【すでに脳は侵されている】読むと怖くなる「スマホ脳」

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こんにちは。夫です。

いやあ、またまた衝撃的な本と出会ってしまいました。ここ1年ほど、個人的に大きな転換があった影響か、本のチョイスも変わってきて、刺激的な出会いが増えている気がします。

さて、今日紹介するのは「スマホ脳
現役の医師でもあるアンデシュ・ハンセン氏が書いた話題の一冊。

この記事を読んでいるあなたは、スマホで読んでいますか?もしそうだとしたら、夜遅く、ベッドの中で読んでいないことだけ願います。間接的にせよ、この記事が人生を左右する悪影響を与えてしまうのは辛いですから…

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スマホとSNSの開発者は今、後悔している

スマホの健康被害だなんて、みんなわかっています。ディスプレイの光は目に悪いし、SNSが気になって集中しにくい。常に誰かと繋がっているような気がする一方で、どこか孤独を感じ続けている。しかもプランによっては電気代と同じかそれ以上にお金がかかる。

でも、そうしたデメリットも知っている上で、それ以上のメリットがあるからスマホを使っているんですよね。スマホがなかったら情報収集もできないし、友達と連絡することも、暇つぶしをすることもできない。

デメリットがあっても、それを超えるメリットがあるなら使うに決まってるじゃないか。

でも、こんな事実を知っていますか?

スティーブ・ジョブズは子どものそばにiPadを置かない。
ビル・ゲイツは子どもが14歳になるまでスマホを持たせなかった。

今、多くの親が子どもにスマホやiPadを持たせています。国によっては10代前半でスマホを与えるのが当たり前になっていますし、家事をしている間、小さな子どもにiPadでYoutubeを見させておく親も珍しくありません。
でも、そのスマホやiPadを発明したスティーブ・ジョブズ、そのひと世代前、PCの普及に大きく貢献したビル・ゲイツは、子どもにスマホを使わせていないんです。

そしてさらに、あまり知られていないと思いますが、ジャスティン・ローゼンスタインというアメリカの男性は、SNSの利用時間を制限するために、本来は親が子どものアプリの利用時間を制限するアプリを自分で入れたそうです。「依存症ではヘロインに匹敵する」と言って。
いやいや誰だよって話ですが、ジャスティン・ローゼンスタインという方、Facebookの「いいね」機能、今やTwitterでもInstagramでも当たり前になったあの機能を開発した方です。

彼はあるインタビューで、次のように言いました。

製品を開発するときに最善をつくすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与える。それに気づいたのはあとになってからだ。

つまり、彼が開発し、世界中に広がった「いいね」という機能は、薬物並みに人をSNSに依存させ、様々な悪影響を生んでいるんです。その開発者である本人も、利用時間を制限するアプリを使わないといけないくらい、深く依存してしまっていました。

そして最後に、もうひとり。iPhoneの開発に関わったAppleの幹部、トニー・ファデル氏は、次のように言っています。

冷や汗をびっしょりかいて目をさますんだ。僕たちはいったいなにを創ってしまったんだろうって。うちの子ども達は、僕がスクリーンを取り上げようとすると、まるで自分の一部を奪われるような顔をする。そして感情的になる。それも、激しく。その後数日間、放心したような状態なんだ。

僕たちはスマホやSNSを喜んで使っていますが、それを開発した本人は自分では使わないようにしていたり、開発したことを後悔しているんです。

なんだか怖くなってきましたね。開発者が後悔するようなものを、僕らは喜んで使っている…そのことに気づいていない、それが「スマホ脳」なのかもしれません

人類はスマホに適応していない

ちょっと怖くなってきたところで、本書の内容を見ていきましょう。本書の骨子となっているのは、人類は、特に脳はスマホがある現代社会に対応していない、ということです。

進化というのは何世代にも渡って起こります。例えば、北極に渡ったクマの中でたまたま白っぽいクマが生まれた。そのクマは北極では目立たないため、多くの餌を採ることができ、生き延びることができた。その白っぽいクマの子どももまた白っぽかった。
何世代も経つうちに、目立つ茶色いクマは北極から消え、効率的に餌が採れるより白いクマだけが残った。それが今いるシロクマです。

人類も同じです。スマホが誕生してまだ10数年。当然誰も、スマホを使うのに適した進化はしていません。もしかしたらシロクマのように突然変異でスマホを使うのに適した人が生まれているかもしれませんが、ごくごくわずかです。彼らのほうが今の社会で生き延びる確率が高く、より多くの子孫を残せるなら、何世代も経つうちにスマホに適した人が人類のスタンダードになるかもしれません。とはいえそれは何百年、もしかしたら何万年も先の話です。

本書ではいろいろな根拠が投げられていますが、いくつかわかりやすいものだけを紹介しましょう。

脳は”かもしれない”が大好き

100%勝てるギャンブル。魅力的ではありますが、実際のギャンブルのようにのめり込む人はいないでしょう。人間は起こる”かもしれない”ことが大好きなんです。

これも進化に理由があります。例えば、木に登って木の実があったら、食べ物を得ることができます。しかし2日目、木に登った時に木の実がなかった。ここでがっかりして木に登ることを止めた人は、餓死します。木の実がある”かもしれない”ことに期待して、木の実があった時により大きな喜びを感じ、何度もチャレンジできる。そういう人類が餓死せずに生き残れたわけです。
当然、我々は過去に生き残った人類の子孫。つまり、”かもしれない”に挑戦し続けた人類の子孫です。

だからギャンブルには中毒性があるんですよね。

そしてこれが使われているのが、スマホの中。わかりやすいのはゲームのガチャです。いいアイテムが当たる”かもしれない”という状況は、確実にいいアイテムがもらえる状況より魅力的なのです。そこに魅力を感じて生き残ってきた種族なのですから。

SNSもそうです。見たら新しい情報がある”かもしれない”、友達からいいねがついている”かもしれない”。それらがSNSを魅力的にしているのです。
SNSやスマホゲームの企業は脳科学や行動科学の専門家を雇い、一番魅力的に感じる”かもしれない”を演出しています。SNSではいいねが付いてもしばらく通知が出ないようにしたりとある程度のランダム性をもたせています。同じタイミングで10件のいいねが付いても、1度に通知するのではなく、2個、3個、1個、1個、と分散させて、より刺激的に、魅力的にしているんです。

これは怖い。確かに何の目的もなくついついSNSを開いて、「あ、通知きてんじゃん!」ってなったことが何度かあります。その経験のせいか、通知が来る前にSNSを開いて通知が来ていないか確認する(何のための通知だ…)ことが習慣化してしまっていた時期がありました…

脳は徹底した省エネ主義

脳はかなりのエネルギーを消費する器官です。今はカロリー過多の社会なので問題ありませんが、昔は余計なカロリーを消費することは命取りだったわけです。狩りに出て1週間不作に終わることもあったわけですから。
なので、脳はエネルギーを節約するチャンスがあれば積極的に節約します。

いろいろな実験がされていて、非常に面白いのですが、例えば、手書きでメモを取るのと、PCでメモを取る場合、覚えている割合の内容は手書きのメモのほうが多い。これはなんとなくわかりますよね。手書きだと自分で工夫して咀嚼して、短くまとめないといけません。でもタイピングが早い人はなにも考えず言われた文章をそのままメモしたりできます。

面白いのは、同じPCでメモを取った場合でもメモが「保存される」と言われた人と「保存されない」と言われた人とでは、「保存されない」と言われた人のほうが内容をよく覚えていたのです。
メモを取る方法に問題があるというより、人は覚える必要がない(データが残るのだからそれを見ればいい)と感じたら、記憶に残らないのです。

PCを使うと記憶力が下がるとかそういう話ではありません。例えば、メモを1行ずつ別のフォルダに保存するよう指示された場合、メモの中身はあまり覚えていないのに、フォルダの場所はかなり正確に覚えていたようです。

さらに、美術館で「写真を撮ってもいい」と言われると、写真を撮った作品は忘れやすい、という研究結果もあるみたいです。

これによって問題視されているのが、デジタル健忘症。Googleで検索したら何でも出てきます。そのため、検索テクニックはどんどん上達して情報にたどり着くのが上手くなるほど、情報の中身を記憶できなくなっているんです。

めちゃくちゃ思い当たるフシがある…確かにネット記事って全然覚えていない。結構いい記事で、URLを保存しといた記事なんか、もう一度開くまで何の記事だったか忘れてることが結構あります…

気が散るのは生存戦略

集中力はある方がいいと思いますよね?でもそれは現代だけ。

昔は一つのことに何時間も没頭するほど集中力がある人は、かなりの危険にさらされていました。例えば、狩りに出かけて目の前の獲物に集中するあまり、狼が後ろから寄ってきていることに気づかなかった、途中で魅力的な木の実やより安全な獲物を見かけたのに気づかなかった、こうした人達は当然、生存率が下がります。
つまり、注意力散漫で、色んなものに同時に注意を払える人、獲物を追いかけている時に草むらで「ガサッ」と音がしたらちゃんとそっちにも”気が散る”人が生き残ってきて、僕たちはその子孫だということです。

そしてスマホですよ。集中を妨げる最大要因ですよね。
これは仕方ないんです。スマホがあるということは通知が来る”かもしれない”わけです。草むらで「ガサッ」と聞こえたら、それは敵かもしれないし、ご馳走かもしれない。注意を払わずにはいられません

実際に、スマホがテーブルの上にあるだけでテストの点数が下がるといった実験は色々あるみたいです。ちなみにポケットにスマホがある、鞄の中にあるなど、ちょっと距離を取ってもやはり点数が下がるようです。

さらに面白いのが、ブログなどの記事を読んでいて、テキストにリンクが張ってあるだけで内容を覚えにくくなったという実験もあります。
これは、「リンクをクリックすべきかどうか」を判断するために脳が無意識に働いたからです。だってリンク先にはもっと魅力的なご馳走があるかもしれませんから、無視しようとして無視できるものではないんです。

Intro Booksではできるだけリンクを減らす。紹介している本や関連するリンクと、Intro Booksの記事のリンクだけにしています。Googleのアドセンス広告とか絶対入れません。僕自身、記事の間に余計な広告があるだけで内容が入ってこないというのが経験的にありましたから…

スマホが脳に与える悪影響

さてここまで本書の骨子、メインテーマである「人類の脳はスマホに適応していない」ということを紹介してきました。なかなか興味深かったと思います。スマホはとても便利ですが、人間の脳はその便利さに対応できていない。だからスマホゲームに大量課金してしまったり、10分に1度はSNSを開いてしまったり、ポケットにスマホがあるだけで会議の内容を聞き漏らしたりしてしまう。
そう考えると、最近DXだなんだといって、学校教育でもタブレットが積極的に活用されているみたいですが、問題かもしれません。確かに便利な点はありますが、記憶力や集中力の低下は避けられないでしょう。

もちろん教育現場でのタブレット活用を否定するわけではありません。現代社会では単純な記憶力より、検索力などのデジタルリテラシーのほうが重視されますから、それを磨くのも大事でしょう。しかし、コロナ禍で急激に進めると、十数年後に問題が発覚したりするかもしれません…そして当人(今の子どもたち)にとって、あとから「あの教育方法は間違いだった」とか言われても、どうしようもありません…

では本書では5章に当たる部分、スマホなどのスクリーンが与えているもっと直接的な影響を見ていきましょう。
集中力や記憶力の低下のように、間接的なものだけじゃないんです…
20代の若者を対象にした1年間の観察調査によると、スマホを使う人ほどストレスの問題を抱えている割合が高く、うつ病になるケースも多かったそうです。その他にもいろいろな研究からスマホの使用過多とストレスには結構な関連があるようです。

脳はただ生き残るために進化しただけ

やはり大きな影響は睡眠です。
先進国に住む現代人の3割が睡眠に課題を抱えているようです。一方でスマホなどがない部族の調査では、睡眠障害に苦しむのは1,2%ほど。先進国では必要とされている睡眠時間より短い睡眠時間の人が多く、しかも年々短くなっていくそうです。

そもそもなぜ睡眠が必要なのかははっきりと分かっていません。しかし、どんな生物にとっても1日の3割以上を無意識で過ごすのはとんでもないリスクです。寝ている間に猛獣に襲われるケースも珍しくありません。にもかかわらず、今生きている生物のほとんどが睡眠を必要としている、莫大なリスクを払ってでも寝ているということは、それだけ重要な理由があるはずです。

睡眠によって老廃物が排出される、睡眠によって記憶が整理される、睡眠不足が続くと脳の機能が低下する、そうしたことは知っているかもしれません。しかしおそらく、それ以上に重要な理由がありそうです。

睡眠を妨げる要因にはいろいろありますが、大きいものがストレスです。人間はストレスを感じると眠ることができません。ストレスは危険や不安を避けるための機能です。つまり、ストレスがある状態は「向こうに狼の群れがいるかもしれない。この場所で意識不明に陥るのは危険だ。」ということなのです。

たとえ寝れたとしても、ストレスがあると睡眠が浅くなります。それは脳が積極的に「この場所は危険かもしれないから、何かあったときにすぐ起きれるようにしておこう」と判断しているからです。

そしてスマホはいろいろな形でストレスを与えます。「まだLINEの返信が来ていない」「さっきのツイートにいいねが付いていない」「私を誘わずにグループで遊びに行ったらしい…」などなど。そうした情報がある”かもしれない”というだけでもストレスです。

脳はただ生存率を高めるための役割通り機能しているだけです。ストレスがある状態でも熟睡できる人はきっと狼に食べられて絶滅したんでしょう。今回繰り返している言葉ですが、我々は危険がある場所では寝ないようにしたり、浅く眠ったりして危険を回避することに成功してきた人類の子孫です。

SNSがやめられないのは本能

Facebookの利用者数は全世界で20億人。人類の3分の1近くが使っています。実際に利用可能な社会で生活している人に限れば、もっと割合は高いでしょう。しかもそのほとんどの人が一日に30分以上、一生で数年分もFacebookを使っています。
なぜこれほどFacebookを始めとするSNSが浸透したのでしょうか。

確かに友達といつでも繋がれるのは便利ですが、脳にとっては便利以上のものです。

人類はそもそも社会的な生き物で、150人未満程度のグループで生活していました。そしてそのグループでのコミュニケーションは、食べ物を見つけるのと同じくらい重要だったのです。他人に興味がない、思いやりがない人はグループからはじき出され、野生動物の餌食になるか餓死したのでしょう。我々は上手くコミュニケーションを取り、グループの中でうまく立ち回ってきた人類の子孫です。

SNSではいいニュースより悪いニュース、いわゆるゴシップが話題になりやすい傾向にあります。実際、悪い噂が絆を深めるという研究結果もあります。誰かの歌詞にありましたが「好きなものが一緒より、嫌いなものが一緒のほうがいい」ということですね。
それも人類にとって悪いニュースのほうが重要だったからです。昔は死因の1〜2割が、殺人、他の人に殺されることでした。だから「誰かが誰かを嫌っている」「誰かがこんな失敗をして誰々を恨んでいる」などのネガティブな情報は命に関わるのです。

しかし、SNSは使えば使うほど幸福感が減る、という研究もあります。嫌な話は生存戦略として重要なので興味を惹かれてしまいますが、楽しいわけではありません。むしろストレスになるわけですが、人類はストレスを感じることで危険を察知し、生き延びてきました。
楽しくない、聞きたくないのに、見ずにはいられないのです。

あとはやっぱり比較対象が増えることも、SNSで幸福感が減る要因でしょうね。きらびやかな投稿を見て羨ましいと思うだけならまだしも、自分の現状に満足できなくて不満を抱えることも珍しくないでしょう…SNSは最強のマーケティングツールですが、友達を”羨ましい”と思う気持ちは、ものすごく購買意欲を刺激するんです。当然、SNSプラットフォームや広告を出している企業は、それをわかっていてやっています…

スマホが子どもに与える悪影響

どんどん怖くなってきましたね。僕は別の点で怖くなってきました。というのも、インターネット上のページの5分の1は、4秒以下しか滞在されていない、10分以上読まれるページは4%しかない、というデータを見たからです。
もちろん4秒も見る価値がないページが多いというのもありますが、このページももしかして見出しだけ見て、すぐに別のページに移っていて、今この文章を読んでいる人はほとんどいないのかもしれません。

スマホは僕たちにいろいろなものを与えてくれましたが、大切なものも奪いました。本を読むことが苦手、特に長時間集中して読むことが苦手な人が増えているようです。そう言えば僕も、昔は1冊通して一気に読んでしまうことも珍しくありませんでしたが、最近はそうでもありません。

さてここまで人類全体への影響という感じで見てきましたが、最後に子どもへの影響を簡単に紹介して終わりましょう。
子どもへの影響はまだほとんど調査されておらず、ハッキリしていません。子どもにタブレットを持たせたり、学校でもタブレットを使ったりするようになったのが最近です。おそらく影響がわかるのは、今の子どもたちが大人になった頃でしょう。しかしそれじゃもう遅い。だから今から議論していくことが大切なんだと思います。

タブレット学習のワナ

先ほどもちらっと触れましたが、コロナ禍で急激に増えたタブレット学習。もちろんいい面もあります。しかし、大学病院小児科の教授ヒューゴ・ラーゲルクランツ氏は、小さな子どもにタブレットをもたせると発育が遅れると警鐘を鳴らしています。

なぜでしょうか?
例えば、パズルなどの知育玩具はアプリとしても提供されていますが、パズルを実際に掴んで、はめる、という行為と、タブレットをスワイプしたりする能力は全く別物。指の運動能力や形や材質の感覚を学ぶことはできません。

書く能力についても同様です。PCのメモ帳などを使うと記憶しにくいという話がありましたが、タブレットで書き取りを勉強した子どもたちは、大人になったとき、文字が書けるのでしょうか。僕たちは子どもの頃、鉛筆を使って何度も書き取りを勉強しました。結果、PCでタイピングする機会が圧倒的に増えても、鉛筆の使い方を忘れることはありませんし、大体の文字は書けます。
しかし、タブレットを使って指先でなぞる形で文字を勉強した子どもが、大人になった時に文字を書くことができるのか、それはわかりません。

アメリカの小児科医のグループは「普通に遊ぶ代わりにタブレットやスマホをつかっている子どもは、のちのちの理論教科を学ぶために必要な運動能力を習得できない」と警告しています。

前頭葉が発達しないデジタル世代

さらに怖いことがあります。脳は後ろから前に向かって発達していきます。そして最後に成熟するのが前頭葉という感情など人間的な機能を司る部分です。
前頭葉は複雑な社会で協調して生きるため、人間同士の関係や感情を理解するために、何年も訓練して徐々に成熟していきます。

しかし子どものころからデジタルデバイスを使い、公園で遊ぶような社会性を経験せずに育った子どもは前頭葉が十分に発達しない、つまり社会性が欠け、感情が理解できない大人になるのではないか、と言われています。

社会性はテキストで教えられるものではなく、いろいろな方法で身につけていくものです。公園でボールをぶつけてしまった、それを謝る。限られた砂場を友だちと譲り合う。そうしたことで少しずつ身に付く社会性は、タブレットでは学べなさそうです。

すぐに満たされることに慣れる

デジタルはできるだけ”早く””速く”を目指して進歩してきました。通信速度もそうですし、ちょっとカテゴリは違いますが、アマゾンの翌日配送もそうでしょう。Youtubeの再生ボタンを押せばすぐに再生される、読みたい電子書籍をタップすれば、すぐに本文が見れる。SNSに投稿すれば、すぐにフォロワーからリアクションがもらえる。
しかしこれがかなり怖い影響を与えています。

有名な「マシュマロ・テスト」と呼ばれる実験があります。これは子どもにマシュマロを今すぐ1個食べるか、しばらく我慢して2個食べるか子どもたちに選ばせるもので、その後10年以上の追跡調査までされています。その結果、マシュマロを我慢して2個食べた子ども、つまり我慢強く自制心がある子どもは学歴が高く、高収入の仕事についている傾向にあるというものです。

我慢をする、ということは人間社会で非常に重要なスキルです。なぜなら大切なものほど時間がかかることが多いからです。

学びが多い本は、学びが少ない本より時間がかかります。転職や独立に役立つ高度なスキルを習得するにも時間がかかります。資産形成も、キャリアアップも、時間がかかります。資産形成なんて、相当うまくやるか、ベストなタイミングで始めないと、最初の5年くらいは効果を実感できないという人もいるくらいです。

しかし先に行ったように、デジタルは”早く””速く”を目指して進化してきました。
その結果、スマホをよく使う人のほうが衝動的になりやすく、すぐに結果を求める傾向にある(逆に言うと、成果が出るのはかなり先だけど重要なことを頑張れない)そうです。

これは非常に怖い。人生100年時代、以前LIFE SPANを紹介した時は120年時代と言いましたが、現代では効果が出るまでに何年もかかるような資産形成や大人の学び直しなどが重要視されています。そんな中、人はますます短絡的、短期的に物事を考えるようになっている…

ちなみにスマホを使っていない人に3ヶ月スマホを使ってもらいマシュマロ・テストのように報酬を先に延ばすタイプの質問をすると、以前よりすぐに結果を欲しがるようになったそうです。

また、ある音楽教師は、最近の子ども達はすぐに結果が出ることに慣れすぎて、上達できないとすぐに辞めてしまうとボヤいていたそうです。

最近の学校では、休み時間になるとみんな席に着いたまま、一斉にポケットからスマホを取り出すそうです。僕たちが子どものときは隣のクラスの友達に喋りにいったり、少なくとも休み時間まで”着席”しているなんてことはありませんでした…

唯一の解決策はやっぱり…

ここまでスマホ脳の怖いところばかり紹介してきましたが、実際に怖いんです。僕は読んでいて、スマホとの付き合い方を考えないといけないなと思いました。僕はPCがメインなのでまだマシな方。PCはちゃんとデスクに行って、ロックを解除して使わないといけませんから、SNSの通知を見るためだけにわざわざ使ったりはしません。

とはいえ、スマホが脳に与える影響は想像以上に大きい。なにかいい解決策はないのか、スマホを捨てるとさすがに社会生活が保てないから、それ以外の方法で…

と思っていたらありました。本書にはしっかり解決策が書いてあった。

運動」です。

がっかりしないでください。仕方ないんです。本書には次の言葉が載っていました。カリフォルニア大学の神経学教授の言葉です。

脳は体を動かすためにできている。そこを理解しなければ、多くの失敗を重ねることになるだろう。

そう、当たり前のことなのにすっかり忘れていました。脳は考えるためのものじゃないんです。脳を考えるために使っているのは人間など一部の生き物だけで、それも大脳新皮質などと呼ばれる脳の新しい領域だけです。脳の大事な部分はすべて、体を動かすために使っています。

本書では他にもエピソードが紹介されていました。筆者は同じような話を何百回も聞いたことがあるそうです。嘘だと思うかもしれませんが、一度読んで見てください。

仕事から帰宅するとへとへとだ。ソファに倒れ込んでしまいたいと全身が叫んでいる。でも心を落ち着かせる一番いい方法は、ランニングシューズを履いて外に出ること。ランニングから戻るとストレスは消えている。さっきより気分が落ち着き、集中力も戻っている。もっと早くこのことを知っていればなあ。

運動が大事なんてことはもう聞き飽きたかもしれませんが、聞き飽きるほど言わないとダメなんでしょう。運動によって心が健康になることは当たり前で、基本的にはすべての知的能力が運動によって向上すると言っています。

ちなみに運動といってもそこまで激しいことをする必要はなく、軽いランニングとかでもいいそうです。たったそれだけでも、ランニング後にはテストの成績がよくなるなど、即効性があるみたいです。

これまで見てきたように、スマホの一番の問題は集中力や記憶力、自制心を失わせることです。それが少しの運動で回復するんです。

これも進化の歴史にありました。人類は歴史の大半、狩猟採集です。猟に出かけ、獲物を取ることで生き延びてきました。また、運動能力があることで、猛獣から逃げることもできました。
つまり、体を動かすというのは、生死を左右する状況なので、脳はかなりの知的能力を発揮してくれます。猛獣に追いかけられているのに脳が寝ぼけていたら大変ですよね。

具体的な運動量としては、6ヶ月間に52時間、週に直すと2時間ほどだそうです。週に4回、30分程度の運動をするということなので結構大変ですが、それだけで脳の回転が早くなり、ストレスからも開放されるなら、やる価値はありそうです。

脱・スマホ脳

さて今回もたっぷり書いてしまいました。スマホ脳、昨日寄った本屋さんで見かけて「最近話題のやつだよなー」という感じでとりあえず買って、帰りにカフェで読んでいたら「これはすぐに記事にしなければ!」という使命感に駆られました。
少しでも伝われば幸いですが、それくらい大切なことを教えてくれる本です。

本書では「デジタル時代のアドバイス」として、今僕たちがスマホとどう付き合うべきか、子どもたちにはどうすべきかなどが書かれていますが、ここでそこまで紹介する必要はないでしょう。
スマホが思っているよりヤバいんだ、とりあえず運動最強なんだってことだけ伝われば幸いです。

ということで、僕はこれからスマホの通知を工夫したり、不要なアプリは削除してPCでだけ使うようにしたり、スマホからちょっとずつ離れていきたいなと思います。

これを書いている今もデスクにはスマホがあって、さっききたLINE通知が気になって仕方がない…

それでは今日もより良い学びと、いい本との出会いを願って。
ランニングとは言わないまでも、まず散歩がてらウォーキングに出かけましょう!(スマホの電源は切ってくださいね)

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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