こんにちは。夫です。
今日はかなり衝撃的な本。「まだMMTを知らない貧困大国日本」です。タイトルから激しいですね。
MMTというのは現代貨幣理論といわれる、経済学の理論の一つ。
MMTについては興味があって、YouTubeで勉強したりしていたのですが、どうもよくわからないというか、すごくわかるんだけど、なんだか腹落ちしない感覚がありました。そこで本屋でMMTについて書かれている本を探して、その中のいくつかは入門編にしてはちょっと難しそうだったので、一番読みやすそうだということで手にとったのが本書。
この記事を読んでいる人はMMTがなにか知っている人もいれば、言葉は聞いたことがあってなんとなく興味を持っているという人だと思います。しかしMMTは今の日本で生きる僕たちにとって、正誤はともかく避けて通れない話題です。
本書の内容に入る前に、最初に僕の立場というか、本書を紹介する前に知っておいてほしいことがあります。
MMTが正しいかどうか、わからない
僕はMMTについてYouTubeでわかりやすく解説されている動画を見たり、有料の講座を受けたり、そして今回「まだMMTを知らない貧困大国日本」を読んだわけですが、結論として、MMTはある程度正しいと思う。しかしそれが現実的に本当にそうなのか、判断できない。という感じです。
というのも、MMT派のコンテンツを見ると、「たしかにそうだ!」と思うことがたくさんあります。論理的にはすごく正しいように思える。でもやはり、「本当にそうなのか?」という気持ちは拭えない。
MMTについて学び始めた人はたぶん同じような感覚なんじゃないかと思います。理論としては納得できるんだけど、現実問題どうなのかよくわからない。ちなみに、「自分を最大限運用する方法」で紹介した高橋ダンさんも以前YouTubeで「そんなうまい話はないと思う」と言っていましたし、「お金の大学」の両学長も、たしかあっちゃん(中田敦彦)との対談動画で、「MMTはなんか腹落ちしない」みたいなことを言ってた気がします(言ってたのはあっちゃんのほうかな?)。
実際、何冊も著書のある著名な経済学者や経営者の中でも、MMTは正しいという派と、そんなわけないという派があるようです。
そんなわけで、僕はMMTが正しいのかどうかわかりませんが、少なくとも本書を読んで学んだことを残しておきたいと思います。
ちなみに本書、めちゃくちゃ語気が荒い。それだけMMTという考え方を日本政府や国民が受け入れないと、日本が大変なことになるという危機感があるからだと思いますが、正直、読んでいて「ちょっとこの言い方は…」となるレベルの表現も度々登場します。
そうした表現は省くので、読む度胸がある方はぜひ本書を読んでみてください(笑)。
というのともう一つ、僕は僕なりに自分が本を読んで咀嚼したことを書きますが、MMTを始めとする経済学の専門家ではありません。間違えていることなどもたぶんありますが、ご容赦ください。
本書を読んで感じたことですが、情報は両方向から得ることが大切。今回の本はタイトルから推測できる通り、MMT推進派の方の意見です。なので次はMMT否定派の方が書いた本を読んでみようと思います。
貧困大国日本の現状
著者が抱く大きな危機感は「このままだと日本が滅ぶ」というもの。日本が滅ぶとは大げさな気がしますが、本書の前半はかなりのページを割いて、今の日本の現状について書いてくれています。
MMTに入る前に、まずそこを簡単に紹介しておきます。
貧困化する日本
日本が貧困化しているといっても、僕にはあまりその感覚はありません。僕は平成生まれなので、バブル崩壊後、すでに停滞した日本しか知らないからです。一方、日本の高度経済成長期を経験した世代は「過去豊かだった日本」が忘れられず、今の現状に気づけていないと筆者は指摘します。
実際、日本がどれだけ貧困化しているかデータで見てみましょう。
- 実質賃金が20年間で13%低下し、世帯収入の中央値は1995年の550万円から2017年には423万円にまで減少した。
- 年収200万円以下のワーキングプアは1996年の800万人から、2013年には1100万人を突破。生活保護世帯は1995年の60万世帯から、2013年以降は160万世帯を超えている。
- 高齢者の5人に1人が貧困層で、単身世帯は特に割合が高く男性の4割、女性の5割の高齢者が貧困層である。
- 金融資産がゼロの世帯は3割を超え、非正規雇用率は90年代から倍増し、子どもの6〜7人に1人は貧困状態にあるとされ、子ども食堂は2019年から2019年までの3年間で12倍近くに増えている。
- 1人あたりのGDPは第3位だった1996年から2019年には26位に落ち込み、欧米諸国のほとんどでGDPが成長しているのに対し、日本だけが低下している。
などなど。かなり厳しい数字が上げられています。こうした現状を突きつけられると、たしかに日本が衰退しており、貧困化が進んでいることがわかります。
ただし、データには必ず意図があることに留意。本書は今の日本には課題があり、MMTによって改善できるという立場。なので当然、そうしたデータを、そうした意図の切り取り方をしています。例えば、子ども食堂の数が3年で12倍というのは、それだけ子どもにご飯も与えられない貧困層が増えた、と見ることもできますが、子育てしやすい社会インフラが整ってきた、とポジティブに見ることもできます。
科学技術の衰退
科学技術は長期的には国力の基礎にもなりますが、本書ではその衰退が指摘されています。
例えばノーベル賞。だいたい毎年1人程度、自然科学分野で日本人の受賞者がいます。しかし受賞時の年齢の平均は68歳。かなり高齢な印象がありますね。
それについて筆者は、その年代の人が熱心に研究に打ち込み活躍していたのは30代から50代程度だったと推測し、つまりノーベル賞を受賞した人の成果の大半は1970年〜2000年代初頭、つまり日本が経済的にも成長していた時期だったのではないか、としています。
研究には莫大な予算がかかり、研究費の多くは大学の研究資金や政府の補助金に頼ります。それが日本は減少し続けているというのです。
2017年にはiPS細胞研究所所長の山中教授が「ご支援のお願い」として寄付を募って話題になりました。ノーベル賞を受賞するような学者でも、研究費が足りないのです。さらに、iPS細胞の実用化に向けて研究に取り組む職員の9割以上が非正規雇用であることも衝撃を与えました。
他にもノーベル賞級の研究を行いながら研究費に困窮する例や、日本の基礎学力の低下などを示唆するデータが、本書では紹介されています。
たしかに僕も2014年に青色LEDの研究で赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんらがノーベル物理学賞を取ったと聞いた時、「え、20年以上前の研究が今更?」と思いました。ただノーベル賞の受賞年齢の高齢化については、科学技術の発展によって、技術を習得し活躍するまでの道のりが長くなっている、研究の成果がノーベル賞に値するかどうか判断するのが難しくなっている、という側面もあるようです。
国防の危機
本書では国防についても、危機感を募られています。日本は基本的に軍隊を持たない、戦争を行わない国なので、国防といっても多くの人はピンとこないでしょう。でも例えば、去年のコロナパンデミックでも、アメリカは「感染症の蔓延は国防の危機である」として、軍隊が陣頭指揮を取り、歴史的なスピードでのワクチン開発などを成し遂げていました。
具体的な危機としては、尖閣諸島などいろいろな問題がある中国が、日本の5倍もの軍事費を投じる核保有国である、ということです。
まさか戦争にはならないだろう、と考えている人が大半でしょうが、実際問題、中国海軍が尖閣周辺の漁船を威嚇するなど、一発触発状態です。
国防って、結構意味が広いんです。最近は尖閣諸島などが話題で、僕も少し国防について学んだほうがいいなと感じています。
本書ではもう一つ、土地売買の外資規制についても警鐘を鳴らしています。日本では外資が土地を購入することを特別禁止していないのですが、これはつまり、予算さえ割けば日本の一部を他国が買い取る(合法的な領土侵略を行う)ことができるということです。
以前、中田敦彦のYouTube大学で、「安いニッポン」としてこの問題に触れていました。繁華街の一部が中華街化するのはまだ良いとして、国防や生活に欠かせない道路や山林などが買われ、緊急時に日本人が使えないということになれば問題ですよね。
本書ではこの他にも、日本が衰退している様々なデータを上げ、その問題の根本原因の一つとして、「緊縮財政」「プライマリーバランス黒字化」といった、政府の財政認識にあるとしています。
”国の借金”という誤解
「日本は世界一の借金大国」
「国民1人あたり900万円もの借金を抱えている」
こうした言葉を聞いたことがあるかもしれません。
筆者曰くこれは誤った認識で、今の日本の政治が間違える重大な問題だと言っています。国の借金ではなく、正確には政府の借金ですし、政府は国債を発行して借金をしているわけですから、むしろ国民は貸主です。国民一人ひとりが900万円の借金をしていると言われるとビビりますが、実際には国民一人ひとりが政府に900万円も貸しているんです。
このように国債や政府の財政について誤った認識があるため、緊縮財政が重視され、教育予算の低下や上に挙げた日本の衰退につながってしまうのです。
そのことの問題を示すエピソードがいくつも紹介されているのですが、ここでは2つだけ紹介します。
命より財政健全化が大切なのか?
土木学会が南海トラフ地震で予想される被害総額1400兆円のうち、40兆円の耐震化費用で500兆円以上の被害が防げると発表しました。それに対し、東洋大学名誉教授の意見がこれです。
今回の土木学会の発表で最も注目されるのは、インフラ耐震工事約40兆円で南海トラフ地震の場合500兆円の被害を縮小できるという推計結果である。これほど高い効率性をもつ公共事業は他に存在しない。整備新幹線はじめとするほとんどすべての公共事業を我々はしばらく我慢しなければならない。(中略)あれもこれもと、現在の国費ベースで年6兆円の公共事業費を拡大することはできない。それでは「国難」としての自然災害を機に「亡国」の財政破綻に陥ってしまう。
つまり、南海トラフの被害を抑える支出をするなら、他の公共事業は全部止めないといけない、というわけです。もしこれが本当にどちらかしか選べないなら、大問題です。
南海トラフのリスクを放置していたら1400兆円もの被害が出ます。人命の被害もかなりのものになるでしょう。それをたった40兆円の支出で2分の3に抑えられるのですから、やらない手はありません。
一方で、道路やトンネルの整備をすべて止めてしまったらどうなるでしょうか。こうしたインフラは年とともに劣化していきます。数年間停止しても先延ばしにしただけで、いずれ整備はしないといけません。優先順位の低い地方のインフラは危機にさらされるでしょう。
もう一つは2019年10月に発生した台風19号の水害について。死者77名、全国68の河川で128箇所も防波堤が決壊するという大きな被害になりました。
この時、日本経済新聞の編集者が書いた記事があります。
2011年の東日本大震災は津波で多数の死傷者を出し、防波堤などハード面に頼る対策の限界を見せつけた。
堤防の増強が議論になるだろうが、公共事業の安易な積み増しは慎むべきだ。台風の強大化や豪雨の頻発は地球温暖化との関連が疑われ、堤防を嵩上げしても水害を防げる保証はない。人口減少が続くなか、費用対効果の面でも疑問が多い。
西日本豪雨を受け、中央防災会議の有識者会議がまとめた報告は、行政手動の対策はハード・ソフト面で限界があるとし、「自らの命は自ら守る意識を持つべきだ」と発想の転換を促した。
これは僕のような素人でもわかるかなり極端な発言です。確かに豪雨や台風の被害は年々大きくなっていますが、だからといって防波堤などハード面の対策の有効性がなくなったわけではありません。むしろ、台風が強くなる分、防波堤も強くしていかないといけないのが自然な考えでしょう。
「人口減少が続くなか、費用対効果の面でも疑問が多い」というのはさらにひどい。そもそも費用対効果を見込むなら民間企業がやればいい話。それができない分野を政府が担当するわけですよね。大半の道路は作っても1円にもなりません(直接的には)。防災など人命に関わる部分で費用対効果を考えること自体、ナンセンスです。
さて本書はここからさらに「安倍政権はなぜ大失敗しているのか」という章でさらに日本の現状の課題を深堀りしておきますが、このへんでやめておきましょう。僕まで語気が荒くなってしまう(笑)。ここからはお待ちかね、MMTについてです。
MMTが日本を救う?
本書のサブタイトルには「新しい学問のすすめ」と書いてあります。福沢諭吉が書いた歴史的名著、僕も昔読んで感銘を受けた1冊ですが、それを冠しているわけです。その根底にあるのが、筆者がいう貧困大国日本を脱却するには「良い学問」が必要で、そのためには厳しいことも言わなければいけない、という強い意思があるからです。
ということで、福沢諭吉と言えば「天は人の上に人を造らず」という言葉ですが、実は福沢諭吉はそんなことを言っていなかったという話を少ししましょう。
「学問のすすめ」には次のような一節があります。
天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言えり。
<中略>
されども今廣く此人間世界を見渡すにかしこき人ありおろかなる人あり貧しきもあり冨めるもあり貴人もあり下人もありて其有様雲と坭との相違あるに似たるは何ぞや。
意訳すると、世間では天は人の上に人を造らず、人間は皆平等だ、と言われているが、世間を見ると貧しい人も豊かな人もいるじゃないか。その違いは何だ、ということです。
そしてその違いは「学問である」として、学問について説くのが「学問のすすめ」の趣旨です。つまり、福沢諭吉は万人平等だと言いたかったわけではなく、学問によって人間は差別される、だから学問をちゃんとやろう、と言いたかったわけです。
そして筆者が言う良い学問とは、
- 現実の危機を深く認識する
- 既成の権威に阿ら(きげんをとってその人の気に入るようにする。へつらうこと)ない
- 右顧左眄(右を見たり左を見たり、あたりの情勢をうかがってばかりいて、決断しないこと)せず、自分の考えをしっかり固める
- 間違った考えを徹底的に糺す
- 自分が間違ったときには素直に認め、自説やそれに基づく言動を改める
- 流されている常識を疑う
- 自分の考えをわかりやすく公表し、その拡張に絶えず努める
- 批判者、反論者を恐れず、彼らと堂々と議論する
- 危機克服のための処方をデザインし、できればそれを自ら実践に移す
という、学問に対する構え、態度が重要だと言います。
いやあ、激しいですね。4の「間違った考えを徹底的に糺す」というのは特に、本書の節々にその感覚が現れています。僕はどちらかと言うと、異なる考えも「そういう見方もあるよね」とするタイプですが…
MMTにおける税金の役割
MMTが話題にするのは主に税金、つまり財源と政府支出。MMTの考え方を支持するかどうかに関わらず、財源と政府支出については僕たち(国民)一人ひとりが考えていく必要があります。
まず、政府が税金を集めて、それに対して使い方を考えるという印象がありますが、実際には逆。僕たちは給料をもらって、それから使いますが、その感覚とは全く違うんです。
細かな話は省きますが、政府は日銀、つまり貨幣の発行機関とつながっています。なので、政府が支出するのに、原則財源は必要ありません。国債を何兆円発行するとか、今年の予算は100兆円だとか聞くと、それだけの現金が飛び交っている印象を受けますが、実際にはただ日銀当座預金に数字として書き込まれる(たぶんコンピューターで担当者が「わかりましたー」といって打ち込む)だけです。
こうして発行されたお金を「万年筆マネー」といい、この行為を信用創造といいます。
複雑なのでこの辺はYouTube動画などを学んでみてください。僕のおすすめをいくつか貼っておきます。要するに、財源がないと政府支出ができないなんてことはなく、誰かがコンピューターのテンキーを数回ポチポチするだけで何兆円というお金が無から飛び出てくる。これが僕たちの一般的な家計、会計感と異なる、政府の支出です。
MMTでは、税金は政府の財源ではない(そういう役割もあるにはあるけれど)という考え方をします。じゃあ税金の役割は何かというと、大きく4つ。
- インフレが過剰気味になった時、流通する貨幣の量を調整するために増税する、逆にデフレ時には減税し貨幣の流通量を増やすなど、インフレ、デフレのコントロールを行う。
- 高所得層から多く税金を取り、低所得層に分配する、つまり所得の再分配を行い格差が広がりすぎないようにする。
- 日本円による納税を矯正し、民間の経済活動が日本円で行われるようにする。
- 違法行為や公共性を損なう経済活動に対して、罰金を課す。
MMTを学び始めた時、面白いなと思った考えがこの3つ目。税金があるのは、日本円を流通させるため、というものです。
確かに、双方の合意があればドルで買い物してもいいし、なんならメモ書きでも良いわけです。実際、飲み屋のツケとかは日本円のやり取りではなく、メモ書きとか口約束とかで、売買行動が行われていますよね。
でもこの飲み屋のツケもいずれ日本円で支払わないといけません。だって飲み屋は日本円で売上を申告し、日本円で税金を払うからです。「誰々さんに10万円のツケがあります」と言ったって、たぶん税務署はそれを売上とは認めてくれないでしょう。
MMTというと赤字国債をバンバン発行して、減税して、、というイメージがありますが、ちゃんと税金には税金の役割があります。何でもかんでも減税しろ、という立場ではないんですね。筆者は法人税は引き上げてもいいけど消費税は言語道断という意見。法人税は主に富裕層に影響のある支出ですが、消費税は所得が少ない人ほど生活に悪影響が在るからです。
MMTが前提とする考え
税金についてMMTの考えは上で述べたとおりですが、MMTという理論のポイントは他にも色々あります。本書では6つのポイントが書かれていますが、ここでは僕が理解できた4つを紹介。
- 自国通貨を持ち変動為替相場を採用する国では、国債発行額に原則として制約はない。政府の財政赤字を気にする必要はない。
- ただしインフレ率という制約があるため、政府・中央銀行は過度なインフレの兆候が見えたときには金利や税金によってコントロールする必要がある。
- 政府の債務残高(俗に言う国の借金)は、過去の政府の財政支出と税金の差額でしかなく、その差額は民間の貯蓄である。つまり政府の赤字は民間の黒字である。
- 民間に金融資産が十分にあるから国債発行の余地があるわけではない。政府の赤字が民間の黒字であるから、政府の債務が増えれば増えるほど、民間の金融資産が増える。
この4つです。それぞれ簡単に見ていきましょう。
順番が前後しますが、まず3つ目の「政府の赤字は民間の黒字である」ということと4つ目の「政府の債務が増えるほど、民間の金融資産が増える」について。
これはイメージとしては単純で、日本政府が赤字国債を発行して公共事業をやったり、社会福祉に使った時、それは公共事業を受注する企業や福祉制度を利用する人にとっては利益だよね、ということです。
別に日本は国債を発行して外国に寄付しているわけではありません。国がインフラ整備のように儲からない事業にお金を出すことで、それに携わる企業は黒字になるのです。つまりそうした企業にとっては、国は借金してでも商品を買ってくれる良いお客さんということです。
日本はインフラが整っていて、水も電気もかなり安い。都会なら歩いてすぐの範囲に交番があるし、道路もキレイ。しかもこれらをタダで使わしてもらっている。
それは、政府が赤字国債を発行して、国民に利益を与えてくれているということです。全部民間企業がやれば、水道代は跳ね上がるし、道路は有料化、交通量の少ない道路は整備されずボロボロのまま放置されるでしょう。
MMTが言う、政府の赤字は民間の黒字、という考え方は衝撃を受けました。でも考えてみるとそのとおりでしょうね。国の借金がやばい!とか僕らが言う時、頭の中から借金してなにを買って、そのお金は誰に渡っているのか?が抜けていたんですね。
続いて、1つ目の「国債発行額に制約はない」と2つ目の「インフレ率が制約になる」ですが、ここはちょっと複雑。自国通貨を持ち、変動為替相場制を採用する〜とか言われてもちょっと困りますよね。
ただこれも「万年筆マネー」の考え方を知っていれば理解できます。
流れが複雑なので省きますし、専門家でもないので間違えているかもしれません。ちゃんと理論が知りたい方は、本書を始めとするMMTの専門書を読んでみてください。
乱暴な言い方をすると、日本円を発行するのは日銀で、日銀は政府の言ってしまえば一部であるからです。「万年筆マネー」では、政府が財政出動する時、税金を使うのではなく日銀に日銀当座預金をパパっと増やしてもらう、という話をしました。
ではこの時、日銀当座預金をコンピューターで入力するのに、どんな制約があるでしょうか。物理的な制約はなにもありません。1億円の日銀当座預金を発行するのも、100兆円の日銀当座預金を発行するのも、担当者がタイピングする回数が数回増えるだけです。
なので、そうした制約はないのですが、インフレ率が制約になります。いきなり政府が100兆円分の公共事業を発注したとしましょう。当然、そんなに大量の仕事を受ける会社がありません。それでもやると言うなら、新しい機械を導入して、給料を上げてバンバン働かせて、残業させまくって、とどんどんコストを上げていくわけですが、そうなると当然インフレが加速します。
公共事業じゃなくても、例えば2020年にコロナ対策の一環として国民全員に渡された10万円。あれが1000万円だったらどうでしょう。
いきなり国民全員が1000万円分もの購入力を持ってしまったのです。当然、ちょっと良いところに外食しようとか、いい服を買おうとか、引っ越ししようとか、積極的に使う人が増えるでしょう。でも、レストランの数も服の生産量も、引っ越し屋さんのリソースも急には増えません。結果、値段をあげないと対応できない、つまりインフレが加速してしまうのです。
このように、インフレ率という制約があるものの、それ以外に政府の債務を制限するものはないというのが、MMTの考え方です。
確かにこのように考えると、政府は赤字国債を発行して民間に黒字を出したほうが良いように思えますね。今日本はデフレですから、インフレ率という制限は相当極端なことをしない限り気にしないで良いのかもしれません。
こうした前提を持つと、MMT派の経済学者が、今政府が目指している「プライマリーバランス黒字化(つまり政府の黒字化)」がいかに危険か警鐘を鳴らす理由がわかります。
プライマリーバランスを黒字化するということは、政府が税収以下の支出しかしないということです。でもここまで見てきたように、政府の支出は民間の黒字です。もし政府が民間から受け取る税金以下の金額しか支出しないとしたら、その分、民間の金融資産はどんどん減っていくことになりますよね。
なので本書では、貧困大国日本を復活させるには、財源のことを気にするのではなく、政府がしっかり優先順位を議論して、潤沢な資金を使う必要性を説いています。
結論、MMTってホントに通用するんですか?
さて今日は「まだMMTを知らない貧困大国日本」というなかなか過激な本を紹介しました。
自分なりにこうして言葉にすることで、やっぱりMMTは理論としては正しい、という感覚があります。僕の説明が拙い部分はもちろんあると思いますが、一つ一つの理論には納得感があるのではないでしょうか。
例えば、「政府の赤字は民間の黒字」というのは、言われてしまえば疑いようがない感じがします。
それに、財政の事を気にして、防波堤やダムなどの環境整備の予算を削減するというのは、災害が多い日本において人道的にもありえないでしょう。正直、ボロボロの防波堤を放置して毎年台風が来るたび大量の人が被害に遭うくらいなら、財政破綻してもいいからなんとかしろよ、と思います。
ただ、僕はここまで読んできても、MMTには腑に落ちない部分が多い。
理論的には正しそうだと思うので、これは感覚としか言いようがありません。
政府は家計をともにする日銀からお金を借りているから借金返済は必要ない。
「万年筆マネー」だから無からいくらでもお金を生み出せる。
う〜ん。確かに理論的には正しそうなんですけど、やっぱり腑に落ちないと言うか、本当にそうか?そんなにうまい話があるのか?と思ってしまいます。
特に、「万年筆マネー」はコンピューターを数回タイピングするだけで何兆円ものお金が無から生まれる、というもの。確かに日本円の発行機関である日銀ならそれができると思いますが、それをしてしまったら(すでにやっていることだから、認めてしまったらという方が正確?)、日本円の価値が暴落するんじゃないかと思ってしまいます。
だって何の裏付けもない、無から生まれたただの数字なわけですから…
MMT派の方が言う理論って、もしかして多くの人がMMTを知らない(お金がまさか万年筆マネーで無からポンポン生まれているとは思っていない)から成り立っているだけで、多くの人がそれを知ったら納税分とか最低限だけ確保して、日本円を外貨や別の資産に変えてしまうんじゃ…と思ってしまいます。
とかなんとかいって、MMTの正しさについて考えてみたのですが、現状の僕の知識では答えが出ません。でも日本は1200兆円もの赤字国債を発行して、対GDP比で世界最大。一方で、莫大な対外純資産や民間の金融資産を持っていることも事実。今の日本で生きる僕たちは、MMTが正しいかどうかに関わらず、こうした状況の国に生きているんだという自覚を持って、学び続ける必要がある。それが本書がいう「新しい学問のすすめ」なのかもしれません。
この記事を書いた人
- かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。
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