていますし、三菱UFJ銀行は2023年までに40%の店舗を閉鎖する予定です。
実店舗を持たないネットバンクも増えてきています。

僕自身、三菱UFJ銀行やソニー銀行を使っていますが、つみたてNISAの移管を除いて何年も窓口に行っていませんし、ソニー銀行に至っては窓口が存在しません。余談ですが、保険もライフネット生命、スマホはラインモバイル。つくづく窓口とは縁がなくなりました。

厚生労働省も「給与のデジタル払い」を議論していて、2021年度中の解禁がありえるそう。もし解禁されたら、給料をPayPayで受け取ることが可能になるんです。

従来の銀行は窓口、つまり人が処理することを前提にしていたため、「当日振り込みは平日の14時受付完了分。それ以外の時間帯は翌営業日扱い」という制度になっています。

ですがそうした手続きはネットで完結しますし人が処理する必要もありません。現金である必要もないのでデジタルマネーの数字を動かすだけです。

つまり、銀行は24時間空いていて当たり前になる。銀行窓口は予約制になり、本当に必要なごくごく一部の業務だけをするようになる。そもそも銀行を仲介せず、〇〇Payや証券口座などに直接振り込みできるようになる。
そんな未来が、もうすぐそこまで来ています。

これはもうかなり来ています。僕自身、銀行の営業時間を気にしたことがありません(現金が必要なときは基本妻にまかせているので、僕自身もう2年くらいATMを使っていません…)。

銀行を淘汰する破壊的企業

ということで今回は山本康正さんの「銀行を淘汰する破壊的企業」から、2025年までに銀行、金融がどう変わるのか、大きなトレンドを3つ紹介しました。

手数料が無料になり、データに基づいた最適なサービスが登場し、24時間356日いつでも振り込みや引き出しができるようになる。
金融機関で働いている人にとってはとんでもない事かもしれませんが、金融サービスを利用する個人としては楽しみな未来です。

ということで最後に、「銀行を淘汰する破壊的企業」として挙げられている11社から、僕が気になった企業を簡単に紹介して終わりたいと思います。

アップルが金融を再定義する

今日、アップルが携帯電話を再定義する
2007年、アップルがiPhoneを発表したときのスティーブ・ジョブズの言葉です。それから10年あまり。ガラケーで何をしていたか思い出せないくらい、iPhoneが携帯電話の定義になりました。
数年以内に、「今日、アップルが金融を再定義する」とティム・クックが発言するかもしれません。その数年後、僕らは今の金融サービスがどんなものだったか覚えてさえいないかもしれません。

大手金融機関のゴールドマン・サックスと組んでアップルカードを始めたように、どこかの金融機関と一緒にやるのか、アップルが独自にやるのかわかりませんが、アップルバンクが登場するのは時間の問題です。
日々の支払いから給料の確認や公共料金の振り込みまで、全てiPhoneで完結。FaceIDでセキュリティは万全です。すべてのデータがアプリ上に残るので、家計簿アプリなども淘汰されるかもしれませんね。

Facebookがお金にもつながりを生む

世界最大のSNSであるFacebookは、人と人とのつながりに価値をもたせた企業です。でも、ただフォロー・フォロワーの関係より、お金のやり取りのほうが親密な人と人とのつながりであることは間違いありません。

規制によって実現するかは不透明ですが、Facebookが発行するデジタル通貨が実現したらどうなるでしょうか。
Messengerを立ち上げて、数回のタップでお金を送ることができます。個人間のつながり、割り勘やプレゼントなどでは大活躍するでしょう。そしてもう一つ、Facebookは世界中で使われているSNSなので、高い手数料を支払って数日かけて行う国際送金が、ほぼ無料で一瞬の間にできるようになるかもしれません。

それからFacebookはECにも力を入れています。Instagramショップは日本でもかなり普及してきていますよね。ここもFacebookのデジタル通貨があれば、もっと優れた購入体験を提供できることは間違いありません。

コインベースとロビンフットが証券会社を淘汰する

仮想通貨取引所のコインベース、証券アプリのロビンフット。まだ日本では使えませんが、ここ数年、この2社が何度も話題になりました。
コインベースは今の所、ビットコインなどの仮想通貨の取引所ですが、FXや株式など取り扱いを広げていく可能性は十分あります。
ロビンフットは個人がアプリで簡単に株を買える環境を作りました。投機的取引が多いと言われますが、手数料無料など業界の常識を覆すサービスを提供しています。

このようにアプリを基本とした新しい証券会社が、既存の証券会社を飲み込んで行く可能性は十分あります。
既存の証券会社の強みはやはり窓口ですが、窓口がある理由はもうありません。窓口の営業マンの話を聞くより、ブログやユーチューブのほうが価値ある情報がたくさんありますし、窓口でお願いしなくてもアプリで簡単に取引できるからです。

キャベッジが銀行のローン事業を破壊する

キャベッジはアメリカの企業ですが、去年クレジットカード大手のアメリカン・エクスプレスが買収しました。
キャベッジは中小企業などに対し資金調達サービス、つまりローンを提供していたのですが、その手続を完全オンラインで行っていました。
つまりこれまでだと、銀行窓口に行って、何枚も申請用紙を書いて、数日与信調査があって、、、と時間も手間もかかっていたローン申請が、オンラインで10分で完結するようになったのです。

しかもキャベッジは個人の購買データなども使用して与信を行っています。つまり、アマゾンでギャンブル関係の本ばかり買っている人は与信枠が小さく、ビジネスや自己啓発書を頻繁に買っている人は与信枠が大きくなる、というイメージです。すでに中国などでは「ジーマ信用」と呼ばれるものが登場していますが、過去の行動や購買データから自動で与信枠が決まる、というのはすでに登場しています。

ということで、「銀行を淘汰する破壊的企業」11社から僕が個人的に気になった企業を5つ、簡単に紹介しました。金融分野に興味があるかたはぜひ調べてみてください。11社の社名は本の表紙に書いてあるので、本書を買わなくても企業名はわかります。僕はいくつかの会社については投資先候補として、ちょっと調べてみようと思いました。

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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