【Art Thinking】アート思考のど真ん中にある1冊

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【Art Thinking】アート思考のど真ん中にある1冊
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こんにちは。夫です。

我々夫婦、デートは本屋か美術館。記念日には絵を描きに行くくらい、素人ながらもアート好き。過去にはアート関連の本も何冊か紹介してきました。

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その中でも今日紹介するのは、これぞアート思考のど真ん中!という本です。「13歳からのアート思考」はアートを取り上げて、実際のアート思考のプロセスを教えてくれました。ですが本来、アート思考は人の数だけ答えがあるもの。「これがアート思考ですよ」というのはあくまでも初心者向けの手引きにすぎません。

今日紹介する本のタイトルは「Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」です。本書には色々なアーティスト、作品、アートプロジェクトが出てきますが、その一つ一つを深掘りするプロセスは読者に任されています(多少のヒントはくれます)。

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アート思考とは?現代アートとは?アートの価値とは?

そんな疑問について、分かりやすい答えはくれません。ですが実際にこういう作品がある。こういうコンセプトで活動しているアーティストがいて、このように評価されている。そうしたことを見る中で、自分なりの答えがぼんやり見えてきました。

本書を読んだ後、美術館の楽しみが一段と深くなった気がします。また自分の生活や仕事にアート思考を使っていく道筋も見えてきました。「13歳からのアート思考」は僕に「アートって面白い!」というきっかけを与えてくれた本ですが、本書は「アートって必要だ!」って感じさせてくれる一冊。ぜひアート好きの方は一度手に取って見てください。

それでは本書の内容を紹介していきますが、あくまで僕の備忘録。読みやすい内容ではないと思うので悪しからず。興味のあるフレーズを一つでも見つけたら、ぜひ手に取って見てください。

アート思考はビジネスに役立つのか?

本書は副題に「ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」とあるので、アート思考やアート作品をビジネスにどう活かすのか書かれているのかと思いきや、全く違います。

最近はアート教養ブームで、オフィスにアート作品を飾り、美術館やギャラリーに足を運ぶ経営者やビジネスパーソンが多くなってきたように思います。この流れは、アートの魅力を再確認するいい機会にもなっています。実際、知識、教養としてのアート以上に、アートを通じて自分を磨き、本来、人間が持つ感性や感覚といった自身のポテンシャルを引き出すことが大切で、自らの未知の可能性を引き出す方法に繋がります。
しかしながら、注意しておくべき点があります。アートやアーティストから学びを得られることは数多くありますが、基本的には、ビジネスとアートは大きく異なっているのです。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

アートとビジネスは異なる。これが本書に出てくる最初の主張です。アーティストが経済的に成功したからといって、アートが成功したかどうかは別問題。ですがビジネスであれば、経済的な成功とビジネス的な成功はほとんどイコールです。
ビジネスはそのほとんどを数値化して評価することができますが、アートの本質はやむことなき自己探求。問題提起による価値を創造することと、その姿勢こそがアーティストの成功に関わってきます。

アート思考をビジネスに活かす!みたいなコンセプトはよく見かけますが、僕自身、アートがビジネスで役立った経験って、直接的にはないんですよね…そう考えると「アートとビジネスは別物」という言葉にはハッとさせられます。

なのに、なぜアートを学ぶべきなのか。
それはビジネスでも、課題が広く、深くなり続ける中、課題の立て方が問われるようになってきました。当たり前にある課題を、当たり前に解決するだけではビジネスとして成り立たなくなってきているのです。だからこそ重要なのが、課題の立て方、すなわち問題提起です。そしてそれは、アーティストが生涯をかけて追求し続けてきたものでもあるんです。

ビジネスパーソンが、アーティストの創造性やものの味方を学んだからといって、すぐに彼らのような感性や思考法が身につくわけではありませんが、人生のどこかで行き詰まったとき、常識的ではない別の観点・視点で考えたいときに、アートはきっと役に立ちます。
なぜなら絵を描くことや見ることといった芸術体験は、一種の「常識からの逸脱行為」だからです。
<中略>
ビジネスにおけるイノベーションもまた、そのような「常識からの逸脱行為」によって、生まれてくるものではないでしょうか。
<中略>
イノベーティブな発想をするビジネスパーソンであれば、アートとの相性はいいはずです。ビジネスパーソンもアーティストと同様にクリエイティブな発想で仕事をすることが、仕事における新たな領域を切り開いていく上では必要だからです。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

半世紀以上も前、シカゴ美術館附属美術大学である実験が行われました。美大生四十人をスタジオに連れていき、静物画を描くように指示します。静物画のモチーフとして、絵画の授業でよく使われるような題材からかなり奇抜なものまで用意しました。

この実験で見るのは美大生がどんな絵を描くかではありません。大量のモチーフから、何をどのように選ぶのかを見ていたのです。
モチーフを選ぶプロセスは2つに分かれ、一方の学生はすぐにモチーフを決め、構図を組み立て、静物画に取り掛かりました。もう一方はいくつもののモチーフを手に取って何を描くのか散々悩み、何度も配置を直し、構想を練ってから取り掛かりました。

この実験では前者の学生を「問題解決型(静物画を描くというタスクをどのように解決するかにフォーカス)」で後者を「問題発見型(自分が何を描きたいのかにフォーカス)」と言いました。

その後、小さな美術展を開き、美術専門家に学生の作品を評価してもらいます。すると、問題発見型の学生の作品の方がはるかにクリエイティブだと評価したのです。さらに追跡調査したところ。問題解決型の学生の多くが美術と縁が切れた人生を歩んでいるのに対し、問題発見型の多くがプロの芸術家として仕事をしていたのです。

こういう例を聞くと僕はいつも「自分は問題解決型だな…」とちょっと落ち込みます。目の前に課題があったとき、それを解決する手段を考え、最短・最高効率で実行する。その能力には一定の自信があるのですが、じっと立ち止まってそもそも問題は何かを考えるというのが苦手なんですよね…

本書で紹介されているアート作品で、「荒廃した未来における水筒をデザインする」という課題に立ち向かったものがあります。高品質な水が手に入りにくい、環境が破壊された世界で、どのような水筒があればいいのか、ビジネスデザインコンペでもありそうな題材です。

普通なら浄水機能付き水筒などを考えると思いますが、この作品を作ったデザイン・エンジニアリング集団のタクラムは全く違うものを作りました。

タクラムが作った未来の水筒。それは大量の人工臓器でした。呼気から出る水分を結露させて回収する器具だったり、血液の温度を一定に保ち発汗を抑制するための人工血管だったり、膀胱内の尿を限界まで凝縮するための人工膀胱だったりなどです。

つまりタクラムは「荒廃した未来における水筒」として、「そもそも人間が使う水の量を極限まで減らせば、荒廃した未来でも生きていけるんじゃないか?」と問題提起したんです。そうして人間が必要とする水分量を極限まで減らす人工臓器をデザインしました。いわば人間自体を水筒にしてしまおうという発想です。

すごいですよね。僕が思いつくのは、浄水機能付き水筒、海水を真水に変える水筒とか、今の延長線上にあるものばかりでした。課題を解決するという思考プロセスでは辿り着けない、問いを立て直すというプロセスがあって初めて辿り着けるアイデアです。

アーティストは「炭鉱のカナリア」

筆者はアーティストを「炭鉱のカナリア」にたとえています。炭鉱のカナリアとは、炭鉱で有毒ガスが発生していたら人より先にカナリアが気づくので、カナリアを連れて行ったことに由来します。要するにアーティストとは、普通の人間がまだ気づいていない問題に一歩先に気づいて、それを体感できるものとして表現する存在だということです。

では炭鉱のカナリアのように、まだ見えていない、多くの人が気づいていない課題を見つけ出す「問い」はどのように生まれるのでしょうか。

筆者は「問い」を見つけるにはセンスが必要で、そのセンスは養うことができると考えています。

まずは自分が世界を正しく見えている、理解できていると考えている曇った目を取り除くこと。人間は世界を知覚するとき、言語や色、形といった人間が発明してきた方法で知覚しています。ですがそれらは本質的には自然界に存在しないものです。
輪郭線や遠近法といった表現技術も自然界には存在しません。「黄色」という色もある特定の波長を人間の目が受け取ったときに感じるものをそのように表現しているだけで、黄色というものが存在しているわけではありません。

だからこそ僕たちは平面に描かれた人の顔をみて、人だとわかるんです。ですが物質レベルで見れば、絵に描かれた人が人なわけがないんです。それについて筆者はこのように言っています。

これは生まれ持った視覚機能による認識とは異なる、人が成長する過程で教育された認識で、”文化的な眼”とでもいうべきものです。この架空のものを本物らしく認識してしまうメカニズムが、人間に視覚的なさまざまなイメージを呼び覚まし「認識の跳躍(誤謬)」をもたらしています。
<中略>
これはときとしてものごとを考える上では常識という壁になるのです。特に新しくものを見たり考えたりする場合は、知らず知らずのうちに常識という殻から抜け出せずに中に留まってしまいます。なぜなら、すでに既存の文化が刷り込まれているために、それを自分の意識から引き剥がして対象化して疑うことが困難だからです。普段から、無意識にできる行動が、かえって「なぜ、それができているのだろうか?」と疑うことを許さないからです。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

僕たちの眼は見た瞬間、それを「こういうものだな」と考えてしまう。僕たちの脳は何かに出会った瞬間「これはあれと同じだな」と考えてしまう。そのように常識によって曇った眼だと、常識を壊すイノベーティブな問いは生まれてこない、ということですね…

また筆者は互換による近くを大切にすることも、問いのセンスを磨く上で重要だと言います。眼だけでなく、触覚や味覚聴覚なども含めて、体全体で知覚する、外界と直接向き合うことです。
しかしこれも僕たちは忘れてしまいます。歩いていて、足の裏がどのように地面から刺激を受け、地面に刺激を与えているのか意識することはないでしょう。そうしたところに意識を向けると、何か違うものと出会ったとき、「これは何か違うな」と感じ取ることができます。眼だけで知覚している人と比べて、互換全体で感じ取る人は、そうした出会いのチャンスを5倍にすることができるわけです。

AIの弱点

このことから、最近話題のAIの弱点も見えてきます。

僕はコピーライティングを仕事にしているので、AIの進歩には日々驚かされていますし、10年後同じ仕事はできないだろうなとひしひし感じています…

人間にはあってAIにはないもの。それが先ほどから触れている五感、身体感覚です。ChatGPTがどれほど流暢に話そうと、言葉の意味を理解しているわけではありません。膨大な統計分析から、それっぽいことをアウトプットしているだけで、裏側にある意図や意味は全く理解できていないのです。

例えば、「縞模様」と「ウマ」を知っている子どもに「シマウマ」という単語を教えると、子どもはすぐに縞模様とウマのイメージを組み合わせて架空のシマウマを想像することができます。
一方、AIはすべてを意味のない記号として認識しているので、新しく定義されたシマウマを生み出すことができません。

僕は画像生成AIもよく使っていますが、これもあくまで単語それぞれを記号として認識し、すでに持っているデータから混ぜ合わせているだけです。LeonardAIもDALL·Eも一つの指示に対して複数の画像を生成しますが「意味がわからないので可能性が高そうなものをいくつか提出するので選んでください」と消極的な態度のようにも思えますね。

なぜアーティストたちは、世界を疑い、別の見方で社会や世界を捉えようとするのか。それは自らが世界と直に触れ合いたいと望んでいるからです。
アーティストたちは、歴史的な視野の中に自分を置き、自らの人生を通して、新たな見方を歴史に加えるべく、日々努力する人々です。そして優れたアーティストたちというのは、何らかの成果を出している人たちなのです。ですから彼らの作品を通してアーティストの思考を追体験することで、これまで述べてきたような全く新しい見方を学ぶことができるのです。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

なぜピカソはキュビズムで人を表現しようとしたのか?なぜモネは睡蓮ばかりを書いたのか。その背景を考えることがアート思考で、曇った眼を捨て世界と真正面から接することにつながります。モネが何枚も睡蓮と水面を描いたことには何らかの探究があったのでしょう。ただ睡蓮が浮かんでいる水面に、何年もかけて探求する価値と、それだけの深さがあるんです。僕たちがビジネスで「次のマーケティング施策が浮かばない…」なんて、贅沢すぎる悩みだと気付きますね。

アートとアントレプレナーシップの共通点

アップル創業者スティーブ・ジョブズは、大学時代に電気工学ではなく文字のアート、カリグラフィーを学んでいました。全く関係のないアートの素養が、アップルをアップルたらしめる要素になったわけです。
米ヤフーの元CEOメリッサ・メイヤーも画家である母親から大きな影響を受けましたし、Airbnb創業者のジョー・ゲビアは学生時代にアートを学び、GoPro創業者ニック・ウッドマンは視覚芸術を学んでいます。
決済サービスのスクエア創業者のジム・マッケルビーはガラス工芸などを手がけるアーティストでもあり、彼の会社スクエアがデザインしたカードリーダーはMoMAに展示されています。

なぜイノベーターたちの多くが、アートと関わりを持っているのか。

アートとビジネスは全く違う目標とプロセスを持ちますが、根本では共通する部分があります。

アートは「ゼロから価値を生み出す創造的活動であり、ビジョンと、それを実現させるためのうちなる情熱が必要」なものですが、同じことがアントレプレナーシップにもいえます。

すでに紹介したようにアートに触れることは、常識を疑い、世界と直接関わることで、新しい問いを立てる行為です。そのため企業としてアートに取り組む例もあります。
化粧品会社のポーラは新入社員向けの研修で名画鑑賞を行い、全日本空輸でもグローバル教養力を習得するために西洋美術の鑑賞法を教育しています。
フェイスブックの本社はウォールアートで埋め尽くされ、マイクロソフトも数々のコレクションを持ち「社内に絵画を展示することが生産性向上につながる」と公表しています。
証券会社のマネックスグループは「アート・イン・ザ・オフィス」というプロジェクトで、公募で選ばれたアーティストの作品を展示しています。

そして美術館には、京セラ美術館、ベネッセ美術館、大塚国際美術館など、成功した企業が主体となって運営されているものが少なくありません。

このようにアートに取り組む企業は少なくありませんし、アートがビジネスに役立つとする知見も一般的になってきました。ですが、やはりアートとビジネスは別物です。

勘違いしてほしくないのは、アートとビジネスは、実利的に直結するものではないということです。得た知識をすぐに自分の仕事の成果につなげようとする発想は、アートからはほど遠い考え方です。
アートが示唆するものは、ある種の哲学のようなものであり、安直なハウツーに関するたぐいのものではありません。
<中略>
確かに作品の鑑賞を通して、アートが歩んできた破壊と創造の歴史を知ることで、様々な気づきもあるでしょう。
しかし、アートに触れることにより、自分自身が変わっていくような体験は、もしかすると5年後、10年後にストックされてきた知識が、ふと何かと結びつくことでようやく実感できるレベルなのかもしれないのです。アートと接して得られる効果は、いわばあなたという人間の中に澱のようにたまっていき思考や人格に深く影響を与えるものです。それは、即効性こそないものの、あなたを確実に人間的な成長へと導くでしょう。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

週末美術館にいくビジネスパーソンは年収が高い!みたいな記事を読んで美術館にいき始めた僕としては「得た知識をすぐに自分の仕事の成果につなげようとする発想は、アートからはほど遠い考え方」というのは耳が痛いですね。もちろん今はもっと深く、真正面からアートと向き合いたいと考えています。

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アート鑑賞は自分の頭で考えるトレーニング

アートがビジネスに活きる理由として、優れたアートはいつも何か深い問いかけを行っているので、想像力を働かせ理解しようとすることで、鑑賞者の考える力を鍛えることができるということもあります。

特に現代アートは受動的に感性で感じればいいわけではなく、感じると同時に考える姿勢が必要です。
例えば20世紀最も重要な作品の一つであるデュシャンの「泉」はただ便器にサインして展示しただけ。この作品は「これはアートなのか?」という強烈な問いを与えてくれますが、ディシャン本人が答えを語っていない以上、答えは想像するしかありません。発表から100年以上経った今も、「泉」がどのような問いかけを行い、適切な答えは何なのか、専門家やファンの間で議論が続けられています。

100年以上も答えが見つからない問い。数学の未解決問題でもそれくらい長く答えが見つかっていないものもありますが、それらに取り組もうと思うと膨大な知識が必要になります。デュシャンの泉は数学の未解決問題くらい厄介な問題を、そうした知識なしに存分に考えることができるものということもできますね。

草間彌生のかぼちゃで有名な直島には家プロジェクトという普通の家(空き家など)をアート空間にする「家プロジェクト」があります。その一つ、南寺にはジェームズ・タレルがつくったインスタレーション「バックサイド・オブ・ザ・ムーン」があります。

これもまた、同じ思考、常識の中で、同じ行動を繰り返して凝り固まってしまった固定観念を壊すアートの一つ。

この空間に案内された観客は真っ暗闇を壁をつたって進み、その先にあるベンチに手探りで腰掛け、10分、20分と真っ暗闇に放置されます。
すると暗闇の中にぼんやりとした光が見えてくるような気がしますが、すぐに見えなくなったり、形を失ったりして、気のせいだったのかな?と混乱します。やがて暗闇に目が慣れると、はっきりと光が見えるようになってきます。

照明が変化したわけではありません。最初からわずかな光が出ていたのですが、明るい屋外から入った人はその光を感知することができないのです。ですが瞳孔が開いてくると徐々に見えてくる。これを一度体験すると、いかに光が不思議な存在で、自分が見ているものが不確かかを突きつけられます。

実は今年、妻と友人と三人で直島に行って、南寺に行ってきました。南寺でまさしく本書で説明されたような体験をしたのですが、一緒に行った友人は「いや、光が動いてないなんてことはないはずだ」と言い張っていました。それくらい不思議な体験でしたね。

現代アートは、事前に学習することなく、いきなり鑑賞してもすぐ理解できるものではありません。私でも、作品を見て評価に戸惑うことはよくあります。作品のコンテクストから推察して理解できる部分もあれば、わからない部分もある、それが正直なところです。
ただし、それをわかろうとするプロセスの楽しさが、現代アートの魅力ともいえます。「わからないから、つまらない」ではなく、「わからないから、面白い」のです。
<中略>
アートに限らず、すべての事象は、いくつかの複雑な要素が絡み合う形で、ある構造をつくり出しているといいます。しかも、構造はひとつではなく複雑で、その中にも様々な要素が内包されている。その構造と要素のすべてを理解することは不可能です。10の要素のうち4つしかわからない。それでも私たちは、それが「わかる」のかどうかを「自分の頭の中に持っている要素や構造と合致するかどうか」で、瞬時に判断しているのです。
人は4つの要素しかわからなかったとしても、それがある程度、自分の頭の中のテンプレートに重なれば、10の要素全てを「わかった」ものとしてしまう。まだ、理解できていない6つの要素があるにも関わらずたった4つの要素だけで、思い込みにより判断してしまうのです。
ビジネスの場に限らず、そうした思い込みで対象を判断している段階では、対象物を正しく理解しているとはいえません。私たちはそのように「わかったつもり」でいろいろなものを判断している危険性があります。ビジネスシーンでも、伝える側と受け手の思い込みにより、情報が正確に伝達されないことは、よくあることかとおもいます。
現代アートを鑑賞していると「ここまではわかるけれど、そこから先はわからない」といったことがよく起こります。分かろうとする努力を続けているうちに「わからない」ことが「わかる」ようにもなるのです。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

本書ではここからアートと投資、アートの価値についても深掘りし、現役アーティストとして史上最高額で落札された記録を持つジェフ・クーンズや日本人アーティストとしてグローバルでトップに立つ水玉の女王、草間彌生の話なども出てきます。興味がある方はぜひ読んでみてください。

現代アート鑑賞法

現代アートは先人たちの「これってアートなの?」という文脈の上にあるので、その作品の多くが理解不能です。

ちなみに、現代アートとは現代に作られたアートという意味ではなく、現代アートという20世紀初頭のアートの文脈に則った作品を指します。

現代アートを理解するためには、歴史的、哲学的な見方を大切にして大きな物語の中で捉えると同時に、一人の人間として目の前の現実を正面から見る大義を探りながらも個別を活かす。ミクロとマクロを同時に見たり、膨大な時間軸や世界観と目の前にあるものや自分自身との関係性を探る、そんな関わり方が必要です。

何だか難しそうですが、その前提となるのがゼロベースで考えるということ。

通常、何かを考えるときに使う方法は帰納的な思考法です。1つの体験を手掛かりに、別の問題を分析するものですが、この方法は過去という限定された条件を元に考えるため、捉え方が狭小化してしまいます。ゼロベースで考えるということは過去の経験や常識を一旦捨て、目の前の問題に向き合うということです。

帰納的思考といえば、「言語の本質」という本で人間だけが言語を手に入れた理由は、唯一、帰納的推論を行う動物だからだ、という話がありました。本を読んでいると全く別の知識どうしが偶然組み合わさったりするから面白いんですよね。

人間の推論は間違いだらけだから言語を得た?「言語の本質」
こんにちは。夫です。今日紹介するのは認知科学と発達心理学、異なる角度で言語の研究を続ける二人の言語学者の共著「言語の本質」です。 夫 タイトルを見た時、硬いな〜って思いました。とりあえず手に取って見たものの、相当読みにくいし、一度読んだだけ...

パブロ・ピカソは「子どもは誰でも芸術家だ。問題は、大人になってからも芸術家でいられるかどうかだ」と言いました。その意味は、子どもは大人の常識を持ち合わせておらず、社会的経験も多くありませんが、その博士に近い状態であることによって、かえって自由にゼロベースで考えることができるということです。しかしながら、大人になり常識を身につけるとそれに縛られて自由に考えられない。だから意識してゼロベースで考えることが必要になるのです。
<中略>
「常識を疑う」あるいは「ゼロベースで考える」は、現代アートを鑑賞する基本的な姿勢で、ここから始めると言ってもいいものです。
アーティストには自分が「正しい」と思えば、常識に従ったり、空気を読んだりせずに突き進むところがあります。現代アートと向き合いつつ、ゼロベース思考を身につけて新しい発想を得てください。ビジネスパーソンにとって有意義な時間をつくれるはずです。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

現代アートの三大要素

筆者は現代アートについて「現代社会の課題に対して、何らかの批評性を持ち、また、美術史の文脈の中で、なにがしかの美的な解釈を行い、社会に意味を提供し、新しい価値をつくり出すこと」と定義しています。
たんに「きれいなもの」というものではなく、知性と感性を使って今の世界から人間を捉える行為、その背景として歴史的、哲学的。社会的な視点がある、ということです。

こうした前提の元、現代アートを理解するヒントが現代アーティストの杉本博司氏が語った「現代アートの三大要素」にあります。杉本氏は現代アートについて「視覚的にある強いものが存在し、その中に思考的な要素が階層的に入っている」と言いました。「視覚的に強いもの」と「思考的な要素」が「階層的」になっていることを「インパクト」「コンセプト」「レイヤー」という言葉で、現代アートを構成する三大要素と定義しています。

インパクトは、その言葉通り、何か人と違ったオリジナリティや個性です。大きい、小さい、硬い、柔らかい、綺麗、汚い、なんでもいいから人と違ったインパクトが必要です。また見た目だけでなく、アーティスト本人の行動や発言、一目でわかるコンセプトなどもインパクトにつながります。

コンセプトは、その作品を成り立たせるもの、作品の命ともいうべきものです。現代アートは出来上がったものだけを見ると、何をテーマにして何にフォーカスしているのかを知らないと、意味不明になります。

コンセプトを知らず、作品そのものから何かを感じ取る鑑賞もいいですが、現代アートに対してはコンセプトを知った上で見た方が理解のヒントが得られるということですね。

そして3つ目はレイヤーですが、これは解釈可能性の幅を表します。いい作品はいくつもの解釈ができ、議論を巻き起こします。

アートを鑑賞するということは、アーティストから発せられた「問い」を受け取ることです。アーティストの発した問いについて考え、作品と対話することが鑑賞の醍醐味です。
答えを自分なりに考える、自問自答していくことが現代アートを理解するプロセスなのです。
ビジネスでは「わからない」は悪いこととされていますが。現代アートにとっては、「わからない」はむしろよいことなのです。私たちは「わからない」ものに接することで思考が促されるからです。
引用:Art Thinking アート思考-ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法

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筆者注目の現代アーティスト

本書では現代アートの見方をさらに深ぼりするため、デュシャンやアンディ・ウォーホルなどを深掘りしています。そして最後に付録として、筆者が注目する現代アーティストをリストアップしていました。現代アーティストって日本人なら草間彌生と村上隆と、あと何人知ってるだろう…ってレベルですが、それって音楽ならドリカムとミスチルしかしりませんって言ってるようなもので、アート好きを自称するわけにはいきません(笑)。ということで、筆者があげたおすすめアーティストを実際に見て見るためにここに残しておきます。

  • リアム・ギリック…作品制作だけでなく展覧会のキュレーションや美術批評、小説執筆なども行うマルチアーティスト。生活を芸術化することをテーマとして、ミニマルアート、カラーフィールド・ペインティング、オプアート等を制作の土台にしながらより複合的な手法で作品を展開させており、アルミニウムやアクリルといった工業素材を用い手すりやドアといった生活の一部と芸術を共存させている。
  • リクリット・ティラバーニャ…タイカレーを振る舞うなどのパフォーマンスで注目を浴び、観客とのコミュニケーションを重視したリレーショナル・アートの第一人者的存在。アルゼンチン生まれの対人で父親は外交官で様々な国を転々としてきた経験から、異文化への適応をテーマに、食事や会話など日常的な営みを自分のアパートと同じ空間で再現するなど、目に見えるオブジェは残らないアートを展開している。
  • 柳幸典…ニューヨークで活躍し大学准教授も務めた地位を全て捨て、資本主義からなるべく距離を置くため、広島県の離島、百島からアートを発信している。アーティストを目指した理由も、アートの領域が資本主義と一線を画し、資本主義に対して批評精神を持ち得る唯一の仕事と考えたため。日本国憲法9条の条文をバラバラにしてネオンサインにしたり、産業廃棄物や放射性物質、津波の漂流物らしきものでゴジラの頭部をかたどったり、反戦、反原発、反資本主義といったラディカルな主張が伺える。
  • スウ・ドーホー…半透明の布を使った大型彫刻シリーズで世界に認められたアジアを代表する作家。物理的な空間と移動、記憶について思考をめぐらせ、家の中のアイテムを象った彫刻やドローイング、映像などを通じて個人と集団、国家の関係性を探り続けている。代表作「パーフェクトホーム」はソウルの実家を精密に採寸し、薄い布を縫製して、原寸大で再現する彫刻作品。スーツケースに入れて持ち運べると同時に、吊り下げればどこにいても原寸大の実家を出現させることができる。
  • ジェフ・クーンズ…現役で活動する現代アーティストの中では、オークション市場で約100億円という最も高額で取引された作家。イメージコンサルタントを雇って国際的な美術史に、作品に囲まれた自分の写真を全面広告として出すなど、これまでのアーティストとは違う方法でブランディングしてきた。その評価は真っ二つに分かれており、美術史において最重要とする者もいれば、下品で商業的だと批評する人もいる。ウォール街の株式トレーダーという異色の経歴を持っている。
  • ダミアン・ハースト…イギリスで最も稼ぐアーティストとして知られており、「死」をテーマにした作品を扱っている。その作品は、サメや牛、羊などの動物をホルマリン漬けにしたり、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを与える。またサザビーズの歴史において初めて、ギャラリーやディーラーを通さずにアーティスト本人が出品しオークションにかけ、当時の現代アーティスト最高額を記録したことでも知られる。
  • 村上隆…絵画や彫刻などのファインアートを中心に、ファッション、グッズ販売、アニメーション映画など、従来のアートメディア以外の領域でも積極的に活動している。「ハイ」と「ロウ」の境界線を曖昧にしたスーパーフラットで評価されているが浮世絵などの日本の伝統美術と、日本のポップカルチャーの類似性や同質性を見出し、一つの画面位圧縮したもの。「マティスのような天才にはなれないが、ピカソやウォーホル程度の芸術家の見た風景ならわかる。彼らの行ったマネジメントやイメージ作りなどを研究し、自分のイメージ作りにも参考にしている」といっており、アートをビジネスとして捉え、多くの人を雇用する会社の代表でもある。
  • 増田セバスチャン…きゃりーぱみゅぱみゅのMVで注目され「カワイイカルチャー」を牽引してきたアートディレクター。アート、エンターテインメント、サブカルチャーの共存を目論んでいる。1979年には実写人形アニメーション映画やCG、3D加工、色彩処理などを施した「くるみ割り人形」が初監督作品として公開され、ゆうばり国際映画祭で受賞。
  • 松山智一…ナイキやリーバイスとのコラボでも知られるアーティスト。様々なジャンルのアートを融合させオリジナルに消化して再構築したシリーズで、浮世絵、抽象絵画、ポップアート、フランス近代界が、ファッション誌の切り抜き、着物、ネット上の著作権フリーの素材などをリミックスして制作。ヒップホップなどの音楽的アプローチも含まれている。
  • 葉山有樹…有田で活動する陶芸家…伝統を下敷きにしながら独自の歴史観。世界観によって、物語性の強い画面を制作している。陶芸制作のほか、絵本や小説などを手掛けており、その物語が焼き物を飾る装飾模様を作り出している。
  • 青木勝克世…白磁と染付という工芸の技法をインスタレーションに活用死ディストピア的な世界観を表現。植物が反映して全てを覆い尽くしていくような過剰な装飾性が特徴で、コンセプチュアルな現代アートのなかでものの魅力で見せているアーティスト。頭を使って解釈するのではなく。オブジェの魅力で注目されている。
  • 見附正康…伝統工芸の九谷焼「赤絵細描」を使い現代的なデザインを制作。大皿の制作では、隙間なく幾何学模様を書き込み、人間の技術を超えたような精密描写で、伝統技法であるにも関わらずコンピューターグラフィックを使ったかのような精度で描いている。
  • 桑田卓郎…現代の焼き物で注目を集めるセラミックアーティスト。陶芸の伝統的な技術に基づきながらも、様々な化学変化によって溶けたり弾けたり、無数の突起が出現したりといった形状になり、そこにメタリックやビビッドな配色、金やプラチナメッキでデコレーションを施し、圧倒的なオリジナリティを放つ。
  • 館鼻則孝…ファッションデザイナーでありながら現代アートの世界で活躍するアーティスト。レディーガガがコンサートで使用するヒールレスシューズで知られる。日本の古典的な染色技法である友禅染を用いた着物や下駄の製作を行い、再解釈を施している。
  • 草間彌生…水玉の女王と呼ばれ絵画、コラージュ、彫刻、パフォーマンス、インスタレーションなど、多岐にわたる作品を作っている。幼いころ、視界が水玉で覆われたり、花が話しかけてくるなどの幻覚や幻聴に悩まされていて、その幻覚や幻聴から逃れるために絵を描き始めた。ニューヨーク時代には全裸の男女に水玉を描き、過激なパフォーマンスを披露。ただ網目が反復する<無限のあみ>が、抽象表現主義として受け入れられた。かぼちゃのモチーフで知られるが、彼女にとっての自画像であり、かぼちゃへの変身願望があったと言われている。
  • 三島喜美代…新聞や雑誌、段ボール箱などを実物そっくりに焼き物で製作、他にもコカコーラやビールのアルミ缶を焼き物で作り、ゴミ箱やケースと共に展示している。高度経済成長で豊かさが広がる中、読み終えた新聞や雑誌などの廃棄物が大量に生み出され、公害が社会問題化する中、廃棄物を作品化し始めた。
  • 内藤礼…ひそやかで繊細な造形作品と、ビーズや糸布、水や風などを配置した緊張感あるインスタレーション作品を作成している。光による陰影、風の揺らぎ、水の流れ、見る時々で常に違う表情を見せ、気ままに変わりゆく自然を呼び込んだ神秘的な作品が特徴的。
  • 沖潤子…世界中からオファーが殺到する刺繍アーティスト。おびただしい針目が布地を埋め尽くす作品は狂気が孕んでいるようにさえ見える。古い布を繋ぎ合わせ長い時間をかけて針を刺していき、最後は石鹸で洗い、干す。こうした中で布が持つ歴史や記憶が呼び起こされ、作品として新たな生を得る。下絵を描かずに施される細かな糸による針目は、刺繍とは思えないほど濃密で力強い表情で鑑賞者を圧倒する。
  • 塩田千春…不安、記憶、夢、沈黙など形のないものを表現したパフォーマンス、インスタレーションで知られる。生と死という人間の根源的な問いに向かい合い、その場所やものに宿る記憶といった不在の中の存在感を糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心に、写真、立体、映像など様々な手法を用いた作品を発表。
  • 蜷川実花…写真家の枠を超え。映画、デザイン、ファッションなど幅広いジャンルで表現を続ける。写真家として数々の賞を受賞し、映画監督やファッションブランドなども手掛けている。ゴージャスな色彩とコントラスト、色彩の錯乱とも言える独特の画面を作り出す。
  • スプニツ子!…利益女子アーティストとして注目を集め、ポップでユーモラスな作品を繰り出している。男性でも生理を体験できる器具を製作。テクノロジーの発展で宇宙旅行、遺伝子組み換え食品など多くの変化が訪れたにも関わらず、なぜ女性は今も血を流し続けているのか、という問いから生まれた。
  • エル・アナツイ…ガーナ出身。ガーナの伝承や染色布、伝統の装飾模様などに影響を受けた木彫りやセラミックオブジェなどを製作。その後、インスタレーションを取り入れ巨大なタペストリーを思わせる作品を製作。大量のワインやアルコール飲料のキャップを同線で繋いで編み上げて作る巨大なタペストリーは、偶然目にしたゴミ袋が契機となった。空間に吊るされ彩り豊かな光を放つメタル・タペストリーは廃材であったと思えないような姿に再生され、鑑賞者を圧倒する。
  • エミリー・カーメ・ウングワレー…オーストラリアを代表するアボリジナルアートの画家。文字を持たないアボリジニは岩や樹皮に伝承を残してきた。それが現代アートの時代に受け入れられている。美術教育を受けたことは一度もなく、学校にすら行ったことがなく、さらに絵を描き始めたのは70歳を超えてから。しかし生涯で3000点以上の作品を残し、世界中のコレクションに収められている。
  • 井上有一…伝統的な芸術でありながら現代アートで全く評価されてこなかった書を取り入れた。死後、展覧会が世界中で行われるなど海外で再評価されている。大きな筆を使って描くパフォーマンスは、表現主義的な抽象画に匹敵する気迫があり、文字と絵画のぎりぎりのせめぎ合いの中で生まれる。
  • 柿沼康二…「書はアートたるか、己はアーティストたるか」を命題に、現代の書を探究している。歴史によって培われた伝統的な世界を守りつつも、現代アートに可能性を広げる独自の世界を追求している。
  • アイ・ウェイウェイ…中国の現代美術家で彫刻、インスタレーション、建築、キュレーティング、写真映像など表現領域が多岐にわたるだけでなく、社会評論家、政治評論家、文化評論家としても活動。中国政府のスタンスを公然と批判していることから逮捕・拘束され、現在も海外渡航やメディア出演が制限されているが、屈することなく表現を続けている。
  • ツァイ・グオチャン…中国出身、ニューヨーク在住の現代美術家で、火薬を用いた作品製作を行う。爆破した火薬の痕跡で描いた幅24メートル、高さ8メートルもの巨大な<夜桜>や、色彩表現を加えた火薬絵画<人生四季>、40メートル以上の長さいっぱいに99匹の狼が透明なガラスの壁に向かって繰り返し突き当たる様を作品化した<壁撞き>などが高く評価されている。
  • ジェームズ・タレル…ランド・アート・アーティストとして岩や土など自然の素材を用いて砂漠や平原に作品を構築する。代表作はアリゾナの山一つをそのまま作品化した<ローデン・クレーター>などもある。光を知覚する人間の作用に着目し普段意識しない光の存在を改めて認識させようとするインスタレーションも制作している。
  • オラファー・エリアソン…光や水、霧などの自然現象を自在に変容させ、新しい知覚体験を与える作品で高く評価されている。<ウェザー・プロジェクト>シリーズでは、タービンホールの壁の情報に半円形のオレンジ色の照明でできた巨大な沈まない太陽を掲げ、加湿器で砂糖水の霧を発生させる。タービンホールの天井には鏡が貼られており。半円形の照明が天井に反射して円形に輝き、鑑賞者達は強烈なオレンジ色の光の中、天井に小さな黒い影のような自分達を見ることができる。
  • 宮島達男…「Art in you(芸術はあなたの中にある)」をコンセプトに、発光ダイオードを使用したデジタルカウンターやコンピューターグラフィックス、ビデオなどを使用した作品を手掛けている。暗い部屋の床一面に発光ダイオードの数字が明滅する作品が高く評価された。直島の家プロジェクトの「角屋」では、水の張られたプールの中でLEDデジタルカウンターが光る。デジタルカウンターのスピードは、直島町民が設定した。
  • アニッシュ・カプーア…ヨーロッパのモダニズムとインド文化を組み合わせる現代彫刻家。シンプルな立体の表面に光を反射する金属や光を吸収する染料などを用いている。「物質」と「非物質」や「明」「暗」など1つの作品に二重の意味合いを込めた作品で知られる。ヒンドゥー教の世界観に影響を受け、鮮やかな顔料で立体の表面を覆う<1000の名前>やステンレスや漆といった素材を取り入れたものなどを作成。
  • 名和晃平…デジタル画像のpixelと生物の最小構成単位cellを組み合わせた「PixCell」を元に作品を発表。発泡ポリウレタンやガラスビーズといった素材が持つ特性と最先端の技術を組み合わせた彫刻制作、空間表現を行っている。
  • 八谷和彦…メディアアーティストで、主な作品に向かい合う相手の視覚・聴覚を自分のものと交換する装置<視聴覚交換マシン>や電光掲示板の明滅する光を専用のユーアーでのぞくことで、インターネット上に存在するたくさんの人々の日記を目視することができる<見ることは信じること>などがある。ナウシカが乗る「メーヴェ」のコンセプトを元に、本当に飛行可能な航空機として試作、試験飛行を行う<Open Sky>プロジェクトも行っており、高度100メートルでの飛行を実現させた。

だいぶ長くなりましたが、これから僕はここにあげた一人一人、調べて作品を見てみようと思います。ぜひ気になった方がいたらチェックしてみてください。本書にはもっと丁寧な解説も乗っています。

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この記事を書いた人

かれこれ5年以上、変えることなく維持しているマッシュヘア。
座右の銘は倦むことなかれ。

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